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第19章 誕生③

誕生③





▪️▪️▪️▪️





グラール帝国の南東部、皇帝別邸の地下



ここは、グラール帝国が秘匿していたダンジョンだ。

上に皇帝の別荘を建てて迄、隠したダンジョン…………



とりあえずは、Cランクくらいの魔物がチラホラ現れる大したことないダンジョンだった。


洞窟型のダンジョンだったので、採取出来る鉱物に価値が有る可能性も考え、キチンと調べながら進んで行った。


そして、地下20階で、ガラッと雰囲気が変わった…………



神殿の様な雰囲気に、凄まじい死臭…………


奥に台座と石板が有る。


台座は、今迄、一体どれ程の血を吸って来たのか、真っ黒で人を磔にする様な形だ。

手足を置きそうな部分には、溝があって、その中には剣が有る。


スライドさせて、長さを調節して、手足を剣を出して貫く。そんな形状だ。


そして、それは正解だった。



石板には使い方が書いてあったからだ。


『四肢を貫き、命尽きる迄願え。救世主が現れる事を』



「ご主人様……。これは、召喚用の魔導具ですよね。

生贄を捧げて、異世界から召喚する…………」


「ああ、きっと、キスラエラの考えている通りだろう。


この、隙間の中に有るのが、“第4の聖剣”だ。

この台座は、“召喚の御座”だが、単体としてじゃ無くて、部品として剣を鑑定して見ると良い」


「…………第4の聖剣…………」


「これまでの聖剣から、“聖剣の創造主”が、どういう経緯で作って来たのか、なんとなく分かってくるな…………。


まず、ハルマール王国に有った聖剣。

“人種族の命を使った分だけ、相手よりも強くなれる”聖剣。


これが、恐らく最強の聖剣として作られた。



しかし、何度でも復活出来る様に聖剣の間を作ってしまった。

そして、その等価交換の代償で使い手が限定されてしまった。



天使種族の侵攻の所為で、世界的には覚醒の条件、“人種族の絶望”は満たしていても、聖剣に認められる人物が、なかなか現れ無かったんじゃないだろうか。



だから、第2の聖剣を作った。


こないだ、無限ダンジョンで見つけた聖剣。

“人種族の命を使った分だけ、強力な一撃を放つ”聖剣。


しかし、此れにも問題が有る。

使用者が弱いと反動に耐えられない。


だから、無限ダンジョンで強くなってから手に入る様にした。

だが、この無限ダンジョンをクリア出来る者が現れ無かった。



今度は、第1クルス島のダンジョンにあった第3の聖剣を作った。

“大切な人種族の命を自らの糧に出来る”聖剣。


この聖剣は、第1の聖剣と違って、大切な者からしか力を得られない代わりに永続的に強さを維持出来る。

だから、パーティーでダンジョンを攻略させて、仲間との絆を深めさせる為のダンジョンだったのだろう。

ついでに、多くの者が挑んでくれる様に、わざわざ宝迄用意した。


それでも、攻略する者が現れるとは限らないから、直ぐにこの第4の聖剣を作った。


この第4の聖剣は、恐らくなかなか現れなかった。

第1の聖剣の覚醒者を呼び出す為に作ったのだろう。


しかし、これも、きっと上手く行かなかたんだ…………。



だから、旧キルス王国に有った、第5の聖剣を作った。

“喰らった相手の長所を自身と取り替える”聖剣。


この時には、既に“人種族”である事や、“自分”である事すら諦めてでも、戦うしか無かったんじゃないかと思う。


第5の聖剣は、旧キルス王国で発掘された様だから、恐らく天使種族との戦争には使われたモノだと考えられる。


で、あれば、第5の聖剣は、もしかしたら、この第4の聖剣の様に簡単に手に入った可能性が高い。


そうなると、問題は第6以降の聖剣があった場合も簡単に手に入り、何処かに隠されているだけの可能性も有るって事だ。


もしもの為に、魔王達だけで無く各国の他の王達にも情報共有をしておいた方が良さそうだな…………」


「…………レンジさん、怒ってる?……」


「へにゃ〜!!へにゃ〜〜!!」


「!!ああ、ゴメン、ゴメン、レイム。怒ってないぞ、大丈夫だぞ。

レンも済まないな、ちょっとイラッと来てさ」


「…………どうして?……」


「……他の世界に迄、助けを求める程、切羽詰まった状況だった……のかもしれない。

……聖剣の創造主は、なんとか、この世界を救おうと必死だった……のかもしれない。


でも、その、“召喚の御座”の設計は、頂けない…………

その溝の設計は、明らかに子供も対象だ。


子供の命すら、使おうと考える様なヤツは碌なヤツじゃない…………


世界を救う為に必死だったのかと思ったが、聖剣の創造主は犠牲が当然だと考える三流だった様だ…………」


「…………レンジさんは、子供に“だけ”は優しい……」


「…………だけ?」

「…………だけ……」


周りを見ても、みんながしっかりと頷いていた…………



結局、“召喚の御座”と石板を回収して戻り、ダルグニヤンに聖剣の情報共有の許可を魔王2人に取ってもらう様に手配してから、その夜は、妻達にオレの“優しさ”をしっかりと身体に分からせたのだった…………





▪️▪️▪️▪️





グラール帝国の街を観光しながら、もう1つの秘匿ダンジョンに向かった。


“人種族至上主義”が撤廃されても、まだ人々の感覚迄は変わらない。

オレ達が歩いていると、奇異の目で見る者も中にはいた。


しかし、どちらかと言うと、初代国王との遣り取りの放送を見た者達から、逃げられたり、拝まれたりする方が多かった。


街の印象は、何処も治安の悪い街の典型の様な、半分スラム、4分の1が一般層、4分の1が富裕層で、完全に住み分けされている様な街ばかりだ。


クルス商会の店舗建設で、どの街も一応は来た事の有る街だったが、街を見て歩いてそれを如実に感じた。


グラール帝国は、国で言えば世界で最も歴史の長い国だ。

その分、腐敗も長く続いて来た。


この国を本当にまともな国にするのは、まだまだ時間が掛かるだろう。

貴族共から奪った金を配れば済む話しでは無い。


キチンと雇用を作り、正当な賃金を払う。

当たり前の事では有るが、これを全国民に行わなければいけない。


この国には、搾取する者と搾取される者しかいない社会の構図になってしまっているからだ。

搾取する者は当然として、搾取される者も意識を変えて行く必要がある。


まあ、その辺はオレは口出しするだけで、実際にはオレの配下が抜けた後の、この国の新たな官僚達の仕事だ。

時間は掛かっているが、人選は厳正な審査を行っているので、早々腐敗した国政にはならないだろう。



因みに、街の治安が悪いからと言って楽しめない訳では無い。

こういう所では、しっかりと闇市や怪しげな露店なんかを回って怪しげな商品なんかを買って楽しんだ。


オレ的には、意味不明な呪われた装備なんかが買えたので、新たな研究材料が増えてウハウハだった。





そうして、1週間の移動を経て、もう1つの秘匿ダンジョンにたどり着いた。


今回も、オレがレイムを抱いてダンジョンアタックを開始した。



「…………此処が、秘匿されてた理由はこれか…………」


ここまで、普通の洞窟型ダンジョンだった。

難易度も全く高くはない。

せいぜいBランクの魔物が数体現れた程度だ。


しかし、10層目で一気に変わった。

突然、途轍も無く広大な空間になり、目の前には非常に貧相な街が広がっていた。


その街の方から、10人程の帝国兵が走って来ている。



「貴様ら、何者だ!!」


「オレはクルス商会のクルスだ。

お前らは、もしかして何ヶ月も此処に居るのか?」


「だったら、何だと言うのだ!!」


「2ヶ月ちょっと前に、皇帝が変わった。

その際に、為政者がごっそり入れ替わった。


その所為で、この帝国が秘匿していたダンジョンが一体何故秘匿されていたか分からなくなった。

だから、Sランク冒険者でも有るオレが調査に来たんだ」


「そんな話しを誰が信じるのだ!!」


「因みに、政権交代が起こってから“人種族至上主義”と“奴隷制度”が撤廃された。


これは、オレの予想だが、此処は奴隷を使って農業を行っているんじゃないのか?

もし、そうなら、お前達は、この2ヶ月間、知らなかったとはいえ違法に奴隷を使役していた事になる。

全員漏れなく極刑だ。


誰の命令でやっていたのかは知らないが、恐らくその命令したヤツも、もう居ない。

つまり、お前達が命令されて奴隷を使役していた証拠も無いし証言してくれる者も居ない。


死にたく無ければ、代表者はオレに付いて来て自分で弁明しろ。

そして、代表者が戻って来るまで、奴隷達に十分な待遇を与えて労働もさせるな」



「貴様、何を偉そうに!!

Sランク冒険者だかなんだか知らんが、我らは皇帝陛下直属の部隊なのだぞ!!

我らに命令する権利は、皇帝陛下にしか無い!!」


「分かった。

なら、お前らの討伐依頼を受けてから、もう一度来る」


「生きて帰すと思っているのか?!」


「お?攻撃してくれるのか?

助かる。聞きに帰る手間が省ける」


「ほざけ!!全員、かかれ!!」


「ま、待って下さい、隊長!!

念の為、総隊長に確認された方が…………」


「貴様!!こんな、戯言を信じると言うのか!!」


「いえ!!しかし、信じるか信じないかを決められるのは、総隊長では無いかと…………」


「ぬぐ……これだから、平民出の腰抜けは…………」



結局、総隊長に指示を仰ぐ事になり、総隊長補佐官がやって来た。

同じ説明を再度して、同行では無く謁見の間で待ち合わせる事になった。


その後、オレの話しが真実である事が分かり奴隷は解放。


ダンジョンを再度探索した結果、此処が農場兼第5の聖剣のバケモノの“エサ”置き場に使われ、更に下層で、バケモノを飼って居た事が分かった。



今回の秘匿ダンジョンも前回の秘匿ダンジョンも、一般の冒険者にとっては、何の旨味も無いモノでは有ったが、一応は公表される事になった。


これからは、ただ魔物が溢れ出さない様に管理する程度の代物だろう。


もしも、ダンジョンマスターキーが見つかれば、作り替えて使い道の有るダンジョンに出来るだろうが、今の所、ダンジョンマスターキーは、クリシュナの持っていたダークエルフの里のダンジョン以外では見た事が無い。


見つかる可能性は非常に低いだろう。



こうして、2ヶ所の日帰り大冒険を終えて、次の進路はハルマール王国だったのだが…………





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