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サバイバル・ワン  作者: 絶好調おにぎり
1/4

「 (仮)1日目 生存確率0% 」

スマホのアラーム音。

エルコは機械的なアラーム音が

苦手だったため、アラーム音は

いつも、海波の音や森林の葉がこすれ合う音

川や水の中の音などの自然由来の音楽に設定していた。

よくいる、目が覚めてから、1時間ほどは何も出来ないという人とは違いエルコは起きてすぐに行動を開始出来るタイプなので、いつもアラームはギリギリの時間に設定してあるのだ。

朝やる事はいたって簡単だ。

バイト先の制服をリュックに詰めて歯を磨いて、服を着て、コーヒーを1杯飲んで、家を出る。

ここまでの行程に12分しか使わない。

そして、バス停まで3分歩き、いつものバスに乗って、IT企業、アプリのデバック作業のバイト先に行くのだ。

エルコの住むマンションは日本中心都市繁華街の場所にあった。

都会の中心で暮らす事で、自分のモチベーションを維持し、かつ、高額な家賃を支払うプレッシャーの中で働く事で自分を高めていこうというエルコの向上心による選択だった。


「さて、今日も行きますか。」


誰に言うわけでもなくエルコはこっち側を向いて乱雑に脱ぎ捨てられたスニーカーを少し見つめ、自分のガサツさを少し詫びるようにして足を潜り込ませ、玄関扉を開けた。

霧雨降る春先、都会だというのに樹々の生々しい匂いがする。

霧雨の1粒1粒の水滴が植物の体表を生々しく舐め、その体内を青臭さで満たし、空気に放出する。

エルコはこれくらいの小雨程度なら傘などは使わずジャンパーのフードで事すます。

道端に散らかるゴミの多さ。

冬での人間達のだらしなさをまざまざと感じさせるビシャビシャのヒビ一つ無いアスファルトを早足で、バス停に向かう。

朝の8時15分。

エルコは何気ない、いつもの風景がいつもの風景ではなくなっている異変には気がつかないまま、バス停に到着した。

不思議な事に、今日は車も人も見かけていなかった。


8時19分。


あと1分ほどでバスが来るはずだ。


8時20分。


バスが来ない。

このバスは街中を走るバスのためあまり遅れて来る事はなかったはずなんだけどなぁ。

エルコは人も車の気も感じなくなった中心都市街の歩道で、雨だからバスが遅れているのか?

という安直な疑問で、日常ではさして起こりえない、バス遅延という異常事態にたいして強引に納得しようと試みた。

バスはきっと雨の影響で遅れているんだろう。

そういえば車も人もいないせいか信号機もいっこうに色が変わらない。

朝だというのに電気の無駄を垂れ流すかのように点いているネオン看板や誰も気にもとめない大型モニターの映像もきちんと、いつも通りに点いているので何かしらの災害で人がいないわけではないはず。

エルコは、少しずつ街の異変さに気付きはじめたのか、色々と考えはじめた。


8時23分。


都会の異常な景色に、自分の猜疑心が「正解!」のハンコを押されたかのように、当たり前にバスが来る気配を一切感じない。

それどころか、車の駆動音さえ、耳を澄ましても聞こえない。

もしかしたら大規模な災害?

これは異常事態なのではないか?

とエルコは真剣に考えはじめていた。

車も人もいない。

バスも来ない。

街中だというのに、耳を澄ましてもビルのボイラーなどの機械音、地下鉄の走り去る音、いつもだったら聞こえるどこかの工場作業員の不躾な声も、人の雑踏の気配さえ感じられないのだ。

なぜだろう?

しかし、異常事態とは裏腹に街もスマホも、きちんと機能している。

つまり、この街にだけ人がいないのだろうか?

とりあえずどうする?

まずは、お金を引きおろしておくか。

ガードレールの代替物ともいえる装飾されたパイプ製の道路柵をまたがり飛び越えた。

こんな事、普段は恥ずかしくてしない行為ではある。

エルコは大規模な何かしらの災害が自分の知らないうちに発生した可能性を信じて、バス停とは反対車線に見えるコンビニに入った。

もちろんコンビニにも人がいなかった。

そういえば、自宅から歩いて、バス停に来る時にも、注意深く思い返してみても誰一人として人を見かけなかった。

可能性はいよいよ真実になってきた。

24時間営業のコンビニにも店員、客ともにいない。

違和感どころの騒ぎではない。

この不安を冷静に把握する事が出来ない。

何か理由のわからない罪悪感のようなものを抱えながらもエルコは自動ATMに触れてみる。

ATMは通常に作動しているようだ。

とりあえず30万円を自分の口座から引きおろした。

街自体の電気が機能しているのが謎だ。

とりあえず、これだけのお金があれば国内の安全な場所はもちろん、海外にも避難する事が出来るだろう。

もしも、飛行機などの交通機関が機能していればの前提ではあるが・・・。

「・・・ほんとに大丈夫か?」

自動ATM機頭上の黒光りする半球状監視カメラに映る湾曲した自分の顔を少し見つめて監視カメラ奥先の見ている誰かか、もしくは自分自身へのどちらかに言い聞かせるようにエルコはつぶやいた。


コンビニの自動ドアが今やエルコ専用ドアと化したかのように、ブーンと強調した音を

あげて開いた。

依然として街に人はいないようだ。

右や左を挙動不審な目を細めて、遠くまで見えるように眺めるが、やはりダメだ。

誰も居ない。

気配を感じない。


この異常事態に対して、警察や軍隊、行政機関は何をしているんだろう?

そうだ。

警察に電話してみよう。

エルコはスマホから警察に電話してみた。

・・・出ない。

そんな事ありえるのか?

警察に電話をすればその地域の警察署に自動的に電話される仕組みになる事はエルコでもよく知っている。

しかし、ここは日本の中心都市だぞ?

この中心都市が機能していないのなら、少なくとも他県や他市の警察署に転送電話になるはずではないのだろうか?

それすら実現しないのであれば、いよいよこの国の中枢まで機能していない事になる。

エルコはイギリスに住む家族に電話してみた。

父親は他界していない。

今は母親と妹、犬のマロンと共にイギリス・サンカのグラスロードという街で暮らしている。

母親のジャニスも妹のテレーナも・・・出ない。

いや、たまたま電話に出れないだけだ。

まさか、世界規模の災害なわけがない。

そもそも自分は日本に移住してきたという点以外はいたって平凡な人間である。

将来的には起業し、金銭的にも精神的にも成功者として世の中で活躍したい。

という熱意だけは人一倍負けないつもりではあるが、その程度のやる気のある人間など

世界的に見たら星の数ほど存在するだろうし、もしも仮に、この異常事態が世界規模的なとんでもない災害であり自分が何かしらの意味があって生き残る事が出来ているのだとしたら、それこそがこの災害が発生した謎以上の最大の謎になりえるのである。

"この世界においては意味の無い事は起きない"と、ある天才物理学者の名言があるが、その人に、この今起きてる異常事態を見せてあげたいものだ。

家族にさえ連絡がつかないエルコは不安のためか頭が混乱してきた。


なぜ、人がいない?

なぜ、イギリスにいるジャニス、テレーナにも繋がらない?

なぜ、人がいないのなら電気設備や機器が通常に作動している?

なぜ?なぜ?

もしかして、世界規模や全人類を巻き込むほどの災害なのだろうか。


いや、なぜ?と考えるのはもう、よそう。

まずは、現状の原因を探る事よりも先に現状、自分が何をすべきなのか?

という行動プランを考えるべきだ。

いつのまにか小雨がやみ、雲間からチラチラと陽射しが水溜りに乱反射する中、エルコは深呼吸を数回繰り返して、不安を押し殺して冷静に周りの状況を観察してみる事にした。

まず、電気が通常稼働しているから携帯や家電などは使用可能である。

しかしながら、もし仮にこの災害が世界規模的な未曾有の大災害であるのなら、あと数時間もすれば電気の供給はストップするはずだ。

さらに、電気がストップするならば、もちろん水道やガスも使えなくなるはず。

そうすれば、今の現代生活意識のまま同じ感覚で生活してしまえば、生き残る事は出来ないだろう。


これからの行動プランを決める事にした。

まず、最初になるべく、自分の住む街より遠く離れた場所に住む知り合い10人に電話してみる事。

次に、行政機関や国内中枢ネットワーク企業に連絡してみる事。

3つ目に、テレビやラジオで現状の確認が可能かどうか調べる事。

最後に上記の3点の全てが全滅で仮に、そのどれもにアクセス出来なかった場合、本屋に行って、サバイバル系の専門書を、たくさん持ち帰る事。


ここは都会だ。

仮に、もしも人が、この世界から1人もいなくなっていたとするのならまずは、食事や水の確保が重要だ。

幸いな事に、安全な住む場所はそれこそ無限にある。

インフラ系統が、これから数時間後にストップしてしまえばスーパーなどの生鮮類も腐っていく。


"人がいない世界で自分1人が生き残っていく未来に意味があるのか?"

という哲学的な問いはひとまず置いておいて、死ぬのならいつでも死ねるのだから、その時までは、生きていく意思と行動を優先させよう。

エルコは当面の自己生命力へのモチベーションを自分自身に再確認し行動に移した。


昼空。雲間からは静かな陽射しが細絹のように地面まで降り立っていた。

もしかしたら、本当に、この陽射しさえもエルコ自分1人にしか認識できていない現象なのかもしれない。

ずっと青信号を映し続ける水溜りを踏んづけてエルコは本屋さんの入り口まで

来ていた。

どうせ人はいないんでしょ。

投げやりな気持ち。

メディアはもちろん、おそらくインフラ系統も機能していない。

なぜなら、人が全くいないのだ。

ありとあらゆる通信手段での自分以外の誰かを探してみたが、全ては同じ結果へとなった。

救難信号やら、誰かがラジオの周波数を使ってSOSを出しているとか、SNSや電話、全ての通信手段において人の気配1つ、痕跡1つ見つけれられないのだ。

電気は恐らく、備蓄分か非常時電源による僅かな量の電気が供給されているだけだ。

つまり、この世界に人間の生き残りはエルコただ1人か、もし生き残りの人間がいても極少数である可能性は極めて高い。


朝8時から起きて、まだ半日もたっていない。

とんでもない1日だ。

こんな大災害を経験するのは初めてだ。

いや、当たり前か。

誰も居ないのが真実であるのなら、経験できるわけがない。

自分が目の当たりにしている想像をはるかに超える大災害から現実逃避する思考から、徐々にではあるが、しっかりと大災害の被害者になりきり、主体性を持って行動する姿勢がエルコの中で出来てきたようであった。

これから自分が犯す犯罪行為への罪悪感も大災害の被災者であるのなら、生きていくためには当然の行為になるのだ。

エルコは歩道にあるバス停看板を両手で抱えて、槍を持つ戦国武将さながらにドシドシと本屋の入り口前に立ち、ガラス扉をぶち破った。

ガシャ。

さすが都会の本屋だけあってガラス扉も頑丈である。

バリンっと全面が割れるようなガラスではなく、一部分だけがヒビが入る程度の強化ガラスになっているようだ。

バリバリと押し込むようにガラス扉を恥ずかし気に何度も外から中に押し込むように、看板で強引に扉枠部分から引き剥がしていく。

割れたガラスの破片をガシャガシャ音を立てて、滑りそうになるスニーカーに膝で意識し無駄に重心低く、エルコは本屋の入口に入っていった。

やはり、泥棒のような罪悪感と緊張感が勝る。

もしも後々、この行為を火事場泥棒として警察に捕まりでもしたらどうしよう?

いや、でも、仕方がない。

誰に頼ることも相談する事も出来ないのだ。

自分で決めて自分で率先して生き残る為の行動を取捨選択しなくてはいけないのだ。

法律に怯えているよりも、自分の今後の生命を維持する方が大事だ。

本屋の中は暗い。

自分ぶち破った入り口扉の無残さをチラッと確認する事で、この本屋がもはや自分のものになったかのような錯覚を感じた。

仲の良い友人の自宅で、その友人の裏の顔を見たかのように普段では見せない表情の店内。御客様が入ってくる事が想定されていない、不躾な乱雑さ。

アルバイトのだらしなさか、はたまた、店長の適当さなのかは知る由もないが、本や雑誌は、昨夜、搬入されたビニールやダンボールに包まれたまま陳列本棚の通路に複数個、置かれたまま。

レジもだらしなく空っぽの状態で口を開けており、昨日の作業がそのままな印象を受ける。レジカウンターの上に伝票やら書類、メモなどが一緒に置き去りにされ、読まれる相手への配慮など全く感じ得なかった。

非常灯の黄緑のぼやけた灯りだけが店内をぼんやりと照らしていた。

インターネットで必要な知識を調べたいが、エルコのスマホはもうネットに繋がらなくなっていた。

おそらくパソコンもダメであろう。

必要な知識は本で覚えていかなきゃ、のちのち困るはずだ。

エルコが今必要だと思っている知識は


・サバイバル術

・栄養学

・医学的な知識

の3つである。


衣食住はとりあえず泥棒業を続けていけば死ぬまで困る事はないであろう。

缶詰めやパッケージ食材、保存食や飲料は、きっと、各地域を渡り歩けば、当分は大丈夫。

しかしながら、仮にこの世界で自分1人きりであるのなら、病気はイコール死に等しい。

風邪薬や頭痛薬意外の様々な病気や外科的な応急処置も含めて、知識をつけなくてすぐに死んでしまうはずだ。

エルコはこの世界で独りでも生き抜いていけるようにサバイバル学、栄養学、医学の3つの専門書をリュックに各3冊ずつ盗んで突っ込んだ。


ガラスの入り口扉が、割れた泥棒被害を受けた本屋から逃亡する犯人エルコは、そういえば、今の時間が何時なのかが気になり、振り返って、また、店内のレジに向かった。

大被災しているわりに呑気な泥棒である。

エルコは、スマホで時間を把握しているため自宅に時計を置いていないのだった。

本のついでに時計も拝借する必要があるのだ。

レジカウンター内部に店員でもないのに入るのは、さらなる罪悪感を感じるが今更である。罪悪感だいぶ麻痺してきたエルコはレジカウンター内の置き時計も片手に抱えて、本屋を後にした。


とりあえず、これから1人で超災害に立ち向かっていかなきゃいけない。

体力の恒常的な温存は常に意識しながら行動していこう。

今日はとりあえず自宅に帰って、これからいかにしてこの世界で生き残っていくか?

を考えなくては!


夕方の空。

誰もいない。

誰とも会話していない。

誰を意識する事もない1日。

今までは感じる事はなかった夕陽。

観た記憶が無かったかのように夕陽の新鮮な朱色を意識して見た。

温かい懐かしい色に包まれてエルコは、なぜだかワクワクしていた。

未曽有の超災害を自分は生き残っていけるのだろうか?

家族が死んでしまっているかもしれない事も、世界中の人が居なくなってしまったかもしれない事も、友人や知人、かつての彼女達も片思いの女性も、もう会えないのかと考えてはみたけども、悲しさというよりは、不思議な期待感を感じていたのだ。

自分は非道なんだろうか?

冷たい人間なんだろうか?

今の異常な環境に適応したからこその感情なんだろうか?

問うても仕方ない。

問うても誰もいない。

責める人もいない。


街中の街灯や電飾看板、大型モニターの電気が切れたところを見ると電気、さらには全てのインフラ系統はストップしたと判断するのが正解であろう。

帰り道のコンビニで電池類と懐中電灯、ガスコンロとガスボンベ、飲食材を拝借して帰ろう。

都市ガス供給なので、ガスも使用出来ないはずだ。

プロパンの家のガスは使えるかな?

今後の行動リストにガスの調達も追加しておかなくては。

ガチャ。

鍵という存在が一切必要無くなったはずの、この世界の、狭く小さい唯一の人間の住みか。自宅アパートに帰ってきたエルコは、薄暗い電気のつかない部屋で拝借してきた電池のビニールを剥がして懐中電灯に挿入した。

カチカチ鳴らしながら点灯のオンオフを確かめる。

そういえばクローゼットの中に、自前の懐中電灯があと1本さらに、あったはずだ。

新しい懐中電灯で古い懐中電灯を探す。

なんとも不思議な気持ちだ。

昔、親父が生きていた頃、アユ釣りに連れていったもらった事がある。

その際に「鮎の友釣り」といって、釣った鮎を生きたまま再度、仕掛けとして使用する釣りの方法をもって沢山の鮎を釣ったきことを思い出す。

鮎に言葉が使えていたのなら、すぐさま危険を仲間達に知らせる事ができるのに、それが出来ないどころか、自分がさらなる危険の元凶となる存在になる。

この懐中電灯が照らす今後の暗闇の中の未来はきっと危険な元凶ばかりなんじゃないか。

暗がりの中に居れば人は自然と不安になるものだ。

クローゼットの懐中電灯は、使用できるのか疑わしいほどにホコリをかぶっていたが多めに拝借しておいた全種類の電池を入れ替えてスイッチを入れてみたところ、きちんと点灯する事がわかった。

今気づいたが、この懐中電灯達は2本ともに白色電球である。

エルコは白色電球が嫌いだ。

白色電球は暖色電球に比べて、何か落ち着きがたい緊張感をもたらすからこのような、災害時には向かないのである。


懐中電灯をつけて、リュックからサバイバル系の専門書を取り出した。

懐中電灯の直線的な灯りの中ではこんなにも本は読みづらいのか。

光線の手前に色々な影ができて、邪魔くさい。

読みはじめたが、このサバイバル本はどうやら原始的な技術を基本ベースにして記載されているものがほとんどであり、都市部での電気、ガス、水道、ましてや人が1人も居なくなった災害時の想定の技術などは、どこにも記載されていない。

救難信号の出し方など今は何の役にもたたないのではないのではないだろうか。


「ん〜。困ったなぁ。

でもまぁ、明日もあるし、また新しい本を見つければいいか。」


このサバイバル本には原始的な生活下においての農耕方法、火の起こし方あれそれ、水の確保の仕方一覧、罠の仕掛け方、簡単な丸太小屋の建造の仕方などが詳しく記載されていた。

こんな簡単な丸太小屋では、隙間風が寒いだろうし、寝床も布団が無いから寒そうだ。

罠などは法律の都合のせいか、本当に獲物がかかるのか?

という疑問が残る信頼性の乏しいシンプルな内容のものばかりであった。

このサバイバル本の筆者自身は本当に、これら記載の内容で生きていけるのだろうか。

今は春先。

今後、冬になったら野菜によるビタミン補給や食物繊維の摂取が難しくなるだろうから農耕の深い知識は重要かもしれない。

ガスの供給がストップしている以上は当面はプロパンガスのある家での生活、カセットコンロやボンベを使用していく事になるが、ストーブなどは今や電気式のものも多い。

電池でまかなえない電気系統も数多く存在するであろう。

暖の取り方の様々な方法も役に立つであろう。


本を速く読むのは得意な方であり、だいたい20分程度で1冊の本を読み終わる。

ものの1時間程度でサバイバル術系の専門書は3冊全て読み終わっていた。

彼の部屋の壁四方のうち、1面の壁はてっぺんまで全て本棚で埋まっている。

その本棚の片隅の4段目には真新しいノートが100冊ほどストックされている。

エルコには軽い収集癖があるからだ。

消耗品類は洗剤や、ティッシュ、シャープペンの芯に至るまで、必要以上にストックされていないと落ち着かないのだ。

その真新しいノートのうちA5サイズのを1冊取り出し「サバイバル系vol.1 」と記入した。

このサイズなら外での行動時もポケットに入るし便利だからである。

さすがに重たい本を何冊も持ちながら行動は肩がこってしまう。

3冊のサバイバル本で得た知識をエッセンスの部分だけまとめて記入していく。

まず、サバイバルでの基本的な優先順位。


1に体温の維持。

2に安全な寝場所の確保。

3に水分の確保。

4に食材の確保。

5に現在位置の把握


となるそうだ。

都市部で大被災したエルコの現状下では全てクリアーしている気がするが

それは、今現在の時点でのみである。

近い未来においては必要になるかもしれない知識だろうし、また、他の大災害が起きないとも限らない。

明日から起きる時間が自由な毎日が始まるかもしれない事には少しワクワクする。

寝るのが好きだ。

睡眠時間を会社に束縛される人生は嫌だ。

事由に寝て、自由に起きたいのだ。

きっとみんな同じ気持ちなんじゃないだろうか。

明日、行動するサバイバル作業の事を考えながらエルコは深い眠りに落ちた。


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