アリスとシンバ
本日2話目。おやすみなさい
ーーース。ーーーーリス…!
「アリス!起きろ!」
「…シンバさん?」
目を覚ますと私はシンバさんに抱っこされていた。
「やっと起きたか。ほれ。飯食うぞ。」
近くで見た彼は黒髪の短髪で鋭い目をしてるけどすごく優しい目。…かっこいいかも。
「アリス?何見てんだ?」
「ななななんでもないです!」
シンバさんは「そうか。」と言って抱っこのまま飲食店らしい店に入った。
「お、いらっしゃいシンバちゃん。今日は可愛い彼女連れてるじゃないの〜!」
そんな…彼女だなんて…。
「うるせーよ。それよりいつもの二つな。」
奥の広い席に私を座らせて、シンバさんも座った。
二つ食べるなんてやっぱり背が高いしよく食べるんだなぁ。
「ねぇシンバさん。」
「なんだ?腹でも痛いか?」
「ちっ違うよ!シンバさんはなんで私を助けてくれたの?何も知らない私のことなんて。」
私は率直な疑問をぶつけてみた。シンバさんは私をじっと見つめた。
「なんでって、お前が助けてって言ったからだろ?それ以上の理由がいるか?」
なんて豪傑なひとなんだろう。でもそんなシンバさんは誰にも真似出来ないくらい強くてかっこいい。
「はいよ!いつもの二つね!」
出てきたものはとっても美味しそうで大きなステーキだった。…ホント美味しそう。
「おう!相変わらず美味そうだぜ!ほれ、お前の分な。」
「えっ?」
「あ?なんだ?肉嫌いか?」
「違うよ!だって私奴隷だよ!?なんでこんな美味しそうなもの私なんかに…はぅっ!?」
私の頬を手で挟んで彼は私を見つめた。
「お前は奴隷じゃない。お前は…アリスはもう自由なんだ。俺様と同じ人間だ。だから同じ飯を食う。分かったか?」
彼は手を離してくれた。やっぱりシンバさんはかっこいい。外見だけじゃなくて心がかっこいいんだ。
「…うん…。」
「あ?お前、何泣いてんだ?」
「えっ?」
服を見ると胸の辺りに現在進行形で涙が流れた跡が付いている。私なんで泣いてるんだろう。それでも涙は止まらない。
「うああああああん!!」
「なんだ!?どうした!?まさかミドのヤツ!ナキキノコでも混ぜやがったのか!?」
「失礼だね!!全く!いいかい?この子はシンバちゃんに優しくされて嬉しくて泣いてるんだよ。だから泣かせてやりな。」
そうか。私はうれしくてないてるんだ。奴隷に落ちてから優しくされることなんて無かったもんなぁ。
「なら泣け!それがお前の人生最後の涙だ。」
「うんっ!シンバさん!ありがとう!」
私は自由だ。そして私のいきたい場所はシンバさんのとなりだけだ。
泣き止んでからシンバさんに話しかけた。
「ねぇシンバさん。」
「いただきまー…なんだ?」
今にもステーキを食べようとしていたシンバさんはステーキにフォークを刺したままこっちを向いた。
「あのね。私、これからもシンバさんと一緒にいたいの!お願いします!」
私は席を立ってシンバさんに深く頭を下げた。これで拒絶されたどうし
「いいよ。お前がそうしたいなら。」
「本当!?やったーー!!」
心の底から嬉しさが弾けた。
「ほれ。早く食おうぜ。これ食ったら次はお前の服な。」
確かに私の服はもはや布って感じでとてもみすぼらしい。
「でも…」
「いいんだ。どうせタダだから。」
「えっ!?」
タダ!?なんで!?
「詳しいことは後で教える。早く食え。めっちゃ美味いぞ。これ。」
「じゃあ、いただきます。」
ステーキはちょっと力を入れるだけで綺麗に切れた。柔らかいお肉を口に入れたら本当に口の中でジュワ〜と溶けた。
「シンバさん!これすっっごい美味しいー!」
「だろ?これこの店で俺様しか食えないやつ。あ、今日から俺様とアリスだけだな。」
そう言ってシンバさんはニカッと笑った。あぁ。もう彼のことが大好きだ。シンバさん無しじゃ生きれないくらいに。
私たちはぺろっと平らげて店を出た。そこで少し疑問があった。
「シンバさん!お会計忘れてるよ!」
「会計?いらねーよ。」
「えぇ!?」
店を出てからも本当に誰も追ってこなかった。それどころかミドさんは「またおいでね〜」と言ってくれた。
「あの店な、俺様をバックにしてる代わりに飯はタダなんだよ。これから行く店も同じだ。てかこの街のほとんどはそれだ。」
ほんとに何者なんだろう…。
それから少し歩いていくと大きな服屋さんがあった。
「あれ?あのマーク。」
「ん?あれか?」
シンバさんは黒い布地に白でライオンが描かれているマークを指さした。
「うん。あれ、さっきの店にもあったよね?」
「おう。だってあれ俺様のマークだし。あれがある店は俺様がバックについてるって証だから。」
「ほぇ〜。シンバさんってすごいんだね。」
「当たり前だ!俺様はすげえんだぜ。」
服屋さんに入ると従業員さん達が全員ビシィッ!と気をつけして、「シシガミ様!お疲れ様です!」って言ってた。ちょっと怖くてシンバさんの手を握った。
「ん?おいお前ら、この子が怖がってるから普通にしろ。」
『はい!かしこまりました!』
どさくさに紛れて手を握ったままシンバさんと一緒に店の奥に入ると、シンバさんより大きくてムキムキのおじさんが座ってた。
「おう、テリー。今日はこの子の服を見繕ってくれ。」
テリーさんはゆっくり立ち上がってこっちに向かって歩き出して私の前で座り込んだ。
すごく怖くて、シンバさんの手を強く握ってしまう。
「…あら〜!この子とってもキュートじゃな〜い!いい子を連れてきたわね!シンバちゃん!」
………え?
「そうだろ。とりあえずこの子が欲しがったもの全部とお前が軽く見繕ってくれ。俺はここで待ってる。」
本当にいいのか分からなかったけどテリーさんは「いいのよいいのよ!シンバちゃんの為だもの!」と言っていっぱい持ってきてくれた。テリーさんが、持ってきた服は全部かわいくて思わず貰っちゃった。
「シンバさんホントにいいの?」
「おう。それにしてもいっぱい買ったな。持ってやるよ。」
袋にパンパンに詰め込まれた服は五袋文あって、シンバさんは全部持ってくれた。
「それにしてもお前1日でずいぶんマシになったな。」
「え?そうかな?」
もしそうだとしても全てシンバさんのおかげだ。
「だってよ、お前テリーにビビってただろ?さっきまでのお前は人形みてーに空っぽだったのによ。」
確かにそうだ。奴隷の私だったら特に何も感じなかっただろう。そんなところに気づくなんてシンバさんは思ったより繊細なのかな?
「シンバさんのおかげだよ。あそこで助けてくれなかったら、今頃どうなってたか考えたくないよ。」
「あのデブは忘れろ。気持ち悪くてたまんねぇ。お、着いたぞ。ここが俺様ん家。」
シンバさんの家は思っていたよりふつうだった。
「小さい家だけど今日からここがお前の家だ。好きにくつろげ。」
家の中も普通だったけど、シンバさんはしっかり場所を教えてくれた。
「…しまった。」
「どうしたの?」
シンバさんは本当に困った顔をしていた。うーんと唸ってる。
「お前の部屋がない。」
「えっ!?いいよ!私なんて床で寝るから!」
「それはダメだ。仕方ねぇからとりあえず俺の部屋でいいか?」
ええ!?!!?私的にはむしろって言うか、ありがたいことだし、これなら部屋なんて要らないくらい素晴らしいことだよ!
「もももちろん大丈夫!何なら同じベッドでも大丈夫だよ!?」
あ、やってしまった。興奮しすぎてつい本音が出ちゃった…
「あ、そう?なら助かったわ。俺様ん家ソファーないからさ。」
私がこの後のことをあんなことやこんなことの妄想していたらシンバさんは「じゃ風呂入ってくるわ。お前も次入れよ」と言ってお風呂に入ってしまった。
シンバさんの後に私もお風呂に入った。久しぶりのお風呂はとっても気持ちよくてシンバさんには感謝してもしきれない。
そしてお風呂から出てドキドキしながら部屋を開けると、シンバさんは寝ていた…。
「まぁ、そうだよね。」
私はおこがましくもシンバさんに抱きついて寝た。
「ありがとう。シンバさん。大好きです。」
私はそう呟いて深い眠りに落ちた。
シンバ、18歳
アリス12歳
ミド 27歳
テリー 38歳
くらいだと思ってください。