悪夢
クロードに監禁されてから1週間は経つ。手が縛られている間隔も失う。女優の夢の正体は結局何だったんだろうか?あれから女優の夢を見ると、鏡の前に立って何者か分からない姿を何時間も見ている。まるであそこで時間が止まっているかのようだった。言うことを聞けば優しくするし、声をあらげれば彼は凶変する。ただこの状況のままでは何も出来ない。だんだん眠くなる。
「ルネ、女優の夢はどうだった?それより監禁されてるけど大丈夫か?」
「大丈夫よ。何だか分からないけど、むしろこの状況チャンスだと思うの。監禁されていることよりクロードという存在がいることがチャンスそのもの。」
「監禁されてかなりまいってるな。」
「どう言おうが、ルネにはルネを止められない。」
彼は心配そうにこっちを見た。
「このままで良いの?クロードにやられたままで良いのか?そんな理由で死ぬの?」
「死ぬだなんて一言も言ってないわ。」
自分自身そのものの存在はほっておけない。
「女優の存在は身近にいるかもな。いつもカフェで話すどちらかだ。」
あの二人のどちらかが女優のような人格を持ってる。どっちだろう。
私は来週のパーティー向けてどの服を着るかキャシーと考えた。
「このタイプのドレスはセクシーで、ザックはもっとオリヴィアを求めるわ。」
「こっちの色も良いわね。」
パーティー用の服を買い、キャシーとアクセサリーを選ぶ。
「今度のパーティーにあの女呼ばない?」
「誰のこと言ってるの?キャシー。」
「ソフィーよ。あいつ不潔そうな陰キャラだし、パーティーに招待して恥をかかせようよ。聞いた話だと、そんなお金持ってない家だから着るものもみずぼらしいみたい。」
「それ本気で言ってんの?それじゃあつまらないじゃん。招待して、リストにあいつの名前載せないとか良いじゃない?」
「それ名案じゃん。」
ザックを含めた数名の男子や女子を招待した。次の日、ロッカー前にいるソフィーに私のグループのセレーナが話しかける。
「ソフィー!今日、私と一緒にご飯食べようよ。」
「何で?」
ソフィーは動揺していた。
「私、卒業するまでにソフィーと仲良くしておきたいの。」
「分かった。」
セレーナは私の所に来る。
「どうだった?」
「あの子動揺しててマジでウケた。本当に友達いないんだね。あの暗くて清潔感ないから救いようないよね。」
「アイツの身分を分からせるための良い機会ね。ザックとは釣り合わない女だってね。」
「え?ザックのことが好きなの本当の話なの?冗談かと思ってた。」
「本当よ。日記にザックのことばかり書いてあって、鳥肌がたったわ。粘着質な女よ。将来あんなタイプの女がストーカーになりそうね。」
お昼の時間になると、私とキャシーを中心にセレーナとフェリシアを連れてソフィーを囲んだ。
「ソフィー何それ?私達と食べてるものが違うね。わざわざご飯とか持っていかないからビックリした。」
「何か安っぽいサンドイッチだね。」
私達は食堂のご飯を食べるが、ソフィーはサンドイッチ一つ。よく見ると彼女の肌はボロボロだ。明らかに貧乏臭い。
「ソフィーってやっぱり毎日ファーストフードばかり食べてるの?」
「そうだよ。」
「びっくり。そんな生活ばかりで大変じゃん。住んでる世界が違うわ。」
フェリシアが彼女に水をかける。
「ごめん、ソフィー。手が滑って水がかかったわ。」
「拭いてあげるね。」
ソフィーの顔を強く拭く。
「苦しい。」
彼女は咳をする。
「ソフィー、肌ボロボロだけど大丈夫?ブロッコリーあげるよ。肌には栄養必要でしょ?」
皆、ソフィーの嫌いなブロッコリーをサンドイッチにはさむ。ソフィーはずっとサンドイッチを見ていた。
「どうしたの?食べなよ。」
「お母さんがせっかく作ってくれたのに、食べないの?」
「ブロッコリーが…のってるから食べれない。」
彼女は小声だった。
「今なんか聞こえなかった?」
「気のせいじゃない?キャシー疲れてるのよ。」
「そうよね。」
ソフィーは頑なにブロッコリーを食べない。
「そう言えばさ、一番関わりたくない女子ってどういうタイプ?」
キャシーが話を切り出す。
「私は小声でハッキリ話さない女とか苦手。ボソボソ喋って気味が悪いし。」
私は答える。
「私はチェスクラブに入ってるような女の子と関わりたくない。以下にも陰キャラって感じじゃん。」
セレーナが答える。
「執着心の強い粘着質な女の子とか苦手。」
フェリシアが答える。
「例えばどんなタイプ?」
「日記とかに好きな人の男子のことを毎日書いてるような子よ。」
「そんな子いたね。ザックのことを今でもつきまとってる女の子いたよね。」
「誰?」
「意外とすぐ近くにいるじゃん。ねえ、ソフィーもそう言う子苦手でしょ?」
「私は苦手じゃない。」
また小声だ。
「また何か聞こえる。」
「やめてよ。ホラー映画みたいじゃん。」
「主人公は肌がボロボロなおばけに追われる話とか?」
「何それ?おばけ役の人凄いじゃん。ソフィー、将来ホラー映画で活躍しそうなんじゃない?」
「オリヴィア、どういうこと?」
「深い意味はないよ。」
ソフィーは泣きそうだった。
「何?泣いてんの?」
「来週パーティーするから、そんな顔じゃパーティーが台無しよ。」
「そろそろ行かないと。」
私達はソフィーをおいて去った。自分の身分が分かって泣いたんだろう。本当に恥をかかせられて良かったけど、まだこんなの初めのレッスンだ。
「泣いてる顔見た?」
4人でソフィーの話をする。
「本当に面白かったわ。今になって自分の立場というものを自覚するようになったのね。」
「キャシー、あんなのでソフィーが完全に自分の身の丈を理解すると思う?」
「そうね。オリヴィアの言う通りよ。これからが本番だもんね。」
ザックが私達のもとに来る。
「ヘイ、ザック。来週私達のパーティー参加するよね?」
「もちろんだよ。俺は色んなやつと話したいからな。君達意外も来るんだろ?」
「そうよ。もしかしたら意外な人が来るかもね。」
「来てからのお楽しみよ。」
「サプライズか、楽しみにしてるよ。」
ザックは他の男子と一緒にどこかに行ってしまった。
「やっぱり、ザックには私達のような女子しか眼中にないわ。」
「セレーナ、ザックと釣り合うのはオリヴィアだけよ。」
キャシーは現実をセレーナに教える。
「そうよね。オリヴィアが一番可愛いよね。オリヴィアしかいないよ。」
私は知ってるセレーナとフェリシアは私のような存在にどう頑張ってもなれないことを。セレーナみたいな人間は一生誰かの媚を売って生きていれば良い人間。そんな人間は都合良く使いやすいからある意味高校には一人は必要。そんな現実など知らずに生きれば良いけど、たまに分からせてあげなきゃいけない時もある。
パーティーの日がやって来た。
「キャシー、見て。今日はこれでいくわ。」
「クールじゃん。私はこれよ。パーティーではゴージャスと言われなきゃ意味がないわ。」
「キャシーは十分ゴージャスよ。」
私達は車を運転してキャシーのパーティー会場に向かう。
「ソフィーのやつそろそろ来るんじゃない?」
「来れないよ。話聞いてなかった?わざと呼んで、招待客のリストには彼女の名前入れてないわ。」
セレーナとフェリシアと食事をしながら話す。皆より少し遅れてソフィーは会場に来る。
「オリヴィアとキャシーに招待されて来ました。」
「お名前は?」
「ソフィー・ミラーです。」
「ソフィー・ミラー…ソフィー・ミラー。ごめんなさい、リストにあなたの名前はないわ。」
「確かに招待されたんですが。」
外から彼女の困ってる様子を見て皆で笑う。
「あんたみたいなネードは誰も招待しないし。招待できるとでも思ったのかしら。」
ソフィーは諦めて、会場を離れた。その時、車からザックが降りる。
「ソフィー何してるんだ。」
「私、パーティーに招待されたと勘違いしてたの。私と関わりたくないでしょ。じゃあね。」
「待って。何が起きたか聞かないけど、一人じゃ危ないから家まで送るよ。」
「ありがとう。」
私達はソフィーがザックと車に乗る様子を見た。
「何あれ?何でザックとソフィーが一緒なの?」
「オタクのくせに意外と色目を使うビッチなのよ。」
「尻軽女じゃん。最低。」
「どうする?オリヴィア?ソフィーのやつこのままにするの?」
「このままにするわけないわ。徹底的に追いつめて、高校に通えなくするわ。それだけだと甘いから他に罰が必要ね。」
ザックに手を出したソフィーを私は必ず虐めてやる。あのオタク女には罰が必要だ。