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聖女様に転生したので転生ヒロインかと思ったら、利用されてるだけでした。でも頼りになる隣国の第二王子殿下に保護されて、なんとかなりました。

作者: 下菊みこと

私はアース。


平民だから苗字はない。


そんな私だけど、なんと聖女の力に目覚めた!


そんな私は、仲間…剣士のガウェイン、魔術師のランスロット、退魔師のトリスタンとともに魔王討伐の旅に出ることになった。


故郷の家族とは、いつか帰るからと泣き別れたが…幸いにして、うちの町は比較的安全だからきっと魔王さえ討伐すればまた元の暮らしに戻れる。


だから頑張って、魔王を倒すぞ!


…なんだけど。


実はここだけの話、私にはこの世界に生まれる前…前世の記憶がある。


地球という世界の日本という国で生まれ育った前世の私は、乙女ゲームという遊戯にハマっていた。


その乙女ゲームという遊戯によくある設定と、今の私の状況は酷似しているのだ!


こういう感じの乙女ゲームそのものがあった記憶はないが、ヒロインが聖女で周りの貴公子と恋に落ちるというのは鉄板ネタだ。


つまり私は、転生ヒロインという奴かもしれない…この中の誰かと恋仲になっちゃうの?それとも旅先で出会った殿方と?きゃー!!!最高!


しかも今世の私は白髪に赤い瞳で、麗しの乙女と呼ばれるほどの美貌もある。


これはワンチャンあるのでは?!


本当に転生ヒロインなのでは?!


あーもー、それなら事前にプレイして内容を知っておきたかった!


でも仕方ない、初見プレイで頑張りましょう!!!
















旅をする中で、当然国を出て一番先に着く国は隣国グラストンベリー王国。


王国といっても本当に小さな小さな国だが、平和な素敵な国だ。


隣国の王族は私たち魔王討伐部隊をとても手厚く歓迎してくれた。


特に第二王子殿下…ギュスターヴ様は常にすごく情熱的な目で私を見つめて…。


紫の髪に紫の瞳の神秘的なその人は、魔王討伐が叶ったら私を嫁に欲しいと言ってくれた。


「ギュスターヴ様…でも、私は平民で…」


「ですが貴女様は聖女でいらっしゃいます。それに魔王討伐が叶えば、貴女様はきっと第二王子妃に相応しいと言われるようになるはずです」


「ギュスターヴ様…」


「好きです、アース様。どうしても、貴女が欲しい。一目惚れなど、浅はかかもしれません。ですがこの燃えるような想いは抑えられないのです」


「わかりました、では…魔王討伐が叶ったら、きっと夫婦になりましょう」


フラグが立ったー!


やったー!


ということで私はその次の朝意気揚々と城を出て、次の国に向かった。


その後もいくつかの国を旅して回って、ようやく魔王城についた。


魔王城の一番奥で、魔王は言った。


「来たか、聖女よ。はやく余を眠りにつかせてくれ」


「え…」


「抵抗はせぬ。余はな、呪われておるのだ。余が起きているだけで、余の周囲のものは人間でも動物でも植物でも、物ですら魔族や魔獣、魔物になってしまう。だから、また千年の眠りにつかせてくれ。眠っている間は、何も起きぬからな」


「そんな…」


魔王にそんな理由があったなんて…!


「聖女様、魔王の言葉に耳を貸してはいけません!早く眠りの呪文を!」


「…」


私はランスロットくんの言葉を無視して祈りを捧げた。


魔王の呪いを、そして魔王の周囲の受けた呪いを…癒してくださいと。


神に祈った、誠心誠意祈った。


その結果。


「これは…」


「瘴気が薄れていく…?」


「あなた!」


「パパー!」


「リュシー!?レン!?目覚めたのか!?」


棺に眠らされていた、おそらく魔王の家族であろう人たちが解放された。


魔王のそばに侍る魔族たちも人間に戻った。


なにより魔王自身も、人間に戻っていた。


「ありがとう…聖女よ、本当にありがとう!」


そして魔王の国…いや、今は元のケルノウ王国か。


ケルノウ王国で私は仲間と共に歓迎された。


諸外国にケルノウ王国が元に戻ったと通達が出て、人々の生活が活気付き諸外国との国交も始まったのを見届けてから祖国へ帰る旅がまた始まった。


…はずだった。


「みんな、どうして…?」


ケルノウ王国から出て。


森の中で、仲間たちは私に刃を向けた。


「聖女様、貴女が魔王の呪いを解いてしまったからですよ」


「え…?」


「我が国は聖女が生まれる唯一の聖地、だから魔王に対抗するため各国は我が国に多額の援助をしてくれていたのです」


「そして我が国は、それを当てにしている…貴女の行動は、国の基盤を揺るがす行為なのです」


「で、でもそれじゃあ歴代の聖女は…」


まさか、魔王の真実を知っていて…千年の眠りを与えていたの?


「そう、歴代の聖女は魔王の事情より国を取った」


「貴女は愚かだ、聖女様」


「真実を知りながら、その奥まで見通せず善意で祖国を壊したのです」


「そんな…」


「貴女は祖国に帰れば、密かに処刑されるでしょう。ですからその前に、せめて我々の手で優しく終わらせて差し上げます…」


そして私は、剣で心臓を刺される…はずだった。


「えっ、ここはっ?」


一瞬目が眩んで、次の瞬間にはグラストンベリーのお城の一角に私はいた。


なぜ?


「ああ、良かった…間に合った!」


ギュスターヴ様が私を抱きしめる。


その横には元魔王…ケルノウ王がいた。


「君の祖国できな臭い動きがあってな。ティンタジェルに君の国の騎士が何故か攻撃を始めようとしていたので、助けてきた」


「ティンタジェルは君の生まれ故郷だろう?君の家族と、村のみんなは無事だよ。今はうちで保護している」


「ケルノウ王陛下、ギュスターヴ様…っ、本当にありがとうございます!」


「だが、なにがあったんだ?とりあえず君をこの安全地帯に飛ばしはしたが…」


私はことの次第を説明した。


ケルノウ王陛下も、ギュスターヴ様も怒りに燃える。


「なんて自分勝手な…そんな理由で我が大恩ある聖女を殺そうなどと、許さんぞ!」


「怖かったでしょう、アース様。これからは私たちがお守りしますから。いいですよね、父上、母上、兄上」


「もちろんだ」


「そんな横暴許しませんわ」


「断固として君の祖国を非難するよ」


ということで、我が祖国はケルノウ王国とグラストンベリー王国の告発により国際社会からの非難を浴びた。


そしてケルノウ王国とグラストンベリー王国の献身により、私たちティンタジェルの者たちはグラストンベリーでなんとか暮らせるようになった。


「ギュスターヴ様、何から何までありがとうございます」


「いえいえ、我が妃のためですから」


「え」


「約束、忘れてはいないでしょう?」


「でも、私こんなに迷惑をかけたのに…」


思わず涙が浮かぶ。


何も知らなかったまま、乙女ゲームの世界だと勘違いして…フラグが立った、これで第二王子妃だと喜んでいたバカな自分が恥ずかしい。


「いいんですよ、アース様」


ギュスターヴ様は、私の目に溜まった涙を優しく拭う。


「これから夫婦になるんです。いくらでも迷惑をかけてください。きっと、僕だって貴女に迷惑をかける日は来るでしょうし」


「ギュスターヴ様…」


「まあ、そうならないよう努力はしますけどね。だから、アース様。どうか迷惑なんていくらでも掛けて、僕に甘えてください。貴女を愛している、この僕に…僕だけに」


「ギュスターヴ様っ…!」


わっと泣き出した私を抱き止めてくれるギュスターヴ様。


この人を選んで本当に良かった。











そしてその後私は世界を救いケルノウ王国を救った救世主として、世界各国に認められた。


それを持って、ギュスターヴ様の婚約者としても認められて今は第二王子妃教育でてんやわんやしている。


「アース殿、今日も第二王子妃教育に精が出るな」


「ケルノウ王陛下!ごきげんよう」


「ごきげんよう、アース殿。しかしすっかりと、グラストンベリーにも慣れてしまったな。つい何度もアース殿の顔を見に来てしまう」


「でも、早く帰らないとまた奥方に魔法で雷落とされますよ?」


ケルノウ王陛下の顔が引き攣る。


「…早めに帰る」


「よろしい」


「おやおや、ケルノウ王陛下。人の婚約者に必要以上に近寄らないでいただきたい」


後ろからぎゅっとされる。


見るとやっぱりギュスターヴ様。


「もう、ギュスターヴ様って意外とヤキモチ焼きですよね」


「そうですよ、だから大事にしてください」


「はいはい」


「ふ、似合いのカップルではないか」


「それはもちろんです」


勝ち誇った顔のギュスターヴ様に私は照れ笑いして、ケルノウ王陛下は楽しそうに笑う。


ということで乙女ゲームの世界かと思ったら全然違ったけど、なんとか幸せになれました!

ということで如何でしたでしょうか。


この主人公、乙女ゲームの世界と勘違いしていましたが実際にはダークファンタジーの小説の世界に異世界転生していました。


他に転生者はいませんでした。


でも本人が善良だったので魔王を助けられて、それが功を奏しましたね。


あのまま魔王を千年の眠りにつかせていたら、その後聖女様として教会に〝保護〟され、自由はなかったですから。


少しでも楽しんでいただけていれば幸いです。


ここからは宣伝になりますが、


『悪役令嬢として捨てられる予定ですが、それまで人生楽しみます!』


というお話が電子書籍として発売されています。


よろしければご覧ください!

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― 新着の感想 ―
歴代の聖女がいたってことは少なくとも2000年前からある国だったのか・・・
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