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A3

 今日も…いつものようにお人形遊びをしていた。


「愛しているよ、ずっと一緒に居て欲しい」

「うん…私も…!ずっと一緒にいようね」


 ああ、楽しい。なんて楽しい時間なんだろう。

 私はずっと、誰か他の人と幸せな時間を過ごしたいと思っていたけれど、究極的に言えば他人なんて必要なかったんだ。

 "もの"さえあれば、それが肉の塊であれ何であれ擬人化して愛してしまえるんだ。


 私は彼女を抱きしめた。キスをする。

 彼女の頭を撫でる。

 大きな瞳を見つめる。


 なんて愛おしんだろう。


 …。


 かなり虚しい。


「ちょっと銀行にお金引き出してくるね、はぁ…」


 私はとぼとぼと最寄りのコンビニに向かった。

 ATMにカードを差し込む。


「いま幾らくらい貯金あったっけな」


 多分そんなには入っていないと思う。

 この前パチンコで全額使ってしまったから。

 結局ルールは全然分からなかったし、ビギナーズラックとかは無かった。


 ああ、急になんの前触れもなくお金持ちにならないかな。

 銀行の残高が 999,999,999,999,999円 になっていた。


 999,999,999,999,999円 !?


 大体一京円…。

 一京円!?

 目を擦ってもう一度数字を凝視する。


 確かに999,999,999,999,999円 だ…。

 急になんの前触れもなくお金持ちになってしまった…。


「お、お金が沢山だぁ…。こんなに沢山あっても仕方がないし、折角だから配ろう」


 千万円くらいお金を引き出した。

 ATMってこんなにお金入ってるんだな、と思った。

 あと財布がコロコロコミックみたいになってしまった。


 なんだかお金があると気分が良い。

 ウキウキしながら貧民街に向かった。


 …。


「ほら、お金だよ。ほらほら」


 私は乞食やヒッピーに一枚ずつ一万円を配った。


「ありがとうございます…!」

「ありがとう」

「これで生きていける…」

「あなたは神か。あなたを信仰します」


 良いことをすると気持ちが良い。心がポカポカするね。

 自然と笑みが溢れる。

 やっぱりこの世は持ちつ持たれつなんだよな。


 しかし、大人しく貰っておけばよいのに、何故か貰わない貧民も居た。


「いや、お前ら待てよ!こいつ怪しいぞ!お金を配って、俺らを騙そうとしてるのかもしれねぇ!」

「そうだよ!何か犯罪とかに巻き込まれるかも…」


 弱者は救いたい姿をしていないんだなと思った。

 けれど、私は優しいので救いたくない弱者も救おうと思う。


 札束で彼らの頬を撫でる


「ほら、一万円。貰わないと絶対後悔するよ」


 札束で頬を叩く。


「いらねえよ!俺はそこまで落ちぶれてねぇ!!」


 ドガッ!

 一瞬何が起こったのか分からなかった。


 天と地が引っくり返った。

 殴られた…?


 次の瞬間、更に大きな衝撃が私を襲った。

 地面に頭が激突した。


「ふぇあ、ふぇwq…?」


 言葉が上手く出てこない。呂律が回らない。


「俺等を馬鹿にしやがって…!死ね!死ね!」


 私を殴った人が馬乗りになって殴ってきた。

 なんどもなんども思い一撃を喰らわされる。


 クネクネしたオタクでは彼の攻撃を受け止めることが出来ない。

 めちゃくそ痛い。


「た、助け」


 私がお金をプレゼントした人たちは、薄情にも誰も私を助けようとしない。


「俺の金だ!」

「私のよ!」


 殴られたときに散らばった金を拾うのに夢中になっているようだ。


「俺のだって言ってんだろ!」


 男が女を殴った。

 そんな乱闘がそこかしこで繰り広げられている。


 ここは地獄か…?

 やはり貧すれば鈍するんだなって思った。


「どこみてんだよ!俺の顔を見ろ!謝れ!謝れ!謝れ!」


 私を殴っている人も半狂乱状態だ。

 きっとアンガーマネジメントとか知らないのだろう。


 胸ぐらを掴まれてさらに殴られた。

 謝ろうとするまえに殴られるので謝れない。


 もしかして、私は今日こんなところで死ぬのか…?

 良いことをしたつもりでいたのに…。

 どうして…こんな…。


 そのときだったーーー!!


「助けに来たよ…!」


 家の中で寝ているはずの、死体の彼女だった。

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