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第106話 キャプテン!


 焼き魚定食を食べ終えると、店を出る。


「美味かったの」

「ですねー。汁も魚の出汁が利いていて美味かったです」


 和食って感じがした。


「私はお腹いっぱいです」


 ジュリアさんも満足そうだが、俺でも多いなって思ったくらいだからジュリアさんは大変だっただろう。


「ちょっと量が多かったね」


 というか、魚がでかかった。


「ですね。でも、あんな魚は食べたことがなかったので良かったです」

「まあね。じゃあ、昼も終えたし、ギルドに行こうか」

「はい」


 俺達はそのまま北の大通りを歩いていき、午前中にディーネさんが案内してくれたギルドが固まっている区画を目指す。


「この辺りは観光客より同業者っぽい人が多いね」

「そうですね。剣や杖を持っている人も多いですし、皆さん、強そうです」

「ねー。ちょっと怖いよ」


 冒険者ギルドや魔法ギルドの他にも傭兵ギルドなんかもあるらしいし、どうしても構えてしまう。


「気にするな。全員、おぬしら以下じゃし、天下の大通りで何かを起こそうとする者はおらん。堂々としておけ」


 治安は良いって話だからな。

 じゃなきゃ来ない。


「あ、ギルドですね。どっちから行きます?」


 ギルドの前に来たのだが、通りを正面にして、左が魔法ギルドで右が冒険者ギルドである。

 両ギルドはお向いさんなのだ。


「どっちでもいいけど、冒険者ギルドからにしよっか」

「わかりました。となると、右ですね」


 俺達は右にある冒険者ギルドに入った。

 中はフロック王国の王都のギルドよりはちょっと狭いくらいの広さであり、そこそこの冒険者がいて、何かを話している。

 さらには受付が3つあるのだが、2つの若い女性の受付は埋まっており、海賊みたいに眼帯をしている髭面の男性のところだけが空いていた。


「いかにもじゃの」

「あだ名は海賊さんですね」

「ちょっと怖いです……」


 ちょっとかな?

 あ、いや、ハワードさんよりは弱そうだし、あの人よりかはマシか。


「行きますね」

「任せた」

「お願いします」


 今回に限ったことではないのだが、俺が先頭となって空いている受付に向かった。


「こんにちはー」

「おう! こんにちは! 観光客か?」


 海賊さんはニコッと笑って応対してくれる。

 微妙に歯が欠けているところがさらに海賊感が増すのだが、悪い人ではなさそうだ。

 まあ、ギルド職員だから当たり前なんだけど。


「そんなところです。それと仕事ですね。えーっと、フロック王国の王都から荷物です」


 サクヤ様から小包を受け取り、ギルドカードと共にカウンターに置く。


「お! ということはお前がドラゴンスレイヤーのハルトか?」


 海賊さんがそう言いながら冒険者カードを見ると、受付嬢と話をしていた隣の若い男の冒険者が『え?』っという顔をしてこちらを見てくる。


「あー、そうですね。幼体ですけど」

「そうか、そうか。本当に来るのがはえーな。俺はムックだ」


 キャプテン・ムックと覚えよう。


「どうも。ムック船長……じゃない、ムックさんは元冒険者とかですか?」

「そうだな。船乗り兼冒険者ってところだ。この町には魚を獲ったり、貿易船に護衛として乗る冒険者が多いんだ。俺は元々そっちの職だったんだが、体力が落ちてきたんで冒険者ギルドに就職したんだよ」


 お国柄か。


「なるほどー。この町で仕事をする場合は船に乗らないといけないんですか?」


 それはちょっと酔いそうで嫌だ。

 それに仕事があるから何日も空けられない。


「そっちの仕事が中心なのは確かだが、山関係もあるぞ」

「どういうやつです?」

「単純な魔物退治だ。山道には結界が張ってあるから人に被害が出るというわけではないんだが、山では猪や鹿といった肉が獲れるからな。この町は魚介が中心だが、肉だって必要だから猟師が獲るんだよ。その際に魔物がうじゃうじゃいると危ないし、魔物は猪や鹿も襲うから定期的に駆除しないといけないんだ。だから山の魔物だったらどんな魔物でも討伐料が出るぞ」


 なるほど。

 要は山に行って、魔物を倒せばいいんだ。


「これっていうやつはいます?」


 ワイバーンとか。


「いるかな? ゴブリン、ウルフ……ドラゴンスレイヤー様のお眼鏡に適うやつはいないと思うな」


 となると、山登りか……


「山かー」

「一度行ってみても良いと思うぞ。西の山だったら展望台があって、この町と海を一望できる」


 それは興味があるな。


「トロッコ列車とかあります?」

「ねーよ。お前、火の国から来たな?」


 うん。


「この前までいましたね」

「あそことここは違う。トロッコはないけど、船ならいっぱいあるぜ」


 船酔いが……

 あれ? そういえば、俺とジュリアさんって船酔いするのか?

 ノルン様の完璧ワクチンってどこまで効くんだろ?


「考えておきます」

「そうかい。まあ、まずはこの町を楽しめ。じゃあ、依頼料な」


 船長がカウンターに金貨4枚を置いた。


「ボーナスです?」

「ああ。はえーのは良いことだ。中には平気で1ヶ月後に来る奴とかいるからな。そんなに離れてねーだろっていつも怒っている」


 アバウトなんだろうな。

 日本は絶対にそんなことない。


「ありがとうございます」


 礼を言って、金貨4枚を受け取る。


「もしあれだったらフロック王国の王都への配達の依頼を紹介してやろうか? 魚の運搬の仕事があるんだよ。これは期限が10日以内って決まっているから信用できる奴にしか回さない。お前らは早いし、回してもいいぞ」

「魚って10日も持ちます?」


 腐るぞ。


「そういうマジックアイテムがあるんだよ。まあ、魔法のカバンだけどな。たけーから持ち逃げしたらデッドオアアライブで指名手配犯な」

「そんなことしませんよ」


 岩見家の当主だぞ。


「そういう信頼があるからその仕事を回しているんだよ。お前ら、これまでの仕事の評価が最高しかないし」


 そもそもあんまり仕事してないし、配達も1週間で届けているしな。


「どうも。じゃあ、王都に帰る際にやりますよ」

「あいよ。頼むわ」


 俺達は用件が済んだので冒険者ギルドをあとにした。


お読み頂き、ありがとうございます。

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デッドオアアライブで指名手配っていう字面が面白いですね
ちょくちょく当主のプライド見えてて好き
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