第111話 あの人、サラさんより年上なんだよな……
楽しい土日を終え、またもや月曜日となったので仕事が始まる。
7月も近づき、平気で気温が30°を超えだしたのでさすがに社内でもエアコンがついた。
それでも最近は雨も多く、じめじめしているため、ちょっと不快だ。
「暑いから窓を開ければ涼しいが、湿気がうざいのう……」
仕事を終え、家に帰ってくると、肘をついて横になっているサクヤ様が愚痴ってきた。
「エアコンをつけていいですよ」
「電気代が高かろう。昼間もつけっぱじゃぞ」
サクヤ様も家にいるけど、ノルン様がゲームをしているからなー。
タマヒメ様がいるのかはわからないが。
「それぐらいの稼ぎはありますよ。神様が我慢しないでください」
「そうかのー?」
サクヤ様はそう言いながらエアコンをつけ、窓を閉めたので部屋着に着替え、一息つく。
「ふぅ……」
週末が楽しい分、仕事が大変だ。
「お疲れじゃのー。今日の晩飯は何じゃ?」
「ジュリアさんがお好み焼きを作ってくれるそうです」
昼間に『よかったら一緒に食べませんか?』というメールが届いたのだ。
「ええの。じゃあ、ジュリアの部屋に飛ぶぞ」
「買い物に行ってから帰るって言ってましたからまだ帰ってませんよ。メールが来ますので待ちです」
ジュリアさんは急かしたらダメだ。
「ふーん……さっさと結婚せい」
「急にどうしました?」
「それが良いと思ってな。結婚はまだでも一緒に住んだらどうじゃ? 家賃も含めて出費が抑えられるぞ」
まあねー。
「その辺も含めて、今後話し合いますよ。まあ、その前にちゃんと伝えてからですね」
浅井の方から来た縁談だが、それはそれとして、ちゃんとこちらから伝え、ジュリアさん個人の意思を確認したい。
「そうかい。おぬしはロマンチックなことを考えん方がええぞ」
「フラッシュモブでもしてくれます?」
「我とノルンとタマちゃんか? シュールすぎるじゃろ」
うん。
絶対に笑う。
「普通に言葉に出して言いますよ」
「それでいい。自分らしくいけ」
というか、ジュリアさんもフラッシュモブなんかされても困るだろうな。
その後、ジュリアさんの家に行き、お好み焼きをご馳走になると、そのまま居座って、漫画を読んだ。
次の日には逆にジュリアさんがウチに来たので野菜炒めをご馳走し、ゲームをする。
そして、金曜日になると、この日は火の国の方の別荘で過ごすことになったので仕事終わりにジュリアさんと合流し、別荘に転移した。
「今日は火の国で明日は水の国なわけ?」
ウチにいたので連れてきたタマヒメ様が聞いてくる。
「今晩はぐつぐつで明日はバーベキューです」
「贅沢ねー」
「タマヒメ様も楽しんでくださいよ」
「まあ、ここのお風呂は良いし、ぐつぐつも美味しいしね」
そうそう。
「では、行くかの」
俺達は別荘を出ると、マグマ亭に向かう。
すると、見覚えのある後ろ姿が見えた。
「あ、サラさんですね」
ジュリアさんも気付く。
「そうだね。サラさーん!」
少し声量を上げて、前を歩くサラさんに声をかけた。
すると、サラさんが振り向き、俺達に気付くと、笑顔になる。
「あれ? ハルトさん達じゃないですか。今日はこっちで夕食です?」
「そうなんですよー。ぐつぐつです」
「おー、それは良いですね。私もぐつぐつです」
方向的にそうだろうなと思った。
「じゃあ、一緒に行きましょうか」
「ええ」
俺達はそのまま一緒に歩いていき、マグマ亭に向かう。
そして、運良くテーブル席が空いていたので席につき、ぐつぐつ定食を頼んだ。
「サラさん、紹介状ありがとうございました」
「いえ、もう水の国には行かれたんです?」
「ええ。水の国って感じでしたね。海も湖も綺麗でしたし、海産物も美味しかったです」
「確かに綺麗でしたね。それに私も海産物を食べましたけど、新鮮で美味しかったです。この国も海産物を輸入しますが、全部冷凍ですから鮮度が全然違います」
ここは海から遠いしな。
「サラさんはどれくらい滞在したんですか?」
「10日くらいですかね? 眺めの良いコテージに泊まりました」
えっ……そこって……
「プライベートビーチがあるところです?」
「あ、それです。時期が春だったので海には入りませんでしたが」
間違いなく、ウチの第2別荘だ。
「そのコテージをもらっちゃいましたね……」
「あー……紹介状に宿泊施設を用意してあげて欲しいって書いたんですよ。水の巫女のディーネさんがウチに来た時に泊まってもらったあれを貸し出したんですよーって」
ディーネさんはそれを挑発と受け取ったわけだ。
「なるほど……あの、ディーネさんってどういう人です?」
「お会いしたのでは?」
「案内をしてくれましたね。なんかサボりたがってましたけど」
「あー、それです。そういう人です。魔力も高く、大変優秀な方なんですけど、すぐにサボったり、逃げ出す人ですね。この国に来ていただいた際も帰る当日に風邪を引き、3日ほど延長してました」
俺も先週……
「きっとお風呂が良くて湯冷めしたんですよ」
ちょっと親近感が沸いたので庇う。
「その3日間、飲み歩いていましたけど……」
擁護できない……
「そういう人なんですね……」
「ええ。でも、明るくて人当たりも良い方なので私は好きですよ」
「それはわかります」
正直な人だし、話していて気持ちいい人だ。
「あ、ぐつぐつが来ましたよ」
ウェイトレスがぐつぐつ定食を持って来てくれたので皆で食べる。
「やっぱりぐつぐつですよねー」
「そうですねー」
俺達はぐつぐつを堪能し、店を出ると、別荘に戻り、風呂に入ったり、お酒を楽しんだりしながらゆっくりと過ごしていった。
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