第一話:本当は怖い活字の世界
登場人物のプロフィール
吉田吉男
年齢 ?
性別 男
血液型 A型
好きなもの つっこみ
嫌いなもの ボケ
吉原吉行
年齢 ?
性別 男
血液型 B型
好きなもの ボケ
嫌いなもの つっこみ
吉田 「はいどーもー! 皆さん、はじめまして! 笑いの大学院のつっこみ役の吉田でーす!」
吉原 「皆さんはじめまして!ボケ担当の吉原です」
吉田 「さあ、ずばり今日のテーマは“本当は怖い活字の世界”!」
吉原 「うん、まあ、なんだ。……俺達活字の世界の住人にとっちゃあ最近、“小説家になろう”っていうサイトが大問題になってるわけよ」
吉田 「べ、別に大問題にはなってねえだろ! 変なこと言って、すいません!」
吉原 「そこで今日は、ひとつ間違うと大惨事になってしまう活字の世界の恐ろしさを、皆さんに知ってもらおうと思ってな」
吉田 「活字の世界の恐ろしさ?」
吉原 「うむ。この漫才を読んでしまったら、怖くてメールも出来なくなるだろう」
吉田 「そんなわけねえだろ!」
吉原 「本当かどうか、早速、最初の例文を見てみよう」
健太君の家は犬を三匹飼っています。
吉田 「別に……普通の文じゃん」
吉原 「そう、この例文を読んだほとんどの人は、ケルベロスを飼っている平和な家庭を想像しただろう」
吉田 「誰もそんな想像はしねえよ!」
吉原 「しかし、だ!!……ズズゥー」
吉田 「…何だよ、今のズズゥーってのは?」
吉原 「よだれ」
吉田 「汚えなあ」
吉原 「俺の興奮が読者に伝わると思ったんだよ! 情景描写と心理描写が大事だって“小説評価”の所にもよく書いてあるだろ!」
吉田 「カギカッコばっかりの小説でどうやって描写するんだよ!」
吉原 「じゃあ、俺がやってやろうか?」
吉田 「やってみろよ」
吉原 「天井からは七色のスポットライトが、俺を照らしている」
吉田 「ないよ」
吉原 「そして、目の前の客席では、五万人の観衆が腹を抱えて笑っていた」
吉田 「いねえよ」
吉原 「そしてなんと! 隣には吉田がいた!!」
吉田 「最初からいるだろ!!」
吉原 「吉田は、なに言ってんだよ……と思った」
吉田 「もうやめろ!」
吉原 「じゃあ次は、お前の外見を描写してやるよ」
吉田 「俺の外見?……な、なんか照れるな。」
吉原 「吉田には目が二つ、鼻が一つ、口が一つ、そして…………耳が二つあった!!」
吉田 「当たり前だろ!! 人間なんだから!」
吉原 「お前……人間だったの?」
吉田 「何だと思ってたんだよ」
吉原 「……エイリアンvsプレデター」
吉田 「意味分かんねえよ!」
吉原 「ゴメン…vsじゃなくてorだった」
吉田 「どうでもいいよ! そんなことより、外見の描写っていうのは、髪型とか服装とかを描くんだよ! 分かったか!」
吉原 「髪型か。分かった! 吉田はショートカットのツンツン頭で…」
吉田 「そう、そう、そんな感じ」
吉原 「毛髪は九万八千三百二十六本あった」
吉田 「おい!」
吉原 「そして鼻毛は…」
吉田 「やめろ!! 誰がそんな詳しいとこまで描写しろって言った!!」
吉原 「…………あれ? そういえば俺達、……何の話をしてたんだっけ?」
吉田 「“本当は怖い活字の世界”だろ!…忘れんなよ!」
吉原 「そうだった、そうだった。……で、どこまで話したっけ?」
吉田 「三十五行上の まで!」
吉原 「思い出した。じゃあ早速、“切り取り”で“貼り付け”……と。しかし、だ!!……ズズゥー」
吉田 「こらー!! 俺の台詞を勝手に切り取るんじゃねえ!!」
吉原 「悪かった、悪かった。そう怒るなよ」
吉田 「………………ったく!」
吉原 「えーっと……まあ、つまりだな、上のほうに書いてある平和な例文だが、ある一文字を打ち間違えてしまうと恐ろしい事になるんだ。例文を忘れてしまった人は、マウスの上に付いてるローラーをころころと回して確認してくれ。携帯の人は…」
吉田 「そんなこと、いちいち説明しなくていいんだよ! 早く見せろ!」
吉原 「ジャジャーン!」
健太君の家は犬を三匹飼っています。
・
・
・
・
健太君の家は犬を三匹喰っています。
吉原 「どうだ! たった一文字、aとuを打ち間違えただけで、平和な家庭が一転してホラーハウスになってしまっただろ!」
吉田 「別に、aとuを打ち間違えただけでこうはならねえだろ、普通」
吉原 「では、もう一つの例文を見てみよう」
京子さんは、レバニラ炒めをガツガツと美味しそうに食べている。
吉原 「もうこれだけで、京子さんが“肝い”ってことが十分伝わると思うが…」
吉田 「別に、レバニラ炒めくらい食べてもいいだろ!」
吉原 「ある文字を間違えて打ち込んでしまうと、さらに酷くなってしまうんだ」
京子さんは、レバニラ炒めをガツガツと美味しそうに食べている。
・
・
・
・
京子さんは、入歯ニラ炒めをガツガツと美味しそうに食べている。
吉原 「どうだ! “肝い”から“変態”にレベルアップしただろ!」
吉田 「入歯ニラ炒めってなんだよ! それに、間違えて打ち込んでも変換キーを押さなきゃこんな風にならないだろ!」
吉原 「変換ミスって、よくやってしまうだろ? それで、和気の解らない幹事が出てくるんだよな。いっつも!」
吉田 「わざとやってるだろ」
吉原 「ンんー。では次に、同じ読み方の文なのに、ひとつ間違うとまったく違う意味になってしまう例文をお見せしよう」
(遅いな、涼子は何をやっているんだろう?)
吉原 「恋愛小説では定番の、彼女との待ち合わせのシーンだ! おそらく読者は、白いワンピースを着て金のブレスレットをしたショートカットの広〇涼子みたいな可愛くて清楚な彼女を想像しているだろう……ゼェ…ゼェ…」
吉田 「そこまでは想像できねえよ」
吉原 「しかし! 一つ間違うと、とんでもないことにナル!」
(遅いな、涼子は何をやっているんだろう?)
・
・
・
・
(遅いな、涼子は何を殺っているんだろう?)
吉原 「どうだ!! “清楚な彼女”が一瞬にして“猟奇的な彼女”になってしまっただろ!」
吉田 「なんで“やる”が“殺る”になるんだよ!」
吉原 「あの野郎、……殺ってやるぜ! ってよく使うだろ?」
吉田 「使うけど、“やる”を変換しても“殺る”にならねえだろうが!」
吉原 「そうか?」
吉田 「そうだよ!」
吉原 「まあいいや。次は最期の例文だ」
吉田 「“最後”だろ」
吉原 「皆さんは“っ”の文字を、誤って打ち忘れたことはないだろうか? 俺はしょちゅうある」
吉田 「しょっちゅう!」
吉原 「なにせ、同じキーを二回も打たねばならないからだ。次の例文は、二回打たなければならないキーを一回しか打たなかった為に起こる悲劇だ」
吉田、発進だ!!
吉田 「ちょと待て!! なんか、いやーな予感がするんだけど…」
吉原 「早速、見てみよう」
吉田 「わー! ちょっと待ってくれ!!」
吉田、発進だ!!
・
・
・
・
吉田は死んだ!!
吉原 「このようにたった一つのミスで、俺達活字の世界の住人は、簡単に死んでしまうんだ。文章を書く時は、くれぐれも注意してくれ。……えっ? 吉田はどうしたって? 心配ご無用!」
吉田は復活した。