第104話 第二の別荘
「じゃあ、別荘の中も説明する。入って、入って」
俺達は海の方の玄関から別荘に入った。
中は2階建てだが、吹き抜け構造になっており、結構広く感じる。
ログハウスというわけではないが、木製であり、落ち着く雰囲気だった。
さらにはテラスの方には海が見えるソファーもあり、ゆっくり休めそうだ。
「綺麗ですね」
「あんまり使ってないけど、ちゃんと管理はしてるからな。えーっと、寝室は2階とそこ。ベッドが2つずつある」
ディーネさんが2階に見えている扉を見た後に1階にある扉を指差す。
「おぬしらが2階な」
「いいんですか?」
2階の方が眺めは良さそうだが。
「我は下が良い」
ベッド使わないな、これ。
「まあ、好きに使ってよ。掃除は私が責任を持ってやるから安心しろーい」
え?
「ディーネさんがやるんですか?」
確かに火の国でも掃除はしてくれているが、さすがにサラさんはやってないはずだ。
「そう、私。この重要な任務は巫女である私にしかできない」
「掃除ですけど……」
「ハルト、サボりたいだけじゃろ」
あー、そういうこと。
「ちゃんと掃除はするよー。ゆっくりやるだけ」
「ありがとうございます」
「じゃあ、ウチの説明は大体こんなもの。あとは適当に回ってみてくれ。何かあれば教会を訪ねてくれればいいからさ」
湖の中の神殿は絶対に見たいしな。
「わかりました。何から何までありがとうございます」
「何から何まで頼るんだぞー。ハルトさん達の接待が最優先事項だから堂々とサボれる」
はっきり言ったな……
「お願いします」
「うん。じゃあ、私は帰る。楽しんでなー」
ディーネさんは正面の玄関の方から帰っていった。
「騒がしい奴じゃの」
「明るくて裏表のない良い子じゃないですか」
「まあの」
俺達は海が見えるソファーに向かうと、腰かける。
俺とジュリアさんが窓から正面に並んで座り、サクヤ様が斜め右のソファーで肘をつきながら横になった。
「またもやええところをもらったの」
「プライベートビーチ付きの別荘ですもんね」
「波音が心地良いです」
ホントねー。
「さて……どうする?」
サクヤ様が聞いてくる。
もちろん、今後の予定のことだ。
「一番気になるのは湖の神殿ですね。リヴァイアサンを見たいです」
「我もそれじゃな」
「湖の中に神殿があるだけでも神秘的なのに竜の神様が住んでいるなんてすごいですよね」
とんだ水族館だよ。
「ねー。どうだろう? 今日明日と町を見て回ったり、ギルドに行ってさ、来週ゆっくりと神殿の方を見ない?」
「良いと思います。ディーネさんにお話を聞きたいですし」
「良いんじゃないか? となると、今日は町を一通り見て回るか。タマちゃんは……来ないか」
来ないだろうね。
「サクヤ様、一応、声をかけてもらいます?」
拗ねちゃうかもしれないし。
「そうじゃの。ちょっと外すからおぬしらは別荘を見て回っとれ」
サクヤ様はそう言うと、転移を使い、消えてしまった。
「じゃあ、見てみようか」
「そうですね」
俺達は立ち上がると、1階の寝室の扉を開ける。
寝室はそこまで広くなく、両端にベッドが2つと真ん中にデスクがあるだけだった。
「使うかな?」
「どうでしょう? ベッドがお嫌いみたいですし、ソファーのところに布団を敷きそうな気がしますね」
俺もそう思う。
「まあ、神様は神様のやりたいようにしてもらおうか」
「そうですね」
俺達はその後も1階を見て回っていく。
といってもリビングは広いが、1階の部屋はこの寝室くらいであとは掃除道具やバーベキューセットが入った倉庫、それにトイレとお風呂がある程度だ。
「お風呂は普通だね」
これならウチの風呂でいい気がする。
「そうですね。でも、お風呂だけ火の国の別荘を使うという贅沢もできますよ?」
「いいね。すごい贅沢だ」
転移があるから選択肢が多い。
「2階も見てみましょうよ」
「だね」
俺達は階段を昇り、寝室に入る。
2階の寝室は1階の寝室よりも広く、2つのベッドが並んでおり、窓際には2脚の椅子と丸テーブルが置かれている。
さらにはバルコニーがある窓から太陽の光が差し込んでいて、気持ちのいい朝を迎えそうだった。
「すごいですね」
「ホントね」
俺達は顔を見合わせて、苦笑いを浮かべた。
そして、バルコニーの方に行き、窓を開けると、外に出て、海を眺める。
「良いですねー。海は綺麗ですし、波の音が本当に心地良いです」
海は青く、空も青い。
夏って感じがした。
「先に島があるね」
「船で行けるんですかね?」
「恐竜とか住んでそう」
「あながち冗談と笑えない世界ですよ」
まあね。
「泳ぐ?」
「せっかくですし、泳ぎたいです。海が好きなんですけど、泳いだことないですし、ディーネさんが言っていた砂浜でお城作りもやりたいです」
水の国推しだったし、海が好きなんだな。
「一応、確認だけど、泳げる?」
「プールなら25メートル泳げます。まあ、がっつり泳ぎませんし、沖には行きませんよ」
ならいいか。
水際でちゃぷちゃぷしてるくらいだろう。
「浮き輪とか買おうかな」
「そうですね。私はまず水着を買わないといけないです」
「あ、俺もだ」
ずっと海に行ってないし、プールもない。
「一緒に買いに行きます?」
「いやー、それはやめとく。代わりにサクヤ様を連れていってあげてくれない? あの人も泳ぐだろうし」
「それもそうですね。タマヒメ様と3人で行ってきますよ」
ノルン様は……来ないか。
あの人はゲームだろう。
「あのさ、水着、大丈夫?」
ジュリアさんは女子高、女子大出身のお嬢様だ。
大丈夫だろうか?
「恥ずかしくないと言えば嘘になりますけど、大丈夫ですよ」
ジュリアさんは笑顔でそう言い、手を握ってきた。
「そっか。なら夏を楽しもうか」
「はい」
正直、現状の俺達の関係が恋人なのか婚約者なのかはわからないが、ただの仲間でもなければ友人でもないことは確かだ。
多分、近いうちに家族になるわけだから気にせずに楽しもう。
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