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御題五 「やっとだね。此所まで長かったよ」


連続! 多くは語らない。

だって語るネタないもん。








 キュッ、キュキュキュ、キュゥゥゥ、キュッ!


 ホワイトボードに大きな字で『歓迎でいきなり! 三郎君の渾名付けよう!』と書かれる。因みに書いているのは古座川琥珀こざがわこはく


 主人公である竜王三郎りゅうおうさぶろうを置いてけぼりにしながら話はトントンと進み、今現在各々フリップにペンを走らせている。


「………何で俺も考えるんですか?」

 フリップとペンを持ちながら三郎が尋ねる。自分で自分の渾名付けるのって痛いよね。


 キュキュキュ―――、

「何でって………面白いから?」


「………俺天理先輩の性格が解ってきました」

 天理真梨てんりまなりの本性を垣間見た。


 キュッ、キュッ、キュッ―――、

「女性の性格を素晴らしい速さで知る。………中々素質があるではないか」


「素質って何ですか?」


 キュゥゥゥゥ、キュッ―――、

「アレだろ、変態だろ?」


 キュッ………、

「………明凜君。それは私が変態だと言う事かい?」


 尾鷲明凜おわせめいりんの言葉に舞鶴定元まいづるさだもとのペンが止まる。


 キュゥゥゥゥ、キュッ、キュッ―――、

「ん? さぁ」


「そこで濁す必要性はあるのか?」


 キュッ、キュッ、キュキュキュ―――、

「やっぱり名前を入れた方が良いのかな?」


 キュキュキュキュ、キュッ―――、

「どうだろうなぁ。睦先輩以外は皆名前から取っての渾名だし。………面白ければ良いんじゃねぇか?」


 古座川の問いに尾鷲が答えるのだが、その答え方だと三郎の渾名が酷い事になりそうだ。


「………あのぉ、先輩」


 キュッ、キュッ、キュッ、キュッ、―――、

「ん? 何?」


 小さな声で三郎は天理に尋ねる。

「校門前で周りの人が言ってたのを思い出したんですけど、去年は誰も入部しなかったんですよね? 尾鷲先輩とか古座川先輩って二年ですよね? どう言う事なんでしょう?」


 キュキュ、キュゥゥゥゥゥ―――、

「あぁ、その事。彼女達って実は中学三年の時から此所に遊びに来てたんだよね。実際に入部したのは去年なんだけど、周りからしたら一昨年から居るみたいなもんで、勘違いしてるって所かしら」


「………高校って遊びに行けるもんなんですか?」


 キュッ、キュゥゥゥゥ―――、

「普通は無理かもしれないけど、この学校人数多いから。指定ジャージ着せとけばバレずに済む」


「………そうっすか………あっ、それともう一つ良いですか?」


 キュキュキュ、キュキュキュ―――、

「聞きたがりだねぇ。お姉さんが答えてあげよう」


「回想カオスの前に「もう一人居る」って言ってましたよね? その人は来ないんですか?」


 キュキュキュ、キュゥゥゥゥゥ―――、

「あぁ、彼の事ね。彼って色々な部活を掛け持ちしてるから、忙しいんだよね。まぁ、確実に後で会えるから、お楽しみ。ハート、とか付ける?」


「そうですか………」


 キュッ、キュッ、キュッ、キュッ―――、

「………完成」

 黙々と書いていた芦屋睦あしやむつが何処か満足気にペンを置く。


「………スイカの絵」

 フリップに書かれた「えっ? ペンで書いたんだよね?」と言いたく成る程上手いスイカの絵。


 数秒の沈黙。三郎は周りを見渡しスイカの絵を指さす。

「………あっ、ツッコまないと駄目ですか?」


「いや、別にツッコまなくとも良いだろう。と言うか、渾名書くだけであそこまでペンを走らせないだろ?」

 眼鏡をクイっと上げながらぶっちゃけちゃう。


「………因みに部長さんは何を?」


「ナイアガラの滝だ」


「上手いなオイッ!! もう何ソレ!? この数分の間にどんだけの力作書いてるんですか!?」


 見事に滝が流れている。


「………もしかして皆さんも?」


「ん? 私はそんな凄いのじゃないわよ」

 謙遜しながらも否定しないと言う事は天理も絵なのだろう。


「カステル・デル・モンテ」

 見事なお城だ。


「いやいやいや! 建造物! 遂には建造物!! てかそれ何ですか!?」


「イタリアにある世界遺産のお城。1ユーロセント硬貨の裏面にも書かれてるよ?」


「いや、よ? って言われてもユーロなんて見ないですし!! てかその画力!?」


 ホントにペンで書いたのだろうか、と思わせる程。


「私はそこまで上手く出来ませんでした」

 謙遜なのか、それとも前振りなのか。


「シャルトル大聖堂です」

 見事の一言。


「上手くってッ!! これが下手なら俺の書いた絵なんてクソ以下じゃないですか!!」


 何だろうね。もう専門道具で書いたとしか思えないね。確実にペンじゃないよね。


「………尾鷲先輩もですか?」


「んあぁ? 私そんな世界遺産とか知らないし、自然とか書くの苦手だからな。こんなもんだ」


 と、言って出したのは、


「アー○ー・キ○グ」


「まさかのォォォ!!!! てか、何その正確な絵ッ!! 所々血が付いてて「フ、中々やるな」的な表情なの!? てかそんなの書くなよォォォォ!!!」


「二代目だ」

 誰も聞いていない。彼女は、本当に好きなんだね。

 てか、スゲェ上手い。人物書く方が得意らしいね。


「………スイカ失敗………でも誇りに思う」


「何言ってるんですか!?」

 彼のツッコみスキルが上がっていると思うのは私だけだろうか?


「さて、充分に遊んだし、本題に行きますか?」

 背筋を伸ばしながら天理が言う。完全に三郎を苛めて楽しんでいる。


「………俺、今日で喉死ぬ」

 まだツッコみ終わりじゃないからね。もう天命だと思うしかないんじゃない?

























 一年B組教室


「それでは、出席を取ります。相川君」


「はい」


「天海さん」


「はい」


「網杉さん」


「ハイ」


「鮎中君」


「はぁい」


「飯田君」


「はい」


「家元さん」


「はい」


「生田君」


「はいッ!」


 点呼され、生徒が返事を返していく。

 まだ入学して間も無い事もあり、態度が悪い生徒はいない。制服は多少改造している子も居るが、それは別に校則違反ではない為問題は無い。


「島君」


「はい」


「島村さん」


「はい」


「瀬羽さん」


「はい」


「田口さん」


「はい」


「田村君」


「「「はい」」」


「あぁ、田村太一君」


「はい」


「田村一君」


「はい」


「田村洋一君」


「はい」


「鱈山さん」


「はい」


 田村が少し多いな。お決まりのギャグになりそうな感じがする。

 皆名前に漢数字の一が入ってるし。狙ったとしか思えないな。


「浜崎さん」


「はぁい」


「浜田君」


「はい」


「日比川君」


「うす」


「日和君」


「はい」


「水野さん」


「はい」


「向さん」


「はい」


 間違った気合いの入れ方をした不良モドキは居ないんだな。

 なんか「全員シメようかな」とか言い出す奴。

 もっと不良人口多いと思ったけど、そこまで居ないし。


「横田君」


「はい」


「横土君」


「はい」


「横浜さん」


「はい」


「竜王君」


 ………。


「竜王君?」


 ………。


「………欠席、と」



























 戻って来まして『御題倶楽部』部室。


「さて、では今日の御題の答え出して行くとするか」


「ハァ、ハァ………遅いっす」

 何故か息切れして円卓に突っ伏している三郎。場面が変わっていた間に何があったんだ? まぁ、容易に想像出来るけど。


「皆それぞれ書いたと思うが、………そうだな、琥珀君から出して行こうか」


「私からですか? では、私が考えた三郎君の渾名は、」


 バン、と効果音が付きそうな感じでフリップを出す。


『祭』


「………ん? えぇ、と………ん?」

 結構何度も見直したし確認もした。だが残念確実に『祭』と書かれている。


「成る程。演歌の三郎繋がりで『祭』か」

 と、理解して納得までしてしまう舞鶴。


「えぇ!? 推測出来るんですか!? 頭が年中お祭り野郎な感じかと思ったんですけど!?」

 頑張って考えて結果深読みし過ぎたらしい。


「………それもそれで面白いかもね」


「何神妙な顔で言ってるんですか!? 有り得ないから! 無理だから! 渾名の理由聞かれた時答え辛いじゃないですか!」


 乗っかろうとした天理に三郎は思わず立ち上がり抗議。

 理由、頭の中お祭り野郎………それはそれで面白い。


「でも三郎君はお祭りってイメージでは無いんですよね。どっちかと言うと………部屋って感じです」


 笑みを浮かべながら言う彼女に、きっと悪意は無い。これはイメージの話だ。深読みし過ぎて「はっ! テメェは部屋に篭もってパソ弄ってるのがお似合いだぜ! この根暗野郎!!」と勘違いしてはいけない。

 古座川は純粋に三郎のイメージを言っただけなのだから………。


「………なんか、胸が痛いです」


「恋?」


「違いますから」


「うむ。それでは次は芦屋」


「………これ」

 スッ、とフリップを出す。


『田村』


「………あぁ、と………ん~………」

 捻り出そうとするのだが、ぶっちゃけ出て来ない。


「農芸化学者の三郎繋がりね。でも渾名としては解りづらいかな?」

 理解してしまう天理。


「いやいや! 何で解るんですか!? 可笑しいでしょ! 完全に麒麟の方想像しましたよ!!」


「私はロンブーの方を想像した」

 と、ゲーム片手に尾鷲が笑う。


「………これしか浮かばなかった」


「………それ浮かんだだけで充分じゃないですか?」

 思わずフォローしてしまうのは彼の優しさなのだろうか。周りが良しとすれば今日から彼は田村になっていたのに。


「次は私だ」

 トン、とフリップを出す。


『関脇』


「………は?」


「力士の三郎繋がりで関脇か。何で天竜の方にしなかったんスか?」


「いやいや! 何で知ってるんですか!?」


「相撲も充分な格闘技だろ。格ゲーにも登場するし。………常識だろ?」

 「当たり前だろ?」的な表情を浮かべる尾鷲。


「常識じゃないから!! 全然知らないから!」


「天竜にしなかったのは天竜なんて格好いい渾名が付くのがムカついたと言う私情だ」


「本当に私情だな! オイッ!!」


「次は私だな。結構良いと思うだけど」

 バァバンッ、とフリップを出す。


『大空のサムライ』


「………確か、本のタイトルでありました、よね?」

 これは知っていたのか、少々自信なさげに周りに尋ねる。


「軍人の三郎繋がりで大空のサムライね。凄く格好いいね!」


「だろ!」

 と、古座川は尾鷲を褒め、尾鷲は胸を張る。


「………皆さんの知識の広さはどう言う事ですか?」

 その疑問は間違いじゃないよ。誰でも思うよ。


「良いけど、少し格好良すぎるわね。三郎君に海軍中尉程の凄さは無いわ」


「あれ、俺馬鹿にされてる?」


「ん~、それもそうだな」


「納得しちゃう!?」

 馬鹿にされているかは解らないが、からかわれているのは解る。


「最後は天理だな」


「ん~今回あんまり閃かなかったんだよねぇ」


『任三郎』


「………あれ?」


「天理にしては捻りがないな。まんまではないか」


「だから言ったでしょ? 昨日ドラマ借りて観直しちゃったからなぁ」


「だからって止めて下さいよ。似て無いし」


「で、最後はお前なんだけど、どうなんだ?」

 尾鷲は携帯ゲームの液晶画面に目線を落としながら三郎に尋ねる。


「やっぱり俺もやらないと駄目なんですね………」

 少し恥ずかしそうに手元のフリップを出す。


『サブ』


「誰かにそう呼ばれているんですか?」

 古座川の問いに恥ずかしそうに三郎は答えた。


「………姉とかに」


「ほぉう」

「うむ」

「へぇ」

「そうなんですかぁ」

「………成る程」


 何故か五人共「良いネタ手に入れた」と言った笑みを浮かべる。


「決定だな」

 舞鶴が眼鏡をクイっ、と上げる。


「え!? これで良いんですか!? いや、まぁ他のよりは良いかもしれませんが」


「良いじゃん。まるでサブキャラのサブみたいで」


「そっち!?」


「では、竜王三郎の渾名はサブで決定!!」

 天理が高らかに宣言。


「………まぁ、良いですけど」

 色々言いたい事はあるのだが、取りあえず喉を休める事が出来ると安堵の息を漏らす。


「では、新しく入った竜王三郎改めサブとの親交を深める為、………君には竜王教師の恥ずかしいあれやこれをぶっちゃけて貰おうか」

 舞鶴の眼鏡が光ってる。


 他の皆も笑みを浮かべながらジリジリと三郎へ迫る。

 まぁ、安堵なんてないよね。うん。

「は!? 無理っす! 無理です! 言ったの俺だってバレたら殺されちゃいますから!!」


「大丈夫よ。竜王先生ってサブに甘いと思うから」


「家での竜人ってどうなんだ? ん? 言ってみろよほら」


「竜王先生の私生活って凄く気になります!!」


「………気になる」


 それぞれ勝手な事を言いながら三郎を追い詰める。


「無理ですから! 本当に殺されます!!」


「大丈夫だ。この国では殺人は罪になる。そう簡単に殺しはしない筈だ」


「プライバシー!! 知ってますか!? これも法ですよ!!」


「そうだな。人間が破りやすい法の一つだな」


「………終わり!? 終わらないよ! 終われないよ!!」


「良いからゲロっちゃえよ! 言えば楽になるぜ?」


「強引は好きじゃないので、素直に言って下さい」


「………知りたい」


「アンタ等欲望に忠実だな、オィ!!」

 若干喉が掠れてきている。喉の法が先に終わるな。


「別に減るもんじゃないのに」


「俺の命が減ります! それどころかオーバーキルされちゃいますよ!!」

 ツッコむばかりでは逃げの突破口が開けない。


 何か無いか。と、辺りを見渡すもそんな物も者在る筈が無い。

 此所で竜王(姉の方)の秘密などをバラしてしまえば後で必ず首か大事な所が飛ぶ。もしくは捻り潰される。それだけは避けたい。


キーン、コーン、カーンコーン―――。


「!!」

 チャイムと言う名の助け。三郎の表情に笑みが零れた。

「ほ、ほら! チャイム鳴っちゃったのでお、終わりにしましょう! ね!?」


 袖を捲り、腕時計に視線を落とす舞鶴。

「ん? ………確かに。三時限目は確か現代文か」


「そうでしょ! そうでしょ!! ………………は?」

 舞鶴が落とした爆弾。それは時間差で爆発した。


「もうそんな時間? 私はぁ、化学かぁ」

 天理も腕時計を見ながら面倒臭そうに言う。


「次は………数学だ。次も出なくて良いな」


「駄目よメイちゃん。数字に強くないと就職が難しいよ?」


「大丈夫だ。私の将来に数字はコンボ数しか出て来ねぇから」


「それでも多少の計算は出来た方が良いでしょ? ほら、行くよ?」


「あっ、ちょっ! わ、解ったから! だから腕を引っ張るな!!」


 古座川に引っ張られ、尾鷲は部室から出て行く。


「………ッ!! 今日の定食はXランチ」

 と、呟きながら芦屋も部室を後にする。


「………………」

 未だに固まっている主人公三郎。


「何だサブ。まるで今まで戦ってきた敵が実は父親だった事を知った勇者みたいに固まっているぞ?」


「………………」


「駄目ね。完全に固まってる。………ちゃんと時間言えば良かったかな?」


「いや、普通に考えれば解るだろ? ………文字だけだから時間は経っていないと勘違いするのは良くあるパターンだ。君だけじゃない」

 慰める様に三郎の肩に手を乗せる。


「いっぱい喋ってたもんね。しょうがないよね。はいよしよし」

 何故か子供をあやす母親の様に三郎の頭を撫でる。


「………………」

 未だ固まっている。既にツッコむ事もしない。それだけショックだったのか。


「………竜王教師の事は後々聞き出すとするか」


「そうね。まぁ、自業自得って事ね」

 他人事の様にこの状況を処理しようとしてしまうこの二人は凄まじい強者だ。全くと言って良い程に罪悪感が微塵も無い。


「………だ、誰の………誰のせいだァァァァアアアァァアアアアアアアアアア!!!!」

 プルプル震え、今日一番の大きな声でツッコんだ三郎。


 この声を聞いた竜王(姉)が飛んで来て半殺しにされたのは言うまでもない。









「良いからゲロっちゃえよ! 言えば楽になるぜ?」


なんだろうね。うん。まぁ、あれだね。

俺知識的にパンクしちゃう。


三郎を頑張って捜したよ。

うん。此所でもあんまり語る事ないな。うん。


それでは、次も読んでくれたら嬉しいです。


「良いからゲロっちゃえよ! 言えば楽になるぜ?」



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