合間によぎる 4
家に帰ると、スーツを脱いでハンガーにかける。
昨日はそのままにしたので、しわになってた。
ハンガーにかけたまま、スチームアイロンをかける。
スーツのしわひとつでも、課長がうるさい。
臭いがないかを確認して、アイロンをしまう。
シャワーをささっと浴びて、寝間着に着替える。
買ってきたスーパーの割引弁当を食べながら、
ぼんやりテレビを見る。
「今、噂の【夢の死神】とは?」
「はい、見知らぬ少女が現れて、気に入られると夢に閉じ込められるんだそうで。」
テレビでも特集してたのか。
少女、か。
昨日の夢に、少女が出てきたけど、見知らぬ感じがなかったんだ。
まぁ、気にしたら負け。
「夢の中に、ですか?」
「はい、悪夢から抜けられなかったら、死んでしまうんだそうです。」
イヤー、と量産されたアイドルたちが騒ぎ出す。
夢の中に、ね。
弁当を食べ終わって、一息いれる。
「はぁ。」
冷蔵庫からワインを出して、食器棚からワイングラスを出す。
「あ、もうないか。買いにいかないとな。」
このワインは初任給で買ったワインで、
ずっと飲み続けてるんだが、最近見かけなくなった。
「そろそろ新規開拓か。」
ピロン、とチャット通知が鳴る。
見ると親友からだ。
「"おっすーオラえーいち(^o^)/"」
「"おー(´・ω・`)"」
なんだ?
非番以外でこんなにチャット送ってくるなんて。
「"暇なのか?"」
俺がそう打ち込んで返すと。
「"待機時間が長すぎてつらたん(´・ω・`)"」
研究者は大変だな。
「"おつかれーヽ(・∀・)ノ"」
「"地上波つまんねー。何この夢の死神って。"」
同じ番組見てたのか。
「"夢の中に現れし、死を運ぶ少女が
汝を夢に捕縛し、天へと至るだろう。"」
「"厨二説明乙"」
我ながら良くできた。
「"これ流行ってんだな。"」
「"今日、会社の後輩が目を覚まさなくて、救急搬送された。"」
「"マジかよΣ(゜◇゜;)"」
ただ、脳の病気かもしれないけどな。
「"同期が言ってた。被害者は神代女子高出身者らしいよ。"」
親友から、この日を境にチャットは来なくなった。
厨二説明難しい。