白紙な僕
「――白雪姫に、シンデレラ、三匹の子豚、赤ずきんに……あと誰だっけ?」
「あとは、お前の持ってきたアレだろ。」
「ああ、そうだったあいつの事スッカリ忘れてたよ。」
静かな会話と共にペンで書く音が鳴る、
「よし、後は実験したら終わりですかね...」
真っ暗で何も無い空間に浮かんでいる感覚だけが
ある中でそんな会話が聞こえた気がした、
気がついた時には
無機質に光が照らす、
全面を真っ白な壁に囲まれて何も無い部屋に
一つだけ有った物
壁に大きな細長いドア型のガラス
それで気づいた、この壁は"仕切り"なんだと。
そして真っ白な部屋に溶け込みそうなほど、
全身が真っ白な色をした少年が立つ。
少年はガラスに顔を押し付けて
向こう側を見て居た、
「うーん、やっぱ何も居ないな」
その顔は長時間ガラスに押し付けて居た所為か、
冷たく少し赤くなっていた。
「名前も思い出せない記憶も無い、でも知識はある
ここは何かの研究室なのか?」
手を肩に置いて首を傾げて、少年は考える。
「うーん何故だ…摩訶不思議と言えるな。」
隣の部屋は何もなかったでもガラスと
永遠に続く部屋だけはまるで合わせ鏡の様に
繋げてあった。
「他の部屋にはまだ誰もいない、
自分だけが入れられているこの部屋は何なんだ。」
「そして隣の部屋の大体は見えるが、
この細いガラスでは絶対に見えない角度がある。
憶測だが、この部屋と同じ形なら
何も無い壁があると思うんだが…、」
「疑問はまだまだある、
ここはどこだ施設なのか?
危険な場所かも分からないし、
逃げるべきかも分からない。
寿命まで観察されるのかそれとも何かが来るのか?」
少年はもう一度
警戒した顔で
薄暗く何も無い不気味な部屋を見る、
「何かは来るんだろうな
来ないなら部屋をこんな作りにする訳が分からない」
警戒した顔をして居たが、
ポンと手を叩くと気付いたように話す。
「…意味が無い可能性も有るのか、
愉快犯の可能性もある、……ん?なら危険だ、
脱出もしくは壊す手段を考えるべきか。」
少年は歩きガラスの直近まで行き、
軽く拳で小突く。
「イテェ」
当然ビクともし無い、割れもし無いそれどころか、
少年の拳が赤く色づく。
次に何も無い状況では到底逃げる事も
壊す事も出来ない凹み一つ、繋ぎ目一つも無い
頑丈な壁を見る。
天井を見上げると、光に違和感を覚える。
何も無いのだ、照明だったら何か突起があったりしても良いはずが何も無い、まるで天井全体が大きな照明の様に
光って居た。
「光もどこからやってきてるか分からない、
科学力も建築技術も素晴らしいな。」
そんな考えを広げながら少年は、
肩に手を当て首を傾げた独特なポーズをとり
「まだ…分からないな。」
ポツリ少年は淡い目で空虚を眺めながら、呟く。
静寂の時が過ぎていく。
カタンッ
「何だ!」
何もなかった空間にいつの間にか一つ
プレートに乗った少量の携行食だった。
「食料か、確かに良い時間が経ったのかお腹も
空いてきた所だ」
少年がそう言いながら自分のお腹を摩る。
「だが大丈夫なのか?
毒とか入ってたら、」
警戒して居た理性とは別にお腹が大きく
グーと鳴る。
「まあ毒を入れる意味がない、
殺すんだったら簡単に殺せるはずだ。」
食欲に負け、少年はプレートに乗った
何個かの銀色の包装を破る。
携帯食料の濃い茶色をした固形物のバー、
袋にストローがついたゼリー状のもの
それと一欠片のチョコだった。
味を確かめるために
バーを一口大にちぎり食べる。
モチャモチャ
「ふむまあ不味くはないな、
中にはドライフルーツが入っている、コレは梨かな?」
不味くはない程の物にがっかりして
少しずつ食べていく。
「ふう、ごちそうさま。」
手を合わせて目の前のゴミの乗ったプレートを
元の位置に戻し終わった後、
また目線を床に落とし考えるポーズになる。
「だが何となくわかった俺は何かに飼われている、
まだペットの様に飼われているが……」
カタン
また考察して居て気を逸らしてしまった
その瞬間に少年の背後で同じ音が鳴る。
「無い!?今正にそこにあった
食料のゴミもプレートも消えた。」
少年は驚きで後退りしたが、
その顔は自分の想像を越えられた
現象に興奮して居た。
「流石に驚いた、摩訶不思議だな。」
数時間が経った時天井の光が少し弱まり
淡い灯りになった。
「寝ろって事か?こんな床で」
少年は嘘だろっと硬い床を触ろうとすると
さっきまでの硬い床では無く、
少年の周りだけ
まるでベッドの様に柔らかい床になって居た。
「そうか、寝ろって事か。」
暗くなってからかなり時間が経ったが
全く寝る気のない少年はずっと考えて居た。
すると少年に異様な睡魔が襲う、
瞼がどんどんと重くなり下がって来る。
意識が遠のく寸前に少年天井を見上げる。
「まだ続きが…ある…の…に」
これから色々な童話を元にしたキャラを出していこうと思います。
今回も読んでいただきありがとうございます。
投稿ペースは不定期ですが
楽しみに待っていただけたら幸いです。