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第21章 万物の記憶①

万物の記憶①





▪️▪️▪️▪️





「じゃあ、エリカ。何かあったら、クルス商会に伝えてくれ」


「うん、レンジくん、本当に色々とありがとう」



オレ達は、ナナツ国の観光を終えて、一旦、我が家に帰る事にした。


目的は、シルバーウィングを一度、3の月に移動させて大改造を行い、宇宙での運用が出来る様にする為だ。


現在も宇宙戦闘用の機動兵器の設計や試作は行っているが、やっぱり、ハンガーで乗り込んで、カタパルトデッキから出撃させたいという、オレの趣味の問題で大改造をする事にしたのだ。


もちろん、ディファレントスペースに置いておけばスペースは取らないし、何時でも乗り込めるのだが、利便性よりもロマンを追う事にしたのだ。


本当に緊急の場合は、どうせ、オレが生身で出向く。



シルバーウィングが戻って来るのを待ちながら、我が家で今日も機動兵器の設計図を引いていた、12月26日、珍しく、ラルがオレに直接会いに来た。



「父上、申し訳ありません!!

どうか、お力をお貸し下さい!!」


ラムとリムも呼んでリビングで待っていると、ラルが入って来るなり土下座した。


「ラル、もちろん、力は貸すけど、何があったか教えてくれ」


「はい、実は…………」



ギルナーレ王国、第7王女 オルフィリア ギルナーレ。


ラルは新年の祭りの際に、この第7王女との婚約発表をする予定だったそうだ。



その為、王女は王都ギルナーレから、サーラールの街に向かっていたらしい。

しかし、賊に襲われて攫われてしまったらしいのだ。


ラルには悪いが、典型的な王女誘拐イベントだ。


そして、ラルの元に届いた手紙にあった犯人からの要求は『レンジ クルスを連れて、2人だけで、オオサカ国、サカイの街の第17船倉に年内に来る事』だった。


ラルは相当慌てていた様で、ギムルスタ王にも伝えず、オレの所に飛んで来たらしい。



「分かった、もちろん、一緒に行くのは構わないが、先ず、ギムルスタ王に伝えた方が良い。

ラルの立場的にも、一緒に襲われた兵士達の報告よりも先に伝えた方がラルの印象も良くなるだろう」


「分かりました。

直ぐに、連絡を…………」


「いや、折角ここに居るんだから、ギルナーレ支店経由で、直接王城に行ったらいい。

ナルクタス、ちょっとラルに付いて行ってやってくれ」


「畏まりました」


「父上、有難う御座います。

直ぐに戻って参ります」



そう言って、ラルはナルクタスの案内の元、王都ギルナーレに向かった。



「セバス、何か情報はあるか?」


「はい。サカイの街の第17船倉ですが、隠し通路の可能性大となっております。

以前より、各国の要人が秘密裏に利用をしていた様です」


「なるほど……。

オレに秘密裏に会うのが目的の可能性が高いのか…………」


「はい。しかし、単なる罠の可能性も十分に御座います」


「そうだな。

だが、まさかラルの婚約者が狙われるとはな…………。

もしかして、最近、ウチの従業員も狙われていたりしたのか?」


「いいえ、その様な報告は御座いません。

お館様、ラル様、双方に恨みのある人物なのでは?」


「じゃあ、ラルの異母兄弟とかか?」


「その可能性は御座います」


「そうか……。まあ、会ってみれば分かるだろう」





戻って来たラルは、ギムルスタ王を連れていた。

ギムルスタ王からは「宜しくお願いします」と、頭を下げられただけ。


ぶっちゃけ、娘が攫われた父親としては、非常に落ち着いていたが、国王だからでは無くオレが行く事を知ったからだと、後でラルから言われた…………


万が一、既に殺されていた場合、オレでもどうしようも無いのだ、過度な期待は非常に困る…………





▪️▪️▪️▪️





オオサカ国


現在、世界で唯一の産業ギルド非加入国だ。


この国は、表向きは議会制で、31人の議員と1人の議長を10年に1度の国民選挙で選んでいる。

議長は、あくまで、議会の進行役で31人の議員は全員平等だそうだ。


もちろん、そんなのは建前で、実際には4人の権力者とその取り巻きの様だ。



そして、表には一切出て来ないが、“賢王”と呼ばれる影の支配者が居るらしい。

エリカが生きて居た事から、もしかしたら、建国したエリカの元仲間の賢者かもしれない。



サカイの街は、そんなオオサカ国でも最大の貿易都市だ。


海からの入国は、必ず此処で入国審査を受ける事になっている。


そんな、サカイの街に巨大な白い龍と黒い竜が迫っていた。

言わずと知れた、ウチのシロリュウとクロリュウだ。


ラルが同行するので、クロリュウに乗って来ようと思ったのだが、シロリュウが自分も行きたいと付いて来たのだ。



街は大混乱だろうが、そのまま、港で降りて第17船倉に向かった。

シロリュウはいつものオレの肩に乗って、クロリュウには念の為、ラルに付いて貰っている。


周囲に人は居らず、そのまま、扉を開けて中に入った。





中には船も荷物も無く、奥の方に20人程の人が居るだけだった。


「な、なんだ!!おまえらは!!」


「おまえらが呼んだ、クルスとラルだよ。

相手の顔も知らないのか?」


「王女殿下は何処だ!!」


「よく来たな。

レンジ クルスとラル ルザスン!!」


「おまえらは!!」


「え?ラル、コイツら誰なんだ?」


「左の男はリムの元恋人で、真ん中の女は元長兄の妻で、右の男は元母上の愛人です」


「じゃあ、奥の男は?」


「分かりません」


「…………で、何の様だ?」


「リムさんと別れろ!!」


「ラムさんとも別れろ!!」


肩に居たシロリュウが、ビクッとして、スッと離れた。

思わず殺気が漏れてしまった様だ…………


「…………おい、言葉に気をつけろよ?

オレからラムとリムを奪おうとするなら、殺すぞ?」


「!!命なんて惜しく無い!!」


「そうだ!!オレだって!!」


「…………じゃあ、死ね」


オレは、“ディファレントスペース”から、白刃を取り出して、怒りのままに左右の2人を粉々になる迄、斬り刻んだ。


キーンッ


ドバッと、一瞬遅れて、肉片すら分からない程粉々になり、血溜まりだけになった2人を見て、


「ひぃ〜〜〜!!」


真ん中の女が腰が抜けて座り込んだ。



「おまえも、何かオレに用があるのか?」


真ん中の女は、首をブンブン振ってガクガク震えている。



「じゃあ、おまえは?」


オレは、奥の男を見る。


「申し訳ありません。

クルス殿、今回、誘拐を依頼したのは私です。


私は主人より、あなたを連れて来る様、命じられました。


しかし、あなたは、誰の呼び出しにも応えないとの事。

なので、この様な方法を取りましたが、王女殿下は、この先の屋敷で丁重に持て成させて頂いております」


「王女殿下は無事なんだな!!」


「ええ、一切お怪我も有りません」


「分かった。

なら、王女は強引に奪い返して、おまえの主人にも会わずに帰らせて貰おう」


「え?!」


「何を驚いてるんだ?

おまえがさっき言った様に、オレは自分の用が無ければ誰の呼び出しにも応じない。


それを、人質を取られて変えてしまったら、今後、同じ事をするヤツが現れたら困るだろう?


だから、おまえの足元に在る隠し通路から、おまえの主人の屋敷に行って、王女を救出して、その屋敷を壊滅させて、おまえの主人をボコボコにして帰るんだよ」


「な、そんな!!お待ち下さい!!

誘拐は私の独断です。

主人の命令はあなたを連れて来る事だけです。


誘拐の罪は私がお受けしますので、どうか、主人に会って頂けないでしょうか!!」


「部下の責任を取るのが上司の仕事だ。

つまり、おまえの行いは、主人の責任だ。


安心しろ、ボコボコにする時に、一瞬だけは会う事になる。

見えるかどうかは別だがな」


「どうか、お許し下さい!!主人の寿命は後僅かなのです!!

私が主人に相談もせず強引な手段を取ったのです。


何卒、何卒お許し下さい!!」


「…………死にそうなヤツが、一体、オレに何の用があるんだ?」


「主人の研究結果を引き継いで頂きたいと…………」


「研究結果?何のだ?」


「分かりません。

主人は、多岐に渡って研究をされていましたので…………」


「…………分かった。

先ず、王女を返せ。そうすれば、話しだけは聞いてやる」


「有難う御座います!!

直ぐにご案内します」



パシリAの案内の下、隠し通路を通って“主人”の屋敷に向かう。

船倉に居た誘拐実行犯達は完全に放置されて居たが、オレ達も無視しておいた。


派手に入国したオレ達とは別に、諜報守護部のメンバーがこっそりこの周囲に来ているので、セバスの指示で対応するだろう。


シロリュウとクロリュウが、“空中監視魔導具”を1つづつ手に持って来て居るからだ。

此処の状況は我が家の司令室に筒抜けだ。



隠し通路は結構長く、恐らく街の外まで出てしまっている。

途中、警備詰所の様な所が何ヶ所かあったが、パシリAは顔パスの様だった。


地上に出ると、そこは領主館程は有るかなり大きな屋敷で周囲は高い壁で囲まれていた。


屋敷に入って、客間でしばらく待っているとパシリAが王女を連れてやって来た。


「オルフィリア様、ご無事でしたか!!」


「はい、ラル様。御心配をお掛けしました。

それに、クルス様、この度はご迷惑をお掛けして申し訳ありません」


「いいえ、王女殿下。

こちらこそ、ご迷惑をお掛けして申し訳ありません」


「いえ、理由はどうあれ我が国の兵の警戒心が足りなかったのが原因です。

睡眠薬などと言う古典的な罠に掛かるとは…………」


「…………睡眠薬ですか……。

それは確かに、引っ掛かった兵士の方に問題を感じますね…………」


「はい………。申し訳ありません…………。

まさか、お酒に睡眠薬を入れるなどという悪辣な手段を取るとは私も思っておりませんでしたが…………」


「…………そうですね……。

王女殿下も、もちろん同じ罠に掛かったから此処にいらっしゃるんですよね……。


王女殿下、ラルと無事結婚したなら、オレは王女殿下の舅になる訳ですが、しばらく、ウチの商会でお勉強をしましょうか。


最低限の身を守る術を学びましょう」


「!!父上、どうか、お手柔らかにお願い致します!!」


「もちろんだよ、ラル。大事な嫁だ。

ちゃんと、安全に配慮して、命の危険がギリギリ無い様にするよ」


「「ギリギリですか?!」」


「お!息ぴったりだな、良い夫婦になりそうだ。

2人が末長く一緒に居られる様に、キッチリSSSランクの魔獣も一撃で殺せるくらいには鍛えるから、安心してくれ」


「「SSSランクを一撃で?!」」


「まあ、その話しは帰ってからしようか。

クロリュウ、悪いんだがラルと王女を先に本部迄送ってくれるか?」


「了解っス」


「じゃあ、此処の主人とやらに会おうか」


「はい、有難う御座います。では、此方に」





▪️▪️▪️▪️





「初めまして、クルス君、私はケンタ フジイ。

賢王と呼ばれている」


ベットにもたれ座った老人。

頭髪は無く、白い髭が伸び放題で1mくらいは有りそうだ。


ステータス的には問題を感じない、寿命が近いからと言って体力の低下などが有る訳では無い様だ。


「初めまして、知っているんだろうが、レンジ クルスだ。

早速だが、寿命が近いというのは、どういう事なんだ?

ステータスは正常な様だが?」


「君の周りは、寿命の長い者が多いのだったな。


恐らく、この世界での老衰は本人の自覚でしか分からない。

何となく、自分の死期を感じるんだよ。


私の寿命は後1年かそこらだろう」


「なるほど……。

じゃあ、オレに引き継いで欲しい研究と言うのはどんなモノなんだ?」


「“この世界への魂の流入を止める研究”だ」


「この世界に異世界転移者や異世界転生者が多いのは、向こうの世界から魂が流入して来ているからだという事か?」


「ああ、それも意図的に行われている。

其方は、吸収と言っても良い。


流入という言い方をしたのは、意図的なモノも自然に起きているモノも両方を止めたいからだ」


「…………おまえの持つ、“スキル 万物の記憶”の力か?

そのスキルは、魂の事も分かるのか?」


「いや、このスキルは『見た物に残った記憶を読み取る力』だ。


だが、このスキルも使い様でな。

空を見ても、地面を見ても、私が“この星を見ている”と思えば、この星で起きた事は全て分かる。


そして、夜空を見れば、その星の事も分かるのだ。


“スキル 遠視”と“スキル 暗視”を使えば、夜空の恒星だけで無く、惑星も見えるからな。


ケンセイ、クルス君に星図を渡してくれ」


「はい。…………クルス殿、此方を」


渡された星図は、膨大な量だった。

ポスターで作った百科事典5冊分は有る。


とりあえず適当に開いてみると、日付、観測した場所、方角と共に、星の配置が恒星、惑星共に記入され、その中の幾つかに、印と記号が何種類か付いている。


「印が付いているのは、生物が居た星だ。


後は、人の居た星、文明の有った星、異世界転移者の居た星。

そして、異世界召喚が行われて居た星だ。


私のスキルで得た情報だから、何千光年離れていても、情報は私が観測した日迄の情報だ。


全て見て貰えば分かるが、魂の吸収を意図的に行っている星は、私が発見しただけで7ヶ所有る。

この星を入れて、8ヶ所だな」


「その魂の吸収と云うのは、具体的に何をしているんだ?」


「今の所、確認出来ているのは異世界召喚を行える血筋を作る事と、異世界召喚を行える魔導具を与える事だ。

そして、この星を除いて、他の7つの星では何処も世界規模の戦争が行われている」


「異世界召喚で呼ばれているのは、地球からだけなのか?」


「ああ、今迄、確認出来たのは全て地球からだ」


「地球から魂を呼び込んで、戦争で死なせて…………。

その後は、魂を何処かに集められたりしてるのか?」


「いや、そういった現象は見受けられていない」


「…………行っているのは、“魔導神”か?」


「そうだ」


「目的の予想は出来ているのか?」


「いや、分からない。

特に魂を消費する様な事も無い」


「…………本当に、魂を呼び込む為に行っている行動なのか?」


「…………どういう意味だ?」


「例えば、本当は特定の誰かをこの世界に呼び込むのが目的で、その為に大量に異世界召喚をさせていて、異世界から新しい技術や知識が来たせいで戦争になっているとか。


逆に、元々戦争が起きていた星で、解決の為に異世界召喚の技術を提供した結果、多くの異世界転移者が来てしまったとかはあり得ないのか?」


「確かに、その可能性も有るかもしれない。

しかし、後者の可能性は低いだろうがな。


君の予測通り、魔導神は“スキル 創造”を持っている。

戦争の解決ならば、他にもっと良い手段が有るだろう」


「なるほど…………。

因みに、魂の流入とこの世界と元の世界との時間差は関係有るのか?」


「これは予想でしか無いが、この世界へ来る者が増えれば増える程、時間が早くなっているのでは無いかと考えている」


「そうか…………。

で、“この世界への魂の流入を止める研究”は、どういったアプローチで、どこまで進んでいるんだ?」


「ああ。ケンセイ、研究書を」


「はい。…………クルス殿、此方を」


渡されたのは、5冊の分厚い本だ。

各本毎に、タイトルが振ってあった。



「先ず、“この世界を他の世界と隔離する魔法の研究”を行った。


しかし、全宇宙規模の大魔法となると消費魔力が膨大過ぎて、幾ら研究を進めても行使が不可能だと結論付けた」


「膨大な魔力さえ有れば、可能なのか?」


「ああ、一応、呪文としては完成している。

しかし、膨大の規模が尋常では無い。


太陽が1,000万個分の消費だ。

君の手に入れた“天の雫”が、幾ら有っても不可能だろう」


「そうか…………。

因みに、その魔法を行使してしまって“ディファレントスペース”なんかの魔法はどうなる?」


「使えなくなるな。

“ディファレントスペース”も魔法で作った別の世界だからな」


「やはり、そうか……。

分かった。で、次は?」


「次に行ったのは、“異世界召喚を行った場合に、この宇宙の中で完結させる研究”だ。

しかし、此れも途中で断念した。


理由は、召喚の条件1つ1つに対して行わなければならない事が分かった事と、その1つ1つに対しての消費魔力も膨大だった事だ。


此方は、1つの条件に対して太陽1個分の消費だ」


「それも、呪文としては出来ているのか?」


「いや、此方は魔導具だ。

同じ条件で召喚を行える人物が、いつ現れるかは分からないからな。


太陽1個分の消費というのは、太陽が生み出す魔力を1個分使い続けるという意味だ」


「なるほど。

1つ条件を潰す為に、魔力の無い星系を作り続けるのは、さすがに面倒だな…………。じゃあ、次は?」


「次に行ったのは、“異世界召喚の能力を持つ者が生まれなくなる研究”だが、これは不可能だった。


何故かは分からないが、“特定のスキルを持つ者が生まれやすくする事”は出来ても、“特定のスキルを持って生まれて来なくする事”は出来なかった。


因みに、“生まれ難くする事”も出来なかった。


此れは、異世界召喚に関するスキルだけで無く、どのスキルでも出来なかった。


その次に行ったのは、“元の世界に帰す研究”だが、此れも出来なかった。

君の予想通り、元の世界に魔力が無いからと、異世界への干渉がランダムになるからだ。


そして、現在行っているのが、“直接、対処する研究”だ。

これは、3つの魔導具を作ろうとしている。


1つ目は、私は保留にしていたのだが、君なら直ぐに作れる。


“スキル スキル強奪”の魔導具だ。


残念ながら、このスキルは、インドラ グラール以外に発現した者が居なかった為、機会を伺っていたのだが、君が手に入れてくれて助かった。


2つ目は、“スキル 遠視”と“空間属性魔法 スペースジャンプ”による疑似ワープを行える宇宙船だ。


これは、設計は行ったのだが、動力源の“天の雫”を東大陸に取りに行く事が出来る者が私の周りには居なかった。


しかし、3の月にある君の“天の雫”で、完成させる事が出来るだろう。


3つ目は、完成している。

“スキル スキル削除”の魔導具だ。


これは、その名の通りスキルを削除するモノだが、自分にしか使えない。

テストも終わっていて、ちゃんと任意のスキルだけを削除出来た。


君なら、幾らでも複製出来るだろうが、一応、10個用意してある。


研究を引き継いで欲しいと言ったが、出来れば君に異世界転移者がこれ以上増えない様にして貰いたい」


「…………話しは分かった。

おまえの話しに嘘は無い様だったが、憶測の部分も多々有るから、実際にどうするかは自分で決めるし、此処で断言はしない。


だが、問題があると判断したら対処はすると約束しよう」


「ああ、それで十分だ」


「ところで、話しは変わるが、この国はどうして未だに商業ギルドである事に拘っているんだ?」


「ああ、私はオオサカ国の影の支配者などと言われているが、基本的に国の運営に口出しはしていない。

だから、理由は各議員の思惑によるモノだ」


「そうか、なら、もう1つ。

エリカから聞いたんだが、大魔王を倒した勇者と対立した原因は、なんだったんだ?」


「エリカさんは、そういう言い方をしていたな…………。


大魔王を倒した勇者は、私の兄なんだ。


元々、兄弟の仲が良い方では無かったんだが、この世界に来てから勇者である自分に従う様に強要して来てな。


だから、私は反発して、エリカさんのパーティーに入ったんだが、自分が聖剣の勇者に覚醒した事で再度従う様に強要して来た。


当時は今の様に、“スキル 万物の記憶”をこの星に向けて使うという発想がまだ無くてね。

だから、聖剣のエサにさせる為に当時のハルマール公爵が兄に説得させているとは知らなかった。


それで、当時の皇帝に直談判したんだ。

元々嫌いだった上にしつこくなって、鬱陶しくなった兄と離れる為にな。


深い理由では無い、只の兄弟の確執だ」


「そうか…………。


因みに、勇者は大魔王を倒した後で、さらに別の世界に行ったで、あっているか?」


「恐らくな。

もしかしたら、この世界の別の星に居るかもしれないが、兄を探そうとはしなかったから分からんな」


「分かった。


じゃあ、これで失礼するが、“スキル スキル削除”の魔導具と、もちろん、“スキル 万物の記憶”の魔導具も準備してあるんだろ?」


「ああ、準備してある。


もしも、資料の内容で分からない事があれば、このケンセイに連絡してくれ。

国民議会の議事堂で、ケンセイの名前を出せば、使いを行かせる」





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