マリア・ディ・ロレットとアルタナティフ
さっきに引き続く形での投稿です^^
この少しおっちょこちょいで心優しい少女の名はマリア・ディ・ロレット、肩まで伸びる明るい茶髪に、薄小麦色の肌にきりっと揃えられた眉毛、鼻筋は通っており、目はエメラルドグリーンの神秘的色に輝かせ、首には彼女の信仰の表れである女神ソフィアを示すシンボルである百合を象ったネックレスをしているこの18歳の少女は今後の彼女の将来を大きく左右する重要な卒業試験のために毎日通うヴィッテルス・バッハ実科学校に全力で向かっていた。
彼女が暮らしているここバーリエン連邦共和国には特徴的な教育のシステム通称「アルタナティフ」が存在する。まず満6歳になった子供達は例外なく初等学校に入学し義務教育を全うするが、初等教育6年生になる12歳で早々と人生の分岐点である「適性試験」なるものを受験することになる。所謂「選別」だ。そしてこのやり直しが効かな試験を経た12歳の子供達は次なる段階へと歩を進める。
それは中高等教育への振り分けだ。これは大きく分けて三つの学校体系に分かれている。
将来国を指導する立場になる政府役人、もしくは医者や学校の教師、企業の重役、国教ソフィア教の上級司祭など一般に上級公務官、幹部や上級聖職者と言われる職業に就くために必要な知識を学べる大学に進学することが定めである上級学校。
現在マリアが通っている企業の平社員、専門的な技術が必要な職業や一般聖職者に就くための学校である実科学校。
最後にその二つにも入れなかった者が通い、主にブルーカラーと呼ばれる肉体労働者を多く輩出する基礎学校、この三つに分類される。共通点はどの学校にも卒業試験というものが存在し、試験時間は原則8時間という長期戦であるが、内容も難易度も学校ごとに千差万別だ。この卒業試験は文字通り「卒業」がかかっており、不合格ならいくら優秀でも卒業認定が貰えず、負け犬の烙印を押され、自分の人生に大きく響く。故にみな必死で卒業試験に臨む。
この特徴的な独自の教育システム「アルタナティフ」がこのバーリエン連邦共和国が円滑に運営されるのに一役も二役もかっている。
かくして実科学校に通うマリアも例外なく卒業試験を受けなければならないため今ようやっとのこと学校の正門前に着いき、一息ついたところであった。左腕にした腕時計を見ると試験開始の8分前を指していた。「ふぅぅ~、なんとか間に合って良かった~、でも本番はここから!自分の目標に向けて頑張らなくちゃ! このマリア・ディ・ロレットになら越えられない壁なんてないわ!!」
マリアはいつも以上に気合を入れて正門をくぐった自分の人生の中で最も長い8時間を有終の美で飾るために。
自分の人生がこんな短期間で決められてしまったら恐ろしい限りです。
次回もまた気が向いたら投稿させていただきます。読んでくださる人がいればの話ですが・・・・(´;ω;`)