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#15 体力作り

「アネッタさんは冒険者ギルドで依頼を受けてたんですよね?」


「ああ、そうだな」



 クッキーを通じてカスミとアネッタの距離は少し縮まり、今は2人でソファに座っておしゃべりをしていた。



「戦うのがお好きだって聞きましたっ」


「戦いは俺の生きがいだからな」


「凄いですね。 私は魔物に襲われた時、怖くて何もできませんでした……」



 こちらの世界に来てすぐ襲われた狼の魔物の事は、今でも思い出すだけで少し体が震えてしまう。

 


「それは力がないからだ。 力を付ければ、立ち向かう勇気だって自然と湧いてくる」


「そうなんですかね?」


「別にこの街の中だって安全な訳じゃねぇぞ? 比較的治安は良い方だが、犯罪を起こす奴とか、子供を攫っちまう奴がたまに出る」


「それは、怖いですね……」



 カスミはまだこの街の明るいところしか見ていないが、街の外れには小さなスラムがあったりする。


 そこでは領主が食料の配給を定期的に行なっていたりはするそうだが、殺気だっている者がそれなりの数いるそうだ。



「お前は特に見てくれが良いから、そういうのに見つかったら絶対目を付けられるぞ」


「ええっ……」


「どうせ過保護なクリスタの事だから言われてるとは思うが、一人では出歩かない事だ。 俺らの誰かといりゃ、手を出してくる奴はいねぇよ」


「分かりましたっ」


「ま、お前も一人で外行きたい時も今後あるだろうから、自分の身は自分で守れるくらいの力を付けるのを勧めるぜ」


(確かに、日本みたいに平和な訳ないよね…… 監視カメラとかもない訳だし……)



 この世界に来てからクリスタ達と一緒にいたからあまり治安の悪さを感じたりはしなかったが、この街も確実に現代日本よりは治安が悪いのだろう。



「何なら俺が鍛えてやろうか?」


「えっ、いいんですか?」


「パーティー単位の依頼がない時は暇だから個人で依頼受けてんだ。 だから、暇潰しになりそうだし、いいぞ」


「じゃあ、お願いしますっ」



 という事で、カスミとアネッタは余裕で走り回れそうな広さがあるこの家の庭に出た。



「とりあえず、現状どれくらい動けるか見るか。 向こうの壁までダッシュで行って戻ってこい」


「分かりましたっ」



 まずはカスミの現状の運動能力を測るべく、往復で80メートルくらいの距離を全力ダッシュしてみる。



「はぁっ…… はぁっ…… あっ……!」



 しかし、もう少しでゴールかと言ったところで足がもつれてしまった。



「……っと、大丈夫か?」



 だが、地面を転がる前に、離れた場所にいたはずのアネッタが目にも留まらぬスピードで駆け寄り、カスミを抱きとめてくれた。



「あ、ありがとうございます、アネッタさん」


「おう。 ……しっかしお前、体力ないし足遅いな」


「あうう……」



 助けられたのは良かったが、その代わりにアネッタから辛辣な一言をいただいてしまった。



(子供の体に慣れてないのもあるけど、私地球にいた頃から運動神経ないんだよね……)



 カスミの運動経験は学校の体育くらいだし、元々の運動神経もそんなに良くなく、運動会とか球技大会とかは割と嫌いなタイプだった。


 加えて、子供の体で走るのに慣れてなくて、ドタバタした走り方になってしまっていた。



「そうしたら、とりあえず体力作りと軽い筋トレ、あと走り方の練習だな」



 それからカスミは、アネッタにまず走り方のフォームを教えてもらった。


 今まで走り方など考えた事もなかったし、そもそもこの体で走る事に慣れていないのが逆に功を奏し、割とすぐにフォームは身についた。



「お、いい感じだな。 それじゃあ、そのフォームでそんなスピードは出さなくていいから庭3周くらいして来い」


「はいっ」



 アネッタに言われた通り、カスミはフォームを意識しつつ、軽くジョギングで庭を周り始めた。


 すると、明らかに先程よりも足がスムーズに出るようになって、ちょっと走るのが楽しくなった。



「ふぅぅ……」


「お、走れたか。 ほら、水飲め」


「あ、ありがとうございます……」



 大体庭3周で1キロないくらいの距離を何とか走り終えると、アネッタが水の入った水筒を渡してくれた。


 それをカスミはくぴくぴ飲んでいったのだが、途中でアネッタが球体のようなものを上下に持ち上げているのが目に入った。



「アネッタさん、それは?」


「ん? ああ、これは魔力込めると重くなる道具だ。 待ってる間暇だったから部屋から持ってきた」


「どれくらい重いんですか?」


「200kgくらいじゃないか?」


「に、200っ……!?」



 カスミが想像してた数字と桁が2つくらい違い、思わず変な声が出てしまった。


 しかも、アネッタはそれを片手で涼しい顔で上げ下げしている。



「あ、アネッタさん、凄いです……!」


「そうか? ……褒められると悪い気はしねぇな。 ま、カスミは道具使っての筋トレは早いから、腕立てしとけ。 キツかったら膝ついていいから」


「は、はいっ」



 アネッタのパワーに驚きつつ、カスミはその後、膝をついての腕立て伏せを5回3セット、スクワットを10回3セットこなしていった。



「はぁっ…… はぁっ……」


「最初はこんなもんだな」


「あ、ありがとうございました……」



 それが終わる頃には、カスミの体には中々の疲労感が溜まっていた。



「泣き言一つ言わなかったのは褒めてやるが、同い年に比べてもカスミは弱弱しいから、最低でも週に3回は今のメニューやれよ。 それがキツく無くなる頃には結構動けるようになってるだろ」


「キツくはありましたけど、アネッタさんに見てもらえたので、結構楽しかったです」


「ふっ、可愛い事言いやがって」


「わぁっ……!」



 言われた通りにトレーニングを一生懸命やりきったカスミを認めてくれたのか、アネッタは笑みを浮かべながらカスミの事を片手で抱え上げた。



「汗かいたろうから、風呂行くぞ」


「あ、はいっ」



 その後はアネッタと一緒に風呂に入って汗を流し、色々と他愛のない話をして仲を深めていくカスミなのであった。


ここまで読んでくださり、ありがとうございます!

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