第19章 誕生④
誕生④
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2ヶ所の秘匿ダンジョンの攻略が終わった事で各国の王達に聖剣の事を伝えた。
魔王達と相談した結果、歴史と等価交換の法則に付いての情報は避けて、聖剣の危険性のみで発見した場合は回収と封印をする旨を伝えた。
もしかしたら、第5の聖剣が最後かもしれないが、もしもの為の情報収集は広く行っておくに越した事はない。
その日の夜、夕食を終えてレベル1億を超えたクリシュナとシロクラゲの装備を明日作ろうと話した後、レンが不意に、
「…………レンジさん、私もペットが欲しい……」
と、言って来た。
1番驚いて居たのはキスラエラだ。
キスラエラは、自分だけペットが居ない時間が長く、でも我慢していた。
ウチのペット達は基本巡り合わせで、わざわざ捕まえに行った訳では無い。
キスラエラは、その事を知っていたので、タイミングが来るまで待っていたのだ。
しかし、レンにもちゃんと言い分が有った。
「…………ちゃんと、意思の有る魔獣だったら、アカリュウさんみたいに“原初のモノ”で無くても、真無限ダンジョンでちゃんと、強くなれるから……」
なるほど、確かにそうだ。
別に強い魔獣をペットにしていた訳では無いが、一定以上の強さが無いと一緒に連れ歩くのに不便だ。
しかし、強く無い魔獣でも、しっかりと育てて行けば困らない。
そして、“原初のモノ”で無いなら、ペットにしてもクリシュナからも文句は出ないだろう。
「分かった。
なら、ちょっと何処かにペットを探しに行こう。
因みに、レンに希望とか目当ての魔獣は居るのか?」
「…………狼、グラール帝国には狼の“原初のモノ”がいて、その眷属が時々現れるって聞いた…………」
「ああ、バイラヴァの眷属がいるのね。
でも、探すのは大変かも…………」
と、クリシュナ。
「なんで、大変なんだ?」
「無色の狼 ヴァーハナ 聖地を護る者 バイラヴァは、見た目も透明で、気配や魔力も完全に隠せるの。
眷属のクリアウルフも同じで、見つけるのは大変だと思うよ。
それに、1ヶ所にじっとしてる事は無いから、レンさんが聞いたグラール帝国にいるって話も何時の事かによっては、もう居ないかも知れないから」
「なあ、ちょっと気になったんだけど、そのバイラヴァは龍脈にじっとしてなくても平気なのか?
それと、聖地を護る者なのに、あちこちフラフラしてるのか?」
「うぅ〜ん…………。
多分だけど、見つからない事に自信が有るから他の“原初のモノ”がいる龍脈とかに行って、こっそり回復しては、また、何処かに行ってるんだと思うよ。
あと、聖地については分からないの。
この世界には、聖地って言われてる場所は色々有るけど、私達“原初のモノ”が、みんなで決めた聖地は無いし、私達が生まれる前から聖地って言われてる場所もないの。
だから、バイラヴァが何処を護ってるのか分からないんだよね…………」
「…………それって、本人も、何処を護るのか分からないって事か?」
「今はどうか分からないけど、少なくとも聖樹に居た頃は本人も分かって無かったよ?
その頃から称号は有ったけど…………」
「ふぅ〜ん……ちょっと、面白そうだな…………。
じゃあ、レンにもペットを捕まえてこよう…………」
「…………レンジさん、もしかして、“原初のモノ”の方を狙ってる?……」
「多分だけど、狼なら群れで生活してそうだから、1番見付けやすいのは1番大きいヤツになるだろう?
そしたら、偶然“原初のモノ”かも知れない」
「レンジさんは、完全にバイラヴァを狙ってるでしょ!!
ダメだからね!!無理矢理連れて来るのは!!」
「おいおい、クリシュナ。
オレは一度も無理矢理連れて来たりなんかしてないぞ?
着いて来るか、提案しただけだぞ?」
「そうじゃなぁ〜〜……
確かにワシには選択肢が有った……。
ご主人様に付いて来るか、魔核だけ持ち帰られるか……ぐふぉ!!」
「ああ〜〜、ネーレウス様〜〜!!」
オレの“クルス流体術1 デコピン空気弾”で、壁画となったシロクラゲをキスラエラが慌てて剥がしている。
「自分は、ボスに志願して付いて来たっス!!」
シロクラゲの惨状を見たクロリュウが、シュパッと手を上げる。
それに続いて、「我もだ!!」「私もです!!」と、ペット達は次々手を挙げた。
「な?」
「…………脅迫……」
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レンのペット探しは午後から行く事にして、先ず今日はクリシュナとシロクラゲの装備作りからだ。
「クリシュナは、今の装備の強化だけで良いか?
それとも、何か希望が有れば追加するけど?」
「えっと、今の大きくなる効果なんだけど、逆に小さくもなる様に出来ないかな?
例えば、刃の部分だけ小さくして棒術みたいに使ったりとか、片手サイズにして投げ付けたりとか…………」
「なるほどな……。
なら、刃と持ち手を別々に大きさを変える事と、一緒に変える事が出来る様にしよう。
どっちも、大きくも小さくも出来る様にして。
で、投擲しても良い様に、其れを20本にしよう」
「はい。それと、鎧の方は段々と壊れて結界に変わるんじゃ無くて、結界でコーティングして壊れ難くなる様に…………」
「それは、ダメだ!!」
クリシュナの希望通りの装備を作った後は、シロクラゲの装備だ。
「シロクラゲは、希望は有るか?」
「ワシの剣先もナラシンハのワイヤーアンカーの様に、飛ばして引き寄せたり出来る様にして貰いたいのじゃ。
後は、数を増やして欲しいのじゃ。
普段は、出しておらんが触手はもっと多いでのぅ」
「そうなのか?
何本くらい触手はあるんだ?」
「全部出せば、1万本くらい有るんじゃ」
「そうか、それは確かに普段は邪魔だな。分かった。
じゃあ、刃の部分をワイヤー付きで飛ばせる様にして、魔力を流して刃先に返しを展開出来る様にしよう。
で、数は、2万本作っとこう。
触手毎、斬り飛ばされても拾いに行かずに済む方が良いからな」
「おお、そうして貰えると助かるのじゃ」
シロクラゲの装備は、装備以上に広大な試験管スタンドが印象的な大量の触手様手袋?になったのだった…………
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「うわ〜〜!!」
「助けてくれ〜〜!!」
「死にたく無い〜〜!!」
レンと共に、グラール帝国のとある酒場に来ていた…………
今日は、クリアウルフの情報を聞く為だけなので、レンとお供のセスラーナとの3人だけだ。
オレ達が入った瞬間、20人程の客の内、十数人が泣き叫んで逃げ惑った…………
非常に残念な事に理由は分かっている…………
逃げ惑ったヤツらは、オレが第5の聖剣のバケモノを殺した時に従軍していた兵士達だ。
こういう時、ステータスの知力の高さが仇になる。
オレは、コイツらの顔をちゃんと覚えてしまっているのだ…………
「そんなに、怯えなくて良い。
今日はちょっと話しが聞きたいだけなんだ」
オレが笑顔で、そういうと騒いでいた連中が…………
「ひぃ〜〜!!」
「怖い!!逆に怖い!!」
「笑顔が怖い!!笑顔で殺されそうで怖い!!」
逆に騒がしくなってしまった…………
「はぁ〜〜…………
結局、こうなるのか…………
おい、お前ら黙れ。
オレの、質問に答える以外声を出すな。
同じ事を2回も言わせるなよ?」
「「「!!はい!!」」」
バタバタしていたヤツらが、一斉に敬礼して大人しくなった…………
良く訓練されている……
なんか、ちょっとムカつくが…………
「分かれば良い。
今日は、聞きたい事が有って来た。
先日、オレの妻がお前らがクリアウルフを見たって話してるのを聞いたらしいんだが、何時、何処で見たんだ?」
「はい!!我々が襲われたのは、クルス様に敗退した後、撤退中でしたので3ヶ月程前になります。
場所は、ゴドラッセンの街とルドン川の直線上、森と荒野の双方で襲われました」
佐官っぽい、女性がキリッと答えた。
さっき迄、オレの笑顔が怖いと泣き叫んでいた女性だ。
切り替えが早すぎて、さっき迄の怯えが演技の様にすら思える…………
「なんで、クリアウルフだって分かったんだ?」
「はい、襲われた者の血肉が付着した際に、オオカミの輪郭を捉えました」
「何体くらいの群れだったか分かるか?」
「はい、確証は有りませんが、同時に攻撃を受けた数から20体以上は居たモノと思われます」
「何体、撃退出来たんだ?」
「はい、撃退は出来ておりません。
エサを手に入れて撤退したモノと思われます」
「襲って来た中に、“原初のモノ”バイラヴァは居たか?」
「はい、申し訳ありません、分かりません」
「何方の方角に撤退して行ったか分かるか?」
「はい、方角的には、毎回、北西方向でした。
しかし、ブラフの可能性も十分にあり得ます」
「お前らが遭遇した後に、何処かでクリアウルフの被害報告は有るのか?」
「はい、他の場所での報告や話しは聞いておりません」
「分かった。
情報料で此処は奢ってやるから好きに呑んで帰ると良い」
オレの言葉に、セスラーナがスッと酒場のオヤジに金を渡すのを確認して黙って店を出た。
店内から、
「隊長、マジ男前です!!」
「オレなんか、もう膀胱空っぽですよ!!」
「私だって、下着が大変な事になってるわよ!!
もうヤケよ!!このまま、下着が乾くまで呑み明かすぞ〜〜!!」
「「「おお〜〜!!」」」
と、威勢の良い叫びが聞こえたのだった…………
「…………レンジさん、此処から何処に向かうの?……」
酒場を出てから、オレの“リターン”で情報に有ったゴドラッセンの街に来た。
情報は3ヶ月前のモノなので、既に近辺には居ないだろう。
「クリアウルフは、隠れるのが上手いだろ?
そのクリアウルフが北西に向かう姿を見たら、先ずは北西を探すよな?
そして、見つからなかったら真逆の南東を次に疑う。
だが、もしも、その群れにバイラヴァが居たら、次に向かう可能性が高いのは、北か東だ。
バイラヴァは、“原初のモノ”だからデカい。
そのデカいのが、草原や森に居たら、例え透明でも草木が折れて痕跡が残ってしまう。
なら、荒野を進むだろう。
で、北か東かだが、おそらく、北だ。
東から来て、北に向かった可能性が高い。
見つかったのが、3ヶ月前だから、多分、暑くなる前に北に行ったんじゃないかと思う。
だから、此処から北西に行って、荒野から北上して、山脈方面を探してみよう」
「…………分かった。でも、どうやって探すの?……」
「取り敢えず、広範囲に魔法で雨を降らせる。
索敵とか攻撃とかじゃ無くて、あくまで、土地を潤す為に降らせるんだ。
多分だけど、荒野や山脈を移動しているなら水は貴重だろうから、雨が降ったら水を飲もうとして、身体を濡らすだろ?
そしたら、不自然に雨が途切れる場所が出来る。
そこにだけ、黒い雨を降らせて着色すれば、見える様になるだろうと思ってるんだ」
「…………でも、私達だけで見て回ったんじゃ、範囲が広すぎない?……」
「そこは、ちゃんと準備して有る」
そう言って、“ディファレントルーム”から黒縁メガネを取り出して掛ける。
「これは、オレ専用の“空中監視魔導具”、“千の目”だ」
メガネに魔力を通して、頭の中で1,000個の“赤い空中監視魔導具”を操作する。
“ディファレントルーム”から、次々と“赤い空中監視魔導具”が飛び出して来た。
「…………レンジさん、専用機だから赤いの?目立たない?……」
「ちゃんと、透明化も出来るけど、専用機はやっぱり赤だろ?」
「…………確かに……」
「じゃあ、行こうか!!」
「きゃ!!」
オレは特に意味も無くレンをお姫様抱っこして、“スキル 飛翔”で飛び上り、新しいペット探しを始めたのだった…………
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雨を降らせる事、4時間。
今、オレ達の前には、“真っ黒な狼達”がいた…………
1人はシロネコ同様に、大型ショッピングモールくらいある。
おそらく、バイラヴァだろう…………
最初に黒い雨を被せた瞬間には一気に逃げようとしたのだが、オレが先回りして前に立つと、直ぐに立ち止まったのだ。
そして、
「おまえ、クルスだにゃ?
オイラに何の用だにゃ?」
『…………オイラ?にゃ?…………。
それに、狼なのに何でハの字の垂れ眉なんだ…………。
狼と言ったら、こう、孤高な感じの、凛々しい感じじゃ無いのか?』
「…………かわいい……
レンジさん、この子が良い!!」
レンには、このちょっと情け無い顔の狼がストライクだったっぽい…………
「一体何の話しをしてるにゃ?」
「ああ、悪い。
それより、どうして、オレの事を知ってるんだ?
クリシュナ達もおまえにはずっと会って無かったみたいだが…………」
「空の映像で見たにゃ。
だから、おまえがクリシュナと結婚してるのも知ってるにゃ。
にゃ?!もしかして、おまえもオレに父親面する気なのかにゃ?!」
「いや、そうじゃ無いよ。
クリシュナの母親みたいに振る舞うのも大分落ち着いてるしな。
オレは、新しいペットを探しに来たんだ。
おまえ、ウチのペットにならないか?」
「…………おまえ、何言ってるにゃ?
父親面よりも、飼い主面の方が悪いとは思わないのにゃ?」
「…………言われてみれば、そうだな…………。
だが、まあ、事実だ。
何方が良い、悪いじゃ無い。
オレは飼い主面をしに来た。
断じて、父親面をしに来た訳じゃ無い。と、言う事実だ!!」
「オイラは、クリシュナの旦那だからって従うつもりは無いにゃ」
「じゃあ、どうしたら絶対の忠誠を誓ってくれるんだ?」
「おまえ、ペットに忠誠心迄求めるのかにゃ?
其れも絶対の忠誠って、おまえ暴君すぎじゃないかにゃ?」
『なんだろう、この違和感…………。
今迄の“原初のモノ”と感覚が違う気がするな…………』
「なあ、おまえ、もしかして転生者なのか?」
「うぅ〜〜ん……。
まあ、似た様なもんにゃ。
オイラは、元々は別の世界で野良猫をしていたにゃ。
其れが、気が付いたら狼になっていたのにゃ。
でも、オイラには、他のヤツらみたいに向こうで死んだ記憶がないにゃ。
其れに、称号にも転生者はないにゃ」
『!!新しいパターンだ。動物の転生者?
いや、もしかしたら動物から動物のパターンは結構有って、その中で“原初のモノ”で“知恵の実”を食べたヤツがレアなのか?
だとしたら、意思を持ったり、話せたりする前の魔獣とかには転生して来た記憶が有る者も居るかも知れないな』
「なるほど……。面白いな。
ところで、おまえは“聖地を護る者”なんだよな?
クリシュナは、本人も何処が聖地なのか知らないって言ってたが見つかったのか?」
「まだ、見つからないにゃ。
ヒトが聖地って呼んでる所や、古い遺跡や、龍脈なんかに色々行ったけど、何となく違うって分かったにゃ。
だから、今は何となくフラフラ探してるのにゃ」
「じゃあ、おまえがオレのペットにならない理由は、聖地を探し続けているからなんだな?」
「違うにゃ!!なんでそうなるにゃ!!
オイラは、おまえに従う理由が無いから断ってるにゃ!!」
「そうか……。だったら、従う理由が有れば良いんだな?」
「言っとくけど、オイラは戦って負けたら従う様な安い男じゃ無いにゃ。
勝敗は、力の強さじゃないにゃ。
最後まで生きてる方が勝者にゃ。
だから、オイラが負ける時は死ぬ時だけにゃ」
「大丈夫だ。
オレは暴力で全て解決だなんて、あんまり思って無いから。
其れに、おまえにとってもきっと良い結果になると思う。
ちょっと、付き合って欲しいんだけど、ミミッサス大森林の龍脈に“リターン”出来るか?」
「ミミッサス大森林の龍脈には行った事は有るけど、オイラは“リターン”が使えないにゃ。
後戻りはしない主義なのにゃ」
「じゃあ、オレが“リターン”で運ぼう。
1人で来るか、それとも、全員連れて来るか、どっちにする?」
「おまえ、ホントに強引にゃ。
オイラはまだ、行くとは言って無いにゃ」
「行くのは、決定事項だよ。
もし、断ったら、おまえ1人を気絶させて運ぶから。
今なら、1人でか一緒にかの選択肢が有るだけだ」
「にゃ?!ついさっき暴力では解決しないって言ってなかったにゃ?」
「運んだって、解決しないだろ?
解決させるのは、その後だ。
だから、問題無い。
其れに、オレは、あんまり思って無いって言ったんだ。
暴力で解決させる事もあるからな、そこんとこ間違えるなよ」
「おまえ、ホントに暴君にゃ……。
はぁ〜…………。仕方ないにゃ。
妻や娘達と逸れるのも困るし、一緒に行くにゃ」
「分かった、じゃあ、行くぞ」
バイラヴァの妻と娘達も連れて、全員でミミッサス大森林の我が家の手前に“リターン”して、歩いて結界を潜って、我が家へ向かう。
セスラーナが事前に連絡しており、バイラヴァが近付いても特に混乱も無く、今迄、ただの飾りだった巨大な正門を初めて使って中に入った。
「いらっしゃい、バイラヴァ…………。何で真っ黒なの?」
中に入るとクリシュナと共に妻達や、シロネコ達も出迎えに来ていた。
「コイツにやられたにゃ。
クリシュナが結婚してたのは見てたけど、おまえら全員、コイツのペットになったのかにゃ?」
「うむ、そうだ。おまえは違う様だな」
「オイラは、強い奴に諂うだけの生き方は絶対にしないのにゃ。
此処に来たのは、コイツがオイラにも何か良い事になるって言ったからにゃ」
「ねえ、レンジさん。
一応聞くんだけど、バイラヴァをペットにしようとしてるんじゃなくて、眷属のクリアウルフをペットにしようとしてるんだよね?」
クリシュナが、ジト目でオレを見て来る。
そして、視界の端では、レンが必死に訴えている。
『垂れ眉が良い!!』と…………
「クリシュナ、これからウチのペットになるかどうか決めるのは本人達だ。
バイラヴァが、自分からペットになりたいって言ったら、受け入れてやろうじゃないか」
「…………自分からねぇ〜……。
まあ、本人がそう言ったら、それでも良いけど…………
脅すのはダメだからね」
「大丈夫だよ、脅して無理矢理ペットにするつもりなら、ペットにしてから連れて帰ってるさ。
その方が楽だし」
「連れて来たのは、無理矢理みたいなモンだったけどにゃ。
で、何で此処に来たのにゃ?」
「ああ、バイラヴァ。
おまえが探していた『聖地は此処だ!!』」
「にゃ?何を言って…………。
どう言う事にゃ?!さっき迄、何も感じなかったにゃ、なのに、何でにゃ…………」
「其れは、たった今、此処が聖地になったからだ。
この世界に、此処が聖地だと認識させてな」
「「「この世界に?!」」」
「ああ、前に聖樹を鑑定した時にやって見せただろ?
自分と世界の認識でステータスを変えたヤツだ。
其れを、世界側に向けて世界の認識を変えさせたんだよ」
「さすが、主様です。世界すら従えてしまうとは…………」
「まあ、ボスっスから、世界も逆らえないっスよねぇ〜…………」
「うむ、そうだな……。しかし、世界迄とは…………」
なんだか、色々言ってるが、オレが世界を脅して言うことを聞かせたみたいな感じになっている気がする………………。そうかも…………
「まあ、良いや。
で、バイラヴァ。
おまえが此処の守護者になるには、2つしか選択肢が無い。
分かるよな?」
「…………おまえのペットになるか、おまえを倒すかって事にゃ?」
「そう言う事だ。どうする?」
「はぁ〜〜……。
分かったにゃ、ペットになってやるにゃ。でも、忠誠心は…………」
「ああ、分かってるよ。
忠誠心は、今持ってくれれば良い。キッチリと上下関係を理解してな」
そう言って、意識が飛ぶスレスレ迄、バイラヴァに殺気を送る!!
「!!ふにゃ!!な、な、なっ…………」
「オレが主人だ。分かるよな?」
「はいにゃ!!分かりましたにゃ!!
ご主人に絶対の忠誠を誓うにゃ!!」
「…………『戦って負けたら従う様な安い男じゃ無いにゃ?』……」
「にゃ?!」
「…………『オイラが負ける時は死ぬ時だけにゃ?』……」
「にゃにゃ?!
「…………『強い奴に諂うだけの生き方は絶対にしないにゃ?』……」
「にゃにゃにゃ?!」
「レン奥様、仕方ないっスよ。
自分もボスに会うまではそう思ってたっス。
ボスは、なんか、こう、次元が違う感じっスから」
「シェーシャ、良い事言ったにゃ。
そうなのにゃ、ご主人は次元が違う存在なのにゃ!!
真に仕えるべき主を見つけたのにゃ!!」
「で、妻や娘達はどうするんだ?」
「もちろん、一緒にご主人に従うにゃ。
オイラ達は、5人で1人だからにゃ」
そんな感じで、新しい家族も増えて、いつもの首輪を5人に着けてから、夕食を取りながら、話しを聞いた。
先ずは、バイラヴァをトーメーと名付けた。
他の4人の名前だが、妻はバイラヴィと言う名前だった。
これは“原初のモノ”の真名では無かったので、そのままバイラヴィと呼ぶ事にした。
そして、3人の娘達は名前が無かったので、クリア、クリカ、クリサと名付けた。
そして、トーメーの言っていた、『5人で1人』は、家族愛的な意味では無かった。
妻のバイラヴィはシンクリアウルフ、娘のクリア達はクリアウルフだったのだが、トーメーの種族は世界中に、この5人しか居らず、5人は知識や感覚を共有しているそうだ。
それぞれが別々の意思を持ちながら、同じ意思の元で別々に動くと言う。
お互いに自分の分身の様な、別人の様な感覚だそうだ。
もちろん、ちゃんと家族愛も有って、ちゃんと愛し合っているそうだ。
其れと、透明なままだと不便なので、普段は白くなっておく事にさせた。
因みに、色は、白、黒、グレー、透明の4色になれるそうだ。
目撃情報にあった、20体以上の群れというのは、1人最大10体迄、分身体が出せる事によるモノだった。
群れの数を多く見せて敵を威嚇する為に、普段から狩をする時にはこの分身体を使うそうだ。
こうして、レンのペットも加わって、我が家はさらに賑やかになったのだった…………




