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短編

1分間の真実

作者: 慧波 芽実

初めまして、こんにちは。芽実です。

サイト小説家になろうさんで作品をアップするのは初めてです。

まだまだ未熟ですが、よろしくお願いします。

カタリ……と落ちた瓶を拾う人はいない。

ここで起こったことを知る人もいない。



ただ、壁にかかった時計が時を刻んでいた。



それだけだった。




「マサー? おい?」

強くノックする音に反応はない。

「マサー? 寝たのか?」

その声はつぶやくように扉の前で散った。

しょうがない、と呟かれた言葉を聞くものはなかった。

「マサの好きな番組、録画しといてやるか……」

その言葉が足音と共に遠くなっていく。扉が開かれることはなかった。





秒針が数字の12に来た。

まわる世界は何をしているのだろうか。

24時間のなかにある多くの一分。

一分間は短いものなのだろうか。

長いものだろうか。

煌々と辺りを照らしていた神々しいくらいの月の光は雲に隠れ始めて、わずかに光を緩めた。この一分でも、動いている。

世界ではこの一分間の間に誰かが生まれているかもしれない。人でなくても何かが生まれているかもしれない。

誰かが死んでいるかもしれない。何かのイノチが終わっているのかもしれない。

誰かが言いようもないくらいに幸せになっているかもしれない。

誰かが耐えようもなく不幸になっているかもしれない。一分間で世界は動く。

その一分をどう感じるか、それでかわるのかもしれない。僕の思考回路は止まることを知らない。たった一分間。息を吐き出して僕は机に向かった。目の前には万年筆と便箋。


大事な人に書く手紙を前に涙で視界が歪んだ。便箋が滲んでしまわぬように慌てて左袖で拭った。どうか、届いてほしい。どうか伝わってほしい。涙で滲んだ視界。震える手。その中で「拝啓」、と書いて消しゴムを握る。消しゴムで消したそこはインクが伸びてしまって修復のしようがなくなった。そうだ、とため息に似た言葉を吐き出した。これは万年筆だった。鉛筆ではないのだ。その便箋をゴミ箱に入れて横に用意していたもう一枚を目の前に持ってくる。「dear」、これも違う。


僕は再び便箋をゴミ箱に入れてもう一枚を目の前に持ってくる。


「親愛なる親友に」これだ。3行ほど下にもう一文書いた。きっと最後の手紙だ。そう一息ついた。最後の、手紙。「あの物語を君に捧ぐ。そのために書いたんだ」最後の行にマサ、と自分の名前を書いた。僕は用意していた水を飲んだ。秒針は再び数字の12に来た。そして、静かにこれからの終わりのない旅を想像して目を閉じた。


これが僕の一分間の真実だ。





「マサー? やっぱり、起きろよー。今面白い番組やっているんだよ……。物書きもたまには世間に目を向けるべきだとおもうんだ、うん」

扉の前をどんどんとたたく音が徐々に大きくなっていく。

「シンー? マサくんはー?」

高い声が響く。

「おまえなぁ、実の兄を呼び捨てすんなよ」

あきれたようなその声に少女は、はぁ!? と口にした。

「マサくんはー?」

「今日、よっぽど疲れてんだな。起きないよ」

苦笑いを浮かべながら、先ほどからマサを起こそうとしていたシンが言った。

「え、珍しいねぇ。マサくん、机の上で寝てたりして」

「……あり得るな」

ケラケラと冗談めかして言ったことだったが、それが“マサ”という人物に限ることだったからだろうか。シンはしばらくの間を開けていった。

「なら毛布かけたげなきゃね」

明るく笑った少女は扉を開いた。

「マサくーん。風邪ひいちゃうよ?」

そして、すぐに。―――少女の悲鳴が響いた。


End


この小説は虚構の時間にたいする実験小説です。目標は一分の話を一分以上で読んでもらう……難しい!(>_<)

感想やアドバイスもらえるときっと飛んではねて喜びます(単純ですから


ここまで読んでいただきありがとうございました!ではまた^^

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