第八話:本当は怖い活字の世界2
吉田 「えーと、今日のテーマは……本当は怖い活字の世界2か。……何でまた本当は怖い活字の世界をやるんだ?」
吉原 「うむ、実は最近また、活字の世界で悲劇的な事故が続発しているんだ。だから、ここらでもう一度、活字の世界の恐ろしさを再確認してもらおうと思ってな」
吉田 「ふーん。……で、どんな事故があったんだ」
吉原 「そうだな、……例えばこれ」
玉子さん、僕は永遠に君を愛するよ
吉原 「これは、とある恋愛小説のラストシーンで、主人公が恋人に言おうとした台詞だ」
吉田 「……ふーん。きっと、ロマンチックな作品だったんだろうな」
吉原 「ああ。そして、ものすごく感動的な小説だった。…………っく…思い出しただけで泣けてくる」
吉田 「そんなにいい小説だったのか……」
吉原 「ああ。……しかし、ラストのこのシーンで、黄身…………じゃなくて、身も凍るような恐ろしい事故が起きてしまったんだ」
玉子さん、僕は永遠に君を愛するよ。
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玉子さん、僕は永遠に黄身をアイスするよ。
吉原 「これぞ、まさに悲劇! 熱々(あつあつ)だったシーンが、一瞬にして凍り付いてしまった!」
吉田 「こんな馬鹿な間違いをする奴いねえだろ!!」
吉原 「……………………」
吉田 「お前以外にな」
吉原 「…………えー、ゴホン。さて、それでは、次の例文を見てみよう」
綺麗なお姉さん 「ねえ、吉田さん。今日は合コンし・た・い?」
吉田 「うん、もちろん」
吉田 「勝手にひとを登場させるなよ!」
吉原 「まあ、いいじゃないか。綺麗なお姉さんが誘ってくれてるんだし」
吉田 「…………そりゃあまあ、そうだけど」
吉原 「うらやましい奴め! このっ! このっ!」
吉田 「やめろって」
吉原 「…………さて、一見すると非現実的に見えるこのシチュエーションだが、ひとつ間違うと、ものすごく現実的なシチュエーションに様変わりしてしまうんだ」
綺麗なお兄さん 「ねえ、吉田さん、今日は合コン…死体?」
吉田 「うん、もちろん」
吉田 「これの、どこが現実的なシチュエーションなんだよ!! どこが!!」
吉原 「お前……いつも、オカマさん達と一緒に合コンしてるって言ってたじゃないか」
吉田 「そんなこと一言も言ってねえ!!」
吉原 「しかも、墓場で」
吉田 「誤解を生むようなことばっか言うな!!」
吉原 「わるい、わるい。…………さて、それじゃあ次は、いよいよ最期の例文だ」
吉田 「最後だろ。何度も間違えるなよ」
吉原 「はい、吉田、これ持って」
吉田 「なんだよこれ……バット?」
吉原 「そう、そして俺は、このグローブとボール」
吉田 「……何するつもりだよ」
吉原 「いいから、いいから」
九回裏ツーアウトランナー満塁
実況 「さあ、ここでバッターボックスに立つのは、四番の吉田!」
解説者 「今日一番の見せ場ですね」
実況 「カウント2−2からピッチャーの吉原、第五球を……投げました!」
解説者 「あっ! これはかなり危ない球ですよ!」
実況 「ああー! 吉田、三振だー! 吉田、三振だー! ピッチャーの吉原、見事に討ち取りました!」
吉田 「…………………………」
吉原 「どうした? 顔色が悪いぞ」
吉田 「…………あっ、俺、ちょっと急用を思い出した。今日はこれで失礼するわ」
吉原 「そうはいかん、最後まで付き合ってもらうぞ。……ピッチャーの吉原、振りかぶって第六球を…」
吉田 「わあー! やめろー!」
吉原 「投げましたー!」
解説者 「あっ! これはかなり危ない球ですよ!」
実況 「ああー! 吉田さん死んだー! 吉田さん死んだー! ピッチャーの吉原、見事に討ち取りました!」
吉原 「……このように、ちょっとしたミスで、俺達活字の世界の住人は簡単に死んでしまうんだ。文章を書くときはくれぐれも注意してくれ。……えっ? 吉田はどうしたって? 心配ご無用!」
吉田さんは復活した。
吉田 「人を玩具にするんじゃねえー!!」




