女子高生
「今日はいつもと違う環境だからきっと大丈夫よ。」
いつもと違う枕に変えた。かなり頭に負担のかからない快適な枕だ。睡眠環境を変えれば問題が解決するんじゃないかと暗闇の中ずっと考えた。クロードから電話が来てるが普通の夢を見るのを意識してる私にはクロードを気にしてる余裕はない。ずっと鳴ってる電話の傍ら、冷や汗をかきながら天井を見ていた。そして意識は夢の中へ。
今日も高校に行く。その前に家でご飯を食べる。
「オリヴィアは相変わらず成績が優秀だな。流石、我が家の自慢の娘だな。」
私は一人娘で両親は買って欲しいもの何でも揃えてくれるし、家庭教師とかもいるので学校の成績は学年で結構上の方だ。
「折角なら何か買って欲しい。」
「今度新しい車を買ってあげる。」
「パパありがとう!」
「ママもオリヴィアに何か買ってあげるわ。」
私は生まれつき恵まれた容姿で、友達や彼氏には困ったことなんて一度もない。チアリーディング部に入っていて、アメリカ人の女の子なら誰もが羨む女子。頼めば何でも買ってくれる親がいる。親から怒られたことなんて一度もない。お父さんもお母さんも昔、私のように学校の中心的な存在だった。一軍は社会に出ても一軍だと思い私は高校生になった。
父は車で私を学校まで送ってくれた。
「パパ、ありがとう。」
二人とも私の思いどおりに動いてくれる。
「キャシー、おはよう。」
ロッカーで親友のキャシーと会う。
「オリヴィア、おはよう。今日いつもと違うけどどうしたの?」
「新作のバッグ、パパに買ってもらったの。」
「良いな。」
「キャシーだって、パパ金持ってるでしょ?買ってもらいなよ。成績だって悪くないし、部活でも活躍してるし。」
「そうね。今度買ってもらうわ。」
キャシーも同じようにものに困ることなど無かった。私達は最強コンビ。この学校では私達に勝てる女などいない。
「今度親いないからうちの家でパーティーしない?ザックも来るよ。ザックは絶対オリヴィアに気があるよ。他にも男友達がたくさん来るって。」
ザックはアメリカンフットボール部のエースで私も学校のほとんどが認めるほどのイケメン。ザックにお似合いなのはもちろん私のような一軍の女だけ。あとはザックと付き合う価値のない女達。
「ザックも来るならセクシーに決めないと。」
大抵の男はそんな風にすれば釣れる。話してると誰だか知らないオタクの女とぶつかる。とにかく趣味趣向が合わないし、暗くて関わる価値のない子だ。
「ちょっと!ぶつかったんだけど。何様のつもり?」
「ごめん…」
「は?」
そのオタク女はボソボソと喋る。
「何言ってるか聞こえない。」
「オリヴィアに謝る気あるの?」
「ごめん、急いでるから行くね。」
「あんた名前何なの?」
「ソフィー。」
名前だけ言って、逃げるようにどこかに言った。
「あの陰キャ見た?マジ暗くてキモいんですけど。何でいんの?」
「あんなので学校通えるとか恥ずかしくないのかな?」
私達は彼女を嘲笑った。
「髪とか整えてなくてダサいよね。」
「そのうちよくいるブスを笑いに変える奴になりそう。」
先生がいないところなら、こんなこと言い放題。先生にこんなこと気がつかれたらスクールライフが台無しになる。だから私は賢く生きてる。
今日もチアリーディングの練習があった。私も楽してチアリーディングの座を取ったわけじゃない。それなりに私のやり方ではいあがった。練習が終わるとザックが目の前にいた。
「ザックがいるよ。」
「きっと私目当てね。」
彼は私に話しかける。
「今度のパーティー来るのか?」
「そうよ。私がいなきゃパーティーも盛り上がらないじゃん。ザックもいるなら完璧ね。」
「俺、他の高校で何人か知ってるやつ連れてくる。人数多い方が良いだろ?」
「そうね。」
「じゃあ俺、この後用事あるから。」
ザックは去っていく。姿が消えるまで見ていた。
「あれは間違いなくオリヴィアのことまんざらでもなさそう。」
「少なくともザックは陰キャとは付き合わないでしょ。ザックに似合うのは人気者の女の子だけね。」
次の日もまた学校があった。いつもと変わらない日常。何か面白いことの1つや2つくらいあれば良いのにと思った。
「パパ、そろそろ家出る。」
今日もパパに車で送ってもらう。
「最近学校はどうだ?」
「授業もついてけないことなんてないし、学校の子達とも騒がしくらい仲良いわ。私のこと評判が悪くないって学校の先生から聞いてるでしょ?」
「もちろんだ。オリヴィアは何もかも完璧だからお父さんとお母さん本当に良い娘を持ったと思う。」
特にパパは昔から私を溺愛している。ママはママ友にいつも私の成績のことを話して鼻が高くなっている。私は特別な子だ。だけど何だかどこか満足いかないことがある。それはさっき話したようにザックだ。ザックのようなカリスマ性もあって、運動神経も良くて人気者の男子と私は付き合いたいし、将来は向上心の低い男どもとは付き合いたくない。そんな男達は男子から人気のないレベルの低い陰キャラ女と付き合えば良い。今度のパーティーで何としてもザックを私のものにする。そんなことなんて私からしたら難しくないこと。
「今度紹介したい友達がいるから、家に連れてっても良い?」
「彼氏か?」
「いずれそうなるかも。」
「男なら俺の面接が必要だな。」
「面接って何よ?会社じゃないんだから。私だって男を見る目くらいあるわ。」
パパと冗談を言い合ってるうちに学校に着いた。
「パパ、行ってくる。仕事頑張ってね!」
車は去っていく。
ロッカーの所でキャシーに会う。
「おはよう。学校終わったらパフェ食べに行かない?」
「良いよ。」
ソフィーがキャシーにぶつかる。
「ちょっと、ぶつかったんだけど。これで2回目だよね?」
「ごめん。」
ソフィーは慌てていたが、自分が怒られないかばかり考えていて私達に対する誠意が見られなかった。
「それだけ?ごめんと言えば許してる貰えると思ってるの?それに2回以上同じ相手にぶつかるなんて不自然だね。私達のこと嫌いでぶつかってんでしょ?」
「誤解よ。私は本当に不注意が多いからついぶつかってしまったの。これでも分からないの?」
「何逆ギレしてんの?」
「次やったら許さないからな。」
「キャシー行こう。」
キャシーはソフィーを睨みつけて私と一緒に去った。
「あんなネードに恨まれるとかキャシーも気が楽じゃないね。」
「私、可愛くて仕方ないから誤解されるみたい。」
教室に入るとソフィーがいた。何かを書いていた。彼女のノートを見た。
「ソフィー、ノートに何書いてんだよ。」
「大したものじゃないよ。」
彼女は必死にノートを隠した。
「見せろよ。」
キャシーと一緒にノートを引っ張った。
「何するの!離して。」
「隠すってことはやましいことばかり考えてるんでしょ?」
「そうじゃない。とにかく見ないで!」
私達は何とかソフィーを取った。
「オリヴィア、これ見て!」
「どれどれ。」
ノートにはザックの似顔絵がたくさん描いていた。中にはハートマークも添えられているものまで。
「何これ?ストーカーじゃん!ザックが可哀想。」
「こんなことするのに学校来てるの?」
他のページも見た。
「めくらないで!」
ソフィーが私からノートを取り返そうとするが、キャシーと他の女子がとめた。
「何これ?「今日ザックと廊下にすれ違った。すれ違うだけでもドキドキする。私には到底届かない存在かもしれない。でもいつかは気持ちを伝えたい。とにかく今はザックの姿を見ているだけでも幸せ。ザックは性格まで優しい。私が誰かに筆箱をゴミ箱に捨てられた時、一緒に探してくれた。あの筆箱をもっと大切にしようと思う。」だって。」
キャシーもノートを音読する。
「どれどれ?「この前のプレゼンのペア、ザックがペアじゃなくて残念だった。ザックがペアならもっとプレゼン頑張れそう。」だって。こんなことばかりノートに書いてたの?信じられない!」
周りの女子たちも皆ソフィーを見て、引いていた。ソフィーは泣いていた。男子達はクスクス笑っていた。
そして目が覚める。
「嫌な夢。」