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#24 ケーキと共に、打ち明ける

「「「おぉ〜〜……!」」」



 現在、出来上がったショートケーキをリビングのテーブルに運んだのだが、作るのを見ていたフィオとローニャ以外の3人が、カスミの作ったケーキを見て、その美しさに思わず感嘆の声を漏らしていく。



「こんな見事なケーキをカスミが作ったのか?」


「はいっ」


「凄いな…… この国の王城でのパーティーに呼ばれた時に見たケーキより、断然こっちの方が美しい」



 ショートケーキを見てうっとりとした表情を浮かべながら、クリスタがそう言ってくれる。

 


「食べるのちょっともったいなく思っちゃうね!」


「貴族のパーティーで出る奴は見た目はそこまで悪くないが、問題は味なんだよな…… 俺はあんま好きじゃなかった」



 レネとアネッタもそれぞれそんな風に言って褒めてくれ、カスミはとても嬉しくなった。

 


「じゃあ、切り分けますね?」



 見た目はもう大いに気に入ってもらえたので、問題の味の方を確かめるべく、カスミはショートケーキを切り分けて、それぞれの皿に載せていった。



「断面も綺麗にゃ!」


「生地を切り分けて作ってたのは、このためだったんだ〜……」



 ローニャとフィオの言う通り、カスミの作ったショートケーキは、生地の層とクリームの層に分かれており、クリームの層にはカットされたいちごが顔を覗かせていた。



(私の作ったケーキが皆さんに綺麗と言ってもらえるの、凄く嬉しい……!)



 カスミも子供の頃、祖父と祖母が買ってきたケーキに魅入られ、パティシエになった。


 そんな自分が作ったケーキが、誰かを魅了しているというのは、カスミにとって何よりも嬉しい事なのだ。


 だが、もちろんカスミのケーキは見た目だけじゃない。



「食べていいか、カスミ?」


「もちろんですっ」



 クリスタの問いかけに自信満々でカスミがそう答えると、カスミ以外のメンバー達はフォークでケーキを切り取り、同じタイミングで口に運んでいった。



「「「「「……っ!?」」」」」



 すると、全員の目がカッと開き、声にならない声が上がった。


 そんな彼女達の口の中には、上品なクリームの甘さとなめらかな食感に、牛乳とバターの風味、スポンジのふわふわな食感、イチゴの素材由来の酸味と甘さがいっぺんに広がった。


 それにより、口の中だけじゃなく、脳から全身へと幸福が広がっていくような感覚に襲われた。



「美味しい…… いや、そんな陳腐な言葉で表していいものなのか、これは……♡」


「す、凄いよこれー……♡!」


「これを食べるために生まれてきたのかも〜……♡」


「あまあまにゃー…… ♡! うまうまにゃー……♡!」


「こ、これ本当に食い物か……♡!?」

 


 口々に感想を述べるビフレストのメンバー達は、一口食べただけで全員が理解した。


 これが至上の甘味だと。


 もはやずっと口に残しておきたいと、本気で全員が思っていた。


 そんな感動に打ち震える他のメンバー達を見て、カスミはもう笑みが止まらなかった。



(クッキーで凄い良い反応もらえたから、ケーキはもっと喜んでもらえるだろうなと思ってたけど、想像以上に喜んでもらえて嬉しい!)



 そんな風に思いつつ、カスミもショートケーキを口に運んでいった。



(ん〜♡ 我ながら美味しい! やっぱり、ケーキは人を幸せにしてくれるね)



 自分で作ったケーキを自画自賛しながら、恩人である面々と共にケーキを頬張れる幸せをカスミは噛み締めていく。



「紅茶とも合いますよ」



 キッチンにあった茶葉で紅茶も入れてみたのだが、ケーキを食べた後にそれを飲むと、ケーキの甘さがスッキリと流され、口内には幸せな余韻だけが残った。


 その後、黙々とビフレストの面々はケーキを味わってくれ、先程よりも小さめに切った2個目を全員が当たり前のように食べ、ホールで作ったショートケーキは、明日来る商人の人のために残した一切れを除いて、あっという間に全て無くなった。



「カスミ…… ありがとう、こんな素晴らしいものを食べさせてくれて」


「そう言ってもらえて嬉しいです」



 そう言うクリスタを始め、全員から心の底からの感謝を伝えられたカスミは、決心を固めたような面持ちで皆に向き直った。



「えっと、皆さんにお伝えしなきゃいけない事がありますっ」



 そう切り出したカスミは、自分が異世界出身である事や、神様にこの世界の食文化をできる限りの範囲で発展させて欲しいと頼まれた事を伝えた。


 そんな内容をカスミが話し終えるまで、ビフレストの面々は静かにカスミの話を聞いてくれた。



「……これが、私が隠してた事です」


「そうか。 よく話してくれたな」



 チェアリィに異世界出身であることを伝えても大丈夫だとは言われているものの、カスミはやはり、打ち明ける事に対しての不安は拭えなかった。


 だが、そんな不安そうにしているカスミを、慈愛のこもった表情でクリスタは見つめていた。



「ふふ、そんな不安そうな顔するな。 まさか、異世界出身だから私達がカスミを追い出すとでも思ったか?」


「そんな事は無いって信じたかったんですけど、やっぱりどこか不安で……」


「まぁ、そうだよな。 大丈夫だ、カスミ。 カスミが異世界出身だろうがなんだろうが、私達はカスミという一個人を好きになったんだ。 これまで通り、ここに居てくれていい」


「クリスタさん……!」


「むしろこっちが一緒に居て欲しいってお願いしたいくらいだよ!」


「ん、カスミちゃんがいない生活なんて、もう考えられない〜……」


「カスミはもうローニャ達の仲間にゃ! 家族にゃ!」


「俺達を信頼して、秘密を話してくれてありがとな」


「レネさん、フィオさん、ローニャさん、アネッタさんっ……! うぅ……!」



 拒絶されたらどうしようというカスミの不安は、ビフレストの面々があっさりと吹き飛ばしてくれ、しかもカスミにとっては何よりも嬉しい言葉を沢山かけてくれたことで、カスミの涙腺はあっさり決壊し、大粒の涙がこぼれ始めた。


 そんなカスミを、ビフレストの面々は代わる代わる抱っこしたりなでなでしたりと可愛がってくれ、それもまた嬉しくて、カスミはしばらく嬉し涙を流し続けるのであった。




 *




「お、落ち着きました……」



 カスミが泣き出してから30分以上が経過した頃。


 ようやくカスミの精神状態は平常に戻ったのだが、脇目も振らずに泣きまくってしまった事を冷静になった頭で思い出してしまい、カスミは恥ずかしさで顔を真っ赤にしながらソファで縮こまっていた。



「そんなにローニャ達のことが好きなんにゃねー♡」


「あぅぅ……」


(改めて言われると恥ずかしい……! 泣いてた時もなんか沢山好きとか、ずっと一緒にとか言っちゃった気がする……)



 それらの言葉は紛れもなく本心ではあるものの、だからこそ恥ずかしいもので、カスミはもう耳まで真っ赤にしてしまっていた。



「あ、でも、カスミちゃん前世では30歳だったなら、子供扱いはもうしない方がいいかな?」


「俺達からしたら30歳も子供だけどな」



 レネの呟きにアネッタがそう返す。

 


「そうなんですか……?」


「少なくとも、全員カスミの倍は生きてるからな」


「えっ……!?」



 それから聞いたところによると、クリスタは150年、レネは100年、フィオは300年、ローニャは80年、アネッタは120年前後それぞれ生きているらしい。


 というのも、種族的にエルフのクリスタや龍人のアネッタは長生きなのに加えて、体内の魔力量が一定量を超えたり、スキルや体を鍛えたりすると、普通のヒト族でもこの世界では数百年生きることができるそうだ。



「み、皆さん長生きですね……」


「カスミちゃんも他人事じゃないよ〜……?」


「えっ?」


「カスミちゃんの魔力量は、ヒト種にしては凄い多いから、今の段階でも数百年は生きるんじゃないかな〜……? スキルとか魔法の練習してるおかげで魔力量もどんどん増えてるから、このままいけば私達と同じくらいの生きるかもね〜……」


「えぇっ!?」



 まさかの事実をフィオが呑気に教えてくれた。



(わ、私、そんな長生きするの……!? ま、まぁでも、皆さんと同じくらい生きられるっていうのは嬉しいかも……?)


「まぁまぁ、この先長い人生のことにゃんて、今悩んでもしょうがにゃいにゃー」


「そ、そうですね」



 ローニャの言う通り、確かに今考えても何かが変わるわけでもないので、カスミは寿命に関してはとりあえず考えないことにした。


 そんな新たな事実が判明したり、カスミの秘密を打ち明けたりはしたものの、結局これまでと何かが変わるわけでもなく、その後はいつも通りの時が過ぎていくのであった。

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