016話
港町アクアニルム滞在最後の話です。
気がついたら「現代魔法使いルージュ」の文字数を突破していました。もう完全に「あなたは神を信じますか」がメインです。
それはさておき、物語の続きをどうぞ。
「だが、その服を使いこなす人ならば、私は喜んで譲ろう。これは親父の遺言でもある。」
そんなことを言われても困るわけでせめて取扱説明書を見せてほしい。
ん、使い方・・・。ふつう服は着こなすのではないか。その服を着こなすのではないく使いこなす。
店員は私の魔法をみている。そして下手な魔法服よりもと言った。そして自己修復ができるということは形を変えられるということ。
・・・まさかね、そんなわけないか。そんな都合のいい解釈なんてそうそうない。
普通服に魔力が流れることはない。さすがにそれくらいの常識はあるつもりだ。
私はそう思いつつも、服に魔力を流してみる。
流れた。それも意図も簡単に、すんなりと。そして馴染んていく、着心地がよくなる。まるで生きているみたいだ。
「・・・どうやら服はお前さんを選んだようだな。早速じゃが、裾を自分で変えてみろ。その服は着る人に合わせて形を変えることができる。」
私は再び服に魔力を流す。今度は服の繊維一本まで意識し、認識し、コントロールする。この服ならばそれが可能だ。
チャイナ服はみるみるうちに袖や裾が短くなり、服の大きさが小さくなり、自分の思い通りの形へと変化する。
店員・・・いや店主は満足そうに頷く。
「うむ、見事じゃ。約束通りその服はお前さんに譲ろう。それにその服はもうお前さんしか着ることができないお前さん専用の服じゃ。それに服はお前さんを守り、助けてくれるだろう。
死んだ親父がチャイナ服しか作れないものだからチャイナ服の形をしているが、お前さん次第でどんな服にもなる。
大事にしてくれ。」
そう言い残して店主は店の奥へと消えた。
店の入口付近ではまだ姉と暴走店員が私の服について意見を交わしていた。
「でも、やはりこの服のギリギリ感が外せないわね。」
「お客様、ではこちらなどどうでしょう。」
二人は私の服を選んでるのに私の存在を忘れているようだ。
「お姉さま、もうそろそろ船が出港しますよ。急いで戻ったほうがいいのでは。」
姉は慌てて店の時計を見る。時間は出港の三十分前を指している。
「ではこれで失礼。」
姉は慌てて店を出て走り出した。
「またのおこしを。」
さすが店員、仕事の本文は忘れていない。
「ユフィ、あなたその服・・・、なかなかのセンスですね。あえての男物を着るという斬新さ。さすがに思いつかなかったわ。」
「ありがとうございます。ですがいまは急ぎましょう。乗り遅れてお父様に怒られるのだけは嫌です。」
「・・・そうね。」
二人して疾走するその姿は実に新鮮で、特にユフィのボーイッシュな格好は色気を重視した服装に飽きてきた女性の心をわし掴み。その結果その年、港町アクアニルムではボーイッシュな格好が流行した。
この流行の発端がユフィだったと知る日はいつの日か・・・。
読んでいただき、ありがとうございました。楽しんでいただけならば嬉しいです。
総合PVも自分の予想の斜め上を行く伸びぐわい。感謝の限りです。
これからも「あなたは神を信じますか」をどうぞよろしくお願いします。