五人の女神様
※童話にしては怖い表現が含まれています。
遠い空のかなた。
この星とはまた違う。美しい星がありました。
その星には、"生命の木"と呼ばれる黄金の大樹が存在し、みんなそこから産まれます。
心の深い場所で繋がった、絶対に違わない父と母。
個々の優秀な遺伝子のみを抽出し、病とも無縁な丈夫な体。
絶対に安全な妊娠期間と出産。
その後の人生も、太陽のように暖かく眩い。
彼等はきっと、別の星から見た時には"神様"と呼ばれる存在です。
その星では"生命の木"から産まれる命しか存在してはなりません。
それ以外は邪道で穢らわしいものです。そんな者達は、その星の2割。光の差さない暗い土地に閉じ込めてしまいましょう。
残りの8割を"生命の木"で産まれた、由緒正しき者達が、光の下で輝ける世界にしましょう。
この星は、強く美しい5人の女神が統治します。
"白の女神"は聡明で、知的好奇心と探究心を持ち、透き通る眼で真実を捉える。
"緑の女神"は思慮深く、聖母のように穏やかで、癒しと平穏を世界に蒔く。
"金の女神"は寛大で、全てを受け入れ包み込む、その御心に悪でさえも眠りにつく。
"青の女神"は神秘的で、優雅と優美を体現する、その美しさに全てのものが感嘆する。
"赤の女神"は力強く、破壊と再生を司る、その業火は罪人の罪をも洗い流す。
彼女達はこの星の頂点に君臨し続け、この世界の平和と安寧は、長く長く守られてきたのです。
しかし、ある時、白の女神は光の差さない暗い世界に興味を持ちました。
『一度も踏み込んだ事のないあの世界には、どんな景色が広がっているんだろう。』
彼女は"生命の木"から産まれたにも関わらず、その暗い土地に足を踏み入れてしまったのです。
そこには、独自の国家が誕生していました。
君臨していたのは"黒の王"。彼は非常に冷酷で、感情が無く、不確かで、先導者でありながら破滅を呼び込む異質を持っていました。
白の女神は言いました。『何故あなたが王なのか。』。
黒の王は言いました。『分からない。誰かが王を欲していた。』。
それから、白の女神は暗い土地へ足を運ぶようになりました。
暗い土地の者達は、見れば見るほど滑稽で、無駄が多く、千差万別。争いが多く、煩わしく、理解し難く、自由奔放。なのに、何故か、光差す土地よりも、豊かな部分を持っていました。
白の女神は言いました。『私達は、理想と強制を手に入れ、歩みを止めてしまった。』。
それに黒の王は答えました。『ここは醜く穢らわしい。貴方は光のように美しい。』。
白の女神と黒の王は互いに惹かれ合い、互いを愛するようになりました。
ですが、そんな秘密も長くは続きません。
光差す土地の民衆は、女神達を咎めます。"白の女神は愚か者。怠惰で傲慢。失墜した。"
それでも、他の女神達は、白の女神を守っていました。
けれど、容認しえない事態がおきます。
白の女神に、新しい生命が宿ったのです。それは、生命の木を介さない愚鈍な行為。
白の女神は言いました。『私は彼を愛してます。彼も私を愛してます。私も彼も、この子を愛してます。』。
ですが、認められません。絶対に。愚かで愚かで愚かで愚かで愚かで愚かで愚かで愚かで愚かで愚かで愚かで愚かで愚かで愚かで愚かで穢らわしい。
白の女神は逃げました。
暗い土地へ逃げました。
暗い土地の全ての者が、彼女を命を賭して守りました。
お腹で育んだ16ヶ月。白の女神と黒の王の下に、新たな生命が誕生しました。
けれど、それと同時に、白の女神の命の灯は消えてしまったといいます。
黒の王は悲しみました。悲しみ、怨み、傷つき、憎しみ。全てを破壊せんとしましたが、それを留めたのは、愛した女性とその子供の笑顔だったそうです。
白の女神の席は未来永劫、頂点に君臨することは無いように。光差す土地と、暗き土地には、今まで以上に、強固な壁と差別を。白と黒の間に産まれた子供には追放を。
そうして、この物語は幕を閉じました。
白と黒の間に産まれた神様が、心を求めて彷徨ったのは、また別のお話し。
他に執筆している作品に繋がる童話を書きました。




