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第二章:capriccio

「逃げるって……どうやって?」

周りを見渡しても、堅く閉ざされた鉄の柱ばかり。どう考えても、人が抜け出せるスペースはない。

「こうするんだ!」

リュックの中に仕舞われていた分厚い一冊の本を取り出す。

本は青い光を放ち、独りでにページがめくられてゆく。

本のカバーには『The Key of Solomon』と書かれている。

辺りには風が吹き始め、スタンのコートがフワフワと舞い上がる。

(魔術書……!? ソロモンの鍵…?)

そして、本を手に取るスタンの口が、ゆっくりと開かれる。

『神に似た者よ……ソロモンの名の下に具現せよ…』


―大天使 ミカエル


牢の辺り一面が暖かく眩しい、金色の光に包まれてゆく。

光はスタンの右腕に集まり、徐々に形を作ってゆく。

細長く伸びた鋭い光を、スタンはその手で握りしめる。

光が薄れてゆくにつれて、金色のベールに覆われていたそれが、姿を現す。

(け…剣……?)

スタンの手に握られていた物は、鞘に収まった、長い剣。

ゆっくりと引き抜くと、鈍い銀色の鋭い刃に、金色の光が纏われ、妙な威圧感を醸し出している。

「……頼むぜ、カイル……」

スタンの身体は、剣のときとは全く違う、蒼く透き通るような光を纏う。

彼の瞳は、先程までの澄んだ黒ではなく、鮮やかな青に変わっていく。

(……何、あの蒼い目…!?)

剣を手に舞を踊るかのような素早く、華麗な動きで、眼前の鉄の格子を一瞬にして斬り裂く。

「よし……逃げるぞ!!」

そう言ったスタンの瞳は、また漆黒の瞳に戻っていた。

「あっ、うん!」

思わず呆気にとられていた彼女も、スタンに手を引かれて走り出す。

しかし、そう全てが簡単に行くわけもなかった。

「逃げるつもりか……?」

そこにいたのは、先程の警官だった。

「ああ……」

「逃がすわけないだろ……?」

ニヤリと警官は笑い、懐から銃を取り出した。重い輝きを放つ、黒いフォルムが一層恐怖を感じさせる。

すると、スタンは両手を上げて降参する素振りを見せる。

「ちょっと…!ほら、さっきみたいに魔術書で!」

「……無理、ミカエルとしか契約してねぇんだよ」

「嘘ーッ!!?」

「何をゴチャゴチャ言ってる? 死ぬ準備はできたか?」

警官は引き金に手を掛ける。

「くそっ!!」

危機が迫った、その瞬間のことだった。

「……失せろ」

一瞬、肌に感じた風圧とともに目を開けた瞬間、そこに銃口はなかった。


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