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第2章 ミミッサス大森林⑥

ミミッサス大森林⑥



▪️▪️▪️▪️



今日はとうとう、“ウルトラグレートベアー”狩りの日だ。

日の出前に起きて準備を済ませ、日の出と共に出発だ。


しっかりと警戒しながら森をズンズン進んで行く。

昨日の作戦会議で行きは魔力を温存して徒歩で行き、帰りは魔力に余裕がある様なら魔法で帰る予定になっている。


ルナルーレもオレ発案の“ストーンアローロケット”を使える様になったそうだ。

知らないところでこっそり努力している。そんなところも可愛いらしい。


2時間ほど進み、反応があった。ルナルーレの声掛けにランドが首を振る。


オレも“感知”していた。

少し先におそらく“ウルトラグレートベアー”か“グレートベアーの上位レベル”の魔獣がいる、予測していたポイントの1つだ。


迂回する様に進み始める。

確実に“ウルトラグレートベアー”を狙う為だろう。



そこから更に3時間、予測ポイントとしては4つ目。

そこにいる“ウルトラグレートベアー”に狙いを定めた様だ。


オレの“感知”は最初のポイントの辺りから気づいていたが、ルナルーレの索敵の魔法は効果範囲半径1km。予定通り慎重に落とし穴の準備を済ませ、近づいて行く。


見えた。

確実に“ウルトラグレートベアー”、それもレベルは530、ランクで言えばBBランクだ。


隠れてはいるが、向こうも確実に気付いている。


ランドが右、グッサスが左に動いて回り込んで行く。

木を盾にして急がず、そして、慎重になり過ぎず、警戒しながらも自然体で歩いて行く。

“ウルトラグレートベアー”も無闇に突っ込んで来たりしない。


何処から来ても迎撃出来る様に姿勢を低くしている。


ルナルーレを正面にランドとグッサスが僅かに後ろになるくらいでルナルーレが仕掛けた。

ルナルーレの上空、“ウルトラグレートベアー”の視線の高さから太陽が背になる様に4本の“ファイアアロー”が“ウルトラグレートベアー”の目を目掛けて降っていく。


4本の“ファイアアロー”は2列になり、2本の影に2本が隠れる形だ。


魔力に反応して“ウルトラグレートベアー”が顔を上げた瞬間、ランドとグッサスが左右の足を目指して走り出す。


太陽を直視した“ウルトラグレートベアー”は眩しそうに顔を顰めて右手を大きく振って“風の刃を発生させて”“ファイアアロー”を全て纏めて叩き落とす。


ランドとグッサスが左右の足に一撃入れてランドは右に行って“ウルトラグレートベアー”の真後ろに、グッサスは後方に距離を取る。


“ウルトラグレートベアー”は、後ろのランドの方を振り向きながら左の裏拳。

ランドは後ろに下がって躱し、捻っている脇腹目掛けてグッサスが飛び上がって斬りつける。と、同時に“ウルトラグレートベアー”が振り向いた時に目が来るであろう位置にルナルーレが“ファイアアロー”を放つ。


捻っていた脇腹を斬られた痛みに振り向き、右目に“ファイアアロー”をくらい怒りに叫ぼうと大きく息を吸い込んだ。


数十の“エアバレット”が大きく開けた口に殺到する。

左右の手で必死に払い除けようとし、顔も左右に振るが両手の隙間や顔の上、左右からも弧を描いて口の中に“エアバレット”が入り続ける。


その間、ランドとグッサスは“ウルトラグレートベアー”の手と魔法を警戒しながらも足を攻撃し続ける。

声も出せずに苦しそうにしながら、我慢出来ず、足元のグッサスを狙って右手を大きく振りかぶり、大きく息を吸い込んでしまった瞬間、左目が白目を剥き、後ろに倒れた……


ルナルーレは倒れた“ウルトラグレートベアー”の顔が見える位置に素早く移動して、気を失っている“ウルトラグレートベアー”に向かって再度“エアバレット”を叩き込み続け、ランドとグッサスも警戒しながらも素早く“ウルトラグレートベアー”の首元に移動して斬りつけ始める。


動かなかった“ウルトラグレートベアー”が大きくのけ反り、再度動かなくなっても攻撃を続け、首の骨が剥き出しになったところで、ランドが死亡の確認をしてグッサスとルナルーレに頷く。


そのまま無言でランドは討伐証明部位の牙と爪と魔石の回収を始め、グッサスは“ウルトラグレートベアー”を警戒、ルナルーレは周囲の警戒を行う。


討伐証明部位の回収が終わると“ウルトラグレートベアーの死体”から距離を取って、ルナルーレが周囲を警戒、ランドとグッサスはメモ帳の記入を始める。


ランドとグッサスが書き終わると交代して、ランドとグッサスが警戒、ルナルーレが記入を始める。


ルナルーレの記入が終わり、3人は頷き合い、オレの所にやって来て無言で真剣な表情を向けて来た。


「おめでとう!!完璧だ!!」

と、笑顔を向けると、


「「よっしゃーー!!」」

「やったーー!!」

と、最高の笑顔と大きなガッツポーズで叫んだのだった…………






「だから言ったろ?レンジさんは回収とメモ帳までやんないと絶対認めてくんねぇって」


「ああ、その通りだランド。そこまでがちゃんと身に付いてるかも、見てたし、大きな成果を上げた直後も気を抜かないか見てた。良いリーダーシップだよ」


そう言って、ルナルーレのお手製弁当を食べながらランドを見上げて答えた。


座って食べているのは、オレとルナルーレだけ、ランドとグッサスはまだお預けで、立って周囲の警戒をしている。


オレが褒めたせいでニヤついているランドを無視して、グッサスに話し掛ける。


「ところで、討伐証明部位を回収してたけど、あのクマ肉はどうするんだ?」


「今回は焼いて帰ります。アレを運ぶとなるとルナルーレの負担が大きいですし、今は旨味も余り無いので」


「?……」


オレの疑問顔にグッサスが教えてくれた。


「本来、この時期は肉の需要が高いんです。

この辺りは冬も余り寒く無いですし、雪も降らないですが、北部は場所によっては雪で狩りが出来ないですし、出来ても狩れる量が少ないのでそちらに大量に輸出するんです。

でも、今はレンジさんの狩ってきた高ランクの肉が大量にあるんで買取額が低いんですよ」


との事だ。


「そうなのか、なんかゴメン……」


ちょっと調子に乗り過ぎたかと反省すると、


「ああ!!気にしなくて良いですよ!!こういう事は時々あるんです。


夏に大量に取れ過ぎてしまったり、高位の空間魔法使いのいるパーティーが来た時なんかに。


高位の空間魔法使いがいると幾らでも荷物が持って行けるんで、何日も森に籠ります。

村と往復する必要がないんで多く狩れますし、狩った獲物も纏めて持って帰って来れるんで。


で、そのせいで肉が安くなったら討伐証明部位だけ持って帰る代わりに複数狩って帰るんですよ。

討伐証明部位の牙や爪は薬の材料に魔石は魔導具の燃料になるんで幾らでも必要ですから値段が下がる事は無いですし、討伐報酬も出るんで」


「そうなのか、じゃあ、あの肉はオレが貰ってもいいか?

今日の祝勝会の料理はあの肉でオレが作るよ。どうせなら、今日の獲物で祝おう」


「「「本当ですか!!」」」


「ああ、どうだろう?」


「「「是非、お願いします!!」」」


そうして、ルナルーレの“ストーンアローロケット3人乗り”とオレの“ストーンアローロケットくま箱付き”を数回飛ばして村に帰った。






▪️▪️▪️▪️






ランド達に続いて、冒険者ギルドに入る。

キョロキョロしてビーンズウッドさんを探すと、“炎の爪”の時の女性職員さんがやって来た。


「いらっしゃいませ、クルスさん。申し訳ありません。

今日解体が終わったばかりで報酬は明日にならないとご用意が出来ません」


「ああ、それは大丈夫です。

今日はお願いがあって来たんですがビーンズウッドさんはいらっしゃいますか?」


「本日はビーンズウッドはお休みを頂いております。

私がご用件をお伺いしましょうか?」


女性職員さんがそう言うと、ジャックさんがひょっこり顔を出した。


「げぇ!!クルスくん!!1週間は休むんじゃなかったのか?

オレは明日やっと休みなんだが…………」


「ジャックさん、ちょうど良かった。

ジャックさんにお願いがあって来たんですよ」


「お願い?解体じゃ無くてか?」


「解体は解体なんですけど、今日、ランド達が狩った“ウルトラグレートベアー”の肉が欲しいんです。

今日の祝勝会でその肉で料理したいんですよ。

もちろん、解体費用はお支払いしますし、1番美味しい部位を4人で食べる分だけ頂けたら、残りは解体班の皆さんで持って帰って食べて貰って構わないので」


「そういう事か、それなら構わねぇよ。なぁリサリナちゃん?」


「ええ、問題ありません。解体費用も一部の取り出しでいいなら1,000エルになります」


ギルド職員さん事、リサリナちゃんに「其れでお願いします」と答える。


「取り敢えず運び込むか。いつも通り村の入り口か?」


「いえ、今日はギルドの外に置いてます」


そう言って、ギルドの外へ。ジャックさんと解体班ズ、例によって暇そうな冒険者ギャラリーズも一緒に出て来た。


「たしかに“ウルトラグレートベアー”……それも、レベル530、BBランク……。

コイツは本当にランド達だけで倒したのか?」


「ええ、オレは一切、手出しも口出しもしていません。

そういう約束でついて行ったんで。なので、倒し方なら、ランド達に聞いて下さい」


オレがそう言うと、

「そうか、アイツらも成長してやがんだなぁ〜……」

とジャックさんがしみじみ言って、解体班ズやギャラリーズもうんうんと頷いている。


「みんな日々成長してますよ。では、お願いして良いですか?」


「ああ、“ウルトラグレートベアー”の1番美味いのは、ここの下腹の奥だ。先にそこだけ切り出してやるからちょっと待ってな」


「なら、お願いしといて良いですか?その間に他の食材とかを買って来るので」


「分かった、カウンターに預けとく」


「よろしくお願いします」

そう言って買い物に向かった。



まずは本屋だ。

クマ肉料理の載っている本を購入して、それを見ながら食材を買い集め、酒を大量に買い込みギルドに戻って来た。


冒険者達から質問責めに合っているランド達を横目に解体費を支払い、肉を受け取る。

4人分と伝えたはずだが一抱えはある塊だった。

奥のジャックさん達にお礼の声を掛けて、家に戻る。


食材を冷蔵庫の魔導具にしまって、地下室へ。

スキル全集から“スキル 料理”を確認して“スキル 創造”でレベル10までの指輪を作り、装着したら、いざ!!キッチンへ!!


ルナルーレへの愛情をしっかり込めて“ウルトラグレートベアー”の肉を切り、圧力鍋に入れて行く。料理は愛情だ!!なぜなら!!



----------


スキル 

料理

LV10 愛情を込める程、美味しい料理を作る事が出来る


----------


だからだ!!


途中、本当に愛情が込められているか不安になって“スキル 料理LV10の指輪”を一旦外し、自分に“鑑定”を行いスキルを覚えていた事に安堵の溜息を吐いたのは一生の秘密だ!!

墓まで持って行く所存だ!!


オレのルナルーレへの愛は本物だ!!疑う余地など無いのだ!!


でも、まだ出会って10日くらい?と、思ってしまったので、それも墓まで持って行く事にした!!






この世界の料理は速い。

まずステータスのおかげで、一つ一つの動きが速い。


熟練の料理人とかってレベルじゃない。

この世界に来る前なら実際に残像が見えているだろう。

おそらく俊敏のステータスで動体視力も上がっている様で残像は見えないが凄まじく速い。


次に魔導具だ。

米や煮物はゆっくり時間を掛けて火を通す……必要が無い!!


魔導具が時間がたった事にしてくれるからだ。

お湯もボタン一つで最初から熱湯だ。


最後になんと言っても“スキル 料理”だ。

長年修行したかの様に正確で無駄がない。


野菜を刻めば1mmの差異も無く、調味料も目分量で1gの誤差もない。


目にも止まらぬ包丁捌きでマンガやアニメの剣の達人の様に放り投げた野菜を全て別々の切り方で細かく切って皿でキャッチする事が出来そうだ。いや、出来た。


下手な剣士より料理スキルが高い方が絶対に強いと思う。


自分で作ってみて思ったがルナルーレの料理スキルは絶対にLV10だ。


双剣のランドよりも包丁を握ったルナルーレの方が強いかも知れない。

実際に試させてみようか?と、思ったが“包丁を握りしめて血だらけで魔獣に襲い掛かるルナルーレ”を想像して心の中に仕舞っておく事にした。

と、心の蓋を閉じていると3人が帰ってきた。



3人はテーブルに座り、オレは料理のスピードをかなり落として料理を続けながら、今日の相談会だ。


ルナルーレは手伝いを申し出たが、「今日は3人のお祝いだ」と、断った。



今日の戦闘を“完璧”とオレは称したが、より良い動きと魔獣のレベルが更に高い場合、魔法を多用された場合を想定して話し合う。

別のパターンが幾つか出たので明日はそれを試して行く事で今日の相談会は締め括った。


3人に風呂を勧め3人が出て来るまでに料理は完成。

料理と酒、食器を運ぶのをお願いしてオレも風呂を素早く済ませ、祝勝会だ!!



ランドの「オレ達の出逢いに!!」と、言う先日のオレのパクりの乾杯の挨拶で祝勝会は始まった。


3人共、オレの料理を絶賛してくれた。

ランドとグッサスは見つめ合って目に涙を溜めて「これをオレ達が……」と呟きながら“ウルトラグレートベアーのステーキ”を食べていた。


自分達の成長をしっかりと胃袋で実感して貰えているようだ。


ルナルーレの、

「私の料理より美味しいかも……」

と言う呟きに、


「ルナルーレには負けるけど、同じくらい愛情を込めたつもりだよ」

と答えると、


「私も、もっともっと愛情込めます!!」

と、力強く拳を握った。恥ずかしがらない所を見ると、もう酔っていらっしゃる様だ。




しっかり、飲んで食べ、料理への手が止まり出したのを見計らって、立ち上がる。


「3人共、今日はおめでとう!!プレゼントがあるんだ。ちょっと、待っててくれ」


そう言って地下室からプレゼントを持って来て、床に並べて行く。


「こっちがランド、これがグッサス、こっちがルナルーレ!!気に入ってくれたら嬉しい!!開けてみてくれ!!」


そう言うと「まさか……」とか「もしかして……」とか言いながら3人が蓋を開けて行く。


「うぉ〜〜…!!新しい剣だ!!……なんだコレ!!やべぇ!すげぇ!」

「オレのもすげぇ!!すげぇ力を感じるのにムチャクチャ軽い!!」


はしゃぐ2人をよそに、ルナルーレだけ涙目でオレを見ていた。

ルナルーレは目が合うとそっと視線をオレの手首へ向ける。


昨日からオレのブレスレットが変わっているのに気付いていた様だ。


袖を捲し上げブレスレットを掲げて見せて、

「お揃い」

と言うと、杖とブレスレットを胸に抱き締めて泣き出した。

ルナルーレの頭をそっと撫でて抱き締めた…………



そんな良い雰囲気のオレ達を完全に無視してランドとグッサスは「すげぇ!!すげぇ!!」と剣を振り回していた。アレは空気を読んでじゃない、絶対に素だ。

妹の涙はオレに丸投げらしい……



3人が落ち着いて、全員座ったので3人に注意を伝えておく。


「3人共、喜んでくれたみたいで、オレも嬉しいよ。


念の為、伝えておくんだけど、そのプレゼントは結構良いものなんだ。

だから、出来るだけ、鑑定はされない様にして欲しい。


あと、出所も内緒だ。でも、別に盗んだ物とかじゃないから、是非大切に使って欲しい」


「分かりました、一生大切にします!!」

「ああ、大切に使わせてもらいます」

「私も一生大切にします!!」


「ありがとう。プレゼントした甲斐があるよ」


プレゼントの興奮で酔いが覚めてしまった様で全員で片付けて、お開きになった。


ランドとグッサスは自分達の家に帰って行き、ルナルーレは気付いたら自分の部屋に行っていた様だった。


オレも自分の部屋に行きベットに入る。すると、小さなノックが聞こえた。

返事をすると、薄いネグリジェ姿のルナルーレが恥ずかしそうに俯いて入って来た。


「あの……ご、ご一緒してもよろしいでしょうか?」


「ああ、どうぞ……」


そう言って布団をめくる。少し距離を置いて、こちらに背中を向けて小さくなって布団をかける。


「レンジ様、ありがとうございます。本当に嬉しいです」


「喜んでもらえて良かった」


…………沈黙…………では、なかった。ルナルーレは寝息を立てていた。


疲れていたんだろう。3年ぶりのBランクとの戦闘、それに今回は3人。

ずっと緊張していたんだろう。


非常に!!非常に!!残念だが、今夜は眠る事にした……





翌朝、目が覚めるといつも通りルナルーレは先に起きている様だった。

リビングの扉を開けると、ルナルーレが駆けて来て頭を下げる。


「昨夜は申し訳ありません!!眠ってしまって!!」


「大丈夫だよ。昨日は疲れてただろうし」


そう言って頭を撫でるとルナルーレが顔を上げる。それを見て、耳元で、


「今夜は期待してもいいかな?」


と呟く、

「はぃ……」


とルナルーレは小さく答えた。『OK頂きました!!』と心の中でガッツポーズを取った!!


朝食の間もルナルーレはずっと真っ赤な顔をしていた。オレはずっと晴れやかな笑顔だ。


食べ終わって、ルナルーレは支度をしに行き、オレはコーヒーを飲んでいると、ランドとグッサスがやって来た。


2人はルナルーレが支度をしに行っている事を確認するとオレの前に並んで立って、

「「ルナルーレのこと宜しくお願いします!!」」


と、頭を下げた。何の事かと聞くと、プロポーズの事だ、と言う。

どう言う事かと聞くと、この世界ではお揃いのアクセサリーを送る事はプロポーズだそうだ。


オレが知らずにプレゼントした事に2人がガッカリしていたので、すでに3日前にプロポーズをしたから結果オーライだと言うと、もう一度、


「「ルナルーレのこと宜しくお願いします!!」」


と、頭を下げた。そこへ、ちょうどルナルーレが入ってくる。


びっくりした顔をしていたので廊下で聞いていた事を確信して、


「“お義理兄さん達”任せてください。ルナルーレは一生大切にします」


と言って顔を上げたランドとグッサスに笑顔で頷いて、振り返ってルナルーレを抱き締めてキスをした。


ルナルーレが泣き出して、ランドとグッサスも泣き出した。

ルナルーレを抱き寄せ頭を撫でる。男2人は放置だ。




3人が泣き止むのを待って、真面目な顔で話す。


ルナルーレは正式にこの家に住む事になった。

但し、オレがこの村を出て行くまでだ。


3人の事はもう信用しているがそれでも、出て行く理由はまだ話せない。

その代わり、必ず3年以内に迎えに来る。と伝えた。

ランドとグッサスも了承してくれた。





少し遅くなったがランドとグッサスが朝食を食べ終わるのを待って、一緒に村の入り口へ行き3人を見送る。


そのまま、金物屋に行き家の鍵の合鍵を作る。

その後、ギルドに寄って報酬を受け取り、紳士服屋へ行ってかなり多めに服を買って靴屋に行きそこでも十数種類の靴を買って家に帰る。


半分はしまって、半分は地下室に持って行き、取り敢えず隅の方に纏めて置いて置く。

コレらは後日のサンプル様だ。




今日は魔法を習得する予定だ。

辞書と魔導書を沢山買ったが半分はカモフラージュが目的だ。

ゆくゆくは全て読もうと思っているが当分先か何か気になった時だろう。


本当に必要だったのは魔法全集完全版だ。

こちらは完全版と書いているだけあり、属性魔法、高位属性魔法、特殊属性魔法が全4種と特異属性魔法も3種載っていた。


一通り目を通して、全てのレベルの指輪を作って行く。


特異属性魔法のみレベルが無く、それ以外はレベル10まであるが、魔法があるのはレベル9まででレベル10は全て◯◯魔法作成だった。


オリジナル魔法が作れると言う事だ。

更に特異属性魔法の複合魔法で属性も混ぜ放題の可能性がある!!夢が広がる!!


全種類の指輪が出来るとお弁当を食べて裏庭の浄化槽?の反対の隅に“グランドディグ”で5m四方、深さ1,000mの穴を掘り、深さ500mまで“ストーンウォール”と“ストーン”で補強する。


準備完了だ。


指輪を付け替えながら、弱い魔力でドンドン魔法を穴に撃って行く。


属性魔法の火、水、風、土。高位属性魔法の光、闇、雷。


特異属性魔法の時、空間はレベル9まで全て使った。


高位属性魔法の樹は木が必要な為、特殊属性魔法の神聖、呪は対象が必要だった為後回しにした。


レベル10を埋める為、凄く高温な“スーパーファイア”、凄く美味しい“スーパーウォーター”、凄く強い“スーパーウィンド”、凄く硬い“スーパーストーン”、凄く眩しい“スーパーライト”、凄く暗い“スーパーダーク”、凄く痺れる“スーパーサンダー”、凄く広がる“スーパーサーチ”、0.1秒単位で時間が分かる“スーパークロック”を生み出して使った。


最後に特異属性魔法の複合魔法、火属性の“ファイア”、土属性の“ストーン”を混ぜて“ファイアストーン”で燃える石を作って裏庭での実験は終了。


“ストーンキューブ”で穴に蓋をして洗面所へ入り念の為、鍵を締める。


全裸になって洗面台の鏡の前へ、次の実験は特異属性魔法の“変身魔法”だ。


“変身魔法”の効果は“イメージを具現化し魔力を消費して固定出来る”だった。


まず、魔力回復の指輪で裏庭で消費した魔力を回復して、変身魔法で右腕だけ大きくしてみる。大きくなった。


自分の手と同じ感覚で動く。左手で右腕を触ると触った感触も触られた感触もある。

右手でモノを触ったり持ったり出来る。感触に違和感も無い。


元に戻そうと思うと元に戻った。


左腕で試す。左腕のブレスレットも大きくなって着いている。

元には戻さずにブレスレットの無い腕をイメージすると無くなった。


触ってみても何も無い。左腕を元に戻す。ブレスレットもちゃんとある。


服を着ている姿をイメージする。服がある。触ってみると布の感触がある。


腕と服の間もちゃんと空間がある。ボタンを外す。外せる。脱いで床に放り投げる。


床に服が有る。再度着てみる。着れる。ズボンだけ脱いで床に放り投げる。


ズボンだけ消すイメージをするとズボンだけが消える。


魔法を解くと服も下着も消える。“一部”を大きくする。

触ってみる。触った感触も触られた感触も有る。


“ルナルーレとの今夜”を思い浮かべる。大きくなったまま“大きくなる”。


触ってみる、触った感触も触られた感触も有る。


魔法を解くとある意味“大きい”ままだ。


ルナルーレの顔だけをイメージしてみる。


顔だけがルナルーレになる。違和感が凄すぎたので直ぐ魔法を解く。


“のぼせた時のルナルーレ”を思い出ししっかりとイメージする。


“一糸纏わぬあの時”が完全再現される。

全身隈なく触って確認する。あるものが無く、無いはずのところがある。


頭の上で手のひらを振り確認する。身長も低くなっている。


昨夜のルナルーレを思い出す。薄いネグリジェが現れる。


魔法を解く。顔の各パーツを別々にイメージして、全く知らない顔をイメージする。


イメージ通りになる。様々な顔や体型をイメージする。全て出来る。


ベアーをイメージする。ベアーになる。もっと大きいベアーをイメージする。


大きくなる。触ってみると毛皮の感触がする。


“某宇宙戦争用ロボット”をイメージする。ロボットになる。


触ってみると金属の感触がする。1/60のプラモをイメージする。


視線が一気に下がり、鏡が見えなくなるが見える手足はロボットだ。


触ってみるとプラスチックの感触がする。

小さくなったので力を抑えて壁を殴ってみる。ステータスは下がっていない。

魔法を解いて服を着て自分に鑑定を使う。大体1分で魔力を1消費する様だ…………


「なんじゃこりゃ〜〜〜……!!!

未だかつて、ここまで完璧な変身魔法があったか!!いや無い!!

こんなの何でも出来るじゃねぇか!!

どんなエロ……じゃない!!どんなプレ……じゃない!!とりあえず色々だ!!

色々出来る!!


待て、待て、待て……弱点が存在しないなんてあり得ない!!

…………神聖魔法か……“コンディションケア”か“カースケア”……試そう」


もう一度、ベアーになって自分に“コンディションケア”元に戻る。

ベアーになって“カースケア”元に戻る。


「弱点はコレだ。

“治す”とか“戻す”魔法とかを受けるとダメだ。


“全状態異常無効”は発動しなかったから、酒に酔ったりとかと違って異常では無い。

でも、“治す”とか“戻す”は元の状態にするから打ち消されるのか。

もしも、使える事がバレたらヤバい魔法だな。多用は避けよう」



洗面所から出てリビングへ、コーヒーを飲んで一息付く。


気持ちを落ち着けてから、空間魔法“リターン”で、“スーパーウルトラグレートボア”を倒した所まで行く。


まずは高位属性魔法の樹属性魔法を順番に使って行き、最後に凄く硬い木が作れる“スーパーウッド”を生み出し使って終了。


次に近くにいた“スーパーウルトラグレートベアー”に特殊属性魔法の呪魔法を順番に掛けて、神聖魔法で回復させる。

それから、凄く嫌な事が起こる“スーパーカース”を生み出し使って、凄く気分が良くなる“スーパーリフレッシュ”を生み出し使って、最後に特異属性魔法の重力魔法で上から抑え着けて終了だ。


“スーパーウルトラグレートベアー”は抑え着けられても、とても楽しそうにし、その後も初めて見たクマのスキップを巨体で披露して、突然、あり得ない角度で転んだ。

そのまま、放置して家に帰った。




▪️▪️▪️▪️




“リターン”で裏庭に戻り、裏口から中に入ると、ルナルーレはもう帰って来ていた。


出発が少し遅くなったので、あまり時間が無かったのか聞いてみると、運良く“グレートベアー”に立て続けに出会えたので手早く予定していたシュミレーションパターンを試す事が出来、明日に備えて早めに切り上げたそうだ。


帰ったらオレが居なかったのでランドとグッサスは先に風呂に入っているそうだ。

もちろん、うちの風呂だ。


3人の家にはシャワーしか無いらしく、うちの風呂をとても気に入っている様だ。


いや、3人の家では無く、ランドとグッサスの家だ。

気を付けよう、ルナルーレの機嫌が悪くならないように……




風呂と食事を済ませて、明日の作戦会議だ。

まず、今日の戦闘内容はほぼ新装備の絶賛だったがキチンと新パターンの検証も行った。

昨日よりも効果が高い可能性大なのは、ルナルーレの“エアバレット”だ。


器用さが高くなったので小さくして数を増やすと、“グレートベアー”がより嫌がり、必死に払い落とそうとしたそうだ。

小さいモノが大量に群がって来るのはクマも嫌なのだろう。


明日は昨日行けなかった方角が違うポイントを攻める事にして、罠と逃走経路を確認して解散となった。

ランドとグッサスはちゃんと自分の家に帰った。


食事の片付けをするルナルーレに合鍵を渡す。


ルナルーレはそれはそれは、大変大変喜んだ。

利便性を考えてもあるが、もちろん“今夜への布石”の意味ももちろんある。


“愛”と“優しさ”は“下心”とは切っても切っても切り離せないのだ!!



昨日とは違うネグリジェを着たルナルーレを“美味しく頂きました”。

ルナルーレの“初恋”は“本当に初恋”でした。

久しぶりだったので、“おかわり”しっかり頂きました。




翌朝、ずっと赤い顔をしたルナルーレと朝食を取って支度をする。

リビングに降りると食べ終わった朝食を片付けていたランドとグッサスを待って森へ出掛ける。


今回はいつも通りの時間に出て、“ストーンアローロケット”で移動時間を短縮して移動する。


“通常通りBランクを狩れるか”も検証の1つだからだ。

2時間程で、前回とほぼ同じ、レベル550のBBランク“ウルトラグレートベアー”に遭遇する事が出来た。


3人共配置に着いて、最初の牽制と攻撃を前回と同じ様に入れて距離を取るとランドが声を上げた。


「ルナルーレ!!次の攻撃は魔法をストップしてくれ!!

グッサス!!全力で斬りつけてみるぞ!!」


ルナルーレとグッサスが頷くのを見て、ランドも頷くと、ランドとグッサスが駆け出した。


グッサスの一撃は“ウルトラグレートベアー”の右足を大きく斬り裂き、ランドは左右の2連撃で左足を斬り飛ばした。


足を失って“ウルトラグレートベアー”が倒れて来る。

ランドはその場で一回転して左右2連撃、左腕も斬り飛ばす。


グッサスも一気に迫って右腕を斬り飛ばす。

うつ伏せに倒れる“ウルトラグレートベアー”の首をランドは一気に3連撃で斬り飛ばした。



ランドとグッサスは淡々と討伐証明部位を回収し始め、驚いていたルナルーレもハッとして周囲の警戒に入る。


討伐証明部位の回収が終わると距離をとってメモ。

ランドとグッサスが難しい表情で書き終わるとルナルーレは首を振って何も書かずに3人でオレのところに来た。オレの前でランドが剣を抜いて見せる。


「レンジさん、コレ……」


「言ったろ、結構いいヤツだって」


「いや、結構なんてもんじゃ無いですよ!!

昨日使ってみて、良く斬れるし、動きも良くなったから、凄い剣だって思ってましたけど、この剣はそんなもんじゃない!!


オレの前の剣は古かったけど、ミスリルだったんですよ。

それよりも、もっと良いなんてレベルじゃない……

この剣って、もしかして“オリハ……」


ガバッと、顔を上げたランドを手で制して、


「“オリハルコンの剣”じゃぁ無いよ。金色じゃ無いだろ?」


オレがそう言うと、“鑑定されない様に”と、オレが言ったのを思い出したのか、少し黙る。


「…………良いんですか?こんなに凄いの、本当に貰っても……」


「何言ってるんだよ。オレはもっと良いモノを貰ってるのに!!」


そう言って、ルナルーレに近づき肩を抱く。

ルナルーレは赤くなって嬉しそうに、ランドとグッサスは見つめ合った後、苦笑いだった……


少し早いがお弁当にした。その時に、

「3人の命が大切だからプレゼントしたんだ。装備に頼った無茶な事はしないでくれよ」

と、言うと3人とも真剣に頷いた。


その後、“ウルトラグレートベアー”をもう2匹狩って村に戻った。





いつも通り、風呂と食事と相談会を終えてオレから1つ提案をした。


今まで通り、3日狩りで相談会、1日休みのローテーションを続けるか、1日訓練で2日狩り、1日休みにして、相談会は止めて、作戦会議と反省会を3人で行うか、だ。


訓練にはオレも付き合うし、作戦会議や反省会でも質問や相談があれば呼んでくれれば相談に乗ると言う条件だ。

3人は少し相談をして、後者を選択。

明日休んだら明後日は訓練の予定にした。



この提案の理由は3つ。


1つは相談会にオレの必要性が低くなっていたので自分の研究の時間にする為。

もう1つは3人の技術向上を行なってより高ランクを目指す為。

最後に万が一に備えて、対人戦闘の経験をこっそり行う為だ。


1番大きいのは3つ目の理由だ。

出来る限りこの村にいて準備をしたいと、オレも思うようになっていた。

そうなると、王国からの接触の可能性が上がる。

その際の保険だ。出来れば杞憂で終わって欲しいと強く願う…………





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