011話
連続投稿です。
移動二日目
今日は馬に乗ることにした。乗馬は初めてだが、慣れると案外楽なものである。馬も私を気遣ってくれているのか、ほとんど酔わない。そして楽しい。
「お嬢ちゃん、筋がいいね。とても乗馬初挑戦とは思えないぜ。」
冒険者の男が話しかけてくる。
「ありがとうございます。お世辞でもうれしいです。えーと・・」
「お世辞なんてとんでもない。本当に筋がいいよ。スワムだ、よろしく。」
「ユフィです。」
名前を名乗られて慌てて名乗り返す。
「冒険者っていうのは普段馬に乗ることはない。だが、こういった護衛の時、乗馬スキルは必須になる。馬に乗れない奴はああやって馬車で綱をにぎるのさ。」
そう言って冒険者が使っている馬車を指さす。軽鎧を着た女性剣士が手綱を握っている。年は二十歳前後だろうか。
「スワム、お前また私が馬に乗れない事を喋っていやがるな。戦場に出ればすぐに私の後ろに隠れる癖に。」
「魔法使いというのは後方から攻撃するものだ。そんなの当たり前だ。」
「お前は魔法使いではない。魔法が使えるだけだ。」
「そんなのどっちでもいい。」
冒険者二人は痴話喧嘩を始めた。私はその話の流れについていけない。
「あの二人はいつもこうだから、気にしないで。」
話しかけてきたのは少女だ。黒のマントをはおり、腰に剣を指している。魔法戦士っといったところか。
「私はマルカ・ルーズベルト。あなたと同じ、下級貴族よ。」
「ユフィです。」
「あなたたち姉妹は二人そろって魔法使いなの。」
いきなり聞かれて私は戸惑うが正直に答える。
「いえ、見ての通り、黒マントを羽織る姉だけが魔法使いです。」
父に魔法が使えることを知られると面倒になる。もうお説教は勘弁だ。
「・・・そう、実はこの以来があってあなたを見てから私はユフィ、あなたを警戒していたわ。」
私はキョトンととした。警戒される理由が見当たらない。
「しらばっくれているのか、それとも本当に自覚がないのか。・・・その反応だと後者ね。」
マルガは私の表情をみて判断した。
「どんな人間にも、どんな生き物でも、大なり小なり魔力は持っている。あなたの姉、魔法使いの方は大きな魔力を感じるわ。きっと毎日魔法を練習していたのでしょう。前方で馬にのるあなたの弟はおそらく剣士、野営中剣を抜くときに闘気を感じた。あなたの父もおそらくは剣士、魔力も少し感じるから身体強化の魔法くらいは使えるでしょう。馬車に乗っている女性、おそらくあなたの母でしょう。闘気も魔力も小さい。ふつうの貴族でしょう。だが・・・」
マルガは一息つく。そして私をじっと見る。
「だが、あなた、ユフィだけが違う。魔力を全く感じない。このようにそばにいても。
魔力を隠せるのは魔法使いでも極一部の魔法使いくらい。その魔法使いでさえ、自分の実力を見せつけるために魔力を隠したりしない。
一体あなたは何者なの。」
私は返事に困る。いきなりあなたが容疑者宣言っぽいことを言われたうえで、あなたは何者といわれても。
読んでいただきありがとうございます。