第20章 武芸者の国④
武芸者の国④
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大自然ダンジョン第4層は街だった…………
階段を降りて廊下を進むと自動ドアが開き外に出る。
すると、目の前には5階建のガラス張りのビルが有り、その横も、セメントで出来たビルだった…………
地面もアスファルトで、路肩には自動車も止まっている…………
「!!レンジさん、ここって!!」
「クリシュナ、残念だけどクリシュナが作ったダンジョンと同じだよ。
その辺の自動車も見た目は頑張ってるけど、ボンネットの中は空っぽだ」
「…………残念……」
「?レンは元の世界に帰りたいのか?」
「…………二度と戻って来れないなら帰らない。
でも、行ったり来たり出来るなら、お父さんとお母さんには生きてるって伝えたい…………」
「……そうか、家族は心配してるだろうからな…………」
「…………ゴメンなさい、レンジさん、勘違いさせて。
お父さんとお母さんに、お爺ちゃんの遺産を渡したく無いだけ。
お爺ちゃんの遺産は全部私が貰う事になってるから…………」
「…………そうか……。
金持ちも大変だな…………」
「…………レンジさん、忘れてるみたいだけど、この世界で1番お金持ちなのは、レンジさん……」
「……そうか、忘れてた。
じゃあ、オレも遺産相続とか…………。
いや、『オレが死ぬくらいの事が起きたら、この世界はもう無い』だったな…………」
みんなの頷きが、なんだか哀しい…………
その後、色々と見て回ったがやっぱり中身の無いハリボテの街で、全体的にかなり古い雰囲気だった。
少なくとも、テレビや冷蔵庫のデザインは昔の映像で見た戦後の高度成長期の様な形状だった。
もしも、50年以上前に、この世界に来た人物なら10万年以上前の可能性も有る。
街の広さは今迄の森と同じくらいで、同じく海に囲まれていた。
但し、魔物も魔獣も全く居ない。
この街は一旦放置して、次の陸地を目指す事にした…………
次の陸地もその次もその次も同じ様な街で何も居なかったが、5つ目の街に1体だけ魔物の反応が有った。
そこは、木造の平家だったが結構大きな佇まいの家だった。
入り口の門には、表札が有り『亀井』と、漢字で書かれていた。
門を潜って、玄関をノックする。
奥から魔物が歩いて来ているのを感じ、一応警戒する。
玄関を開けて現れたのは、試練の神殿にいたゴーレムと同じタイプの2m程のゴーレムだった。
「随分と、久しぶりの客だな。まあ、中に…………。
そっちの2人は、“天使種族”なのか?」
「こんにちは、カメイさん。
この2人は獣人種族ですよ」
「獣人種族?新たな、侵略者……。
では、無い様だな…………」
「ええ、カメイさんが、どのくらい此処に居るのか分かりませんけど、獣人種族も元々は人種族です。
今の世界には色々な種族がいて、人種族だけでは無くなっているんです」
「そうなのか……。
まあ、立ち話もなんだ、中でゆっくり聞こう」
中は見た目通り、昔の雰囲気の日本家屋で、通されたのも畳にちゃぶ台の有る部屋だった。
「先ず自己紹介から。
オレは、クルス商会の会長をしている、レンジ クルスと言います。
この子は、レイム。そして、妻のルナルーレ、ラム、リム、キスラエラ、クリシュナ、セレン、セリン、レンです」
「ワシは、ダンジョンマスター、シンノスケ カメイだ。
レンジくん、君も異世界転移者なのか?」
「ええ、3年前にこの世界に来ました。
カメイさんは、いつ頃此方に来られたんですか?」
「ワシは、4万年くらい前だ」
「4万年前ですか…………。
天使種族が侵略して来ていた頃ですよね…………。
カメイさんは、ずっとこのダンジョンに居るんですか?」
「ああ、もう3万8千年くらいは此処に居るな。
それにしても、キミは天使種族との戦争を知っているんだな。
前に来た者は知らない様だったがなぁ〜…………」
「前に来た人は、いつ頃此処に来たんですか?」
「2万5千年くらい前だ。
そう言えば、キミは前に来た者に似ているな。
子孫かなんかなのか?」
「いいえ、さっきも言いましたがオレがこの世界に来たのは3年前です。
オレの親も先祖も元の世界に居ますよ」
「おお、そうだったな。
ところで、キミも日本から来たで、合っているか?」
「はい、オレは2,017年の京都から来たんですが、カメイさんは何時、何処から来られたんですか?」
「ワシは、昭和30年の東京からだ。1,955年だな。
やっぱり、この世界の時間は向こうの世界よりも大分早いんだな…………」
「そうみたいですね。
カメイさんは、このダンジョンに来る前は地上に居たんですよね?
天使種族の戦争の頃に居た、“創造主”の事はご存知ですか?」
「ああ、知っているも何も、“創造主”は、ワシだ。
まだ、ワシの事を知っているゴーレムが居たのか?」
「ええ、北の孤島に有るダンジョンに」
「!!そうか、3号か……。
もしかして、キミはあのダンジョンも攻略したのか?」
「はい、申し訳ありませんが、聖剣は第1から第5迄、封印させて貰いました」
「そうか、まあ、此処迄来たのだ、他のダンジョンも攻略出来るだろうな。
聖剣の封印については気にしなくていい。
今の時代に必要無いなら、その方が良いからな」
「因みに、聖剣は幾つ有るんですか?」
「ワシが作ったのは、第7迄だが、第6と第7は、天使種族との戦争で殆ど失われた。
もしかしたら、何処かに残って居るかも知れないが、ワシにも何処に有るかは分からんな。
聖剣を封印して回って居るのか?」
「ええ、悪用されない様に…………。
残念ながら碌な使い方をされなかったので」
「そうか……。すまんな。
破壊する事もワシには出来たんだが、天使種族に対抗する力を念の為、残して置きたかったんだ…………」
「ええ、それは分かってます。
ですが、天使種族も悪魔種族も別の星に放逐したので、この星にはもう居ません。
それに、もしも、また攻めて来た時の対抗手段も準備してあるので安心して下さい」
「そうか、それなら良かった。
ワシのゴーレム達も出番が無いなら、その方が良い。
ワシの役目も、もう終わりかな…………」
「役目と云うのは天使種族への対策を行う事ですか?
此処の試練の神殿のゴーレムは、他のダンジョンのゴーレム達とは違う様でしたが」
「ああ、天使種族が万が一、まだ残って居たり、もう一度攻めて来たりした時の為に、より強力なゴーレムのボディーをずっと準備して居たのだ。
試練の神殿に居たゴーレムと同じ型のな…………。
しかし、聖剣が悪用されたのなら、ゴーレムも破壊した方が良いかもしれないが…………」
「カメイさんは、どうして、そこまで天使種族に対抗する事に拘っているんですか?
正直言って、オレはカメイさんのやり方は好きでは有りません。
聖剣も初めて効果を知った時には、人種族を憎んで居るのかと思いましたし、第4の聖剣の生贄に子供迄巻き込む仕様だった事には怒りを覚えました。
しかし、死んでゴーレムになって迄も天使種族に対抗し続けると云う事は、何か理由があるんですよね?」
「…………キミは、向こうの世界に家族は?」
「…………両親が居ます」
「そうか…………
ワシは、向こうに妻と娘が2人いる…………
まだ、生きているかは分からないが、年齢的には生きている可能性がある。
ワシの家族は、その3人だけでな。
親も兄弟も戦争で亡くなったからな…………。
だから、ワシは何を犠牲にしてでも家族を護りたかったのだ…………。
たとえ、この世界の人々をどれだけ犠牲にしても、自分がどれだけ地獄の様な孤独を味わったとしてもな…………」
「…………天使種族の侵攻を止める事が元の世界を護る事になるんですか?」
「?キミはこの世界に来た時に、神に会わなかったのか?」
「いいえ、会っていません。
神と云うのは、この世界を作った存在ですか?」
「ああ、多分そうだと思う。
そうか、神に出会わずに、この世界に来る者もいるのだな…………」
「?どういう事ですか?
この世界に来た人は、みんな神に会っているんですか?」
「ああ、少なくとも今までワシが会った異世界転移者は皆会っていた様だが?」
オレは、一応、クリシュナとレンを見たが、2人は首を振った。
「其方の2人も向こうの世界から来たのか?」
「ええ、クリシュナは転移者じゃ無くて転生者ですが、オレの知る限り、この世界に来た人で神に会ったという人は居ません」
「…………さっき、2万5千年くらい前に、キミ達の前に来た人物がいると言ったが、彼も異世界転移者だった。
そして、彼も神には会っていた。
では、ここ最近で神に会わずに、この世界に来る者が現れたのか?」
「それは分かりませんが、神はカメイさん達に何と言ったんですか?」
「ああ、この世界は元の世界の上位に存在する世界らしいのだが、天使種族は更に上位の世界から来た者達らしくてな。
彼らがこの世界を支配した場合、次に狙われるのはワシ達の世界だと言われた。
だから、何としても、この世界で天使種族を食い止めなければならなかった」
「…………カメイさん、皆さんは、一体何処で神に会ったんですか?」
「何処で?神の神殿だが?」
「それは、何処に有るのか分かりますか?」
「?神の神殿も知らないのか?
キミ達はこの世界に来た時、何処に居たんだ?」
「オレとレンは、同じ時にこの世界に来たので同じ場所です。
第1の聖剣が有った場所の近くです。
でも、クリシュナは西大陸の中央です」
「西大陸?そうか、地名が違うのは当然か」
「ああ、そうかもしれませんね。
西大陸は第3の聖剣の有った島の南の大陸です」
「!!そこだ。
そこに、神の神殿が有る。いや、有った筈だ」
「いいえ、今は其処には、聖樹という世界を護る巨大な木が有ります」
「聖樹?そうか…………。
神の神殿すら無く、もしかしたら神ももう居ないのか?」
「念の為、確認なのですが、神と言うのは魔導神では無いんですよね?」
「魔導神?いいや、違う。神は神だ。
この世界の人々も神としか呼んでいなかった」
「少し、気になったんですけど、何で神は自分で天使種族と戦わなかったんですか?」
「神が神の神殿から出ると、この世界が崩壊してしまうからだ」
「…………それも、神が言っていたんですか?」
「ああ、神本人もそう言っていた」
「…………なるほど……
今は、神は居ません。
代わりに聖樹がこの世界を支えています。
だから、今の世界に神に会った事がある人は居ません。
因みに、2万5千年前に来た人は、神に何て言われたんですか?
その頃には、この世界には天使種族は居なかったのでは?」
「ああ、彼は神に、この世界を発展させて欲しいと言われたそうだ。
神として、自分は人々に手を貸し続ける事が出来ないからと言われたらしい」
「その人は、もしかして、“クスレン”と言う人物では有りませんか?」
「ああ、そうだ。
彼は今の時代でも有名なのか?」
「いいえ、オレが歴史を色々と調べていて知っているだけです。
因みに、先程聞いた魔導神が“クスレン”と言う人物です」
「そうか、確かに彼は神の名が付く可能性が有る程の力が有ったからな」
「どんな力を持っていたんですか?」
「ああ、“どんなモノでも作れる力”だ。
ワシのダンジョンコアや、ダンジョンマスターキーも自分で作り出せる様になっていたからな」
「そういえば、カメイさんはダンジョンマスターって名のられてましたが、ダンジョンマスターとは、どう言ったモノなんですか?」
「ダンジョンマスターは、ダンジョンを生み出す事が出来るモノだ。
自分で作る場合は、ダンジョンコアを生み出して、ダンジョンを作る。
誰かに作らせる場合は、ダンジョンコアとダンジョンマスターキーを作って、渡す。
しかし、ワシ以外が作ったダンジョンには必ず制限が掛かる。
そのダンジョンで手に入るモノが高性能で有れば有る程、ダンジョンは深く魔物も強くなる。
ダンジョンマスターは、その制限も無い。
極端な話し、世界最強の剣を只のスライムに守らせる事も出来る。
まあ、ワシには世界最強の剣を作る事は出来ないがな。
ワシが作れた1番強力な武器が聖剣だった。
第2以降の聖剣は、聖剣の劣化版だ」
「聖剣を作った力は、ダンジョンマスターの力とは違うんですか?
ゴーレムを作った力は?」
「ああ、聖剣を作ったのは普通に錬金術だ。
聖剣に限らず、ワシの作ったダンジョンに有る物は全て、ワシが錬金術で作った物だ。
ああ、第3の聖剣と一緒に有った宝物は違う。
あれは、天使種族に滅ぼされた国の宝物庫に有った物をたまたま手に入れたので置いて行ったんだ。
ゴーレムに関しては、ダンジョンの設定で作った物とワシが錬金術で作った物とがある。
此方はダンジョンマスターの力といえばそうだ」
「なるほど……。ありがとうございます。貴重な情報でした。
カメイさんは、これからどうされるんですか?」
「…………そうだな……。
キミの言う通り、天使種族の脅威がもう無いならば、機能停止して眠りに着くのも良いかもしれないな。
ワシはもう、家族の元に帰る事は出来ないからな…………」
「そうですか、分かりました。
このダンジョンの攻略情報は公表しないので、カメイさんの眠りを妨げる人は当分来る事は無いと思います。
今まで、この世界の為に、ありがとうございました」
「ふふっ、キミのその言葉だけで、今までやって来た事が無駄では無かったと思える。
此方こそ、この孤独な時間を終わらせてくれて、ありがとう」
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カメイ邸を後にし、第3層に戻って、約束通り、森での訓練をして、シルバーウィングに戻った。
ダンジョンアタック初日で、カメイ邸まで辿り着いたのに、帰って来たのは4日後だった…………
ダンジョンの攻略が目的だったのに、訓練の方が長かったのが、不思議でならない……
因みに、2つ目、3つ目、5つ目の陸地は、森が荒野になってしまった…………
シルバーウィングに戻った翌日、エリカに確認に行った。
カメイさんは、嘘を付いている様子は一切無かったが、今迄の情報と食い違う部分が幾つも有った。
エリカに確認したかった事、それは、何年何月何日にこの世界に来たのか。
結果、エリカがこの世界に来たのは、18,017年の11月。
残念ながら、此方に来て直ぐに、ほぼ監禁の様な扱いを受けた様で日にちは分からなかった。
その後は、第1クルス島に行って、キングAに話しを聞いた。
神について聞く為だ。
キングAも、神と神の神殿が既に存在しない事に驚いていた。
神は、永久不滅の存在で、この世界の誕生から存在して居た筈らしい。
そして、天使種族が現れる前の神について聞いてみた。
話しを聞く限り、普通のオッサンだった…………
食事も飲酒もして、女を囲って居た…………
そして、特に何もしてはいなかったらしい…………
唯一、神っぽいのは不老だった事くらいだ…………
キングAが人だった時の祖父の代でも、同じ姿だった様だ。
当時は、今よりも人種族のレベルが高く、限界突破は成人する条件だった様で、大人はみんなレベル1万以上で、寿命も普通に2、3,000年は、有ったらしいので、少なくとも神は1万年以上は生きて居た様だ。
事実か確認は出来ないが魔導暦の前の無暦は、神暦と呼んでいて、キングAが人として産まれたのは、神暦32,000年だったそうなので、魔導神が会った神が同一人物ならば、50,000年くらいは生きたいた可能性がある。
そして、神の神殿の位置は、現在の聖樹の有る場所で合っていた。
神殿のあった街の大きさは、エルフの里の3倍くらいはあった様で、ダークエルフの里の辺り迄は同じ街だったそうだ。
それと、カメイさんの話しの通り、異世界転移者は、全員、神の神殿からやって来ていた様だ。
カメイさんが“創造主”と、言われていた様に、異世界転移者は、何かしら神から役職の様な称号を与えられていたらしい。
そして、オレ達の様に集団で大勢来たという話しは聞いた事が無いそうだ。
毎回、1人づつだったと思うとの事だった。
その日の夕食後、家族会議をした。
オレが、この世界に来た日にちを聞きに行った事で気になったのか、単にメシを食いに来ただけなのか、エリカも居たので、ついでに一緒に話す事にした。
「みんなも、カメイさんの話しで疑問に思った事もあったと思う。
今日、エリカとキングAからも話しを聞いて来た。
エリカに聞いたのは、この世界に来た時の日にちだ。
エリカは、向こうの世界でオレやレン達の丁度1年前にこっちに来て、こっちの世界では18,017年11月だったそうだ。
つまり、1年が2,000年だった。
オレは、クリシュナがこっちに来た時とオレ達の来た時との時間差は、2,000年ぴったりじゃ無いか、クリシュナの記憶が無いと言っていた大人になる迄の期間の差だと思っていたんだが、カメイさんの話しで間違っている事が分かった。
この世界の時間と元の世界との時間差は、どんどん広がっているんだと思う。
それも、何処かのタイミングで差が広がり始めたのか、急激に差が広がって来ているかだと思う。
それと、オレ達の様に、大勢がいっぺんに来る事は以前は無かった様だ。
それから、神についてだが、恐らく特殊なスキルを複数持った“人だった”んじゃないかと思う。
ぶっちゃけ、キングAから聞いた人物像は普通のオッサンだった。
予想される生きていた年数から、不老系統のスキルは持っていたと思う。
それと、異世界召喚系統の力も有ったんじゃないかと思う。
オレと同じく、種族が神に昇格した人物の可能性が高いと思う」
と、ここ迄、何回も変な顔をしながらも、一応、黙っていたエリカからストップが掛かった。
「ちょっと!!ちょっと、待ってくれる、レンジくん。
大自然ダンジョンで、大昔の情報が手に入ったのは何となく分かったけど、『種族が神に昇格した』ってどう言う事?
レンジくんって神様なの?」
「ああ、エリカにはまだ言って無かったっけ?
オレの種族は気付いたら神になってたんだよ。
多分、何かの条件をクリアしたら、そうなるんだと思うんだけど条件は迄分かって無いんだ。
因みに、オレの娘達は、産まれた時から種族は神子だったよ」
「…………レンジくん、強くなり過ぎて人間迄辞めちゃってたんだね…………」
「いや、多分、強さじゃないよ。
オレが神になったのは、レベル10万以下だった。
だから、レベルのせいじゃ無い。
別の要因が有るんだと思う」
「そっか…………。ごめんなさい、話しの腰を折って」
「いや、大丈夫。じゃあ、続けるぞ。
神が人から神になったヤツで、本当にただのオッサンだった場合、カメイさんの言っていた、天使種族が上位の世界から来て、この世界を侵略した後、元の世界にも侵攻するって話しは、カメイさん達を戦わせる為の嘘だった可能性が高い。
オレとしては、天使種族のラウムと悪魔種族のペヌエルの宇宙移民の話しの方が信憑性が高いと考えている。
でだ、これはオレの予想だが、魔導神も種族が神になったんじゃないだろうか。
そのせいで、神の嘘が色々とバレて殺されたんじゃ無いかと思う。
魔導神は、自分の居た国以外を滅ぼしたらしいから、その時だったのかもしれない。
キングAの話しだと、魔導暦の前は神暦って言ってたらしいんだが、神が紛い物だと分かったから神暦の事を無暦って呼ぶ様になったんじゃないかと思う。
最後に、魔導神”クスレン”が、“スキル 創造”を持っている可能性だが、此れはもう確定で良いと思う。
カメイさんは、魔導神が“どんなモノでも作れる力”が有り、ダンジョンコアや、ダンジョンマスターキーも作り出せる様になったと言っていたが、同じモノを“スキル 創造”で作る場合、それに対しての理解がキチンと成されないと作る事は出来ない。
カメイさんの言い方から、何度か試作を行って、カメイさんの指導の下、作れる様になったと考えられる。
ダンジョンコアとダンジョンマスターキーは、本来、ダンジョンマスターで在るカメイさん本人か、カメイさんに“スキルの付与”をして貰わないと作る事は出来ない。
それを自分で作れたなら、可能性は“スキル 創造”か、“人のスキルを覚えるスキル”しか有り得ない。
しかし、“人のスキルを覚えるスキル”だと、元々此の星に存在しなかった聖樹を作れないから、消去法で“スキル 創造”持ちだと思う。
以上が、オレの見解だ。
何か、おかしな点や疑問に思った点が有ったら言ってくれ」
「レンジさん、最初に言ってた『差が広がり始めたのか、急激に差が広がって来ている』っていう何処かのタイミングだけど、エセ神が死んだ時か、聖樹が誕生した時の可能性は無いかな?」
「クリシュナの言う可能性も無くは無いと思うけど、余り高くはないと思う。
天使種族の居た星があった様に、宇宙全体で一つの世界だろうから、1つの星の影響で世界全体の時間が進むとは考え難い」
「じゃあ、この星が、元の世界の地球に相当する星で、ここだけ早くなってるとか?」
「天使種族が、漢字を使ってたのを覚えてるか?
恐らくだけど、この世界への異世界転移者は、この星だけじゃ無くて別の星にも居るんだと思う。
だから、古代語が共通しているんじゃないかと思うんだ」
「ご主人様、逆は考えられないでしょうか?
別の星にも異世界転移者が居たのでは無く、この星の異世界転移者が別の星に行ったパターンです。
天使種族も悪魔種族も、魔導神によって生み出された種族で、この星の言語がそのまま伝わったとは考えられませんか?」
「その可能性も絶対に無いとは言え無いが、それだと天使種族達のやって来た時期と、星と星との移動時間の理由の説明がつかないと思うぞ、キスラエラ」
「確かにそうですね…………。
しかし、古代語だけで無く汎用語まで同じというのは…………」
「…………スキルを司る本物の神の様な存在が居たとして、“スキル 言語理解”が、この世界、全ての星で共通の可能性…………。
でも、それなら、ルーン語や竜語、古代語が有る理由が無いか…………」
「いいえ、レンジ様。
ルーン語、竜語、古代語は、魔法の為に必要だから存在するのではないでしょうか?」
「なるほどな……。用途が別に有るからか…………。
仮に、全ての星で“スキル 言語理解”が共通だとして、別の星には、別の星の対応する異世界が有るか…………。
それなら、この星の影響で元の世界との時間差が生まれる可能性も無くは無いか…………」
「ねえ、レンジくん。
レンジくん達って、いつもこんな難しい話しをしてるの?」
「まあ、新しい情報が有った時にはな。
特に、天使種族や魔導神は、万が一、敵対した時の為に色々と考察して置くに越した事は無いからな」
「敵対する可能性があるの?
なんだか、聞いてた感じ、天使種族は宇宙人で魔導神は神様なんだよね?
宇宙戦争みたいな?」
「ああ、その想像で大体合ってるよ。
でも、残念ながらマンガやアニメじゃ無くて、天使種族は過去に一度この星に攻めて来ていて、魔導神も実在して、この星の自分の国以外を滅ぼしたっていう歴史が有るんだ」
「そうなんだ…………
それって、他の国では常識なの?」
「いや、この話しはオレの配下と魔王達とその側近しか知らないよ。
公表する予定も特に無い」
「え!!それって、私、聞いちゃって良かったの?」
「ああ、問題無いよ。
無用な混乱を避ける為に公表しないだけで、秘密にしないといけない内容じゃ無いからな」
「なんだか、私よりレンジくんの方が、よっぽど王様してる感じだよね…………」
「そんな事は無いさ。
オレはいざとなったら、自分の仲間以外は全員見捨てるつもりでいるから」
「…………私は?」
「一応は、助ける側に入れてるよ」
「そこは、『おまえの事も守ってやる』、くらい、言ってくれても良いと思うけど?」
「じゃあ、おまえの事も守ってやるよ、多分な」
「もう!!“じゃあ”も“多分”も余計だよ!!」
「…………エリカの事は必ずオレが守ってやる」
「う!!やっぱり、面と向かって言われると恥ずかしぃ…………」
「「「おお〜〜……」」」
パチパチパチパチ
…………オレの妻達は、何故オレが女性を口説いていると拍手で賞賛するのだろうか…………
「じゃあ、話しを戻そうか。
他に何か気になる事は無かったか?」
「お父様、さっきエリカ陛下が言われていた様に、宇宙戦争になったら、お父様以外は地上に攻めて来られる迄、何も出来ないですよね?
お父様の様に宇宙空間でも、戦闘が出来る様にはなれないでしょうか?」
「そうだなぁ〜……。
宇宙空間で戦うなら、人型機動兵器かなぁ〜…………。
でも、それだとシロネコ達はどうしようか…………」
「…………レンジさん、人型機動兵器には、パイロットの動きをトレースするシステムも有る!!……」
「さすが、レン!!造詣が深いな!!
そっちのパターンで作ってみようか!!」
「お父様、どう言う事ですか?」
「ええっと……。そうだな……。
中に乗り込んで、操縦する人と同じ動きをするゴーレムみたいなモノを作って、宇宙でも動ける様にしようかと思ってるんだ」
「なるほど!!
それなら、私達も宇宙空間で戦えますね!!」
「じゃあ、ナナツ国の観光の合間に設計してみよう」
そんな感じで家族会議は終わったのだが、その後、ナナツ国の観光は大変だった…………
弟子入りの要求が後を絶たなかったのだ…………




