〜昔は今、月うさぎというものありけり〜
初投稿です。情報は随時解禁されて行きます。
〜プロローグ〜
私は1人歩いている。
夜も昼もわからない時間さえわからない場所をただ1人で。
下を向いて歩こう涙が溢れないように。
手を伸ばせば地球に手が届くのに、彼には触れることもできない。
頬の線は泣き続けていたわけじゃない、彼を想い、慕い続けてきた証なのだ。
声は届かない、もう話し方も言葉も忘れてしまった。
静かな月に月うさぎがただ1人、
かつて都市だったところをただ歩き続ける。
満月京と呼ばれた、月うさぎたちの楽園、地球を捨てたうさぎたちの拠り所、私もきっとその1人。
「……み」
声がした気がした、懐かしい声、もう顔が滲んで思い出せない。思い出したくない、会えないから。
「…きみ」
大きくなる声、幻聴なら何度も聞いた、満月京の幸せに満ちた声、地球の声、彼の声。
私は全てを壊してでも彼には生きてて欲しかった。だから……
「つきみ」
やめてほしい、もう消えてほしい、この大きな耳はそんな幻聴を聞くためにあるんじゃない!
「月美!」
我に帰った。
静まり返った月に響いた声に聞いた懐かしい声、振り返ると彼がいた。
「月美…」
気づけば走り出していた、
彼の胸に飛び込む、いつぶりだろう、生物の温もりに触れるのは……
やっと赦された気がした。
安堵で目を閉じるのであった。