#3 パーティーハウス
「ここが私の住んでるところだよ」
「わぁ…… 大きいですねっ」
サミアンの街に辿り着き、入口の門から15分ほど歩いた場所にそれはあった。
形としては一軒家と言える形なのだが、横にも縦にもかなり大きく、家の裏手には庭やプールなんかもクリスタ曰くあるそうで、間違いなく豪邸と言える建物だった。
「おーい、誰かいるかー?」
その建物にカスミがクリスタと共に入ると、クリスタがそう声を上げた。
「ほいほーい。 どったのー?」
すると、その声を聞きつけて、身長140センチくらいの、小柄でよく日に焼けた褐色肌と真っ白の長髪を高めのポニーテールにした見た目は少女な人物がやってきた。
「えっ、なにその子! 可愛い!」
そんな少女は、クリスタに抱っこされているカスミを見て、そんな感想を述べた。
「こ、こんにちはっ。 カスミって言いますっ」
「わー、挨拶できて偉いね! 私はドワーフのレネだよ!」
(レネさん、とっても元気で可愛い女の子だ……!)
とてもハイテンションなレネを見て、カスミは内心そんな風に思っていた。
「んで、何があったのー?」
「魔の森に軽い運動がてら依頼を受けて行ってたんだが、そこでレッドウルフに襲われててな。 助けて、行く宛が無いようだから連れてきた」
クリスタがざっくりとカスミの境遇についてレネに伝える。
「そうなんだ! 怖かったねー、カスミちゃん」
それを聞いたレネは、カスミの頭をなでなでしていった。
「そ、そうですね」
「レネ、カスミは賢い子だから、そんな子供扱いしなくても良さそうだぞ」
そんなレネを見て、クリスタがそんな風に言う。
「そうなんだ?」
「そしたら、丁度いい。 カスミの着替えを用意してくれ。 レネの服ならカスミも詰めればギリギリ着れるだろ」
「了解ー!」
「私らはその間に風呂入ってくるな」
という事で、クリスタとカスミはこの家の風呂場へ向かった。
そこは家の豪華さに似合うような大きさと綺麗さで、湯船は一つだが余裕で10人くらいは入れそうな大きさをしていた。
「あ、そういえば、この前罰ゲームでメンバーが掃除したから、綺麗だな」
「あっ、そうなんですね……」
カスミは恩返しとしてお風呂掃除をする気満々だったが、掃除する必要がないくらい浴場は綺麗で、ちょっとガッカリした。
「ふふ、そんなに手伝いしたかったのか?」
「はい…… いっぱいお世話になったので……」
「そうか。 まぁ、他にも手伝えそうな事はあるだろうから、とりあえず今は体を綺麗にしよう」
それからカスミは、クリスタと共に服を脱いで浴場に入った。
「シャワーの使い方は分かるか?」
「多分大丈夫ですっ」
「そうか。 こっちがシャンプーでこっちがボディソープな」
どうやらシャワーやシャンプーなどの容れ物の作りは地球と大差ないようで、カスミにも問題なく使えた。
ただ、シャンプーやボディソープは地球のものよりは少し質的には劣っていた。
(街並みとか服装を見るに、一昔前の西洋っぽい感じだったな。 魔法とかがあるからはっきりとはしないけど、文化レベルもそのくらいかも)
まぁ、とりあえず普通の生活ができそうなくらいの文化レベルはあるようなので、カスミは一安心していた。
(それと、やっぱり子供になってる…… 私、小さい頃こんな感じだったっけ)
そして、浴場には鏡もあり、改めて自分の姿を確認してみたのだが、恐らくカスミが10歳くらいの頃の体に戻ってしまっていた。
(若返ったのは嬉しい気もするけど、ここまで若返っちゃうのは逆に不便かも……)
そんな事も思いつつ、その後はクリスタが背中を洗ってくれたり、逆にお礼も兼ねてカスミがクリスタの背中を流させてもらったり、2人で一緒に湯船に浸かって一息吐いたりと、心も体も温まる時間をカスミは過ごさせてもらった。
見知らぬ世界に来て、頭の中は不安でいっぱいだったが、それも少し落ち着いてきた。
「綺麗になったな」
「はい。 ありがとうございました」
「良いんだ」
「おっ、上がったー? 着替えそこに置いてあるからねー!」
丁度風呂から上がるタイミングで、レネが着替えを持ってきてくれた。
それから体や髪をしっかり乾かし、レネが用意してくれた着替えにカスミは袖を通していく。
用意されていたのは、シンプルな白シャツに膝上くらいのショートパンツで、素材が良いのか普通に着やすくて動きやすかった。
ただ、それでもサイズはちょっと大きかったので、ショートパンツはベルトでしっかりと締めて落ちないように固定させてもらった。
「おっ、リンちゃん可愛いー! それに、綺麗になったね!」
着替え終わったカスミを見たレネは、そんな感想を言ってくれる。
「あ、ありがとうございますっ。 服もっ」
「いいのいいの! でも、もっと可愛い服着てもらいたいし、ぶかぶかじゃ不便だから、明日とかに服買いに行こ!」
「分かりましたっ。 その、お金は働いて返すので、何かあったらなんでも言ってくださいっ」
「へぇ、何でもー?」
「は、はいっ」
「ふーん? なら、お姉さんとあんな事やこんな事を……♡」
「こら、カスミをいじめるな」
手をわきわきさせながらカスミに迫るレネの頭に、クリスタがチョップを落とした。
「あいたっ。 ……もー、いいじゃん、ちょっとふざけただけだよー」
「カスミは真面目だからそういうのも真に受けちゃうんだ」
「そっかー。 ごめんね、カスミちゃん! 怖かった?」
「い、いえっ、大丈夫ですっ」
実際、命を救われた訳なので、クリスタやレネが望む事なら何でもしようとカスミは思っていたが、クリスタやレネが酷いことを望んでくるとは思っていなかった。
「そっかそっか」
「レネ、他の奴等は?」
「一人は寝てて、あと二人は外出中!」
クリスタの問いかけにレネはそう答える。
「寝てるのはフィオか。 まぁ、起こすのも面倒だから、あいつには後で言えばいいな。 よし、カスミ。 ちょっと今後の話をしようか」
「は、はいっ」
という事で、場所をリビングに移し、テーブルを挟んでクリスタとレネと向かい合う形で、カスミはソファに腰掛けた。
「回りくどく言ってもだから、本題からな。 カスミは今後、何かしたい事とか、行く宛はあるか?」
「いえ…… 正直、右も左も分からなくて……」
「だよな。 となると、カスミにはいくつか選択肢がある。 一つは孤児院に入ること。 この街の孤児院はしっかり整備されているから、衣食住の問題はないし、同年代の友達もできるだろう」
(う、うーん、この体的にはそうかもしれないけど、精神的にはちょっと……)
「もう一つは、この家で暮らす事だな」
「い、良いんですか……?」
「カスミをこのまま一人で放り出すという選択肢は無いからな。 孤児院が嫌なら、私達が保護するのが妥当だろう」
「でも、迷惑じゃ……」
「迷惑なんて事ないよー! カスミちゃん、可愛いし!」
クリスタの隣にいるレネがそんな風に言ってくれる。
「まぁ、タダでもいいが、カスミが気にするみたいだから、カスミにはこの家の掃除や洗濯をしてもらう。 この家は広いから、丁度家政婦でも雇おうかと思ってたし、カスミがやってくれるなら非常に助かる」
「や、やりますっ! お役に立たせてくださいっ!」
カスミはそう言って頭を下げた。
(異世界で初めて会った人が優しいクリスタさんで良かった。 命も救ってもらったし、できる事なら何だってしたいっ)
「ふふ、そんな意気込み過ぎないでいい。 レネも言っていたが、カスミは可愛いから、居てくれるだけでこちらとしてはありがたいくらいだ」
「あ、ありがとうございます……! えっと、これからお世話になりますっ」
「ああ、よろしくな、カスミ」
「よろしくねー!」
話し合いの結果、ひとまずはこの家にカスミはお世話になることになった。
「そうしたら、まずは家の案内からしよう」
それからカスミは、クリスタとレネと一緒にこの家を見て回っていった。
いざ自分の足で歩いてみると、この家はかなり広くて、掃除するのもかなり大変そう。
恐らく、何日かに分けて掃除していくことになるだろうなとカスミは思いつつ、一階は見終わったので、二階に上がっていく。
「二階は主に私達の自室がある」
「カスミちゃんはこの部屋使っていいよ!」
「えっ、私なんかに部屋を……?」
「ここは元々客室で、誰も使ってないから気にしないでいい。 そのせいでベッドくらいしかないから、今度家具も買いに行こう」
「そ、そんな、ベッドで寝れるだけでもありがたいので、家具とかは……」
「もー、カスミちゃんは遠慮しすぎだよっ!」
「わぁっ……!?」
遠慮してばかりのカスミを、レネがお姫様抱っこの形でヒョイっと抱き上げた。
「この家で暮らすんだから、カスミちゃんは私達の家族みたいなものだよ!」
「そうだな。 家族からの厚意に遠慮など必要ない」
「家族……!」
その言葉は、カスミの心に深く突き刺さった。
地球にいた頃、家族を喪い、大切な場所もなくなり、何も無くなってしまったと思っていたカスミにとって、家に迎え入れてくれるばかりか、家族とまで呼んでくれるクリスタとレネに、カスミはもう喜びと感謝の気持ちが溢れ返ってしょうがなかった。
「ぐすっ……」
「あ、あれ!? カスミちゃん、大丈夫!?」
「レネ、泣かせたな……?」
その感情は涙として表れたのだが、それを見たレネとクリスタは、嫌な事をしてしまったのかと慌て始めた。
「えぇっ!? ご、ごめん、なんか変な事言ったかな!?」
「ち、違くて…… 嬉しくて……!」
その後も嬉しさが爆発して泣き出してしまったカスミを見て、オロオロするクリスタとレネの温かさに感謝しつつ、家族にしてくれてありがとうと、カスミは正直に伝えるのであった。
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