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英語は嫌いですが

「うう……もうやだ」


「あらあら、お嬢様が決めた事ではないですか」


ニッコリとそれはもうニッコリと微笑むみーちゃん。それを恨めしそうにみる愛。

確かに、私が決めた事だけど。

だけど、これはないんじゃないかな。



「……えいご、やだぁ…」


ええ、英語です。

なぜこうなったか。それは数日前の…お兄ちゃんと仲良く?なったあの日の後のこと。

お兄ちゃんは私に、今は話しかけてきては駄目だと話してくれた。それに不満そうにする私の頭を撫でて優しく微笑む姿は最高のお兄ちゃんです。…じゃなくて、このまま兄妹として仲良くしてる姿を見せていたら両親に嫌われているお兄ちゃんは何処かの養子に引き取られる可能性が高いらしい。

何でお兄ちゃんが嫌われているのか、それはわりと下らない理由だった。

ただ単に、お兄ちゃんが叔父さん――まあ一度も会ったことはないけれど――に似ているから。叔父さんと父親は兄弟で、父親が兄だから長男が受け継ぐという決まりがある家だから、色々と受け継いだらしい。…まあ、能力的には叔父さんの方が上で周りからも残念がられていて擦れたらしい。

母親も同じように自分の弟と何かと比べられてコンプレックスだったらしい。母親の方の叔父さんには家庭があるらしくて私たちと年の近い息子がいるみたい。

…流石はお兄ちゃん。よくこの年で…しかも私より2歳年上の6歳でここまで調べられたね。格好いい!!

まあつまり、今まではいっそ養子に出たほうが幸せになれるんじゃないかとか考えていたらしいお兄ちゃん。が、妹と…可愛い妹と離れちゃうのは嫌だからちゃんと頑張るよって微笑んで話してくれました。

可愛い妹って!お兄ちゃん素敵すぎる…!!

思わず抱き着いた私と、受け止めたお兄さんを他所にお兄ちゃんの付き人というかボディーガードらしいお兄さんが頭を抱えていたけれど何でかな。


じゃなくて、お兄さんがあれ以来メキメキと優秀さを発揮していった。

かっこよくて頭がよくて更に運動も何でも出来るお兄さん……なら私は何が出来る?

何も出来ない。前世でもJKだった事もあって将来の夢とか全然考えてなくて何も習っていなかった。

お兄さんの足枷になるのはいや。そう考えていた愛は一つの考えが脳裏に浮かんだ。今から何かと習っていればお兄さんの迷惑にならないんじゃないか。

決まれば行動。

泣き落としでも上目使いもなんでもやっている。

そうして、4歳児にしてはあり得ないくらいのお稽古がつきましたとさ。

お稽古はいいの。社交ダンスも出来るようになると楽しいし、書道は最初は自分の思うようにいかない字が綺麗になると感動するし、テーブルマナーは疲れるけれど知っていて損はないし、国語も算数も…まあ、JKだったから出来るし。

けれど、


「えいごはむり…」


「本当に不思議ですね。他は完璧にこなせますのに英語は1日経てばほぼ全てしまうんですもの。」


4歳児だから仕方ない、そんな言い訳は通用しない。というよりは、他が完璧なのに対して英語が出来なすぎたのだ。

毎回ちゃんと勉強しているし、予習復習も欠かさずやっている…なのに、(ぜんせ)と同じく英語がさっぱり分からないのだ。もうこれは運命として受け入れるしかないのかな。

何度も言うが、英語以外は出来すぎな程に出来ている愛である。

そりゃあ元JKで大学進学決まっていた頃の記憶を思い出したからズルしている感じは認めるが。

それでも、愛が努力しているのを知っているからこそ、英語を教えている先生やみーちゃんは責めないし、むしろ逆に先生は愛をどう英語を覚えさせるか熱心に研究している。それが実を結んでやがて英語論文研究科とかいう名前の役について一躍の人になるのはまた別の話だが。

まあ、とりあえずその位に英語は壊滅的なのである。

膝を抱えて落ち込む愛となだめるみーちゃん、そんな光景が繰り出されている愛の部屋にだれかが入ってくる。

といっても、ほぼ決まっているが。


「あいどうしたの?」


「おにいちゃん…あのね、えいごが出来なくて…」


「んー…むりに頑張らなくてもいいんだよ。ね?」


「おにいちゃん…」


みーちゃんにすがるような視線を向けられた一樹がにっこり微笑んで愛に話しかける。

そして、ふわふわのソファーに座って、愛を膝の上に乗せた。


「あいはどうして必死になっているの?」


「おにいちゃんに、めいわくかけたくなくて、ずっと、いっしょにいたくて…」


お兄ちゃんが親であるあの人達にどう扱われていたのか思い出して泣きたくなる。JKの時は、四人姉妹の長女でお姉ちゃんだったから、人前で泣いた事なんてあまりなかったのに。ましては、前の家族の前で泣いた事は、一度もなかったのに。

お兄ちゃんの前では、取り繕えない。


「あい、あいは焦らなくてもいいんだよ。そんな事気にしなくていい。ずっと、側にいるから。」


「おにちゃん…」


優しい目をしたお兄ちゃんが私の額に唇を落とす。くすぐったくて笑うと、お兄ちゃんは嬉しそうに笑った。



「あ。そうだった。」


「どうしたの?おにいちゃん」


「あい、明日僕の親友に会いにいこうか。」





単に今まで甘えられなかった反動ですという事にしておいて。

お兄ちゃんという存在に夢を持つこの頃です。

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