ある休日 前編
主人公が自分の小説を持ち込んでいる間先生は一人とりとめのないことを考えながら主人公の帰りを待つ。
今日は休日だから彼はまだ寝ているだろうしなるべく物音を立てないようにしようと考えてやめた。彼は今日私の原稿を持ち込んでくれているんだった、『僕は辛口だよ』最初の編集に言われたことを思い出す、彼は確かに最初は厳しかったけどそれは私のやる気を見ていたんだろう、この程度で諦めるような人間には向いていない『作家に大事なのは何よりやる気』なんだか私人の受け売りしか話してないような気がしてきた、彼にはお世話になってるから私も講師としてしっかりしないとな。
「彼は惜しいんだよなあ……」
誰に聞かせるでもなく呟く、しかし紛れもなく本心なのだ、実際ここ一ヶ月の間にも進歩は見て取れる話も地味だが暖かみがある、味のある小説を書く。でも、それではだめなのだ、注目を集めれるような華がある小説を書かないといけない。彼のような無名の新人がいきなり地味な小説を書いても誰も注目してくれないしメディアも押しづらいと思う。
そんなもっともらしいたわごとをぼんやり考えながら、最近の日課である文字を書く練習をする。小説一本はともかくメモすらかけないと浮かんだアイデアを忘れてしまいそうだ、彼がいれば頼めるのだがあいにく学生ゆえに朝から家にいない日が多い、そこで練習しようと思ったわけだ。
「うまくいかないなあ……」
ペンを持ち上げる程度はなんてことないのだが文字を書くような繊細な作業はとてもじゃないができない、いっそ筆で大きく習字のように書いて見ようか原稿用紙が何枚必要なのかはわからないけど。
あぁ暇だ早く返ってきてほしい。
今回の話は前後編で前半が先生視点後半が主人公視点で進みます、後編はまた後日投稿します。