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第22章 天女の女王②

天女の女王②





▪️▪️▪️▪️





「…………オレが誰か分かるか?」


「…………はい、救いの神です…………」


『…………ちょっと、やり過ぎだったかな?まあ、良いか』


“久遠の棺”から出て来た天女種族の女王は、即座に両手を地面に着けて平伏した。

一瞬だけ見えた顔は涙と鼻水でぐちゃぐちゃになって居た。



「不老不朽だろうと、どうにでも出来ると云うのも分かっただろう?」


「!!はい!!貴方様に全て従います!!」


女王は、思い出したのか、ガクブルだ。


「なら、この星で異世界召喚を行わせ無い様にする事に協力しろ。

天女種族が滅びる様な事にはしないつもりだ」


「はい、全力でご協力致します」





女王の城は、ちょっと金持ちの家程度の代物だったが、城内の者達は一応普通の服を着ていた。


城迄の道すがら、街の様子を見たが、ボロ布を着て、焼いただけの肉を食っている程度の生活レベルだ。

建物も掘立て小屋で、藁を掛けて眠る様な状態だった。



通された城の部屋も、組み木の机に組み木の椅子。

灯りは動物の脂を燃やしている様で、魔導具どころか蝋燭すら無いレベルだ。



「女王…………。いや、先ずは、名前を聞いておこう。

おまえと他の国の女王の名前と、ソイツらが、どの辺りに居るか説明しろ」


「はい、我は、スィオー カルディアと申します。


そして、我の治める地は最も西に位置し、この地の東は、クティン クレディーが支配しています。

北東は、ヘキカギュン ティースン、南東は、スイージュ スイージュが支配しています。


その3つの地のさらに東、南北に長く、コウ ドゥーが支配し、更に東、北東をヒバデツリが、南東をユウキュンカ ユースーが支配しています」


「分かった。

さっきの話しから、おまえを含んだ、その7人で男を滅ぼす計画を立てたのか?

それとも、元々は違う計画だったのか?今迄の経緯を説明しろ」


「元々は、コウ ドゥーが、我に声を掛けて来ました。


我とコウ ドゥー、ヘキカギュン ティースンの3人は、母は違いますが、3人とも当時の皇帝、コウキ帝の娘です。


コウ ドゥーの話しは、

『今のままでは、我ら3人の内2人は、友好の証と言う名の子供を産む道具として、仙人種族と人種族の皇帝の長男への貢ぎ物にされる。

残った1人も長兄の子供を産む道具にされてしまう。


死ぬまで、何千人も何万人も子供をただただ産み続けるだけの人生など耐えられない。


我らには、不朽の肉体が有る。

不老不朽の力を奪われる前に、皇帝や兄弟達を全員殺して、我らで帝位を奪ってしまおう』

と、云うモノでした。



そして、見せられてしまったのです。


手足と翼を斬り落とされ、目を潰され、口と尻に器具を入れられて括り付けられた、妊娠した“天女種族”の成れの果ての姿を…………


その様な、痛ましい姿の者達が、何十人も城の地下に居るのを…………



それから、我らは、離宮を秘密裏に占拠し、同志を集めました。


純潔の天女種族は非常に少なく、貴族の娘か、小さな子供ばかりで、まともな戦力になる者は殆どいません。

なので、不朽の肉体を利用して、各地で自爆同然で多くの者を殺して回ってはレベルを上げて行ったのです。


全員、あの地下の地獄を見た後は、死に物狂いで必死にレベルを上げて行きました。

その中で、特に力を付けて行ったのが、残り4人です。


そして、多くの子供を含んだ50人程の戦力で、帝城ごと皇族を皆殺しにする事に成功しました。


当初の予定では、その後、コウ ドゥーが皇帝となり、天女種族を保護する法律を作る事になっていたのですが、平民出だった、スイージュ スイージュとヒバデツリは『法律など、いつ変わるか分からない。男を滅ぼすべきだ』と言い出しました。


我を含め、地下の地獄の光景が全員頭から離れなかったのです。



大きな反対も無く、男を皆殺しにして行きました。

その頃には、我らの行いを知った仙人種族と人種族が攻めて来ていました。



それに対抗する為、“千人殺し法”を執行したのです。


生き残った天使種族の女に、仙人種族か人種族を1,000人以上殺した者にのみ生きる資格を与える法律です。

我らの行いで夫や息子を失い、失意の底に有る者も多く、生きる為に必死にならない者も居ました。


なので、地下の地獄の光景を天使種族の女で再現して民衆に見せたのです。


『1,000人以上殺せなかった者は、我ら天女種族が受けていた地獄と同じ地獄を味合わせる』と…………


結果、仙人種族と人種族は滅び、世界は天女種族と天使種族の女だけになりました。



仙人種族と人種族の土地も手に入れた事で、話し合いの結果、我ら7人は別々の土地を支配する事になりました。


脅威が無くなったとはいえ、女だけの世界です。

ゆっくりと滅んで行くならば、自然と共に生きるのも良いだろうと我は思っていました。


とうとう、手に入れた安息だと…………



しかし、全て終わったと思っていたのは、我とヒバデツリだけだったのです。

他の5人には、更に先の目的があったのです。



そもそも、我に声を掛け戦を始め、皇帝になる予定だったのは、コウ ドゥーでした。


しかし、コウ ドゥーにそうする様に指示していたのは、ヘキカギュン ティースンだったのです。


ヘキカギュン ティースンは天輪の力に目覚めていた者で、その事をずっと隠していました。

その天輪の力は“天心”、人を操り、惑わす力です。

この力を使い、数人の男を隠していたのです。


それまでの、大人しく子供好きな姿も全て演技でした。

天女種族の赤子を多く引き取る為に、赤子を可愛がる振りをし続けていたのです。


ヤツの目的は、全て自分の意のままになる国を一から作る事でした。



しかし、コウ ドゥーもヘキカギュン ティースンに操られている振りをしていただけでした。


コウ ドゥーもまた、天輪の力に目覚め隠していました。

“天召”、異世界召喚を行う力です。


異世界から来た者達のレベルの低さを知っていたコウ ドゥーも、全てが意のままになる国を作ろうとしていたのです。



残りの内の2人、クティン クレディー、ユウキュンカ ユースーの手口は同じです。

貴族出身のこの2人は、自分の親の領地に男を隠していました。


目的も同じでした。

自分が皇帝になろうとしていたのです。



最後の1人、スイージュ スイージュは、最も苛烈です。

ヤツの目的は、全ての人間を滅ぼす事でした。


なので、ヤツは他の者達が男を隠している事を知りながら、不老不朽の天女種族が少しでも減る様に放置した様です。


支配地を分けた時にも、たった1人で支配地へ行きました。



100年程の平和という名の準備期間を経て、コウ ドゥーが動き出したのを機に、他の者達も一斉に戦争を拡大して行きました。


そして、コウ ドゥーが躍進すると共に、コウ ドゥーの“天召”の力が明らかになり、異世界召喚による戦力の増強が最も効率的であると、我を含め、全員が挙って“天召”の能力者を探し出し、異世界転移者を利用した今の戦争の状態になったのです…………」



「なるほどな……

プランAは、気の引ける話しだなぁ〜…………

B〜Eも、ちょっと、気が引けるなぁ〜…………」


「救いの神よ。

そのプランと仰られるのは…………」


「ああ、この星での異世界召喚を無くすプランだ。


プランAは、全員皆殺し。

プランBは、異世界召喚能力者を皆殺し。

プランCは、異世界召喚能力者から召喚能力を奪う。

プランDは、この星から全てのスキルを奪う。

プランEは、この星から全ての魔力を奪うだった。


しかし、自分を守る為の争いだったなら、天女種族の言い分も分かる。

そこに、多少の支配欲があっても、皆殺しや無理矢理奪うのはオレの趣味じゃ無い。


その争いで、オレは別に迷惑を被って無いからな」


「な、なるほど…………」


「今居るヤツらなら、どうにかしてやれるが、今後、産まれて来る天女種族をどうするかだなぁ〜…………」


「!!今居る者達だけならば、救って頂けるのですか?」


「ああ、それは可能だろう。


要は、妊娠が望んだモノだけになれば良いんだから、“お互いに愛し合っていて、お互いに子供を望んでいないと妊娠しないスキル”を作って与えれば解決だ。


まあ、不老不朽は失うだろうが問題無いだろ?

死ねる事も必要な事だと分かっただろうから」


「!!はい、それならば“天女種族が子供を産む道具にされる呪縛”からは、解放されますから」


「問題は、妊娠し続けるのが種族特性だという事だ。

魔導具でスキルを覚えさせても、産まれて来る天女種族がこっそり悪用されたら意味が無い。


因みに、人種族との間の天女種族は寿命はあっても、妊娠し続ける事に変わりは無いのか?」


「いいえ、翼と天輪を持たずに産まれて来た者は、妊娠し続ける訳では有りません」


「翼と天輪が有ったら、不老不朽が無くても妊娠はし続けるという事か?」


「はい、仰る通りです」


「なら、人種族との間に産まれて来た男はどうなる?

翼と天輪を持って産まれた男は天使種族になるのか?」


「人種族との間には男は産まれません。

仙人種族もそうでした。

逆に、天使種族との間には、女が産まれません。男のみです」


「…………なんだ、それは?…………

種族の違いで、男女が別れるなんて事が起こるのか?…………


いや、血の優位性に何か違いが有るという事か…………」


『オレの子供達が、全員、神子なのと同じかもな……

しかし、そうなると、どうやって対処するか…………


“翼と天輪を持って産まれた天女種族”のみが対象なら、そういった子供が産まれない様に…………


ダメだな。命を弄る解決策は無しだ!!


種族特性…………種族か…………


!!もしかしたら、セレンやセリンの様に“獣人種族だと思えば”、天輪が消えるんじゃないか?!

天輪が無くなったら、妊娠し続ける事も無くなり“天召”も失われて、全部解決なんじゃないか?』


「…………これだな」


「救いの神よ、何か我らを救える秘策が?!」


「ああ、試してみる価値はある!!


スィオー、おまえをオレの配下に入れてやろう。

それと、おまえが全幅の信頼を寄せる者だけを明日、武装させてオレの船迄連れて来い。


此処の者には、2、3日オレの船に行く事を伝えて、無意味な子作りも辞めさせておけ」





▪️▪️▪️▪️





「先ずは、オレとの実力差を見せておこう」


翌日スィオーが連れて来たのは4人。

残る不老不朽の本来の天女種族達だ。


「救いの神よ、まさか、あの魔法を?!」


スィオーは“久遠の棺”の事を思い出しただけで、ガタガタと震えている。

もしかしたら、洗礼的な感じで、他の4人にも“久遠の棺”を使う可能性を考えたのかもしれない。



「いや、戦闘力の方だ。

もしかしたら、スィオーもあの魔法さえ避ければ済むと考えていたらいけないから、全員で掛かって来ていいぞ」


「分かりました。では、参ります!!」


“久遠の棺”では無いと分かり、単純などつき合いだと知った瞬間、スィオーは一瞬で元気になった。

不老不朽の肉体を持つ事で、どつき合いならば一切のダメージを受けないと云う潜在意識の現れだろう。


スィオーの掛け声と共に、5人が散開して、オレに迫って来る。


5人ともゴスロリ衣装に手甲を嵌めている。

この星で初めて見た金属の装備だ。


先ずは、不老不朽の効果を確認する為に、力1億で、万が一殺さない様に全員の右肩を殴ってみる。

ガンッ!!ガンッ!!と、人外な音をさせて、全員壁迄吹き飛んだ。



殴った感触としては、結界を殴った時に近い。

しかし、布の上から中に皮膚があったのも感じた。

不思議な感じだ。


5人とも、気付いたら壁にぶつかって居たのだろう。

何が起きたのか解らない顔をして居たが、直ぐに気を取り直して向かって来る。


オレは、白刃を抜いて、“スキルを使って”、今度は全員の右腕を斬り飛ばす。


「うぐ!!そんな!!」

「きゃあ!!腕が!!」

「痛い!!斬られた?!なんで?!」


オレは白刃を納刀して、痛がる5人を“神聖属性魔法”で直してやる。

もちろん、斬り落とした腕の方は、コッソリと“ディファレントスペース”に回収だ。



「どうだ?不老不朽があっても、オレの方が強いって事が分かったろ?


そして、昨日の“久遠の棺”も有る。

例え死ななくても、オレが首だけにして、“久遠の棺”を使ったら逃げられないだろ?」



またも“久遠の棺”を思い出したスィオーが、全身をガクガク云わせて震えている。

それを見た4人も顔が盛大に引き攣っていた。



「スィオー安心しろ、オレは自分の配下に手を上げたりしない。

今のも、訓練の一環程度だ。

もちろん、裏切らなければだがな」


「はい!!絶対に裏切ったり致しません!!

絶対の忠誠を誓います!!」


「「「私も誓います!!」」」


「分かった。おまえ達の忠誠を受け取ろう。

じゃあ、今後の予定について話すから向こうの屋敷に行こう」





スィオー達、5人を連れて来たのは、3の月の時間延長100倍合同訓練場だ。


シルバーウィング内の訓練場でも良かったのだが、敢えて技術レベルの差を実感して貰う為に、シルバーウィングの直通魔導具で此方にやって来たのだ。


シルバーウィングの中だけでも十分驚いて居たが、扉を潜ると別の世界に出た事で凄まじく驚いて居た。


妻達やペット達、今日のお供の面々も、不老不朽対策を見に来て居たので、一緒に屋敷に向かう。



「今後の予定だが、先ずおまえ達5人には、オレの実験に付き合って貰う。


それが、上手く行ったら、その後は訓練を受けて貰って、一定以上になったら、おまえ達の星に戻って、戦争を終結させてから全ての天女種族の妊娠し続ける呪縛を取り払うと共に、異世界召喚の力も奪う予定だ」


「「「はい!!」」」


「じゃあ、先ず実験についてだが、セレン、セリン、ステータスプレートを」


「「はい」」


「これは、ステータスプレートと言って、鑑定結果を記せる魔導具だ。

先ず、この2人を鑑定して、このステータスプレートと同じ事を確認してくれ」


「「「!!!!レベル16億とレベル7億!!」」」


「いや、そこじゃ無い。種族だ。


この2人は、天使種族の血を引いているが獣人種族だ。

それが、鑑定とステータスプレートで同じだという事を確認してくれ」


「はい。獣人種族という種族の様です。

間違い有りません」


「じゃあ、いくぞ。

セレン、セリン、おまえ達は、『天使種族だ!!』。


よし、鑑定してステータスプレートを確認してくれ」


「「「!!!!変わった?!」」」


「ああ、鑑定では、2人は天使種族になっているだろう?


だが、ステータスプレートは、さっきのままだから獣人種族だ。

セレン、セリン、ステータスプレートに魔力を流してくれ」


「「はい」」


「と、これで、ステータスプレートも変わった訳だ。

これを使って、“天女種族を獣人種族”にする。


すると、天女種族からは天輪が消えるだろうと思う。

そして、妊娠の呪縛も解ける訳だ」


「救いの神よ、一体、どうやって種族が変わったのですか?!」


「別に難しい事じゃ無い。

世界を捻じ伏せるくらいの強い意志で思い込むだけだ」


「「「世界を捻じ伏せる?!」」」


「そんな、バカな…………」


「おまえ達。

昨日は、“古の神の同胞”などと、失礼な事を言っていましたが、主様こそが真なる神なのです。


おまえを救ってくれた、“神の様な人物”では有りません。


“神に準ずる称号”を持つ紛い物達とも違います。

主様こそが、“神”なのです」


シスターシロリュウが現れた!!

いつもの、盛りに盛った宗教勧誘だ。


「真なる神…………。

“本物の救いの神”…………」


「まあ、しかし、神なんてのは只の種族だ。

オレは、自分のしたい様にしかしないし、誰でも彼でも助けたりするつもりも無い」


「“神”が只の種族?

本物の神にとっては、只の種族…………」


「話しが逸れたな。

で、実験について此処からが重要だ。


先ず、昨日も言ったが種族が変わってしまう事で不老不朽の種族効果も失われる。


不老については、高レベルの者は殆ど老化しないから今回は無視するが、不朽については、申し訳無いが確認の為に、怪我と病気と状態異常になるかのテストをさせて貰う。

怪我も病気も状態異常も軽微なモノにするし、効果が確認出来たら直ぐに回復もする。


そして、最も重要な、“妊娠の呪縛”の確認だ。

これは、昨日言っていた、“お互いに愛し合っていて、お互いに子供を望んでいないと妊娠しないスキル”の魔導具を準備して有る。


出来れば、強要はしたく無いから立候補して貰えれば助かる。

オレか、配下の誰かかは選ばせるから、最低2人純潔を捨てて貰いたい」


「では、我が代表して、神に純潔を捧げます」

「それでしたら、2人目は、私が……」

「いえ、私が!!」

「いいえ!!私が!!」

「神よ、私を抱いて下さい!!」


「……………………」


「さすが、あなた。

相変わらず、モテモテですわね」


「はい、さすがレンジ様です」


「お館様、この後、第1での審査を行いますので、その結果によって、ご判断頂けば良いかと思います。

サンプルは多い方が良いでしょうし」


「まあ、そうだな」


「アナンタ様が、お声掛けされたので5人共だとは思いますが…………」


「まあ、そうだな…………」





やっぱり、5人ともだった…………

全員、天女の名に恥じない美女だ、嫌な訳では無い。


寧ろ、ウェルカムだが、今回は実験のつもりだったのだ…………

下心では無いつもりだったのだ…………






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