過去の回想2
私の回想はまだ続く。
次の日になってもあれから1週間になってもイジメは消えなかった。むしろ、どんどん酷くなっていった。
「ルネ、こっち向いて。」
私は振り返ると、アメリアにビンタされた。
「今日からあんたへの挨拶、ビンタだから。」
テイラーが決めたのだろうか?そんなことなんてどうでも良い。次々といつもの5人からビンタされた。男子や他のグループの女子達もその様子を見て笑う。彼らは人を傷つける時だけは団結する。廊下を歩く度に誰かが私にゴミをあててくる。
「ごめん、わざとじゃないんだ。」
カミーラはわざと足を引っかけた。彼女も変わってしまった。私がターゲットなので、私のようにカミーラはイジメられなかった。カミーラも私のような立ち位置なのでターゲットにされる可能性があったが私を蹴落として、自分の立場を上げた。
昼休み、カミーラにお昼を誘われ、ご飯を一緒に食べることになった。
「このサンドイッチ自分で作ったの?」
「そうだよ。」
私のサンドイッチを少し食べる。
「まず!何これ?」
彼女はテイラーに何かを話していた。
「どれどれ?そんなに食べて欲しいなら食べやってもいいわ。」
テイラーは勝手に私のサンドイッチを食べる。
「あんたのわりには思っていたより、良いんじゃない?こんなの毎日なら大変だから少しアレンジしてあげる。」
アメリアとアンナが後ろからジュースをかける。さらに私のサンドイッチにジュースをかける。
「これで少しはマシになったんじゃないの?」
私の味方は誰もいない。全員が悪魔に見える。誰も私は信じられない。
イジメられてることを忘れるために一人で音楽を聞いた。突然イヤホンを引っ張られる。
「痛い。」
振り向くとテイラー達がいた。笑いながらイヤホンを持って行く。
「返して。」
彼女達は私のイヤホンを窓から捨てる。
「このことチクればどうなるか分かってるよね?」
私は2つの弱みを握られてるから逆らうことは出来ない。
家に帰ると母がいた。
「今日は高校どうだったの?」
「別に楽しいことなかったわ。」
とっさに嘘をつく。母にもイジメられていることを言えない。母に言えばテイラー達にあのことをバラされる。
「最近、ルネが部屋ばかりにいるし、私も自分の仕事のことばかりでルネに向き合えてなかったわ。学校で本当に何が起きたか話して!」
「母さんには関係ないことだから。」
私はすぐに部屋に駆け込んだ。
「ルネ!待ちなさい!今話せば楽になる!心を閉ざさないで!」
「うるさい!」
この時の私は母すら頼りにすることが出来なかった。
1ヶ月後、私の人生を大きくゆるがす事件が起きる。
「ルネ、誕生日おめでとう!」
今年はお母さんが箱を開けると手作りした髪留めと帽子が入っていた。
「お母さん、ありがとう!」
母はハンドメイドが得意で出品するグッズは海外のお客さんからも人気だった。内心、それが誇らしく思っていた。
「明日、それをつけて高校に行きなさい。」
「うん!」
私にとっての数少ない幸せな時間だった。朝学校を通う。いつもと違い髪留め使う。
「ルネだ!」
いつものように彼女達は私を見てはイジメてきた。
「今日なんか髪留めしてんじゃん!」
「どっかの安物?」
「安物なんかじゃない!世界で一つしかない髪留めなの!」
お母さんをバカにされたような気分だった。
「何ムキになってんの?」
彼女達は私の髪を引っ張る。
「もうこれで十分でしょ?何度イジメたら気が済むの?」
「そんなこと言っていいのかしら?あんたのパパの遺品をメチャクチャにすることだって出来るし、例の画像を拡散することだって出来るのよ。」
母のことになると凄い感情的になるけど、これ以上感情的になると危険だ。私の人生がメチャクチャになる。
お昼、ご飯を食べ終わるとテイラー達がケーキを持って来た。
「ルネ、誕生日おめでとう!食べてよ。」
ケーキを食べると、土の味がした。私はとっさに吐き出した。ケーキには泥が入っていた。
「汚い!服についたんですけど。クリーニング代出してもらえる?」
「アメリア、落ち着いてよ。今日は誕生日何だから主役をたてないと。」
何だか嫌な予感がする。サプライズがあると言って、彼女達は私を人気の無い倉庫に連れて行った。
「これから、髪の毛を切ってあげる。」
「何をする気なの!」
アンナがバリカンを持っていた。
「もうやめて!これ以上のことして何になるの!」
「耐えられないなら死ねば?」
テイラーの一言で皆、笑う。
「そうよ。あんた弱いから、死ぬのは人一倍得でしょ?」
「そろそろはじめるよ。」
「やめて!」
髪にバリカンを当てられる。私の髪は足や肩など色んな所に散らばる。どんどん髪が無くなっていく。エマとアンナとアメリアにおさえられた。ジェニファーは丸刈りになる様子を撮影した。私はあっと言う間に丸刈りになってしまった。
「あんたには丸刈り姿がお似合いよ。」
「マジでウケるんだけど。大人しく死んじゃえば良いのに。」
丸刈りにされたことで私の心は崩壊した。もう言葉も出ないし、完全に抵抗することも出来なくなった。
「そう言えば、丸刈りになったらあんたヘアアクセ使えないわね。私が変わりに処分するよ。」
皆、笑いながら私の髪留めを踏みつける。やめてと言うことも出来ない。ただこの状況を見ていることしか出来ない。
「やっと壊れたわね。」
「そろそろあんたみたいな不良品も壊れる所かしら?」
「あんたが死ぬまで追い詰めてやるから。」
母親のプレゼントが目の前で壊されて、さらに私は壊れてしまった。
「あと、良いこと教えてあげる。あんたのパパの腕時計、カミーラがネットで売ったから。カミーラはあんたと同じ陰キャラだけどあんたよりかは頭良いよ。」
テイラーの一言で私は完全に生きる希望を無くした。母親のプレゼントと父の遺品が無くなったら私には何も無くなる。彼女達が言うように私には死ぬことしか選択肢がない。私は屋上に行く。独り言を言いながら、遺書を書く。
「お母さん、私もう生きるのが辛い。最近、お母さんのことも頼れなくなった。短い人生だったけどありがとう!さようなら。」
私は屋上から飛び降りた。
私は奇跡的に生き残ったが、中学・高校時代の記憶が無くなった。
「ルネ!やっと目を覚ましてくれた。」
お母さんがずっと涙を流した。
「もう自殺とかしないで。」
「何言ってるの?私自殺とかしてないよ。これも交通事故か何かでしょ。」
母はすぐに状況を理解した。
「そうよ。ルネ。過去のことなんて考えなくて良い。交通事故怖かったでしょ?これからは今のことだけを考えれば良いのよ。分かった?」
「うん。」
それからも母から何度も同じことを聞かされた。あの時は記憶が無くなっていたから何のことか分からなかった。でもあの言葉は記憶を取り戻した今になってはかなり重い言葉だった。母はきっと私を守るためにあの言葉を言った。私が過去のことを思い出して精神崩壊しないようにそう言ったんだ。
「あんたのパパの腕時計カミーラが売ったから。」
「このヘアアクセ本当にゴミみたい踏んでみようよ。」
「あんたが死ぬまで追い詰めてやるから。」
そこに彼女がいないはずなのにいるような感じがして気が狂いそう。私は隠し持ったナイフでロープを切った。今の時間はクロードが寝てる。無事アパルトマンを出ると、この前会ったホームレスの女性が車で待っていた。
「ルネ、行こう。ずっと待ってたよ。」
車の中でコリーヌに電話する。
「コリーヌ!しばらく私のこと泊めて。」
「分かったわ。それにしても夜遅すぎだし何があったの?これだけ連絡取れなかったなら、だいたい検討つくけどね。連絡取れなすぎて、マリリンがずっとあんたのこと探してたわ。」
「事情なら後で話す。」
コリーヌの所に着き、車から降りる。車はまるでテレポートしたかのように消えた。




