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3人の夢人格  作者: ピタピタ子
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男性の正体

今日は普通の夢だった。母親と食事に行く夢だ。現実とさほど変わらない内容だ。この前、やっとアイツの正体が分かった。すぐにコリーヌに会いに行った。

「マリリンは良いの?」

「こんな話してもマリリンは文句ばかり言って退屈になるだけよ。」

「それもそうね。最近、悪夢は見なくなった。」

「余計酷くなってく一方よ。」

私達はモンパルナスの墓の前で雑談する。

「女優の人格の夢はどうなの?」

「シャルロットは旦那が浮気してて、その浮気相手の女とたまたま遭遇するんだけど、旦那のいない所でひたすら浮気相手の女に嫌がらせをしてるわ。浮気する旦那が悪いのに、そこまでして復讐するのかな?そんな男性とは別れれば良いのに。夢が覚めてそう思うのよ。」

コリーヌは本をしまう。

「それがルネの潜在的な性格だったら?そんな夢を毎回見るのには意味があるわ。」

「私があの女性と同じだって言うの?あんなに偉そうで高慢ではないわ。」

「性格じゃなくても、これからおかれる状況とかね。とにかく霊の仕業とかだとは思わないわ。」

私は薬を飲んだ。

「コリーヌならあの女優が置かれてるような状況をどうする?」

「私はあっさりと別れるわね。傷つきもしないけど、そんなことばかり考えるのなんて時間の無駄だわ。その女性は何かサイコパスが少し入ってるかもね。」

「確かにやることが少しサイコパスね。浮気相手の女の髪の毛集めたり、夢の中で少し意味の分からない行動をしてたわ。」

「クロードとグダグダ付き合ってる所だけはルネに似てる。」

「私は考えて付き合ってるわ。」

「何考えてるかまでは分からないけど、ルネは手遅れになる決断をしてるだけ。」

「私にも考えがあるから口出ししないで。」

私は薬を飲んだ。

「今のタイミングで薬飲むのね。処方箋ガン無視か。」

コリーヌと話してると本題から逸れてしまう。

「やっとあの男性の正体が分かったの。」

「そんなの言う前から誰かなんて分かってる。ただ一人よ。」

少し間をおいた。

「それで結局何なの?」

「あの男性の正体は…」

彼女に耳元で聞こえないように話した。

「そういうことは本人に知らせないと。私に言うことじゃない。」

そんなことは難しい。意識がその男性で、私という本来の人格が発動出来ないんだから。でも正体を明かすには私の口から本人に言うべきだ。

コリーヌと別れ、クロードから電話がかかってきた。

「電話が出るのが遅すぎる。これで5回は電話したんだぞ!何してたんだ。」

「友達とカフェで話してただけよ。」

「その写真を見せろよ。」

「私を疑ってるの?」

「そうだ。こんなに電話に出ないなんて怪しいだろ。」

「クロードだって、用事の時は出れないから、私だって出れないに決まってる。子供みたいなこと言わないで。」

「黙れ!」

クロードが怒鳴り、携帯から音が漏れそうだった。

「大声を出さないで。私は論破好きなコリーヌと話していただけよ。勘違いしないで。他の男に気移りするほど尻軽女じゃないわ。」

「証拠はあるのか?」

「これ以上はないけど、今の証言が全ての証拠よ。」

クロードはいつもにまして私を疑う。帰ったら、どんな結末が待ってるか検討もつかない。気がつくと眠気がやって来る。


暗闇の中でどこかで聞いた覚えのある声が聞こえた。

「何その服?あんた、何歳なの?そんなんで学校来て恥ずかしくないの?」

「これはママから貰ったんだ!ダサいなんて言うな。」

「皆、見て!こいつまた同じ服着てる。」

「いつも同じ服なの?ちゃんと風呂入ってるの?」

「絶対洗濯してないでしょ。」

何となく女子トイレに連れて行かれたような感じがした。

「汚いから掃除が必要ね。」

「バケツの水がお似合いじゃん。」

「やめて。」

悲鳴が暗闇の中、響く。水道の水の音がずっとする。

「痛い。苦しい。」

何が起きてるのか分からないが、誰かが苦しんでいる人と虐げて優位に立つ人間がいるのはよく分かる。暗闇の中での悪魔のような笑い声と苦しむ声、同時に重なる。


私は起きる。飛んでもない昼寝をしてしまった。すごく頭が痛い。何かこのような会話が心当たりがある。考えてみても答えが見つからない。私は処方された薬を飲んだ。そして地下鉄に行く。

「待ってたかしら?」

「別に助けて欲しいなんて言ってない。」

ホームレスの女性にクッキーをあげた。クロードから電話が来る。

「電話来たよ。出ないと。」

「良いの。放っておこう。」

「誰からなの?」

「彼氏からよ。でも大した内容じゃないから放置よ。」

「そう。それが正しいと思うならそれまでね。私は何も言わないわ。」

「こんな状態になる前、どんなことしてたの?」

「売れない舞台女優をしていたわ。小さい時から目指してた夢よ。色んなオーディションを受けたけど、主演女優なんて勝ち取ったことないし、有名な舞台なんて一度も立ったことない。どんなに才能があっても、世間から評価されなければ無能と同じ。世間の大多数は有名な方が才能があると見るから。」

「そんな奴らはごく一部よ。どんなに有名でも才能と向上心が無ければ、舞台で演技する価値なんてないわ。」

「舞台の世界ではそんなこと言ってられないわ。実力だけではものが言えないわ。」

「それでその後どうしたの?」

「家賃も払えなくなって、頼る宛もなく路上生活をするはめになったわ。」

彼女は悲しそうに話した。

「貧乏になったことより、舞台に立てなくなったのが一番辛い。」

「ストリートだって立派な舞台じゃないかしら?ストリートでも芸術は生み出されるわ。」

「どんどん惨めになるだけよ。そんなことするくらいならそんな過去隠していた方がマシよ。」

彼女は暗い表情をした。

「今度、私の家で一人演劇してみてよ。それなら良いでしょ。もちろん閲覧料としてお金は払うわ。この前私が言ったことが理解出来てるなら、やるしかないわよね。」

「あんた、お金は自分で稼ぐものって言ってたね。考えてみても悪くないわね。」

メモを渡した。

「今度その建物の前に来て。手書きの地図もあるから。」

「分かったわ。」

「あとそれと何か助けが欲しかったらいつでも私に言って。」

彼女はいつの間にかいなくなっていた。

「ルネ!どこにいるの?ルネ!挨拶くらいしたらどうなのよ。ルネ、すぐそこにいるんでしょ。」

「ルネ、さっきから何で自分の名前呼んでるの?」

コリーヌが私の体を抑える。

「ホームレスの女の子を呼んでるのよ。」

「そんな女の子、どこにもいない。全てはルネの妄想なの。現実と妄想の区別が出来なくなってる。」

「私を止めないで。」

電話が鳴り響く。

「家まで送ってあげるわ。」

コリーヌは私を家まで送る。

「今日のことは忘れて。」

「絶対忘れないわ。」

コリーヌと別れる。

ベッドの上で眠気を感じていた。


「ジョエル!君とは付き合ってられない。君がずっと育って来た家庭環境の価値観についていけない!」

「イルもお母さんと同じくらい大事だわ。どうしてそんな理由で別れたがるの?一方的すぎるわ。」

彼女は俺の話を聞かない。

「ママが私達と一緒に寝るだけよ。もちろん私が真ん中になるからさ。」

「そういう問題じゃないよ。二人の時間が今以上に欲しいんだ。デートの時間、お母さんがついていくのが多すぎる。我慢して来たけど、もうついていけない。」

体が軽くなる。


「やっと分かったよ。イルの正体が。私自身でしょ。ルネ!」

「やっと気がついたんだね。」

ジョエルはもういない。

「正確に言うと、男として生まれたルネよ。Eが一つないルネよ。」

「君は女性として生まれた俺だね。」

ルネとルネが出会う。イルは私自身そのものだった。

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