表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
77/132

第20章 武芸者の国②

武芸者の国②





▪️▪️▪️▪️





翌朝、オレは昨日作った闘技場のリングの真ん中でカメラに向かって座って居た。

これから、ナナツ国全土に映像を流す為だ。



「皆さん、こんにちは。

オレは、クルス商会の会長のクルスだ。


オレは、今回、このナナツ国に5つの要求をしに来た。


1つ、このナナツ国でも、商業ギルドを追放し産業ギルドに加入する事。

2つ、このナナツ国でも、クルス商会優遇政策を施行する事。

3つ、武闘大会で国王を選ぶ制度を撤廃して、エリカ ミナミイ国王をオレが許可する迄続投させる事。

4つ、国の政治は各島の代表者を厳正な審査の元で選び行う事。

5つ、オレが決めた細かい法律にも従う事。


以上だ。


オレは商人だ。

本来ならキチンと交渉して、お互いに折り合いを付けて決めて行く事だろうが、此処はナナツ国、武芸者の国だ。


だから、オレも此処の流儀に則って、力尽くで全ての条件を押し通そうと思う。


オレは、Sランクの冒険者でも有り、そして、オレは自分が世界最強で在るという自信が有る。


オレが居るのは、ヒガシナカ島の街の北に有る草原地帯の真ん中だ。


オレの要求を拒む者、オレを倒してこの国の王になろうと言う者、オレに勝てる自信がある者は、オレに挑んで来い。


先に言っておくが雑魚に用は無い、オレの殺気を浴びても向かって来れる者だけ掛かって来い。


期間は今から100時間、何人でも、どんな手段でも、オレを殺せるモノなら殺してみろ。


100時間後、オレが生きていたら、この国はオレの要求を全て認めたモノとする」



オレの話しが終わると、カメラは引いて行き、闘技場全体を映し、そのまま、周囲の風景を映し始める。


1km四方の闘技場が有り、その横には救護所と書かれたテントと妻達やペット達、配下達が観戦しているテントが有り、その横には国王であるエリカや騎士達の観戦しているテントが有る。


それらを映して行き、ただのイタズラでは無く、国王の認めている内容だと示しながら周囲を映し続ける。


周囲は半径5km迄、荒野と化し、その周りは今迄通りの草原だ。


そして、程なく、ヒガシナカ島の街の方から血気盛んな連中がやって来る映像が映し出された。

しかし…………


「ひぃ〜〜!!」

「うわぁ〜〜!!」

「はぅ!!」


と、荒野に踏み込んだ瞬間に逃げ惑う者や気絶する者達の阿鼻叫喚の映像と化した。


その後も、やって来た者達が、次々と逃げ出し続ける映像が流れる事、2時間、やっとオレの所迄辿り着いた者が現れた。


「…………とんでもねぇ殺気だな。

とても勝てるとは思えねぇが、折角来たんだ。

ちょっと、相手してくれや」


やって来たのは、歴戦の戦士の風貌のある無精髭の男だった。

オレの殺気に耐えた時点でレベル10万以上では有るが、何とか踏ん張って来た感じだ。


「ああ、やっと来た客だ。

遠慮無く、オレに挑んで来ると良い」


「じゃあ行くぜ!!」


男は背負っていた大剣を大上段で振り降ろして来た。

オレは立ち上がって、その大剣を人差し指と中指で白刃取りして、そのまま、持ち上げて、男が来た方へ投げて、何事も無かったかの様にまた腰掛けた。


観客席のエリカ達がなんだか騒いでいる所を見ると、もしかしたら有名なヤツだったのかもしれない。


次に来たヤツも、その次に来たヤツも指2本で撃退し、その次の4人組も攻撃を避けながら、指2本だけで撃退した。


その後も指2本での戦闘が続き、日が暮れて暗殺っぽい攻撃も手首を指2本で挟んで撃退し、暗闇に紛れて風属性魔法で攻撃して来た者はデコピンで魔法を撃ち返した。





日が登って、24時間が経過したので、再度、カメラを寄せて話し掛ける。


「24時間経ったが、結局、オレは指2本しか使ってないぞ?


オレのこの剣は飾りじゃ無い。

オレに剣を抜かせる事も、この国の者は出来ないのか?


武芸者の国が聞いて呆れる。

この程度のヤツらしか居ない癖に強さで全て解決するなんて片腹痛い。


もしも、強者が居るなら、さっさと出て来い」


挑発したが、ダメだった…………。

2日目も、摘んで投げて終わりだった…………。





「48時間経ったが、未だに指2本だ。

もしかして、オレが消耗するのを待ってるのか?


それなら時間の無駄だ。

オレは100時間程度なら全力で戦闘し続けられるくらいの体力は余裕で有る。


全力どころか、まともに戦っても居ないなら尚更だ。


それよりも、今迄負けたヤツらで協力して挑んで来たらどうだ?

別に時間内なら何度挑んで来ても構わないし、何百人で挑んで来ても問題ないぞ?」


オレの挑発に、この日、数十人で挑んで来たりもしたが、結局は指2本で済んでしまった…………





「72時間経ったな……

弱過ぎるな…………


わざわざ、オレが来なくても配下1人で十分だった様だ…………


だが、100時間の約束だから、一応、後1日ちょっとは此処に居るけどな。


そう言えば、キタ島に“原初のモノ”が居るらしいが、オレがこのまま法律を変えたら武闘大会が無くなるんだが、良いのか?」


その日の昼過ぎに、北の空から巨大な赤い梟がやって来た。

赤い梟は、オレの上空を数回旋回して、急降下!!

オレを爪で掴もうと迫って来た!!


オレは、その爪も人差し指と中指で挟んで止めて、ビタンッと闘技場に叩き付けて、救護所の方にポイッと投げて、また、普通に座ったのだった…………





「えぇ〜〜、残すところ、4時間です。


昨日の弱い、“原初のモノ”の鳥を1羽やっつけた程度で挑んで来るヤツが居なくなってしまいましたが、ナナツ国はその程度ですか?


あの、“原初のモノ”は、非常に弱い“原初のモノ”でした。

ウチのペット達の方が遥かに強いです。


それなのに、諦めちゃったんですか?


本当に強いヤツらが、どれ程なのか、この4時間が過ぎたらオレの配下やペット達と模擬戦をして見せてあげる事にしましょう。


まあ、見る事が出来るかはわかりませんが…………」


その後の4時間も結局、誰1人挑んで来る事は無かった…………


その後、宣言通り、妻達やペット達、最高幹部達と軽く模擬戦を中継して見せて放送は終了したのだった。





▪️▪️▪️▪️





「レンジ様、お疲れ様でした。

お食事とお風呂と何方になさいますか?」


闘技場から降りてテントに行くと、ルナルーレが真っ先に声を掛けて来た。


多分、エリカに捕まる前にオレを休ませてあげようというつもりで、ずっと、構えていたんだろう。

オレは愛されている。


「じゃあ、先に風呂にするよ。

エリカ、明日、迎えを行かせるから法律の変更なんかも其処で話せる様にしといてくれ」


「うん、分かった。

その……レンジくん、ありがとう」


「いいよ、オレとエリカの仲だ。

それじゃ、また明日」



その後、妻達に揉みくちゃにされながら風呂に入り、久しぶりの食事をとって、揉みくちゃにされながら、朝を迎えた…………。

一応、ちゃんと寝た。2時間…………





「レンジくん、今回は本当にありがとう。


それにしても、レンジくん達、強いなんてもんじゃ無いね。

ガルラ様を摘んで叩きつけて倒しただけでも信じられないのに、その後の模擬戦は完全に別世界だったよ……」


「まあ、そうかもな。

ウチの連中は、今、レベル上げが流行ってるからな」


「いや、流行ってるとか、そういう問題なの?」


「ああ、ちょっと前迄は、戦闘技術を上げるのが流行ってて、その時は、レベルアップはついでだったし、そういうもんさ」


「私、この世界に来てから、必死に強くなったんだけどなぁ〜…………」


「だろうな、大変だっただろうと思うよ。

でも、その話しは仕事を片付けてからゆっくり聞くよ。


先ずは、さっさと法改正をしてしまおう。

じゃないと、明日になったら武闘大会をやらない事の苦情がキタ島から来るかもしれないからさ」


「そうね。

じゃあ、レンジくんが放送で言ってた順に片付けて行きましょうか」




最初の、商業ギルドを追放し産業ギルドに加入する事に関しては、他国で行った商業ギルドの職員を辞職させて産業ギルドに就職させるやり方は難しそうだった。


オレが、産業ギルドを立ち上げた後で、ギルド職員がごっそり入れ替わったらしいのだ。

恐らく商業ギルドに今勤めているのは、産業ギルドに移籍した後にスパイとして使える者達だろう。


なので、産業ギルドの職員は、全員、他国の職員を転勤させる事になった。




続いて、クルス商会優遇政策に関しては、ビルスレイア女王国やギルナーレ王国と同じ内容で進める事になった。

と、言っても、現在は他に出店する国は無いので、ナナツ国に一気に作って行く事になる。



3つ目の、武闘大会で国王を選ぶ制度を撤廃して、エリカ ミナミイ国王をオレが許可する迄続投させる事は、国王の決定を武闘大会で行わないだけで、武闘大会そのものは行って行く事になった。


今後は、名誉の獲得の為だけに優勝を目指す、スポーツマンシップに則った大会になる。



4つ目の国の政治は、各島の代表者を厳正な審査の元で選び行う事は、クルス商会での入社審査を参考に、現在グラール帝国で行っている審査を利用して官僚を決めて行く事で決定した。


最後のオレが決めた細かい法律にも従う事については、『他国の者を見下さない』『自分が強いと勘違いしない』の2つだけ法律で取り締まる事にした。


他は、今後思い付いたら追加するつもりだ。

しょうもない法律だが今後のこの国の発展には必要な事だ。


これらの決定事項を、即エリカに発表させて、その後で再度会議をして、クルス商店と産業ギルドの建設場所も決めて行った…………





▪️▪️▪️▪️





「おつかれ、どうぞ」


「お疲れ様、お邪魔します」


会議を終えて、一旦、各所への通達の為に戻って、再度エリカが来た。

そのまま、シルバーウィングのオレの私室へ通させたのだ。


一応、エリカに配慮して護衛も一緒に通させるつもりだったが、1人でやって来た。


「先ずは、エリカの話しを聞くよ。

オレがこっちに来たのは3年前だから」


「うん、えっと、私がこの世界に来たのは、2,000年くらい前。

大魔王を倒した勇者の召喚に巻き込まれて、この世界に来たの」


「2,000年前?ちょっと、いいか?

向こうの世界では、何時何処でこっちに来たんだ?

あと、エリカ以外に何人巻き込まれてた?」


「向こうでは、2,016年11月13日で場所は京都よ。

一緒にこっちに来た人達は、1,000人くらいは居たと思うよ。何で?」


「…………そんなニュース、見た事が無い…………。


それに、オレが居たのも京都で2,017年の11月13日だ…………。

もしかして、アイツも…………」


「どういう事?

それに、レンジくんも京都に住んでたの?」


「いや、オレは、たまたま観光に行ってて京都に居たんだ。

エリカは京都に住んでたのか?」


「うん、夫の転勤で京都に引っ越したばっかりだったの。

それで、その日は家族で食事に出掛けてて。

覚えてる?11月13日は?」


「……ああ、エリカの誕生日か」


「そう!!ついでに、息子も誕生日でね。

ちょっと、奮発して良いレストランを予約してたの、ランチだけどね。

でも、向かってる途中で…………」


「そうだったのか…………。


でも、さっきも言ったけど、1,000人も行方不明になった筈なのにテレビでもネットでも一切ニュースになってないんだ…………。


失踪なんて、世界中で毎日、何万人も居るだろうし、1人2人居なくなっても気付かれ無いかも知れないけど、オレの時と同じなら、エリカの時も周りに居た人達が巻き込まれて一緒に来たんだろ?」


「うん、多分そう」


「…………自然と死んだ事になってるのか?

誰も不思議に思わない様に?」


「…………私も思った事あるよ。

こんなに大勢、突然居なくなったら、きっと、凄いニュースになってるだろうなって…………。

でも、何事も無かった事になってるんだね…………」


「ああ……

でも、オレがエリカの事を覚えてるって事は、最初から居なかったみたいな感じじゃ無いんだろうけどな」


「そうだね…………。

むしろ、自然な感じならお母さん達に心配掛けなくて済んで良かったかも」


「悪い、話しの腰を折っちゃったな。でも、もう1つ良いか?

言い方はちょっと悪いんだけど、エリカは“人種族”だよな?

何で、2,000年も生きられてるんだ?」


「それは、レベルの所為だと思うよ?

この国には、私よりも長く生きてる“人種族”の人も何人か居るよ?」


「そうなのか…………。

レベルが高いと“人種族”でも500年以上生きるって言うのは、レベルが9,999以下での話しだった訳か…………」


「多分、それが正解だと思うよ。

私もレベル1万を超えてから、殆ど老けなかったし、レベル100万を超えたら、なんだか若返った感じしたから」


「なるほどな……

ありがとう、続きを聞かせてくれ」


「うん。それで、この世界に来てからはグラール帝国で無理矢理戦闘訓練をさせられたの、息子を人質にされて…………

私も勇者だったから…………


それから、しばらくして大魔王を倒した勇者が聖剣に認められたんだけど、そしたら、私がパーティーを組んでた賢者の人と大魔王を倒した勇者が対立してね。

賢者の人が、当時の皇帝に強力な戦力の提供を条件に独立国を作る事を約束させたの。


その時の戦力が、レンジくんの所にいるホネリュウさんで、出来た国がオオサカ国。


私達家族も、賢者の人に付いて行って、最初はオオサカ国に家を建てて暮らしてたんだけど、夫が浮気してね…………。


この世界じゃ、一夫多妻も認められてるし、浮気も2人目の奥さんも認めてあげられたら良かったんだけど、相手の女の子が…………。


その……。ネコミミの小さな女の子で…………。


私との結婚も、向こうの世界での妥協だって分かっちゃって…………。

向こうでも、その……。やたら、コスプレが多いなとは思ってはいたし…………。


だから、離婚してオオサカ国も出たんだけど、グラール帝国には戻りたくなかったし、大魔王の領地は荒れてたから、息子と2人でこのナナツ国に来たの。


幸い、グラール帝国で無理矢理、訓練させられた所為で、この国でも食べて行けるくらいには何とかなったし、運良く師匠に出会えて剣術も教えて貰いながら息子の面倒も見てくれて。


それでも、修行は厳しかったし、レンジくんと会った大自然ダンジョンでも、何度も死にそうになりながら、ずっと頑張ってきたわ。


それなりに、裕福な生活が出来る位には稼ぐ事が出来る様になって、息子も成人して、孫も産まれて、別の人とも結婚したけど、やっぱり、勇者は特別みたいで、みんな、私みたいに強くはなれなくて、先に死んじゃった…………。


レンジくんを呼び止めた、グラック、覚えてる?あの子は私の玄孫なの。


レンジくんは、まだ、30歳なんだよね。

なんだか、私だけが、すっごいお婆ちゃんになっちゃったね…………」


無理して笑って見せながらも、涙が溢れて来ていた……

きっと、苦しかったんだろう…………


子供を、孫を見送る…………。

元の世界では普通は起こらない事だ。


「エリカ、済まないな。

オレがもしも、一緒にこの世界に来てたら、どうにかしてやれたんだが…………」


「ううん、大丈夫。

今は今で、ロイヴォックス流を伝えたり、この国を少しでも良くする為に結構忙しくしてるから。


レンジくん達にしたら全然かもしれないけど、私コレでも25期連続で国王してるんだから。


そうそう、産業ギルドの事も検討はしてたんだよ?


でも、余りにも商業ギルドと全面対決で、たった1日で世界をひっくり返しちゃったじゃない?


だから、“クルス会長は世界征服を企んでる”って噂になってるのを信じちゃったんだよね。

まさか、噂の“クルス会長”がレンジくんだなんて思いもしなかったし」


「オレだって、ナナツ国の“なんかムカつく国王”が、エリカだなんて思ってなかったよ」


「…………私、“なんかムカつく国王”って言われてるの?」


「ああ、魔族の3ヵ国の魔王が全員一致でそう言ってたぞ?

何かしたんじゃないのか?」


「…………したかも……。でも、100年以上前の事だし…………」


「何やったんだ?」


「えっと、ちょっと武者修行してて、王城を襲撃したの…………。

あ!!でも、何も取って無いし、多分、誰も殺して無いよ!!」


「何でそんな事したんだ?」


「挑戦状を無視されたから?」


「はぁ〜〜……。

いつの間に、そんな脳筋な考えになったんだよ…………。


オレが付き合ってやるから、ちゃんと謝れ。

これから、産業ギルドの会合でも顔を合わせる事になるんだから」


「…………はい……。

ねぇ、そんな事より、レンジくんの事も教えてよ。

この世界での事だけじゃなくて、中学校卒業してからの事も!!」


「ああ、そうだな…………」


その後、オレのバイト生活や趣味の旅行で出掛けた話し、こっちに来てからの出来事や妻達との出会いなんかも色々話しをした。


「レンジくんモテモテだね!!」と、何度も言って驚いていたが、子供の頃のオレを知るエリカにとっては、本当に驚きだったんだろう。

自分でもそう思う。



本当は、オオサカ国の情報が欲しかったのだが、エリカにとって余り良い思い出では無さそうだったので聞くのは止めておいた。


いつの間にか深夜だったので、まだまだ、色々聞きたそうなエリカを宥めて帰らせた。





翌日の早朝から、またエリカがやって来たので話しの前に先ずは3人の魔王に謝らせた。


キスラエラはオレと一緒に居たのだが、以前のケバケバメイクのハデハデ衣装しか見た事が無かった所為で、エリカは気付いていなかったので、ビックリしながら謝っていた。


ギムルスタ王は、「クルス様の幼馴染ですか……ならば、仕方がありませんな……」と、言い、ルザンクス王は、「おまえの幼馴染なら、仕方ねぇか……」と、言った……


コレに対して、エリカは、「レンジくんって、人望が有るんだね」とは、言わなかった、「レンジくんって問題児なんだね」と、言ったのだ。


きっと、エリカは、2人の言った意味を取り違えたに違いない。

そうに、違いない。



その後は、シルバーウィングのリビングで妻達やペット達も交えてワイワイ話した。


特に妻達は、オレの子供の頃のエピソードを、エリカはオレの妻達への口説き文句を入念に聞いていた…………

出来れば、何方も本人の居ないところでやって頂きたい話しだ…………


そして、翌日もエリカがやって来た。

しかし、今日はちゃんと仕事だ。


店舗とギルドの建設予定地の準備が出来たので伝えに来たのだ。


まあ、国王自ら来る必要は全く無いが…………


何時でも建設を始めて良いと言う事だったので、直ぐに建ててしまう事にした。


ナナツ国には、7つの島に1つづつしか街はない。

なので、7ヶ所作れば終わりだからだ。


あっという間に建てて帰ると、エリカは妻達と女子トーク真っ最中だったので、オレはそのまま店舗とギルドの人の手配を指示して居ると、エリカが駆け寄って来て「明日からってどういう事?」と、聞いて来た。


もちろん、全部建て終わった事を伝える。

エリカは、何も言わずにダッシュで出て行った。


夕食を食べていると、エリカが駆け込んで来る。


「何でもう出来てるの?!」


「今日、建てに行っただろ?」


「でも、2、3時間で戻って来てたじゃない!!

下見に行ったと思うじゃない!!」


「オレはちゃんと、建てて来るって言ったぞ?」


「でも、あんなに立派な建物が、2、3時間で14棟も建てられるなんて思わないじゃない!!」


「もう、世界中に何百棟も建ててるんだから建てるのに1秒も掛からないんだよ」


「意味分かんない!!」


「エリカ陛下、落ち着いて下さい。

レンジ様は何でも御出来になりますが、1番御得意なのはモノ作りなのです。


レンジ様、宜しければ、“あのストーン”をエリカ陛下にお見せになられては如何ですか?」


ルナルーレが、“あのストーン”と言うなら、アレだろう。


「じゃあ、そうしようか」


そう言って、いつもの、“ストーンフィギュア”を作って見せる。


ペットボトルサイズのエリカだ。

服の質感や髪の1本迄、完全再現だ。


もちろん、服は着ている。

エリカの裸の記憶は4歳までしか無いからだ。


「…………凄い……」


「エリカ陛下、素材はともかく、この技術に比べれば建物を作る事なんて造作もない事だと思いませんか?」


「確かに…………」


「じゃあ、解決だな?

エリカもついでに、メシ食って帰るか?」


「うん、頂きます…………」


若干、放心状態のエリカは、食事の後にルナルーレに連れて行かれていた……

そして、そっとシロリュウが後に付いて行っていた…………


何となく、今後の展開が予想出来るが、まあ、なる様になるだろう!!






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ