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第108話 金貨8枚なりー


「やっぱり旅行は楽しいです」


 隣に座っているジュリアさんがそう言って、笑顔で見てくる。


「そうだねー。見るものすべてが新鮮だよ」

「はい。すごく楽しいです」


 ホントねー。


「サクヤ様、タマヒメ様を呼んでくださいよ」

「そうじゃの。ちょっと待っておれ」


 そう言うと、サクヤ様が消えた。


「夕食は海のほとりですか?」

「それが良いかなって。刺身食べたいし」

「昼の焼き魚も美味しかったですし、この世界の料理のことを考えると、期待感がすごいですよね。しかも、花の舞ですよ?」


 ホント、ホント。


 俺とジュリアさんが話をしていると、サクヤ様が可愛い白魔導士の服に着替えたタマヒメ様を連れて戻ってきた。


「おー、中々、良い別荘じゃないの」


 タマヒメ様が部屋を見渡す。


「タマヒメ様、外を見てください。プライベートビーチですよ」


 ジュリアさんが立ち上がり、タマヒメ様と共に外を見る。


「すごっ……こんなのをもらったの?」

「巫女様のご厚意です。一緒に遊びませんか? ここは私達以外、誰も来ないんですよ」

「う、うん。それなら……」


 タマヒメ様は海が好きらしいし、遊びたいようだ。


「タマヒメ様、夕食に行きましょう。良い感じの店を探しておきました」


 そう言って、立ち上がる。


「えーっと、花の舞だっけ? 何それ?」


 サクヤ様に聞いたようだ。


「そういう刺身の盛り合わせみたいですね」

「ちょっと気になるわね」

「ですよね? 良い時間ですし、行きましょうか」


 俺達は別荘を出ると、海沿いの道を歩いていく。


「潮の香りが海って気がするわね」

「ナンパが多いらしいぞ」

「誰が私達に声をかけるのよ。声をかけた時点でアウトよ、アウト」

「わからんぞー? 世の中には色んな人間がおるからの。な?」


 サクヤ様がこちらに振ってきた。


「まあ、ウチはコンプライアンスかかってこい教なんで何とも言えませんね」

「あ、ウチもですね」


 浅井さんも議員の家なのに少女を神と崇める業の深い家だ。


「そういう風に言われると、嫌な家だわ」

「ウチは優秀で良い子しかおらんがな」

「ウチもよ!」


 ケンカしないでほしいな。

 見てて微笑ましいだけだし。


 俺達は日が落ち始めた海沿いを歩いていき、南の大通りにある海のほとりという店の前までやってきた。


「やっぱり大きいですよね」


 ジュリアさんが店を見上げながらつぶやく。

 別荘に戻る前に場所を確認しておいたのだ。

 その時も思ったが、店が大きいし、ちょっと高級感がある。


「そうだね。超贅沢って言ったし」

「お金は大丈夫です?」

「いっぱいあるし、こういうところで贅沢をするために仕事をしていたわけだからね。気にせずに行こうよ」


 日本では使えないお金だし、貯金なんてあまり考えなくていい。


「それもそうですね」


 俺達は店の中に入る。

 すると、店の内装からもここが高級店だとわかった。

 どこか中華風の雰囲気があるものの、庶民的な町中華ではない。

 それがはっきりとわかる理由は目の前には受付しか見えず、どう考えても各個室がある料亭みたいなお店なのだ。


「いらっしゃいませー」


 俺達が店の入口で待っていると、すぐにウェイトレスがやってくる。


「4名なんですけど」

「どうぞー。席にご案内します」


 俺達はウェイトレスに案内され、個室に通された。

 個室は10畳くらいの広さであり、テーブルと椅子が4脚ある。

 そして、大きな窓があり、夕日に染まった海が見えていた。


「すごいですね……」

「ホントにの……」


 俺とサクヤ様は海が好きな浅井の2人に窓際を譲り、席につく。


「こちらメニューになります。お決まりになりましたらそちらのボタンでお呼びください。それではごゆっくり」


 ウェイトレスはそう言って、部屋を出ていった。


「ボタンなんてあるんですね」


 ジュリアさんが端にあるボタンを見る。


「近代的だねー。何食べる? とりあえず、花の舞を……」


 金貨5枚もする……

 内容は色とりどりの刺身の盛り合わせ5人前らしいが、すごいな。


「や、やめておきます?」

「いや、このために仕事をしてきたんだよ。頼もう。他に何かいる?」

「えーっと、じゃあ、魚介の揚げ物の盛り合わせを頼みましょうか」


 良いね。


「御二人も何か頼みます?」


 対面に並んで座っているサクヤ様とタマヒメ様にメニューを渡した。


「どうする?」

「どうするって聞かれてもわかんないわよ。とりあえず、このお酒で良いんじゃない? 魚とお酒があればどうにでもなるでしょ」

「それもそうじゃの。御神酒じゃ、御神酒」


 微笑ましい御二人がおっさんみたいなことを言っている。


「ジュリアさんも飲む?」

「では、せっかくなので……」


 注文が決まったのでボタンを押し、ウェイトレスを呼んだ。

 そして、花の舞と魚介の揚げ物の盛り合わせ、それぞれのお酒を注文し、待つ。


「船が見えますね」

「夜も何かを獲るんじゃない?」


 浅井の2人は楽しそうに海を見ていた。


「お酒って何でしょうね? ワインとも書いてませんけど」


 思わず笑顔になりそうな2人を眺めながらサクヤ様に聞く。


「多分、日本酒に近いものが出てくると思うぞ」

「なんでです?」

「米が採れる国じゃから」


 なるほど……

 主食が麦じゃなくて米か。

 となると、酒の材料も米の確率が高いわけだ。


 俺達がそのまま待っていると、まずお酒がやってきた。

 コップに入ったお酒は無色透明であり、本当に日本酒に見える。

 そして、ウェイトレスがお酒を置き、一度、廊下に出ると、もう一人のウェイトレスと共に巨大なガラスの器を持って入ってきた。


「すげー……」


 2人のウェイトレスがテーブルにガラスの器を置いたのだが、魚を始めとする色とりどりの刺身が花のように綺麗に盛り付けられている。


「こちらのタレをつけてお召し上がりください。また、揚げ物もすぐにお持ちします」


 ウェイトレスがそう言って出ていった。


「醤油?」

「見えますね」

「どれ……」


 サクヤ様が小指にタレをつけ、舐める。


「どうです?」

「んー……塩辛いが醤油ではないのう。何とも形容がしづらいが、米には合いそうじゃの」


 じゃあ、いいや。


「食べてみましょう」

「そうですね」

「それが早いわね」


 俺達は箸を伸ばし、それぞれ刺身を取ると、タレにつけて食べてみる。

 俺は白身魚を取ったのだが、塩辛くて濃厚なタレによく合い、非常に美味しかった。


「いけるな」

「というか、美味しいですよ」

「うん、美味しい」

「酒が進むのう……まんま日本酒じゃな」


 俺達が刺身を食べていると、揚げ物の盛り合わせも届いたので一緒に食べていく。


「この世界もちゃんとエビがおるんじゃの」


 サクヤ様がどう見てもエビのてんぷらを箸で掴んだ。


「好きですから嬉しいですね」

「私も好きです」


 ねー。


「本当にエビかはわからんないけどね」

「異世界の食べ物なんじゃし、今さらじゃろ。なんでもいいから黙って食え。そして、飲め」

「それもそうね」


 2人の少女が日本酒っぽいお酒をぐいーっと飲む。


「コンプライアンスかかってこい、だなー」

「ま、まあ、水にも見えますよ」

「まあね……」


 俺達はその後も飲み食いを続けていき、お腹いっぱいになると、会計をし、別荘に戻ることにした。


お読み頂き、ありがとうございます。

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