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AIちゃんは今日も難攻不落  作者: 物語紬
1/6

1話 工瑛太は今日も一徹無垢

目に留まりましたら、是非ご一読ください!

それでは、『AIちゃんは今日も難攻不落』スタート!

 キーンコーン

 カーンコーン


 夕暮れを告げる鐘が鳴る。

 校舎入り口から、続々と文化部が湧き出す。

 運動部も部活を切り上げ、ストレッチを始める。


 校舎裏、そのような生徒達が寄り付かない場所。

 校舎が作る長い影の中に、向かい合う2人の姿。


 無論、タイマンではない。告白のワンシーン。

 真剣勝負という意味ではタイマンに通ずるものはあるが。


 甘酸っぱい青春の1ページが、今まさに綴られようとしている。


(たくみ)君のこと、ずっと好きでした。私と付き合ってください!」

 ありきたりだが、正当ゆえに決定力のある一撃。


 彼女の愛らしい顔立ちと、羞恥心を隠そうとする奥ゆかしさが相まって、必殺技レベルにまで昇華している。

 標準的な高校生なら99%が1発KO間違いなしの神の一手。


 冴えない雰囲気の少年は、何やらたじろいでいる。

 夢にも思わない一撃に、ヒットポイントが大分削られたのだろう。


「あの…」

 少年、その調子だがんばれ。

 後は冴えない男、お決まりのカウンター攻撃

『本当に、僕でいいんですか?』を放つだけだ。


 古来より伝承されるその崇高な反撃は、更なる高みである『そんなの冗談でいうわけないじゃんっ…』を半ば強引に引き出す古代詠唱なのだ。


 少年は意を決したのか目を閉じ…


「ごめんなさい!」


 なんということだろう。誰が想像できたであろうか。

 チャンスを棒に振るという言葉は、今日この出来事のために作られたに違いない。

 フルスイングもいいところだ。バチが3ベースヒットすることを祈ろう。


 少年は繰り返し謝り、その場を去る。

 少女は校舎裏に1人、影は夜の闇に溶け込む。

 少し切ないが、これもまた青春の1ページなのだ。


 ◇◆


 少年は帰宅路を行く。

 冬の夜、凍てつく空気の塊を掻き分けるように走り抜ける。

 顔の赫らむ様子は、冷えた顔を温めようとする生理現象か。

 はたまた、告白に対する照れの表れか。

 或いは別の何かかもしれない。


 少年は商店街を行く。

 平行線に並ぶ店の光が、夜の街を優しく照らす。


「あ、瑛太兄!おかえりー」


 少年の向かう先には、笑顔で手を振る少女の姿がある。


「愛佳か、ハァハァ…ただいま!買い物帰りか、持つぞ。」


「ありかとー!ところでどうしてそんなに急いでるのかなー?」


「妹よ、お前はまだ幼すぎる。教えられることは何もないのさ。」


 長ネギをビニール袋から取り出し、青臭い台詞を口に出しながら、抜刀のポーズを取る。まるで剣士である。


「兄よ、侮るでない。私も既に中学生ぞ。」


 折れ曲がった茄子をビニール袋から取り出し、今日習った古文調で応答しながら、銃口を向けるかのように持ち直す。宛ら(さながら)ガンマンなり。


「いくらお前が血を分かつ兄妹であろうとも、兄にも隠し通さねばならぬことはあるんだ。小娘よ。」


 長ネギの二本に別れた先端は、茄子を持つ手を捉える。

 しかし、すかさず持ち手を変え、兄の頭に照準を合わせる妹。ニヤリと笑う。


「それはもしやベッド裏に潜む、お枕草子のことかえ?お殿や。」


 青き剣ははビニール製の鞘に戻っていく。

「愛佳、ちょっと喋り方きもい。」


「もう!誤魔化さないでよね!」

 仲睦まじい兄妹は、商店街を後にする。


 少年は階段を行く。

 2階の電気は消えている。廊下は薄暗いが、月明かりが格子の窓から差し込み、何も見えないほどではない。


「瑛太兄ー、エッチな本読む前に洗濯物取り込んでねー!」


「読まんわ!」


 妹のお願いをスルーしつつ、自室に入る。

 部屋の電気は消えている。

 窓の位置は月とは真逆だが、部屋には光がある。

 ディスプレイの光だ。


 少年は電気もつけずにディスプレイの前に駆け寄る。

 普通ならここで、『こいつ、本じゃなくてDVD派か…』と思うだろう。


 だが真実は異なる。

AI(あい)ちゃーん、ただいまー!会いたかったよ!」

「AIちゃん?」

「AIちゃん あいらぶあい〜」


「もう、騒々しいわね…」


 画面外から、両耳を塞ぎながら少女が歩いてくる。


「今日も冷たいなあAIちゃんは〜。折角走って帰ってきたのにさ!」


「誰も頼んでないわよっ!」


 美人とも可愛いとも表現できる、綺麗な顔がくしゃっと歪む。


「まあまあそう言わずにさ。はいこれ、プレゼントー!」


 PCにUSBを差し込み、ファイルをデスクトップにドラッグ&ドロップすると、少女の前に突然プレゼントボックスが現れる。


「…なにこれ」


「まあまあ開けてみてよ。」


 リボンをほどき、箱を丁寧に開ける。

 更に中の四角い包みを開封すると、青いリボンが入っている。


「わあ…かわいい。」

 ボソッと呟く。少年には聞こえていない。


「どう?AIちゃん?つけてみて!!」


 長く艶やかなブロンドに結びつける。


「別にあんたに言われてつけた訳じゃないから!」


「かわいい!かわいいよ!素敵過ぎる!!」


「これ、どうしたのよ?」


「帰り道、商店街のアバター屋さんの前を通った時に目に入ってさ!ビビッと来たんだよねー。AIちゃんに絶対似合うと思って買っちゃった!」


 少年が、長ネギ剣士になる前の話である。


「あんたまた衝動買いして!いい加減彼女でも作って、貢ぐ相手見つけなさいよ!」


「AIちゃんが一番だー!」


「ダメだこいつ。話が通じない…」


 ドンドン


 ドアをノックする音が鳴る。


「瑛太兄!早く洗濯物取り込んでよ!」


「わ!今絶対入ってくんなよ!」


「…お取り込み中?」


「決してお前が想像していることは行われていない。」


 はいはい、と言いながら階段を降りていく。


「じゃあ、AIちゃん、また後でね!」


「どうぞ、ごゆっくり。」


 バタン


 部屋には少女が1人。

 彼女は少年・瑛太のパソコンに住む、AIの『AI(あい)ちゃん』。

 これはAIに恋する少年と、難攻不落なAIの日常を綴った物語。


 ---


「瑛太…ありがと。」

 …案外、チョロインかもしれない。

最後までありがとうございました。

次回もよろしくお願いします!


<Tips>

AIちゃんはあんまんに目がない。

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