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1 転生


 本日から投稿させていただきます。しっぽっぽです。

 初投稿で緊張しておりますが前語りが長いとうっとおしいのでこの辺りで失礼します


 何が起こったのか。それを言葉にするのはとても簡単だ。あの時俺は夜の雨の中をレインコートを着て走っていた。バイト終わりにコンビニで弁当を買い、肌寒さと濡れた靴のぐじゅぐじゅとした気持ちの悪い感覚を纏いながら、ただひたすらに俺を包んでくれるベッドだけを想って。

 本当に一瞬だった。角から飛び出した俺にパンダのマークが描いてあるトラックが突っ込んできた。いや、突っ込んできたなんて言い方は良くないな。

悪いのは100パーこっちだし。でも日本の法律ではトラック側の不注意による過失になってしまう。ごめんなトラックの運ちゃん、こんな時間まで仕事してるのに嫌なものまで背負わせちまって。

 そうして俺は轢かれたんだ。

 

 

 

「はいはーい起きてくださーい」


 轢かれたんだけど。


「こらこら。せっかく助けてあげたのになんという言い草。いいですか? あなたは転生しました。あなた好きだったでしょう? 社長転生-異世界行ったらやる気だす-とか転生したらスクイーズだった件とか」


 いやまあ通信料を食わない暇つぶしとして優秀だったから移動中とかよく読んでたけども。


「でしょう? いいですか、あなたはあのトラックに轢かれて死ぬところでした。いやまあ正確にはあの瞬間あなたの肉体は見るも無残な姿になっちゃってはいるんですけど。まあそんなこまけえ事はいいんですよ」


 マジか……ほんとごめんな運ちゃん。せめて職を失って路頭に迷わないことを祈ってる。


「ほんとあの運転手さんからしたらいい迷惑ですよねえ。あなたの不注意せいで人生をめちゃくちゃにされちゃったんですから」


 いや、知りたくなかったな運ちゃんのその後。


「って、それもどうでもいいんですよ! とにかく、あなたは転生したんです! 高認取って専門学校に行った挙句通えなくなって中退して夢も希望もなくただひたすら居酒屋の厨房で皿洗いとちょっとした調理をこなすだけのつまらない人生から異世界へと!」


 句読点を使え一息で喋るな。全然内容が頭に入ってこないのにディスられてることだけははっきりと分かるわ。


「よしよし、これだけしっかり受け答えできてれば大丈夫でしょう。時々あるんですよねえ。転生失敗して植物状態の意識になっちゃうこととか」


 なんだその生き地獄。いや、この場合生き地獄という言葉遣いであってるのか……?


「それでは説明しましょう! まずあなたが転生してきたのは誰でも必ず、産まれた時にパートナーとなる精霊獣が決まる世界です。精霊獣と人は魂の繋がりによって一心同体となり、精霊獣が死ねば人も死ぬ、人が死ねば精霊獣も死ぬ……こともあるそんな世界です」


 いや精霊獣は確定で死ぬわけじゃないんかい。


「いやだって精霊獣って人間より圧倒的高位の存在ですもん。人間に釣られて死んじゃうなんていう弱々な子は、そもそもそこが寿命ですって」


 ふーん。そんな高貴な存在の精霊獣サマがなんで弱っちい人間なんかと契約するんだ? 人間なんかに縛られずに気ままに生きた方が幸せそうだけど。


「よくぞ聞いてくれました!!!!」


 うるせえ!!! 今どうやって会話してんのか知らんけど耳元でそんなおっきな声出すな!


「精霊獣は人間が及びもしない高位の存在。ですが弱点があります」


 ふーん。


「ふーんて。もっと食いついてくださいよ話がいがないなあ」


 わかったわかった。で、その弱点はなんなの。


「どんどん雑に……まあいいです。ズバリその弱点とは肉体が存在することなんです」


 肉体が存在? てっきり光みたいな存在で出たり消えたりするような存在だと思ったんだけど。


「そのイメージは半分正解です。あなたが想像しているのは精霊獣がこの世で存在の力を集め、精神体へと神化神化(しんか)した姿、神獣なんです。精霊獣は肉体があるにも関わらず、本質は精神体なので、自分より大きな存在、つまりこの世と直に触れ合っているとどんどん存在を世界に吸い取られていずれ消滅してしまうんです。だから寿命という制限をかけることによりこの世で自由に生きることを許された者達と契約をして、自分の存在を人間の肉体というプロテクトによって覆うんですよ」


 ……よくわからんけど、つまり精霊獣は神獣と違ってそのままだと消えちゃうから、人間を殻にして外気と触れ合わないようにしてるってことか。


「いぐざくとりぃ! その通りです! そして精霊獣は人間と契約して存在させてもらう代わりに、その力を人間に与えるんです。精霊獣なりの感謝の気持ちですね」


 うわすっげえ恩着せがましいじゃん精霊獣。力って言うとあれか、炎出したり雷出したりそういうあれか。


「めっちゃ厨二病ちっくなとこばっか攻めますねえ。いやその通りなんですけど。なんというか流石ですね笑」


 普通に会話してて笑の文字が見えたのはお前が初めてだわ。

うるせえカッコイイだろ火とか電気とか。ん? でもそうすると経験を積みきらないうちに人間側が死んじまったらどうなるんだ? その瞬間産まれた子供がいない限り世界に吸い取られて消えちまうよな?


「その通りです。次の宿主を見つけない限り、自分の存在を吸い取られ続けて消えてしまう。力の大きな存在であればあるほどその過程は早い。最強と謳われた精霊獣の最期ほど早いものはこの世には他にありません。……そんな存在を救うために私はこうしてあなたのような異世界人をこの世に転生させて、一人でも多くの精霊獣の存在を繋いでいるのです」


 なるほどね大体理解した。つまり俺はこれから、宿主を亡くした精霊獣と契約をして、この世界で生きていくんだな?


「そうです。それが死んでしまう運命にあったあなたにできる()()()のことです」


 ()()()のこと……ね。

 専門学校を中退してからなんの夢も目標も抱かず、ただひたすら生きるために生きてきた。そんな人生だったからあんな結末を迎えた。親に迷惑をかけ、友人には後ろ指をさされ、ただひたすら殻に篭もって。そんな俺でも誰かのために何かができるんだろうか。この世界でならやり直せるんだろうか。


「……できますよあなたなら」


 簡単に言ってくれるじゃないか。まるで俺の事を知り尽くしてるみたいだな。


「知ってますよ? あなたのことはなんでも」


 とても優しく穏やかに言いきられた。

 そうかよ。なんでもお見通しってわけだ。


「あなたが産まれてからここに至るまで私は全てを知っています。だから大丈夫。きっと上手く生きます」


 まるで神様みたいなこと言うじゃないか。


「ええ。神獣ですからね」


 ……え?


「さあいきましょう。あなたが共にあゆむのは火の鳥か氷の龍か、はたまた風の狐か。歩む道、生きる時に祝福があらんことを」


 ちょ、ちょっと待て! まだ聞かないといけないことが色々ある気がするんだが?!


「神獣アールラウネの名の元に契約を執り行う。この世に取り残された哀れな者達よ。この新たな器を見定め、力を与えたまえ!」


 途端、俺の意識の中に色とりどりの光が明滅し始めた。暗闇の中に意識だけがポツリとある状態だったのが急に賑やかになる。

 その時だった。白い光がその光達を一閃し、霧散させた。その瞬間俺は浮遊感に襲われる。


「っ……やはりだめなのですね」


 なんだ! 何がどうなったんだよ! これ確実に落ちてるよな?!


「出会う者達と心を通わせなさい。きっと生きる道筋を示してくれます。あなたなら、――のあなたなら。きっとやっていけます」


 一番肝心そうな部分が聞こえてないから! え、これ契約できたの? 確実に転生始まってるよねこれ!!


「ごめんなさい! 契約が上手くいかなかったうえにちょっと不具合が加わっちゃったみたいです☆」


 え、大丈夫なのそれ。大丈夫じゃないよね?


「大丈夫です大丈夫です! 少なくとも生きる上で不自由はないというか、むしろ自由なので!」


 不安しかないんだがあああああああああああああああああああああああああああああああああ…………


「……。護ってくださいね。――――」


 こうして俺は契約をできずに異世界へと降り立った。どうなるんだマジで

 


Twitter @sippoppo_

投稿通知とかしていきますので宜しければ仲良くしてください( ˘ω˘ )

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