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第3話 女装のクオリティを上げましょう。

 卒業式の数日後、僕は従姉の千秋と一緒にコスプレグッズ専門店を訪れていた。


 目的は当然『渚ちゃん』の女装クオリティを上げる為のアイテム各種を購入することである。


 最低限必要なのは、ウィッグ、シリコンバスト、ドロワーズ辺りだろうか?


 ウィッグは、ロングだと慣れてなくて髪が鬱陶しそうなので、茶髪で肩くらいまでの物を購入。


 次にドロワーズだが、これはぶっちゃけパンチラ対策だ。


 何かの拍子にスカートが捲れてパンチラしてしまった際に、トランクスやボクサーパンツを客に見られてしまったら大変なことになる。


 かといって、そんな事故に備えてシフトの度に女性用のパンツなんて履ける訳がないので、そもそも見えないようにするしかない。


 ドロワーズを履いておけば、パンチラどころかパンモロしても大丈夫だ。


 最後に一番憂鬱なアイテムであるシリコンバストだが、ザックリ分類すると、着るタイプとブラジャーに詰めるタイプの2種類があるらしい。


 こんなことでもなければ一生知らなかった情報だろう。全く嬉しくはないが。


 千秋は前者を推していたが、毎回の着脱の手間に加えて、保管や手入れも面倒そうなので「せめて後者にしてくれ」と拝み倒した。


 ちなみにリアル志向の商品らしく、細部まで作り込んである。


 千秋が「これ私のに色も形もそっくりかも?」とか言っていたが、欠片も嬉しくない情報だ。


 どうでも良いが、年頃の女子として羞恥心という概念はないのだろうか?


 まぁそれはそれとして『男の俺がブラジャーを身に付けなければいけない』という最大の問題がまだ残っていることを忘れてはならない。


「ブラなら私が昔使ってたのが押し入れに仕舞ってあるから、わざわざ買わなくてもそれ使って良いよ」


「…従姉とはいえ、その発言は流石にどうなんだ?」


「あっ!ちゃんと洗ってあるから、クンクンしても柔軟剤の匂いしかしないと思うよ?残念だったね?」


「はぁ、残念なのは千秋の頭だよ」


 残念さ加減は、佐伯さんと良い勝負だと思う。


 身内贔屓を抜きにしても、千秋の容姿は整っている。


 実際、何処かの芸能事務所にスカウトされたこともあるとかないとかって話だ。


 にも拘らず、千秋に彼氏がいたという話は聞いたことがない。


 まぁ内緒にしてるだけという可能性もなくはないが、従弟を女装させようとしたり、自分の下着を平気で貸そうとしたりと、色々と残念なところが多いので、周囲の男子も恋愛感情にまでは到らないのだと思う。


「腕とか足の産毛の処理は、定期的にするようにね。念の為に腋もやった方が良いかもよ?」


「まぁ俺は体毛自体そんなに濃い方じゃなし、週一くらいで問題ないんじゃない?」


「あとは、春休みの間に簡単なお化粧も覚えようね?」


「え?千秋がやってくれれば良くない?」


「毎回私がいるとは限らないでしょ?お母さんは店にいるからそんな暇ないし、渚にも最低限自分で出来るようになって貰わなきゃ」


 うっそだろ?


 ブラジャー付けた上、自分で化粧までしろってのか?


「持ち帰って慎重に検討した上で回答させて頂きます」


「私の予定が空いてる日は、ウチで毎日特訓ね。バックれたら叔母さんに連絡して即日アメリカ送りよ?」


 女装か国外退去の2択とか悪魔かよ?


 どうやら、最初から俺に拒否権などなかったようだ。

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