少女と青年
久しぶりに浮かんだストーリーです。書きたいから書きました。
物語の始まりはある日のオークション会場だった。
私は奴隷No.1250。本名はあったけれど幸せとともに失った。そんなは私は今まさに売られようとしていた。
「それでは次の商品です!幼いものの紅髪と整った顔の1250!10万バールからです!」
「15万!」 「26万!」
そんな声が上がりながらも私は絶望すら感じなかった。なぜなら絶望が私の普通だから。
「500万。」
一気にレートを上げた人物は肥えた体に醜い顔、胡散臭い服装の気持ち悪い男だった。
(私はあんなやつに買われるのか。…初めてがあいつなのか。)
「他にはいらっしゃいませんか?」
どうやら私の主人は決まったようだ。まぁどいつに買われてもされる事は一緒。だって私は性奴隷なのだから。
「1250は番号札25番様お買い上げでございまーす!
」
私の心はもう真っ暗で一筋の光すら見えない。それをこの男は更なる暗黒へと誘うのだろう。
「それではお手続きを行いますのでどうぞこちらへ。」
「うむ。」
返事を返した男は私の方へ来て檻を掴む。
「ぐへへへへ!帰ったら死ぬほど!いや、死んでも可愛がってあげるからね。ぐへへへへへへへへ!!」
絶望すら普通に過ぎない私だけれど、これは絶望なんて生ぬるいだろう。例えるならそう。
ーーーー地獄。
死のうが生きようが行き着く先は地獄ならもういいかな。
死んじゃってもいいかな。
「何かいう事はあるか?」
奴隷館の館長にそう聞かれた。これは事前になんて言えばいいのか躾られこと。
これからよろしくお願いします。御主人様。
そう答えろと。
もちろん私はそう答えようとした。
けれど口から出た言葉は、
「たす…けて…」
一度出た弱音は止まることなく紡がれた。
「お願い…!だれかたすけて!」
久しく声を出していないからか、喋りづらい。それでも誰かに助けを懇願し続ける。誰も助けてくれないことは分かっているのに、
「ぐへへへへ!館長!いい躾をする!実にワシ好みだ!」
「えっ?あぁそうでしょう!ささ、こちらへ!」
もうだめだ。私が諦めたとき、空で何かが光った。
その光は一瞬だった。そして私は目を瞑るとこれから先の地獄を思い、一筋の涙を流した。
ドガァァァァァァァァァァン!!!
「……え?」
爆音で目を開けると、私を買った男は頭が消え失せていた。
そして私を囲う檻は完全に破壊されて、出ようも思えばいつでも出られるようになっていた。
「な、なんだ!?何者だ!!」
館長が叫ぶと同時に護衛の屈強な男たちが出てくる。
「気に入らねぇ。」
シンとなった空間でその声は響いた。
「どこにいる!出てこい!」
スタスタと歩く音が響く。その正体は二階から聞こえる。
最も奥にいたのかようやく姿を見せた。そしてその人は二階から飛び降りた。
結構な高さのはずなのにスタッと小さな音を立てて着地した。
「お前!自分が何をしてるか分かっているのか!?」
館長の怒鳴りに彼は口を開く。
「お前らこそ分かってんのか?」
呟いたような小さな声だけど、低くて怒気を帯びていた。
「その子、泣いてるんだぞ?」
「はぁ!?奴隷は物だ!そんな事は常識だろ!?」
館長の言葉は正論だ。この世界の奴隷は家畜にも劣るただの玩具。それなのにこの人は…。
「常識ねぇ…。俺様は自分のルールにしか従わねぇ。」
「ふざけるな!そんなことが通用するとでも…」
「ふざけてんのはどっちだ?命を弄ぶクズ共。それにな、強者には常識や法律なんてもんは関係ねぇ。」
顔がうっすら見えるくらいまで近づいてきたと思ったら彼は突然私たちの前にいた。
「なっ!?転移魔法だと!?」
「お前らカスはルールに乗っかって生きなきゃならねぇ。けど俺様は強ぇからそんなもん紙切れみてぇに蹴散らす。」
ズドドドドド!
「ひっ!」
護衛の槍を突き刺された。私のために彼は…。そう思うと自然と涙がこぼれた。
「おいおい、泣くのは早いぞ嬢ちゃん。今から助けてやるからちっと待っとけ。」
え?生きてる?だって槍に…
「槍が刺さらん!何なのだこいつは!?」
「こんな爪楊枝で俺様を傷つけれると思ってんのか?せめて核もってこい。それなら皮膚くらいならなんとかなるかも知んねぇぞ?」
信じられない。彼は本当に人間なの?
「うらぁ!」
ドバァァ!!
「ぐぁぁぁぁぁあ!」
彼は叫んだだけ。それなのにこの惨状だ。ステージは私を除いて全員吹き飛び、彼は悠然と私に向かって歩いてくる。
「待たせたな。お前、名前は?」
「私の名前…」
「おう。」
私の名前は…ア…リス。アリス=ディソングだ。首輪があるのになんで…
「首輪ならデブと一緒にぶっ飛ばした。だから名前、分かるだろ?」
「私はアリス=ディソング…です。」
「そうか。アリス。お前は自由だ。幸い、まだガキだ。今からでも遅くねぇ。人生を始めろ!」
彼は私に手を伸ばした。大きくて何よりも強い手だ。
「あなたの名前。」
「おお。俺様はシンバ。シンバ=シシガミだ。」
「よろしく。シンバさん。」
私はシンバさんの手を取り、彼に抱きついた。
「あぁ?お前何して…寝てやがる。」
彼になら何をされても大丈夫。私は安心して彼の胸で寝てしまった。
10万バール=100万円くらいです