010話
記念すべき十話です。
そしてなんと1000PVを超えました。
これからも「あなたは神を信じますか」をよろしくお願いします。
今日は朝から慌ただしい。
私の部屋から次々と荷物が運び出されていく。荷物と言ってもほとんどが(父と姉が選んだ)服なのだが。
私は服を除いて私物はほとんどない。
今日は王都への引っ越しの日、あの苦しいコルゼットもつけなくていい。(ここ重要)
とくに何もすることなく、豪華な天蓋付ベット(母の趣味)に寝転ぶ。
この部屋にもお世話になったな。
ふと見ると壁に焦げ跡が残っている。魔法を暴走させてしまったあの日の痕跡だ。懐かしい。
そういえば、結局アインの書を使わずに魔法が使えるようになってしまった。
私は今更のように思い出す。
「お嬢様、そろそろ出発のお時間です。」
「すぐに行きます。」
私はこの屋敷周辺にしか出たことがない。ここから町に行くには馬車で半日以上かかるからだ。なのでこの世界を自分の目でみる初めての機会だ。
屋敷を出発する。
荷馬車、普通の馬車、冒険者の馬車で計三台での移動だ。
冒険者はギルドを通して、父が護衛に雇ったらしい。
冒険者が存在するのか。いよいよファンタジーって感じがするな。
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移動一日目の夜
馬車がこんなにもつらいとは思わなかった。
地面からの振動が体を揺らし、車酔いで吐き気がする。
馬車の外に出で新鮮な空気を吸うと少し楽になった気がした。
外は全く明かりがなく、草原が視界の限り広がっている。
私は小川の岸辺に寝転ぶ。背中がひんやりとして気持ちがいい。
だんだん眠くなり、まぶたが落ちていく。
クルル・・・
はっと目を覚ますと、私は二十頭近いオオカミに囲まれていた。慌てて起き上がる。
オオカミから感じる魔力はそれほど大きくない。オオカミが襲ってこないのは差し詰め様子見というところだろう。
オオカミは頭を低くし、いつでもとびかかれるようにしている。長い鼻の上にしわを作り、犬歯をむき出しにしている。
縄張りにでも入ってしまったのかな。
これくらいのオオカミなんて一瞬で消し去ることができる私はそれほど慌ててなかった。それどころか落ち着いている。相手の力量も測れないほど怠けていたつもりはない。
最初の一匹が口を大きく開けて私にとびかかろうとした。
私はそのオオカミを一瞬にして正八面体の氷の結晶に閉じ込める。
オオカミ達は二・三歩下がる。先ほどとは違い、明らかに恐怖の色がうかがえる。襲ったのは羊ではなくトラでした、みたいな表情だ。
鼻のひげたれて、すこし涙を浮かべているオオカミもいる。鼻のしわはなくなり、おびえている。
それでも私は遠慮しない。一度襲ってきたのだ、覚悟はしているだろう。
私はすべてのオオカミを氷漬けにし、そのまま粉雪にした。
赤色の細かい結晶が草原に降りかかる。そして何事もなかったように私は立ち去る。
後に残ったのは小川のせせらぎが響き、普段と買わない自然。
違うのは小川がすこし赤色に染まっていることだ。
読んでいただきありがとうございます。
楽しんでいただけたら、幸いです。