死神のお願い
「ねぇ、そこの君」
橋の下を覗き込んでいた僕は、声をかけられた。黒い服を着た綺麗な少女だ。
「僕のことを呼んだのは君かい?」
「そう、君があまりにも悲しそうな顔をしているから気になってしまって声をかけたのさ。私は、死神。君は死のうとしていたね?」
僕は、うつむいた。
「クラスのみんなからいじめられるんだ。僕が内向的で容姿も醜いから」
「ふうん。それよりさ、何か食べ物は持ってないかな? お腹がぺこぺこなんだ」
「あるよ」
僕は、給食で食べなかったパンを出した。
学校で食欲はわかない。気が休まるときがないからだ。
死神の少女は、美味しそうに全部食べた。
「ふう、美味しかった。お礼に君のお願いをひとつだけ何でもきいてあげるよ」
「何でも?」
「何でもだよ」
死神の少女は、ニヤリと笑った。
「じゃあ、僕と付き合ってほしい」
死神の少女は、心底驚いた顔をした。
「そんな願いでいいのかい?」
「もちろんだよ」
死神の少女は、呆れた顔をする。
「いじめられたのを復讐するとか、他にもたくさん願いがあったんだよ。億万長者になるとか」
「昔から僕は、人に蔑まれるのが当たり前だもの。君みたいな美しい人と一緒に入れるだけで幸せだよ」
死神の少女は、またニヤリと笑った。
「欲がないねぇ」
翌日、僕は死神の少女と手をつないで登校した。
みんなは、びっくりしていたんだ。
気分はよかった。
そりゃそうさ。僕を見る目がみんな違ったんだもん。
死神の少女は、校門前で、つないだ手を離し口元を歪ませた。
「これだけで満足かい?」
僕は、こくりと頷いた。
「君は欲がないね。もう一度チャンスをあげよう。ひとつだけ何でもお願いをきいてあげるよ。さあどうする? なんでも言ってごらん?」
死神の少女は、目を細め口元を歪ませた。
「君とずっと一緒にいたい」
死神の少女は、目を丸くした。
「何だって。まさかそんなお願いされるなんて⋯⋯もし、とんでもないお願いをしてきたら魂を抜き取るところだったよ」
死神の少女は、頬を膨らませる。
「もう私は、死神廃業するから」
「じゃあ、僕とずっと一緒にいてくれるってこと?」
「私は、君に惚れたよ。人間の君にね。人間にもこんな心が綺麗な人がいるなんて思わなかったよ」
夕陽が染まる橋の上で、死神の少女は微笑んだ。




