第24章 初恋③
初恋③
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ナナツ国は、強さが全ての脳筋国家だ。
なので、現在、最強として君臨しているオレの決定は絶対だ。
だから、オレが国王を娶ろうと、オレが国王と一緒に居られる様に、国王代理を玄孫に押し付けようと、何処からも誰からも文句は出ない。
しかし、他国への対応は必要だ。
なので、正式な発表は産業ギルドのトップ会合で各国に伝えてから行う事にした。
なんせ、オレは既に、2ヵ国のトップを妻にしている。
此処に、王女と国王が追加されたら、オレへの権力の集中に異議を唱える者も居るかもしれないからだ。
シン王とエリカと話し合った結果、来月の1日には、元々予定されていた会合が有るので、其処でヒィとエリカとの婚約は発表する事になった。
結婚式は、エリカの立っての希望で、7月11日に行う事になった。
オレの誕生日を覚えてくれていた事にちょっと嬉しく思った。
ヒィもエリカから理由を聞いて、同じ日にミミッサス村のチャペルで合同で行う事になった。
こうなると、惑星ベータの計画は遅らせなければならない。
結婚の予定が有るのに出撃しては死亡フラグ回収の危険性が有るからだ。
なので、ヒィとエリカの専用機、専用装備作成もゆっくり時間を取れた。
レベル上げも各自行ってくれたからだ。
残念ながら、2人は1億には至れなかったが、1,000万は軽く超えられた。
惑星ゼータの店舗建設も終わったので、後はローラスに任せた。
しっかり、準備して結婚式だ。
これから、忙しくなる。
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聖樹暦20,022年7月11日
ヒィとエリカとの婚約は、何処からも苦情の来る事無く、無事、今日の結婚式を迎えられた。
参列者はオレ、ヒィ、エリカの家族だけ、神父はいつものシロネコだ。
2人ともデザインは違うがベールの長いプリンセスラインのウェディングドレスで並んで入場して来た。
「……我が主、レンジ クルス。その者達、ヒィ ロウ、エリカ ミナミイを妻とし、生涯愛する事を誓うか?」
「ああ!!誓う!!」
「ヒィ ロウ。我が主、レンジ クルスを夫とし、生涯愛する事を誓うか?」
「はい!!誓います!!」
「エリカ ミナミイ。我が主、レンジ クルスを夫とし、生涯愛する事を誓うか?」
「はい!!誓います!!」
「では、誓いの口付けを」
オレは、ヒィとエリカにキスをして、横に並ばせる。
「ここに誓いは交わされた。我が主の奥方、ヒィ クルス、エリカ クルスの誕生を宣言する!!」
シロネコの宣言にチャペル内は大きな拍手に包まれ、シン王の号泣する声が響いていた…………
その後は、恒例の大宴会だ。
因みに、今日は各家族とクルス商会の面々。
明日は、ロウの国で、パレードと、惑星ゼータの来賓とのパーティー。
明後日は、ナナツ国で、パレードと、惑星アルファの来賓とのパーティー。
1日挟んで、15日から3日間はヒィと2人で過ごし、また、1日挟んで、19日から3日間エリカと2人で過ごす予定だ。
来賓とのパーティーも慣れたモノだ。
なんせ、1番偉いヤツらはみんな知り合いだ。
1番疲れていたのは、ヒィだ。
お転婆姫に、2日もじっと座っておけと云うのは非常に辛かった様だ。
見た目は、お嬢様然としているが、じっとしていられない性格は妻達やメイド達の指導を受けても、まだまだ、治りそうに無い。
「おはよう、ヒィ」
「おはよう御座います。クルス様、あ、!!レンジ様」
「身体は何とも無いかい?」
「!!は、はは、はい!!
大丈夫です!!全然、全く大丈夫です」
「なら、良かった」
ヒィは、年齢イコール恋人いない歴の生粋の乙女だった。
結婚の予定迄が、トントン拍子に決まった為、折角なので、初夜まで何もしなかった。
決して、エリカと先に“致してしまった”事への言い訳では無い!!
決してその様な事実は存在しない!!
そんな訳で、何もかもが、初めて尽くしだった昨夜を思い出したのだろう。
とても、とても可愛いらしく、真っ赤になっている。
「で、今日の予定は、何か考えてるのか?」
「あの……。本当は、今日は狩りにご一緒して頂きたかったのですが…………。
その……。ええっと…………」
「ん?」
「あ、あのですね……。
さ、昨夜の続きを……。その……。お願いしたいと申しますか……。
ええっと…………」
「…………じゃあ、今日は、このまま過ごそうか」
「はい、お、お願いします…………」
クリシュナもそうだったが、“初めてが遅い方がハマり易い”と、云う都市伝説は、事実かも知れない。
食事も取らずに、その日は、1日ベットで過ごしたのだった…………
お転婆姫のなんと可愛らしい事か…………
翌日は、第1クルス島村と、サーラールの街でデートだった。
お転婆と言われて居ても、そこはやっぱり女の子だ。
可愛い服やアクセサリーなんかに、目を止めていたので、いつもの事だが片っ端から買ってあげた。
あっちに行ったり、こっちに行ったり、忙しなく見て回ったが、とても良い笑顔に惚れ直した次第だ。
3日目は、やっぱり、ゆっくり過ごして、昼食はヒィが、夕食はオレが作った。
長く、狩りを続けていた為に自然と身に付いたであろう料理スキルもレベル10で、愛の籠った食事を堪能した。
非常にワイルドな料理だったが、味は美味かった。
オレ達は、出逢って間も無いし、ゆっくり話す時間も余り無かったので、話しが尽きる事無く、1日過ごしたのだった…………
仕事日は、報告を聞いただけで終わった。
余裕があったので、気になっていた人物の状況確認に行った。ルクスだ。
ルクスは今、オレの指示で各孤児院でのロボットオモチャの使い方指導に回っている。
仕事と遊びを兼ねた、素晴らしい任務だ!!
今日は、グラール帝国の孤児院を回っているらしいので、こっそり様子を見に行った…………
ルクスは、それはもう、子供達に揉みくちゃにされていた…………
ルクスの高いステータスを持ってしても捌き切れない質問攻めと、持つところが無いくらい全身を引っ張られていた…………
…………ルクスは、涙を流して、楽しそうに遊んでいる…………
オレに気付いたルクスは、何やら必死にオレに向かって手を伸ばしていたが、笑顔で手を振り返して、その場を後にした…………
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「えっと……。そんなに見詰められると、恥ずかいんだけど…………」
例によって、エリカも初夜はウェディングドレスだった。
結婚式やパレードでは、ずっと横並びだったので、こうして真っ直ぐに綺麗になったエリカを見詰めると、想いも一入だったのだ。
「ゴメン。
でもさ、今更ながらにエリカと結婚したんだなぁ〜って思ってさ」
「そうだね、お互い、大分遠回りしちゃったもんね」
「ああ、エリカが悪い男に引っ掛かっちゃうくらいにな」
「そうだね、どっかの誰かさんが、突然居なくなっちゃったせいで、失恋して傷付いてるところに、優しくされてねぇ〜…………」
「う!!藪蛇だったか…………
でも、これからは大丈夫だ。
この結婚指輪は、“不老永寿”の効果と、万が一の時にはオレへの“緊急連絡”の機能があるから」
「もう!!そう云うのは、私が指輪を貰った感動を噛み締めた後に言ってよ!!」
「ゴメンゴメン。さ、左手出して」
「はい!!」
エリカの薬指に指輪を通して、オレはエリカをキツく抱き締めた…………
「エリカ。これからは寂しい思いはさせないよ。
本当の意味で、ずっと一緒だ…………」
「!!バカ!!もう!!いつから、そんなセリフ言う様になっちゃったのよ…………
そんな事、言われたら…………」
エリカはそのまま、わんわん泣き出した。
ずっと……。本当にずっと寂しかったのだろう…………
オレはそのまま、エリカを抱き締め続けた…………
「おはよう、レンジくん」
「おはよう。エリカ、その格好は…………」
「うん、今日は、“子供達に会って貰おう”と思って」
「分かった。オレも支度するよ」
オレ達が向かった先は、ナナツ国、ヒガシナカ島の街の隅。
多くの墓標が並ぶ墓地だった。
エリカは、真っ黒なドレス。
オレも何時もの格好に、黒いジャケットと黒いネクタイをしている。
エリカが立ち止まった石碑には、25人の名前が有った。
1番最初の名前は、レンイチだった…………
「私が勝手に付けた名前じゃ無いよ?
2人で1文字づつ決めたんだから」
「そうか、だったら、レンコンとかレンパイとかになってたかも知れないんだな…………」
「その時は、ちゃんと別の字も考えてました!!
それより、ありがとう。
なんだか、凄く長く手を合わせてくれてた…………」
「ああ、エリカをちゃんと幸せにするって、1人1人にな。
オレは、全員、顔もエリカとの関係も知らないからさ。
まあ、1番最初が、一緒に来た息子さんだろうとは思ったけどな」
「うん、引っ込み思案な大人しい子でね。
本当に、小さい頃のレンジくんみたいな子だった…………
もっと、強そうな名前にすれば良かったかもって何度も思ったよ…………
でも、ちゃんと優しい子に育ってくれた。
最後に、私に『1人じゃ無いから』って言ってくれてね……
沢山、孫も残してくれた……」
「そうか……
息子さんも生まれ変わって、今も楽しくしてくれてたらいいな。
輪廻転生って有るだろ?
あれさ、この世界では普通に有りそうなんだ。
オレも2人、前世の記憶持ちに会ってる。
記憶は無くても、生まれ変わってるヤツはきっと、いっぱい居るんじゃ無いかと思うんだよ」
「そうなんだ…………。
だったら、何時か何処かで、また、会えるかもしれないね」
「ああ、でも、元旦那に記憶が有っても、もう渡さないぞ?」
「!!もう!!また、そんなセリフ言って…………」
「中学の時に言えなかった分、しっかり、伝えて行こうと思ってさ」
「!!そうだね。
私もこれから、沢山、『愛してる』って言うよ!!」
「えっと……。そんなに見詰められると、恥ずかいんだけど…………」
「ゴメン。いやぁ〜……思い切ったなぁ〜って思って…………」
「!!私だって、ちょっと無理が有るかもって、思ったけど、でも折角レンジくんに会えたんだから、どうせならって思って!!」
「いや、オレはそう云うのは嫌いじゃない。
エリカの気持ちも嬉しい。
ただ、ちょっと、驚いただけだ。
とっても、可愛いし、今でもちゃんと似合ってる」
墓参りの後は、ヒガシナカ島の街でデートをした。
エリカの昔馴染みの店や、お気に入りのレストランなんかを回って、夕方、洋服屋で大きな紙袋を受け取っていた。
夕食も別のレストランで取って、戻って来てから、エリカはオレを風呂に押し込み、自分は後から入った。
そして、現れたのが中学時代のセーラー服コスプレだったのだ。
間違いなく、今日、受け取った紙袋だ。
そして、わざわざ、仕立てたのだろう。
全く同じデザインだからだ。
エリカは、自分でも言っていたが恐らく本当にレベルが上がって若返っていると思う。
見た目は20代半ばくらいだから、この世界に来た時と変わらないくらいにはなっている。
しかし、オレの中で、あのセーラー服は中学生のモノだ。
大人のエリカが着ているとコスプレ感が半端無い。
だが、しかし!!
オレは、“数多の崇高な書物”のお陰で、非常に造詣が深い…………
コスプレ感もまた、1つのステータスだと思う。
強く思うのだ!!
「あの頃より、ずっと綺麗になったけど、あの頃と変わらず、今でも、とっても可愛いよ」
「!!ええっと……。ありがと…………」
エリカは、若干、不機嫌になり掛けていたが直ぐにモジモジし始めた。
オレの大量のスキルは、こう云う窮地を乗り切る為に、万全の準備をしてあるのだ!!
そのまま、人生初、セーラー服をしっかりと、堪能させて頂いた…………
翌日は、レベル上げに付き合って欲しいと言われた。
現在、エリカは、妻達の中では最下位だからだそうだ…………
オレは、エリカとは普通の新婚っぽい3日間を過ごすモノだと思っていた…………
オレは、忘れていたのだ、彼女は今や脳筋の国の王だと云う事を…………
さすが、脳筋の王。
さすが、勇者。
エリカは、たった1日で、レベル5,000万迄上げてしまった。
経験の差だろう。
ペースで言ったらレンよりも早い。
恐らく、最速新記録だろう。
3日目は、いつも通り、ゆっくり過ごした。
昼食は、エリカが、夕食は、オレが。
エリカの愛情も美味しく頂いた。
オレの料理を初めて食べたらしい、エリカの驚いた顔も堪能出来た。
しかし、翌日…………
「レンジくぅ〜〜ん!!」
エリカが泣きながら、オレの執務室に駆け込んで来た…………
さすがの一言に尽きる…………
トラブルメーカー、お転婆姫ヒィは、自力でレベル上げをして、レベル6,000万になっていた…………
エリカは、結局、最下位のままだったのだ…………
これでまた、我が家のレベルアップブームが再燃しそうだ…………




