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第113話 水の国の歴史


 俺達は左奥にある通路を歩いていく。


「いやー、良い時に来てくれたなー。これから超眠い勉強があったんだよー」


 でしょうね。


「風邪でも引いたらどうです?」

「もうその手は通じない。なんか専属の医者がついた」


 どんだけ仮病を使ったんだ……


「まあ、勉強は大事ですよ」

「もう何度も聞いた内容なんだよ。あ、ここね」


 廊下を歩いていると、赤い扉がある部屋の前に来る。


「なんか火の国の神殿と同じですね」

「設計者が同じというか、設計図を使いまわししているんだよ。だから他の土の国も風の国も神殿は基本的に同じなんだ。ただ、資料室を私室にして寝泊まりしている真面目ちゃんはサラだけ。あ、いや、ノーラもか? まあいいや」


 んー?

 ノーラって誰?


「真面目は良いことですよ」

「足して二で割ればちょうどいいんじゃないかのう?」


 うん。


「よく言われるというか、サラの真面目さをちょっと分けてもらえって言われる。まあ、入ってくれ」


 ディーネさんがそう言って扉を開けたので中に入る。

 中は何段もある本棚に囲まれた部屋であり、火の国の神殿と同じように図書館みたいだった。


「すごいですねー」

「よくもまあ、こんなに残したもんだよ。でも、それが大事らしい。あ、座って、座って」


 俺達は部屋の中央にあるテーブルにつく。


「全部、読まれているんですか?」

「読んだ、読んだ。なのに何度も読まされる。もう覚えたっての」


 覚えたって……

 数えられないからわからないが、確実に1000冊は超えてそうなんだけど……


「へー……」


 まあ、不真面目だけど、優秀な人らしいからな。


「それで歴史が聞きたいんだっけ?」

「そうですね」

「歴史ねー……絶対につまんないぞ。子守歌より子守歌」

「そんなことないですよ。ね?」


 ジュリアさんを見る。


「ええ、気になります」


 ジュリアさんが頷いた。


「真面目な夫婦だなー。絶対にサラと話が合うだろ」


 うん。


「まあ、勉強という感覚より、好奇心ですよ。知ってると思いますが、俺達は異世界の人間ですので見るものすべてが新鮮なんです」

「あー、なるほど。確かに私も異世界って気になるな。そんなもんか……」


 ディーネさんも納得したようだ。


「そういうわけで教えてください。最初は漁村なんでしたっけ?」

「そうそう。川、湖、海があるからな。それにこの国はそんなに大きくはないけど、他の村では稲作なんかもやってる」


 昔の日本と同じ感じだ。


「ウチの国も米が主食ですし、島国なので魚が獲れます。ですので食が合いますよ」

「それは良かった。私は辛いのがダメなんだけど、火の国の聖都でサラに誘われてひどい目にあったことがある」


 ぐつぐつか。

 まあ、辛いのが苦手な人は厳しいだろう。


「あそこは辛いものが多いですからね」

「そうだな。でも、冬は寒いから仕方がないことなんだ。それと同じようにウチは雨や川が多いから稲作農業なんだな。ただ、当然、水害も多い」

「それはウチもですね」


 毎年、この時期になると、大雨のニュースが流れ、台風や水害が発生する。


「まあ、水の恵みを受ける地域はどこもそうだろう。水は人の生活に必要不可欠だが、水は時として人を襲う。サラに聞いたかもしれないが、教会の神殿があり、巫女がいるところはそういう災害が多いところなんだ」

「聞きましたね。火の国は噴火です」

「そうそう。怖いよな。まあ、ウチにも似たような感じで水害が起きている。津波や大雨による冠水なんかが代表だな」


 津波も起きるのかよ……

 地震か?


「津波ってヤバくないですか?」

「超ヤバくて、その資料も残っている。ぜーんぶ海に還ったらしい。家も人も何もかも……それが800年前の大津波」


 怖いな……


「以降も起きているんですか?」

「起きてる、起きてる」

「あのー、あの別荘って大丈夫です?」


 めちゃくちゃ海沿いにあるぞ。


「大丈夫。津波も予測できるし、何か知らんけど、リヴァイアサンが住みだしてからは起きてない。もう300年になるかな」


 リヴァイアサンってすごいな。


「守護神ってそういうことですか……」

「そうそう。女神様が遣わしてくれた竜神様だな」


 ホントかな?

 ノルン様に聞いてみよ。


「津波がないなら安心です」


 転移で逃げられるが、寝ている最中に津波に遭ったら厳しい。


「そこは大丈夫だな。でも、やっぱり水害っていうのは多いんだ。去年はめちゃくちゃ雨が降ったせいで川や湖が氾濫し、床上浸水の被害が多かった」

「大変ですね」

「ホント、ホント。ウチも観光地だから色々と儲けているけど、それでも復興資金が足りなかったから他所の国に援助してもらったわけ」


 多分、あの国境の砦から救助の兵士が来たんだろうな。


「女神様への信仰でしょう」

「そそ。良いこと、良いこと……とまあ、そんな感じで水害が多い国なんだ。神殿の成り立ちも聞く? つまんないけど」

「面白いですから聞かせてください」


 被害の話だから面白いって言っていいのかはわからない。

 ただ、興味があるし、勉強になる。


「えーっと、最初は漁村だったんだけど、魚がよく獲れるからどんどんと商人が集まり、大きくなっていったわけ。輸送するための道も整備し、船を停めるための港も作った。でも、700年前のある年、まったく雨が降らなかったんだ」

「干ばつですか?」

「そうそう。川だけじゃなく、湖も干上がったらしい」


 あんなにでかい湖が干上がるのか……

 あ、いや、生活用水で使うからだ。


「それ、どうなったんです?」

「それもやっぱり援助なんだが、水の援助って難しくてな。しかも、農作物も育たないしで大変だったらしい。それで女神様に頼ろうっことになって、この教会と湖の下にある神殿ができたんだ」


 あー、どうやって作ったんだろうって思ってたけど、湖が干上がった時に雨ごいとして作ったのか。


「それで雨が降ったんです?」

「うん、降った。だから聖地になったんだよ。女神様、ありがとーって感じ」


 なるほどねー。

 それは聖地になるわ。


「ノルン様は素晴らしいですね」

「ホント、ホント」

「その干ばつを起こしたのもノル――痛っ」


 タマヒメ様が余計なことを言おうとしたサクヤ様にひじ打ちをした。


「いやー、まあ、そこはスルーしてよ。ウチの連中もさすがに怒るよ?」


 ディーネさんが苦笑いを浮かべた。


「すまん、すまん。気になったのじゃが、おぬしの役目は天気予報だけか?」


 サクヤ様が謝罪し、気になったことを聞く。


「主にはそれかな? 10日に1回、発表するんだよ。他にも色々とあるけど、町の皆は私をお天気占いの人って思ってる」


 能天気……あ、いや、お天気お姉さんだ!


「ほうほう。雨はいつじゃ?」

「雨は今夜の遅くから降り始めて、3日間降る。あとはたまに夕立が降るくらいで晴れかな?」


 来週、こっちに来る時は晴れか。

 釣りとか海で遊びたいな。


お読み頂き、ありがとうございます。

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ノルン様、信仰の裏話聴かせてー
能天気なお天気お姉さん言いたかっただけちゃうん?…www
なんで干ばつにしたのかをノルン様に質問しないのかねw
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