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獅子のごとく  作者: 久夛良木慈庵
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十傑集

ドォーン…


「ん…」


ドォーン!


少しずつ覚醒する意識の中、近づいてくる音が頭に響く。


隣を見ればシンバさんが未だいびきをかいて寝ている。


「ンガー…ンガー…。」


ドォォン!!



「わぁっ!何なのこの音!?」


私は少しパニックになりながらも窓から外を覗いた。


外にはアリの大群を彷彿させるほどの一団が赤一色に身を包み、威嚇砲撃をしながら網羅していた。


「シンバさん!なんかやばいの来てるよ!」


「んぁ?何だってんだこんな朝っぱらに…」


もうお昼過ぎなのに朝って…この人の生活を正してあげないと!


「あぁありゃ王国の特殊攻撃部隊だ。赤だからスカイルビーか。ったく。しつこい虫共だ。」


「え?お知り合いなの?」


シンバさんは頭をボリボリ掻いて面倒くさそうに口を開いた。


「まぁ簡単に言って俺様を勧誘しに来てる。」


「え!?砲撃してきてるけど!?」


「俺が言うこと聞かないからって最初は処罰しに来たんだが、ぶちのめしまくってたら実力を認められて王国軍に入るように言われたのも断ったらこれだ。めんどくせぇ。」


それは完全にシンバさんが悪いと思う…。まぁ確かにこの人には常識は通用しないよね…それを押し通せる強さもあるし。



「砲撃止めっ!!」と大きな声が聞こえたのでもう一度窓から除くとシンバさんの家が包囲されていて、逃げ場も勝ち目もなさそう。


「シンバ=シシガミ殿!これが最後の勧告である!王城に参って我が王国軍へその力を貸したまえ!」


「シンバさんどうする…ってシンバさん?」


部屋のどこを探してもシンバさんは見つからなかった。


「ごちゃごちゃうるせぇな。俺様は王国なんてもんに入らねぇって何回言えば分かるんだ?」


「ならば力ずくで連れていくのみ。我らスカイルビーは知っての通り飛行戦闘集団!地、人と適わなくとも天が貴殿に鉄槌を下す!」


険悪な雰囲気は徐々に闘気を帯びていく。


「総員、飛翔!」


その掛け声と主に赤い騎士は翔びあがる。


「いくら貴殿でも上空には手出しできまい!さぁどうすぶぎゃぼぁぁあ!!」


えぇっ!?


リーダーっぽい人は突然眼前に現れたシンバさんによって腹部を殴られて鎧がひしゃげた。決して軽くないダメージを受けて墜落する。


「転移魔法だと!?一億人に一人しか使えない超高等魔法だぞ!」


「はいはい!ドンドン墜ちろ!」


私は目を疑った。シンバさんは一瞬で空中を移動して次々とスカイルビーの一団を撃墜させていく。


五分もすれば空は昨日と変わらない青い空がそこにはあった。



代わりに地面は信じられない光景だったけど。


なんと無数の人柱が出来上がっていて恐らく生きてはいないだろう。一様に頭から地面にお腹辺りまで深く突き刺さっていた。


ただ一人だけは生きていた。最初に腹パンした人物だ。

「圧倒的な力の前には数は有利ではなくむしろ餌になる。アイツ(・・・)に伝えとけ。来るなら自分で来いとな。」


「クソォ…ゲボッ!ガハァ!」


男は鎧の隙間から吐血しながらよろよろと立ち上がって一瞥した後足どり不確かに歩き出した。


「シンバさん。アイツって誰?」


「…王国最強と謳われる『仁王』スタンテッド=ウルフ。昔から俺に突っかかってくるやつだった。」


「ぇぇぇぇ!!??」


スタンテッド=ウルフはあの有名な十傑集の一人で、獅子王に次ぐ戦闘力の持ち主だ。かつて一万からなる魔界の軍勢をたった一人で蹴散らした逸話を持つまさに怪物。


「いくらシンバさんでも十傑集が相手じゃ…」


心の声が漏れた。それに鋭敏に反応したのはシンバさんだ。


「お前はこの世の常識、法律の前に覚えておくことがある。それは、俺様が最強だという事だ。如何なる相手や数を前にしても俺様がいれば取るに足らん敵となる。喜べ!お前は俺様の近くにいれば死ぬことはない!」


その自信に満ちた姿はさながら百獣の王。自分が生態系の頂点だと思って疑わない。


「じゃあお願いがあるんだ。」


「言ってみろ。俺様の力で必ず叶えよう。」


私は少し溜めて口を開いた。


「シンバさんがこれから戦場のど真ん中にいても私はついていく。シンバさんは私を助けて下さい。代わりに私はシンバさんの英雄譚を語る。」


「フフッ…。ハハハハハハ!!面白い!面白いぞ!アリス!よし!俺様に任せろ。お前だけは傷一つつけさせない。」


逸らすことなく私の目を見つめるシンバさんは人間の理想だ。人はこうありたいと思いながらそれが不可能だと分かり妥協する。でもシンバさんは妥協も諦めもない。決めたことは貫くんだ。


「私、シンバさんに助けてもらって良かったよ。」


私は私とシンバさんの物語を紡ぐ。シンバさんが創り出して私が語る。


それが私の使命だ。

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