#65 香ばしい焼きそば
王都から帰ってきて数日経った日の昼頃。
カスミは昼食を作るべく、キッチンに立っていた。
(そうだ、この前買った中華麺使おう)
そこでなにを作ろうか考えた時に、つい先日、中華麺を買ったことを思い出したので、それを使った昼食を今日は作ることにした。
ちなみに、ここ数日でこの家のキッチンはレネとフィオによって改築されている。
王都の拠点のキッチンがこの家よりも立派だったので、今いる家に帰ったら改築しようという話はあったのだが、対抗心を燃やしたのか、かなり広いキッチンに様変わりしていた。
おかげさまで物を置けるスペースも増えたので、カスミのスキルで出した調味料を使いやすいように並べたりもできるようになったし、その他の空きスペースにはその内なにかレネに便利なアイテムを作ってもらって置いたりしたいと思っている。
そんな広く綺麗になったキッチンで、カスミは今日も料理をしていく。
とは言っても、今日作るものはとっても簡単な料理だ。
まずはキャベツを一口大に切り、同じくオークのバラ肉も食べやすいサイズに切る。
あとはもやしを洗えば下拵えはこれでもう完了だ。
「お、そろそろ飯か」
そうしてカスミがせっせと料理をしていると、アネッタがカウンター席にやって来て、キッチンを覗き込んできた。
「手伝いいるか?」
「いえ、今日のは簡単なので大丈夫ですよ」
「そうか。 なんか見慣れない麺があるな」
「これは中華麺って言って、この前市場で買ってきたんです」
「ああ、そういやこの前、なんか変な麺売ってる変人とカスミが仲良くなっちゃったってローニャが嘆いてたな」
「あはは…… まぁ、確かにアルデンテさんはちょっと変でしたけど、良い人ですよ」
アルデンテの言動は変だが、麺を作り、売りたいという熱意は本物だとカスミは思っているので、一応フォロー入れておいた。
「パスタ以外の麺なんてあるんだな」
「私の故郷には色んなものがありましたよ。 いくつかアルデンテさんに教えたので、作ってもらえるのが楽しみです」
カスミも一応、中華麺やうどんなどの作り方自体は知ってはいるものの、そこまで上手く作れる自信はないので、麺作りを生業としているアルデンテに任せるのが一番確実だと思っていた。
そんなアルデンテの話は一旦置いておき、カスミはフライパンでキャベツ、オーク肉、もやしを炒めて、油が全体に回ってキャベツがしんなりしてきたら中華麺を加えて混ぜ合わせていく。
そして、そこはウスターソースと塩胡椒を加えて、水気を飛ばしながらソースが全体に馴染むように炒め合わせていく。
「良い匂いしてきたな」
「ソースが焼ける匂い、良いですよね」
「なんて料理なんだ、これ?」
「焼きそばっていう料理ですね」
そんな焼きそばを作る時に香るソースの匂いは中々に食欲を刺激してきて、この世界でも焼きそばの屋台とか出たら人気出そうだなとカスミは思った。
実際カスミも祭りの屋台で作っている焼きそばは大好きだった。
なので、焼きそばのレシピはもちろん商業ギルドに登録するつもりだし、そのレシピを使ってアルデンテが中華麺を売ってくれれば、今は売れていない中華麺も売れるようになるだろう。
「よし、できましたよ」
「本当に簡単だな」
それからあっという間に焼きそばもできたので、皿に盛り付けてリビングのテーブルに運び、他のメンバー達と一緒に早速焼きそばを口に運んでいく。
「お、美味いな! パスタと結構違うし、味付けが濃くて良い」
すると、作るのを見ていたアネッタは焼きそばの味も気に入ったようで、もぐもぐと中々の勢いで食べ進めていった。
「これ、あの変人が売ってたやつにゃー?」
「そうですよ」
「……なんか美味しいの認めたくないにゃー」
そして、ローニャも焼きそばの味はとても気に入ったのだが、この中華麺を作ったのがアルデンテだと思うと、なんとも言えない感情になるようだ。
「そ、そんなに嫌ですか、アルデンテさんのこと」
「ああいう気障ったらしいのは好きじゃないにゃ!」
「おいおい、他人様のことをそんな風に言うな、ローニャ」
「クリスタはあれを見てないからそんなこと言えるにゃー。 見たら絶対うげーってなるにゃ」
基本的にお気楽で誰とでも仲良くなるタイプのローニャがそこまで嫌がるというのは逆に説得感があるようで、他のビフレストの面々はアルデンテに対してちょっと警戒心が芽生えたようだ。
カスミ的には今後もアルデンテとは良い付き合いをしていきたいと思っているので、あんまり嫌わないであげて欲しいのだが、カスミもあの鼻につく言動が好きなわけではないので、苦笑いすることしかできなかった。
まぁ、何はともあれ、美味しい食材を提供してくれたことは事実なので、それには感謝しつつ、香ばしく、それでいて食べやすい焼きそばをお腹いっぱいになるまで堪能するビフレストのメンバー達であった。
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