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拳骨にニヤニヤ

 普段ならばボーっとしている寝起きだが、少し前までユリステムとお喋りを楽しんでいたからか、思考がはっきりとしている。


 窓から差し込む日の光を見ながら、アカネはユリステムの間の悪さに苦笑した。


 ユリステムはいつも、自身にとって大切なことを告げるタイミングが、一歩遅いのだ。


気後きおくれして、言い出せなかったのかな? もっと早くに言ってくれれば、もちろんですよ、ユリステム様!! って、励ましてあげたのに。でも、可愛い系控えめ美人なユリステム様、正直、推しだわ!!』


 元から何となくユリステムのことを気に入っていたアカネだが、彼女と再会し、その人格を知るにつれて、己の中にある信仰心が高まり、敬愛の念が増すのを感じる。


 今ならば、ユリステムまんじゅうを作って我武者羅に売りさばき、得た売上金を全て彼女に献上しそうな勢いである。


『よっし! 今日も一日、ユリステム様のために! そして、まだ見ぬハーレムのために! 頑張るわよ!!』


 ベッドから飛び起きて元気良くガッツポーズを決めると、アカネは身支度を整えた。


 そして、一気に朝の準備を終わらせ、勢いよく扉を開けると、外には驚いた表情を浮かべるアオイがいた。


「アカネ、お前元気だな。というか、ここの扉は外に開くようになってるんだから、もうちょっと気を付けて開け閉めしろよな。あたしじゃなかったら、ぶつかってたぞ」


 扉から離れたところで胸を押さえるアオイに、「ごめん!」と手を合わせて謝ると、彼女は苦笑した。


「別にいいけどよ。それより、その、さ、あたしも、やっぱり皆についてくよ。一緒に世直しの旅をする。それだけ、言いに来たんだ。これから、お嬢様たちにも伝えに行く。ちょっと時間がかかるかもしれないけど、準備が済むまで屋敷を出るのは待っててもらってもいいか? それと、悪いけど、このことをミドリたちにも伝えておいてくれ」


 眉を下げ、言い難そうに言葉を紡ぎながら、ポリポリと頬を掻いている。


 早とちりしがちなアオイのことなので、きっとアカネたちの旅が、すぐにでも次の目的地へと向かわなければならないような、忙しくて大変なものだと勘違いしているのだろう。


「別に、それくらいいわよ。まだ次の行き先も決まってないくらい、適当な旅だし。準備も挨拶も、好きなだけ時間をかけたらいいわよ」


 アカネがのんびりと欠伸あくびを噛み殺しながら気楽に言うと、アオイもほっと微笑んだ。


「それにしても、やっぱスケベの力は偉大ね。そんなに理想のエッチ獣人を探したいの? でも、ハーレムに熱意を燃やす者として、気持ちは痛いほどにわかるわ」


 かなり充実した生活を送っていたようなので、アカネは、てっきりアオイは屋敷に残るのだと思い込んでいた。


 無理に引っ張って行こうとは思わないが、やはり親友と離れるのは寂しくて、何だかんだと理由を付け、一週間くらい町への滞在を引き延ばそうかと思っていたのだ。


 アオイのスケベな心に感謝し、同志としてハグをしようとすると、頭に拳骨を落とされた。


「いったあ! 何すんのよ!」


 ジンジンと痛む頭頂部を両手で押さえ、涙目でアオイを睨むが、ギロッと睨み返されてしまった。


「あたしが屋敷を出るのは、おバカなアカネとござるなミドリじゃ心配だから! レイドは、戦闘力的には頼りねーし。ったく、人の決意を色欲で塗り替えやがって! じゃ、あたしは皆に挨拶してくるから!」


 アオイは舌打ちをしながら廊下を去って行くが、アカネはどうにも彼女がついて来てくれるのが嬉しくて、頭を押さえたままニヤけていた。

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