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三歩進んだが追いつかれる

 口から出まかせのワードに食いついた!よし!押せ押せ!

「パトリック様は必ずやアシュレイ殿下のお役に立ちます!」

「どんな風に」

「えっと…それはですね。あのー、そう、例えばの話なんですけれども。あ~、あ、アシュレイ殿下が王太子にお成りあそばした時にー。いや、さらにご即位ともなれば~」

「今考えているのか?」

「ちが!違います!あまりに遠大な計画に興奮して上手く言葉が出てこないだけです!これはですね。遠い未来まで見越した計画に取り掛かる千載一遇のチャンスであって…」

「君は妙に強い正義感を持ち合わせている割に、姑息な所がある」

「清濁併せ吞む、ということですね」

「そんなにいいものだろうか…。しかし…うん。良かろう、及第点だ」

 まだ何も言ってませんけど。

 リュカオンは再びソファに座り直し、手を引いて私も隣に座らせた。

「新しいイエロウモンド侯爵はまだ若い。削ぎ落すほどの力も持っていない。恨みを買うより恩を売ろう。君の話に乗った」




「あなたは上院の議席を持つ政治家ですね。それからお家は伝統的な革新派の家柄」

 私はパトリックに、彼自身の利用価値について説く。具体的な口上は、勿論リュカオンの入れ知恵である。

 伝統的な革新派とは不思議な響きだが、先祖代々、王政派とは反対の立場で代議制を推し進めてきたという意味だ。政治的な主義は、同じ単語でも国によって内容や立ち位置が変わってくる。この国における革新派は、共和制を目標に掲げる力のある野党ぐらいの感じかな。

 リュカオンやアシュレイからすれば、平たく言うと政敵だ。

「あなたには、伏せられた山札の中のワイルドカードになってもらいたいの」

「王政派に転向するのではなく」

「あなたのお家が革新派なのは、領地の問題や派閥争いなど、しがらみあっての事でしょう。それを無理やり転向させても歪みが生まれるだけだわ。あなたには、自分の主義主張と領民の幸福のために働いてほしい。ただ、もしも遠い未来に、アシュレイ殿下が進退窮まったときには、今日の恩を返すつもりでいてください」

「そのような状況に陥る予定があるのですね」

「いいえ。私の考える限り、そんな日は来ないでしょう。それが一番いいわ」

「来るかもわからない日のために私を見逃すというのですか」

「立場を超えた味方は非常に得難いわ。秘密裏に働く保険の準備には時間がかかるもので、我々はその機会を得た。たとえ使う機会がなかったとしても、備えや保険が不要とはあなたも思わないでしょう」

「話が旨すぎて、にわかには信じがたいほどで…」

 どうして言われなき不幸を背負った攻略対象って、不必要なまでに卑屈なのかしら。ヤッター!ラッキー!って話に乗ってくりゃいいのにねえ。

「これは対等な取引で、恩赦とも脅迫とも違う。双方に利のある協力こそ真に信頼しうる絆です」

 パトリックはしばらく考え込んでいたが、やがて頷いた。

「承知いたしました。願ってもないお話です」

 私では失敗していたかもしれないけど、リュカオンの説得理論は完璧ね。

「よかった。この密約には、契約書も何もない。王家から成立の合図が一度だけおくられるでしょう。深くかかわり過ぎてしまったリュカオン殿下にだけは、私の推測を一切まじえず、あなたの発言のみお伝えします」

「ほとんど何も話していませんが…」

「必要に応じて、王室の限られた方にのみ、この事実は共有されるでしょう。あなたが守りたいもの、今後王家にも、他の誰にも害なす意思がない事、それ以外において、あなたの秘密は守られます」

 腑に落ちない顔をするパトリックを無視し、淡々と内容を伝えて席を立った。

「ではごきげんよう」


「待ってください。何故あなたが僕を助けてくれたのか、その理由をまだお伺いしていません」

「それが私の役割だから」

 サポートキャラとして、やっぱりバッドエンドは嫌よね。責任感じちゃうわ。グダグダだったけど、逮捕は阻止した。あとはヒロインの領分よ。

「あなたもあなたの役割を果たして」

「僕の役割とは、なんですか?有事の際に恩返しする以外にもまだありますか?」

「ほら、あなたってやっぱり世話がやけるじゃない。例えば、アンジェラの生い立ちに責任を感じているのなら、もっときちんと彼女に向き合うというのはどうかしら」

「僕には秘密があり過ぎる。彼女を幸せにはできません」

「よく聞く意見だけど、私はそう思わない。だって逆に考えてみて。秘密さえなければ上手くいくの?秘密がなければ完全に理解しあえて問題が起きないと?」

「いや……。そう……ではないでしょうね。たぶん」

「でしょ。だから秘密は関係なく、他人は理解できないのが普通なの。その理解しあえない相手をどれだけ思いやれるかが大切よ」

「でも、彼女の傍に居たいというのは、僕自身の望みです。そんな都合のいい事があっても良いのでしょうか」

「一方的な関係は長続きしないわ。双方に利のある協力こそ真に信頼しうる絆。あなたのやりたいことの連なる先が、あなたの道になるのよ」




「は~、ご活躍でしたわねえ」

 ヴィクトリアが可愛らしくティーカップを抱え、感嘆の声を漏らした。

 もう例の騒動から二か月以上が経つ。

 ヴィクトリアもアシュレイも、そして当然アンジェラも無事に卒業した。

 現在は学年末の夏休み中だが、私はヴィクトリアの女子寮に来ている。


 卒業後、ヴィクトリアは今後増えていく公務に対応すべく、女子寮から王城裏宮に居を移すのだそうだ。名実ともに王族扱いで、結婚まで秒読み開始と言ったところだ。

「なんでも気に入ったものをお持ちになってね」

 引っ越しで運ぶ荷物を減らすために、物を譲るという名目で部屋に呼び出され、お茶を飲みながら、騒動の顛末についての話をねだられた。

 あのデレデレしたアシュレイが、ヴィクトリアに隠し事が出来るとは思っていなかったが、私自身に話を振って来られ、さらにヴィクトリアが私を呼び出すほどの行動力をみせたのは予想外だった。

 仕方がないので、言わなくてもいいことはフワっと誤魔化し、私が暗闇を探索、校内をスニーキング、騎士団と絶叫鬼ごっこをした話を盛りに盛って話しておいた。

 それが『ご活躍でしたわねえ』に繋がるというわけだ。


「結局、アンジェラ様の初恋はどなただったのかしら」

 アンジェラの行動範囲内に関りのある人物の中から、共通の思い出を持つ人間を探し出せれば、それが初恋の人だと、最初は考えていた。

 しかし実際には、攻略対象全員が過去にアンジェラと会っていた。

 それゆえ、誰が初恋の人なのか突き止めることが出来るのは、過去のアンジェラだけだ。彼女の記憶が曖昧となった今、知る術はもう存在しない。

 おそらく『初恋の人』とは、アンジェラの大切な思い出の集合体だ。アンジェラと関わった全員であり、誰かひとりでもない。

 結局、最終的に選ばれた攻略対象が、実は初恋の人でもあったのだ、という結末にシナリオが変化するのだと推測する。


「実はわたくし、最近になって、アンジェラ様に孤児院で会っていたことを思い出しましたの。ずいぶん印象が違うので自信はありませんけれど、珍しい髪色ですから。大抵は歓迎して下さった皆さんと楽しく過ごしますが、一度だけ、泣いている女の子を励ましたことがございました」

 アンジェラは記憶が入り混じっている。

 結婚や、必ず迎えに来ると約束したのはパトリックだろうし、金髪と銀髪の二人組はオスカーとジェフリーのことだろう。しかし銀髪と金髪のコンビはもう一組いる。

「マーカス様からお伺いしましたが、アシュレイ殿下とヴィクトリア様は馬で孤児院を慰問なさっているそうですね」

「ええ、充分な車泊まりが無かったり、道が悪い所もありますから、身軽な馬で出かける様にしていますわ」

「ヴィクトリア様も、中性的な馬術服でお出かけでしょうか?」

「そうですよ。ドレスの裾を気にしていては子供達と充分な交流が出来ませんもの」

「ではもしかしたら、アンジェラ様の初恋は男装したヴィクトリア様かもしれません」

 初恋集合体を形成する核の一つという意味で。

 パトリック、オスカー、ジェフリーの他に、孤児院でアンジェラを励ました人間がいるはずだと思っていた。おそらくマーカスだろうという当ては外れてしまったが、意外な所から答えが出てきた。

「わたくしが?」

 もしかしたら、攻略対象はアシュレイではなくヴィクトリアの方だったのかもしれないな。悪役令嬢にして攻略対象か。その場合どんな修羅場になったのか、考えるだけで寒気がするわ。ゲームだったらクリアしておきたいけど、リアルにチャレンジする勇気はないわね。

「そうですか。わたくしと面識があるなら、きっと殿下にもお目通りしたはずです。アンジェラ様の初恋は本当にアシュレイ様だったのに、それを否定してしまったのではないかと、気に病んでいたのです」

「たとえそうだとしても、結婚の約束をしたのは、実際に婚約していたパトリック様であることはハッキリしています。ヴィクトリア様が気に病まれる必要はありません」

「そうですわね。わたくしも、そう思う事にします」


 アンジェラは結果的にパトリックを誘ってプロムに出席した。ゆえに物語上ではアンジェラの初恋はパトリックとなり、乙女ゲームのシナリオはパトリックルートのハッピーエンドで幕を閉じた。

 ハッピーエンドの後も人生は続いていく。童話のように、二人が末永く幸せに暮らしたかどうかまで、ゲームのエンディングは保証してくれているのだろうか。

 初恋だから、運命の恋だからと言って、それが一生ものだとは限らない。

 しかし、二人が上手くいかなかったとしても不幸ではない。条件の合わない婚約破棄なんてよくあることだ。

 アンジェラはきっと何があっても私は幸せだ、と顔を上げて言う。

 アンジェラの魅力は、美貌でもなく、珍しい髪でもなく、数奇な運命ですらない。強くしなやかな心こそが、彼女のヒロインたる資質だから。




「さて、物をお譲りするという名目で、お呼びたてしたのでしたわね。何か気に入ったものは見つかりまして?」

「はい。不要になった勉強道具で、参考書ですとか、今後お勧めの講義のテキストがございましたら、お譲り受けしたいです」

「わかりました。後で屋敷まで送らせます。指定図書以外でも、理解を助ける本などまとめておきますわね」

「はい。ありがとうございます」

「わたくしの方でも、あなたに似合いそうなものをいくつか見繕っておきましたの。こちらはいかが?」

 ヴィクトリアは侍女に持って来させた宝飾とドレスをずらりと並べ、その中の黒真珠のネックレスを差し出した。

 大粒の黒真珠がぐるりと連なり、精緻な金細工の装飾があしらわれた上品ながらも豪勢な逸品である。

「それとも透明な石のほうがお好みかしら。このアクアマリンはローゼリカさんの瞳の色にそっくりね。あなたに使ってもらえたら、石も喜ぶわ」

 大きなアクアマリンを中心に、ふんだんに宝石を使った、夜会で美人のデコルテを彩るに相応しいレース状のネックレスと、お揃いのイヤリング・ティアラの三点セットを、ずずいと目の前に差し出される。

「いえ…、あの。とても素敵なお品ですが、そんな高価なものを頂くわけには」

「まあ、そうなの?でもドレスくらいならいいでしょう?卒業して環境が変わる上に、髪も化粧も変えたから、着ないものが沢山出てしまって。一度も袖を通していないものばかりだから、是非」


 ヴィクトリアは初めて会った時の、勝気なツリ目メイクに派手なボリューム縦ロールではなくなっている。以前は豪華絢爛なアシュレイの隣で見劣りしないように、長い時間をかけてセットしていたのだそうだ。

 大きな丸い瞳に癖のない真っ直ぐな髪は、無垢にして清楚そのもの。世間知らずのお姫様である、ヴィクトリアの内面までよく表している。

 本人の申告通り、頼りなげなほど儚く清らかに見えつつ、その実彼女は優秀な政治家なので、この油断を誘うスタイルに泣かされる者は多いだろう。

 どんな味付けだろうと、素材の次元が違う超絶美人なので、『善なる悪役令嬢』風も、よく似合っていたと私は思うのだが、楽で自然な姿の方が想い人に好かれているというなら喜ばしい。


 うっとりとヴィクトリアの美貌を堪能している間に、彼女は次々とドレスの説明をしていた。

「あなたは私と同じで髪色が淡いから、どれも似合いそうね」

 美しいカリスマの、趣味の良いドレスを頂くのはやぶさかでないけれども、本当にいいのかな?先輩からもらう物って、普通は勉強道具とか講義ノートじゃないの?

「今わたくしが幸せなのは、あなたのおかげよ。あの時助けてくれたお礼も兼ねて、受け取っていただきたいわ。本当はあなたに合わせて誂えようと思っていたのに、リュカオン殿下に止められてしまいましたのよ。きっと気後れするだろうからと」

 グッジョブ、リュカオン!あなたは本当にできる男ね!

「お役に立てたことは嬉しゅうございます。でも大したことはしていませんから」

「気が早いかもしれませんが、あなたはもう妹のようなものなのですから、あまりに遠慮が過ぎるのは寂しく思いますよ」

 ヴィクトリアは上機嫌でにこにこ笑う。

「妹は、守り導くものとばかり思ってまいりましたけれど、あなたは本当に頼もしいわ。助け合って、一緒に仕事ができるのが今から楽しみ」

 意味が分からないけれど、目上の人に、堂々と察しの悪さを露呈する気にはなれない。

 ええっと……。ヴィクトリアはこれから外交中心に公務を行うから、外交の名門である我が家とは将来的に分野がかぶる…ってことかな?

「まあ。わたくしにまで隠さなくってもよろしいのよ?」

 含み笑いするヴィクトリアはとろけそうな程可愛らしくて、アシュレイの気持ちはよくわかるのだが、肝心のヴィクトリアの意図はさっぱりだ。

「リュカオン殿下には想い人がいらっしゃるとか」

「え、ええ。ヴィクトリア様のお耳にまで届きましたか」

 私は話の流れが読めずに戸惑いつつも、朗報に浮足立った。

 ヴィクトリアは社交の中心であり、全ての話題は彼女の元に集まっていく。

 噂が彼女に届いたのは、隅々まで行きわたったとは言えないまでも、私が目指していた一つの到達点と言っていい。

「そのかたは長いプラチナブロンドに水色の瞳をお持ちだそうね」

「は……、プラチナ……え!?」

 去年の夏、王宮でリュカオンの好みのタイプを聞こうとした時のやり取りが甦る。プラチナブロンドに水色の瞳って……私か!?

 喜びもつかの間、一瞬で青ざめた。

「ちが……、それは。それは、ちがいます」

「まあ、そうなのね。ではそういう事にしておきましょうか」

 あっ、妹って、そういうこと?殿下経由で義理の姉妹になるみたいな!ホントに気が早いよ!何言ってるの!?

「いや、本当に違うんです」

「どんな駆け引きがあるのか、存じませんけれど、あまりに意地悪が過ぎては、リュカオン殿下がお可哀そうですわ」

 何事も程々に、とヴィクトリアがしたり顔で頷いた。


 やられた―――――……!!

 リュカオンは、私が撒いた噂に便乗して、内容を追加したのだ。

 見合い王子、リュカオン第二王子殿下には想い人がいる。当然、それは誰かと話が発展する。不足分の情報を補う形で、でっち上げの人物像は最初の噂とセットになって広まってしまった。

 学年の最初の方にピタリと近寄ってこなくなったのは、追加情報の浸透に感づかせないためね。

 そして学年末、また徐々に一緒に過ごすようになった。あんまり深く考えてなかったけど、噂の人物が誰なのか、言外に周知させるためだったんだわ。

 何が『この一件で貸し借りナシ』よ。自分は挽回する術を着々と準備していたんじゃない。

 こうしてはいられないわ。


 私はヴィクトリアに言われるまま貰う物を貰って、早々に部屋を辞し、自邸へ帰った。

「ケンドリック!ケンドリック!!」

 ヒステリックに叫びながら、敷地内にある使用人寮の、ケンドリックの部屋へ突撃する。

「ちょ……、おまえ、こんなとこまで来るな。クロードも止めろよ。姫様を使用人男子寮に案内するんじゃない」

 ケンドリックは、ここまで先導してくれたクロードを呆れたようにじっとり睨んだ。

「大変なのよ!緊急事態よ!!リュカオン様の噂が上手く広がったと思っていたのに、想い人は白金髪に水色の瞳って尾ひれがついてたの!」

 ケンドリックは驚きもせず、やっぱりなあと溜息をついて苦笑いしただけだった。

「いや~、当然そうなるとは思ってたけど」

「なんで言ってくれなかったの!!」

「正式に婚約するよりはマシだと思ったからだよ。向こうもそれなりに牽制が効いてりゃ、焦って強硬な手段に出る必要はないと判断したんだろう。ま、双方の主張を尊重して、この辺りが妥当な落としどころじゃないか?」

 牽制って。強硬って。落としどころって何なの。

「でもこんなの、事実上外堀埋められたのと同じだわ」

「あくまで噂だ。他の奴と突然結婚したって約束破ったことにはならん。そのうち本当に契約書にサインさせられてたかもしれないぜ。現時点では、うまく膠着状態を作り出せたと思うがね」

「それはそうだけど……、なんだか納得いかないわ。打算があったとはいえ、お見合い地獄のリュカオン様を気の毒に思っての行動だったのに。……これは裏切りよ!よりによって、私の作戦を利用して窮地に追い込むなんて!私の忠誠心を踏みにじった卑劣な行為だわ!抗議しに行きましょ!!」

「やだよ、リュカオン殿下怖ぇーもん」

「私ひとりじゃ絶対言い負かされちゃうから付いてきてよォ!」

「わざわざ、まんまと引っかかりましたって言いに行っても喜ぶだけだと思う」

「えっ、やだ!あの意地悪な顔で喜ばれたくないわ」

「初めからこれが私の狙いでしたってフリしてたほうがマシだ」

「そんなのとっくにバレてるわよ!」

「ん~……、ま、そうだな」

「だって他にどうすればいいの。突然他の人と結婚できるわけないじゃない。王子に睨まれてるんじゃ、誰も近寄ってこないわ。私、一生結婚できないのかしら…」

「それはねーよ」

 ケンドリックはやけにハッキリ請け負った。

 彼は、軽口は叩くが適当なことは言わない。その意味を少し考えてみる。

「そっか!殿下が先に結婚したら関係ないわね!早くリュカオン様が本当の恋人を見つけれらるように私も頑張ればいいのよ!」

「あぁそーね」

 ケンドリックは諦めた様に気のない返事をした。

 何よ、チベットスナギツネみたいな顔して。いつもは格好いいアカギツネなのに。言いたいことがあるならちゃんと言いなさいよ。

 私、間違ってないわよね?

 後ろのクロードを振り返ると、クロードの方はしっかりと大きく頷いてくれた。


 チキチキ婚約レースは、リュカオン一歩リードで後半戦へ続く。


ひとまず一章終了しました。

根気強くお付き合いいただき、ありがとうございました。

この後、あまりの動かしづらさに出番を大幅に削ったイリアス(誰)の幕間でエピソードを補ってから、今度はきちんと書き溜めて二章を開始する予定です。

どうぞよろしくお願い致します。

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