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序章

 白亜の巨城の尖塔に何者かが降り立った。

 黒のローブを纏い、フードを目深に被ったその姿からは、彼、または、彼女を特定する特徴が何ら窺えない。

 ただ、ヒト型の生命体であろうことしかわからない。

 もっとも、かつて巨人が住んでいた城の一角にたたずむ尖塔の頂上に、苦もなくたたずんでいるという一事だけで、只者でないことは確かだ。

「やはりおかしい。第三魔王の姿どころか、気配すら感じられない」

 不審げに発せられた声もどこか中世的で、少年のようでもあるし若い女性のようでもある。

「それどころか、あのような有象無象どもが我が物顔で魔王城の周辺どころか城内まで闊歩している」

 正体不明のその人物は、かつての城の主とは比べ物にならない小人たちを遥か頭上から見下ろして忌々しげに呟いた。

 だが、その怪しげな人物も巨人ではなく、通常サイズの人型生物であることはまちがいない。

「第三世界にも出征先のこの世界にも第三魔王がいないという事態は異常だ。奴らのことも気になるし、少し探りを入れてみるか。いざとなれば……」

 危険な色をフードの奥の瞳に点らせ、その何者かは城の周辺を一倪するとローブを翻して姿を消した。

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