想像の封印という名の自家中毒
「君が亡くなったのは、なぜだかわかるかい?
それは想像を吐き出さなかったからだよ。
想像力は毒にも薬にもなる。
いわば自家中毒だ」
「ちょっと待って。いったい何を言っているのかわからない。ここはドコ?」
あたりは真っ暗闇。目の前を光の粒子がとんでいる。
「あーそうだね。ここは有り体にいえば、黄泉の世界。
――君たちの好きな言葉でいえば転生回だ」
「転生って僕は亡くなったの?」
「そうさ亡くなった。
あの晩、君は君の産みだした想像という毒に侵され世を去った。
ずいぶん心の声がうるさかっただろう。
夜も寝れなかっただろう。
人にも相談しなかっただろう。
君は知っていたはずだ。紙に書き出せばスッキリしたと、なぜそれをしなかったんだ」
「それは…」
僕は口ごもった。
「私は知っている。
全部見ていたからね。
君は作家をしたかった。
でも…自分には才能がない。
はずかしい。
お金の心配…。
そして書き出せば、その夢に執着をしてしまうから、書くのを辞めた。
ちがうかい?」
「そうです…」
――聞きたくもない事実だった。
「だからここにいるのだよ」
「あなたは神様なのですか」
「そうだね。そう言われることは多い」
「では、ここで希望を聞かれて転生できるってことですか?チート能力とか…僕は文才が欲しいです」
僕はずっと望んでいた。
そんな力を
アニメを見て
ラノベを見て
僕にもチート能力がと…
「いや…
残念ながら、君にはそんなものは与えれない。
そうだな。
これから君を、図書館司書の10歳の息子として転生させてあげよう。
これから行く世界は、本に飢えていて、無名作家でも図書館に自作の本を置いてもらえる。
上手くいけば作家としてデビューもできる。
それにこれから行く世界は18歳で成人だから、あと8年はお金の心配をせず創作活動ができるし、父のつてを使えば、司書をしながら、創作を続ける事ができる。
そして…忠告しておくが
今回も同じ事をすれば
また同じ結果となる。
これでいいだろう。じゃあな~」
「ちょっと。まってください…あっ」
暗闇から光は消えていた―――
――――――――――――――――
「パイン…パイン…
あーようやく気が付いたか」
ここはどこだ。
この人は…頭がいたい…
あ…なにか別の記憶が頭の中に入ってくる
あーそうか。
この人は僕の父親。図書館司書の父親。。。
僕はずっと病気がちで、そうか。
昨日が峠で、その時に、僕がこの子の魂と入れ替わったのか。
うん。この子の最後の記憶の残滓が残っている。
「お兄ちゃん。
僕はもうだめだ。
僕の体を使って、精一杯生きて。
僕の体をいろんな所に連れて行って、できれば僕を大切にしてくれた人を、大切にして…」
ポロポロポロ――――
気が付くと涙がこぼれていた
「パイン…パイン… あー辛かったんだな。
もうだいじょうぶ。
だいじょうぶだよ。
あーそうだお腹すいていないかい。
お前の好きなアップルパイを母さんが焼いてくれたんだ。
食べるかい。
それともまだ食欲ないかい?」
グー…
「ふふふ――どうやら、体は正直なようだ。
母さん。母さん。
パインが目を覚ましたんだ。
お腹がすいているようだから、アップルパイを食べさせてやってくれ。
それとパインが好きなはちみつのたっぷり入ったホットミルクティも」
「はーい。ちょっとまってね」
とてもとても暖かい言葉だった。
声の余韻が僕を毛布のように包み込む。
この人たちが僕を親か。。。
うんわるくない。